代表弁護士ブログ

2011年11月 1日 火曜日

英文ライセンス契約書作成の基礎知識

外国企業に技術供与を行う場合や外国企業から技術導入を行う場合には、ライセンス契約書(License Agreement)を作成します。ライセンスの対象となる技術は、特許(Patent)、著作権(Copyright)、商標(Trademark)、意匠(Industrial Design)、実用新案(Utility)、ノウハウ(Know-how)など様々なものがあります。

英文契約書では、技術を供与する側の当事者をライセンサー(Licensor)といい、技術の使用許諾を受ける側の当事者をライセンシー(Licensee)といいます。ライセンサーは技術の使用を許諾し、ライセンシーは当該技術の使用許諾を受け、これを使って製品を製造することができることになります。

ライセンシーは、技術の使用許諾の対価(見返り)として、ライセンサーに対してライセンスフィーを支払う必要があります。ライセンスフィーの種類としては、一回限りの支払であるランプサムペイメント(Lump Sum Payment)の方法と、分割払いの方法であるインストールペイメント(Install Payment)の方法が考えられます。ランプサムペイメントは契約締結時にロイヤルティの全額を一度に支払うものですので、イニシアルペイメント(Initial Payment)とも言われます。インストールペイメントは、分割払いの方法で、ランニングロイヤルティ(Running Royalty)とも呼ばれ、通常契約期間全体にわたって販売した製品の販売価格などを基準に定められた金額を支払うものです。イニシアルペイメントとランニングロイヤルティは、両方の支払いが要求されることもあります(例えば契約締結時に1億円を支払い、その後、売上高の3%を毎年支払うなど)。

ロイヤルティの計算方法としては、売上高をベースにその何パーセントとする方法(グロスの計算方法)と、売上高から製造原価などを控除した粗利や、間接経費を控除した営業利益を基準として、その何パーセントとする方法(ネットの計算方法)などがあります。

このようにロイヤルティの計算は通常の場合、売上高に応じて決められることになりますので、ライセンシーが売り上げ努力をしない場合には、ロイヤルティは発生しないことになり、ライセンサーとしては好ましくない結果となってしまいます。そこで、毎年支払うべき最低金額(ミニマムロイヤルティ)を定めておき、どんなに売り上げが少ない場合であっても、最低限ミニマムロイヤルティの金額は支払わなければならないと定めることもあります。

国際的ライセンス契約においては、移転価格税制(Transfer Pricing Taxation)についても考慮が必要です。ライセンスの対象となる技術は無形物であるのが通常ですので、技術の供与に利益の移転が伴うことに気付かず、場合によってはライセンスフィーの支払を定めず無償で権利の使用を許諾する場合も考えられます。例えば日本の親会社が優れた技術を有しており、シンガポールに所在する日本の子会社又はJVに対して無償で当該技術の使用を許諾するとします。もし当該技術に経済的価値があり、第三者間取引(Arms' Length Transaction)の場合には当然にライセンスフィーの支払いが必要であったとすると、日本の企業は本来要求すべきライセンスフィーの支払いを受けず、反対にシンガポールの子会社はライセンスフィーの支払いを免れることになりますので、日本の企業の利益がライセンスフィー相当額だけ損をしたことになり、シンガポールの子会社は同額の利益をあげたことになります。

国際税務の世界では、本来日本の源泉となるべき利益が海外に移転し、日本での課税を行えなくなってしまったのであるから、第三者間取引において通常支払うべき金額の利益が日本企業に発生したものとして日本企業に課税を行うというのが移転価格税制です。従って、親子会社の間で技術移転を伴う取引がなされる可能性がある場合には、技術移転が存在しないかを検討し、移転価格税制適用のリスクがある場合には、ライセンス契約を作成して適切な額のライセンスの授受を行うのが相当であると思われます。

ライセンスフィーをどのように計算するかは難しい問題がありますが、工業統計などを利用して一般的な料率を定めるのが一般と思われます。一律に製造原価に数パーセントの価格を上乗せするという方法もあります。

ライセンス契約では、ライセンサーにとっては、相手方であるライセンシーがどれくらいの製品を製造、販売しているかによってフィーの価格が異なってきますので、ライセンシーは正確な会計帳簿を作成し、売上、原価計算を正確に行っておく必要があります。また、ライセンサーとしては、ライセンシーの工場への立ち入り検査、帳簿の閲覧などを行って、申告された売上高などの数字が正しいものであるかを確認できるようにしておく必要があります。そこで、契約上もGAPP(当該国で一般に公正妥当と認められた企業会計原則)に基づく会計帳簿の作成、工場への立ち入り検査などについて定められることが多くあります。

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office

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