代表弁護士ブログ

2012年6月25日 月曜日

M&Aを行う際の留意点2―買収スキームの確定、事業譲渡と会社分割、株式取得、LOI

買収スキームの確定
M&Aの手法としては、合併、株式取得、事業譲渡、会社分割、株式交換等様々な種類が考えられます。買手のニーズや売手のニーズを考慮しながら、どの方法が最も適した方法であるかを検討する必要があります。その際、法務面からは、手続きの簡便さ、スケジュールその他時間的制約、潜在リスクを承継することをどこまで受容することができるかなどを検討する必要があります。税務面からは、どの方法がもっとも節税効果を発揮できるかを検討することになりますので、例えば債務超過企業を買収する場合であっても、その企業の持つ繰越損失を有効に活用し、将来の税金の支払いを軽減するということも考えられます。また、会社の時価と買収価格との差額を暖簾として計上する場合には、暖簾の償却によって将来の営業利益が圧縮される可能性があることも検討しなければなりません。上場会社においては、単なる節税効果だけでなく、営業利益に対する影響も考えなければなりませんので、タックスプランニングはスキーム選定における重要な選択要素となってきます。

事業譲渡と会社分割
企業を買収する際の多くの方法は事業譲渡または株式の取得になります。事業譲渡の場合、ターゲット企業の特定の資産、負債、取引先などを選択して、必要な部分のみ購入することができますので、買い手にとっては、潜在的負債を引き受けることで、予想外の損失を被ることを回避することができます。会社分割は会社法に定められた方法により、会社の一部門のみを承継する方法ですので、事業譲渡に近い制度ですが、当該部門に関する事業を包括的に引き継ぐ点では包括承継の性質も有しています。事業譲渡の場合、個々の譲渡対象資産ごとに対抗要件を備える必要があります。例えば、不動産を取得する場合には、売買を原因とする移転登記を行うことが必要になりますし、自動車や知的財産権については、登録を要する必要があります。(指名)債権の取得については、債務者に対して内容証明郵便により債権譲渡通知を行うなど、第三者対抗要件を備える必要があります。譲渡会社にとっては、重要な資産の譲渡になる場合には、取締役会の決議または株主総会の決議が必要になります。どのような場合に株主総会の決議が必要かは実際の事業規模などに即して個別に判断せざるをえませんが、会社の売上や資産規模、営業利益の額を考慮して判断されることになります。

株式取得
これに対し、株式取得の場合は、会社をそのままの状態で包括的に引き継ぐことになりますので、買い手にとっては、ターゲット企業の潜在リスク(訴訟リスクや未確認の連帯保証責任)などを承継する恐れがあります。従って、株式取得を行う場合には、訴訟を含め、どのような潜在リスクがあるかを慎重に見極める必要が出てきます。当然デューデリジェンスによって発見される瑕疵については、対価を決定する際に考慮されることになりますが、場合によってはデューデリジェンスでも発見されない瑕疵が生じる可能性がありますので、事業内容を含めてどのようなリスクがあり得るかについては慎重な判断が求められる可能性があります。一方で、株式取得は、譲渡対象企業の取締役会の承認など簡単な手続きで行うことができますので、譲渡契約書の作成、調印、取締役会の承認決議、代金の支払い、株主名簿の変更等、手続き自体は極めて簡単なものとなります。

LOI
LOIは、Letter of Intentの略で、売り手と買い手が、買収スキームなど基本的事項について合意した段階で締結されるものです。Memorandum of Understandingの頭文字をとってMOUと言われることもありますが、基本的に同じものを言うと考えられます。LOIには、売主、買主、売買の対象となるもの(株式なのか、事業なのか、株式とすればどの株式を何株か)、クロージング予定日、買収対価等の基本条件が記載され、両当事者がその内容を確認の上、調印を行います。LOI自体には最終合意に至る前の段階で、それまでの当事者の合意事項をまとめる趣旨で締結されるものですので、一般的には法的拘束力を有していないと考えられています。従って、LOIの締結後、交渉が暗礁に乗り上げ、最終合意に至らなくても、当事者は損害賠償の支払いなどの法的責任を負うものではありません。但し、契約締結中とはいえ、当事者が真剣に協議を行っているものですので、何らの理由なく契約交渉を取りやめたり、契約交渉の途中でより有利な買収候補が現れたということで、相手方の合意なく他の買手候補に乗り換えたりした場合には、契約締結上の過失として損害賠償の支払い義務が発生する可能性もあります。

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office

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