代表弁護士ブログ

2012年6月15日 金曜日

競業避止義務に関する判例紹介

平成24年6月13日、東京高等裁判所において、退職後2年以内に競業他社に就職するのを禁止する契約条項を無効とする判決が出されました。この判決は、従前の取引慣行に対する変更を求められるという意味で、会社実務において極めて影響の大きい判決でありますので、その意味について検討したいと思います。

企業にとっては、企業の秘密情報を保護することは極めて重要ですので、とりわけ企業秘密にかかわる業務を行う社員については雇用契約を締結する際に、競業避止義務、秘密保持義務を定める秘密保持契約書を締結するのが通常です。また、特許など開発にかかわる従業員については、工業所有権の譲渡に関する規定が盛り込まれることも多くあります。

競業避止義務は、競業会社への就職を禁止するものですので、従業員の就職の機会を奪うことになる可能性があり、従業員にとっては生活ができなくなるような大きな制約となります。一方で会社からすれば、従業員が就業中に得た顧客に関する情報や、技術、ノウハウに関する情報を競業会社にもっていかれることで、事業継続に支障をきたすような重大な影響を受けることがあります。

そこで従前の判例では、1.禁止期間が合理的であるかどうか、2.禁止の範囲が不当に広汎に及ばないかどうか、3.当該従業員に対する競業避止義務を課することがその職務の内容に照らして合理的かどうか、4.競業避止義務を課す代わりにそれに見合った給料の支払いがなされているか、などを基準に判断していました。1.の禁止期間については、1年半ないし2年の期間は、限界的な場合と考えられますが、一応合理的な期間内と考えられていました。今回の判例は2年の期間を無効と判断したことになりますので、競業避止の範囲、期間について再考することが必要となってきます。

確かに、例えば弁護士や医師が、勤務先を退職した後2年間弁護士業、医師業をしてはならないということであれば、職業選択の事由に対する過重な制限であると考えられます。同様に例えば保険会社や銀行などの金融機関に勤務していた人についても、当該分野において専門的に活動しており、知識、ノウハウ、人脈なども当該業界を中心とするものですので、当該業界での勤務を禁止することはその期間仕事をしてはいけないということに匹敵するような重大な制限であるとも考えられます。

従前は、当該従業員・役員の役職や秘密情報に接近する度合いなどをもとに、ある程度機械的に競業避止義務の有効性を判断していたと思いますが、今後は、従業員・役員の職業選択の自由と企業の秘密情報の管理の必要性をより詳細かつ事案に沿って個別的に判断していく必要があるということになります。いずれにしても、今回の判例は、競業避止義務についての再考を求めるものであり、その有効性については個別の事案ごとに詳細な検討が必要となり、かつより会社側に厳しく判断されるということになります。

会社側としては、従前の就業規則、その他競業避止義務を規定した秘密保持契約書についての再検討が必要になりますし、企業秘密の保全について、単に契約書に頼るだけでなく、情報へのアクセス制限を見直したり、不正競争防止法による制限について社員教育を施すなど対応策を検討していく必要があります。

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office

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