代表弁護士ブログ

2011年10月19日 水曜日

国際取引における強行規定と任意規定

強行規定とは、それぞれの国において一定の政策目標を実現するため、当事者間の合意内容如何に拘わらず強制的に適用になる法律のことを言います。一方、任意規定とは、法律において一定の定めはあるものの、当事者が法律の規定と異なる合意を行った場合には、その合意の内容が優先するような法律の規定を言います。

強行規定の内容はそれぞれの国によって異なってきますので、外国の法令が準拠法となる場合や、外国での取引が行われる場合には、その国の法律について確認をする必要が生じてきます。

強行規定の例としては、国家の競争政策の観点から定められる独占禁止法や公正取引法などの法令、利息や遅延損害金の最高利率を制限する規定、労働者保護の観点から定められた労働法規に関する規定、不動産の取引に関する規定などがあります。

例えば、金銭の消費貸借において年間の利息を30%とする合意を行った場合、日本では利息制限法の規定に違反して無効と解釈されることになります。同様に日本の労働者を保護する労働法制は強行規定と考えられますので、例えばアメリカの法人が日本人を雇用した場合であっても、労務の提供が日本国内で行われている限り、日本法が強制的に適用になります。日本では、雇用契約の解除(解雇)については極めて厳しい制限が課せられていますので、仮にアメリカ企業がEmployment Agreement(雇用契約書)を英語で作成し、アメリカの法律を準拠法とする定めをおいたとしても、労務の提供が日本国内で行われている限り日本法が適用になりますので、その労働者を解雇する場合には日本の法制(判例を含む)について検討する必要が出てきます。

同様に、日本企業がヨーロッパの企業と取引をする場合(例えばヨーロッパの企業に対してライセンスを付与するライセンス契約を締結する場合)においては、ヨーロッパの独占禁止法の規定に注意をする必要があります。EUの独占禁止法は極めて高額の課徴金を課すことで有名ですので、当該ライセンスが、優越的な地位の濫用に該当することはないか、カルテルなど価格制限的な効果を生じさせるものではないか、新規参入者の市場参入を不当に制限するものとなっていないかどうかなど慎重に検討することが求められます。

このように強行規定の内容は契約書による当事者の合意に優先して適用になるものですので、外国との取引を行う場合に現地の法律事務所のレビュー(契約書の内容確認)が必要になる場合も多く出てきます。費用が多くかかることになる場合もありますが、独占禁止法などは法令違反による制裁が極めて厳しいものですので、カルテルや競争制限的効果を生じさせる取引を行う場合には、少なくとも独占禁止法に違反する可能性の有無については個別に検討しておく必要があると思われます。

また、契約書の内容によっては、当該国においては有効であるが、相手方の国において執行する場合には、その国の公共政策に反して無効と判断される場合も生じてきます。例えば、アメリカでは、訴訟の敗訴当事者に対して高額の懲罰的損害賠償金が課せられることがありますが、このような懲罰的損害賠償に関する外国の判決は、日本の最高裁判所の判決によって公序良俗に反して無効とされています。従って、仮にアメリカにおいて懲罰的損害賠償金が課せられることになっても、その判決内容を日本で執行しようとする場合には、日本の裁判所に対して外国判決の承認申立を行う必要がありますが、その際に日本の裁判所は懲罰的損害賠償を認めた外国判決を公序に違反するものとして無効と判断することになりますので、当該外国判決は日本では執行できないことになります。

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office

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