事務所ブログ

2012年6月18日 月曜日

国際裁判管轄

パートナー弁護士 松本 甚之助

国際裁判管轄に関する民事訴訟法の改正が、2012年4月1日から施行されています。国際的な取引を行う際には、どこの国の裁判所で紛争を解決すべきかについての規定を入れるのが一般的と思われますが、その前提として、日本の民事訴訟法において、どこの国の裁判所で訴訟を提起できるのかについてどういった規定がおかれているかを理解することが重要だと思いますので、以下にその概要を説明します。特に法律の引用がない場合には、民事訴訟法となります。

被告の住所地により生じる管轄
人に対する訴訟については、1.その人の住所が日本国内にあるとき、2.住所がない場合又は住所が知れない場合には、その居所(一時的に住んでいる場所)が日本国内にあるとき、3.居所がない場合又は居所が知れない場合には訴えの提起前に日本国内に住所を有していたときには、日本国内の裁判所に管轄が認められます(3条の3第1項)。

法人の場合には、1.主たる事務所又は営業所が日本国内にある場合、2.事務所若しくは営業所がない場合又はその所在が知れない場合には代表者その他の主たる業務担当者の住所が日本国内にあるときには、日本の裁判所が管轄権を有します(3条の2第3項)。

業務に関する訴えの管轄
日本国内に事業所又は営業所を有する者に対する訴えでその事務所又は営業所における業務に関するものは日本国内で訴えを提起することができます(3条の3第4号)。
また、日本において事業を行う者に対する訴えについては、その訴えがその者の日本における業務に関するものである場合には日本で訴えを提起することができます(3条の3第5号)。

契約上の訴えに関する管轄
債務の履行地が日本国内にある場合には、日本国内で訴えを提起できます。また、契約において選択された法律によればその履行地が日本国内になる場合にも日本国内で訴えを提起できます(3条の3第1号)。

消費者契約に関する管轄
消費者から事業者に対する訴えは、訴えの提起時に消費者の住所が日本国内にあるとき、又は契約締結時に消費者の住所が日本にあるときには、日本の裁判所に対して訴えを提起できます(3条の4第1項)。

これに対して、事業者から日本国内の消費者に対する訴えについては、被告住所地主義の規定が適用され、原則として裁判所に訴えを提起しなければなりません(3条の2)。

労働契約に関する管轄
労働者がその雇い主を訴える場合、労働を提供する場所が日本にある場合には、日本の裁判所に訴えを提起することができます(3条の4第2項)。
なお、採用直後などの労働の提供地が定まっていない場合には、労働者を採用した事業所が日本にある場合には、日本の裁判所で訴訟をすることができます(3条の4第2項)。

これに対して、雇用主から日本国内の労働者に対する訴えについては、被告住所地主義の規定が適用され、原則として日本の裁判所に訴えを提起しなければなりません(民訴3条の2)

財産の所在地
請求の目的が日本国内にあるときには、日本に裁判管轄が認めらます(3条の3第3号)。
財産権上の訴えで金銭の支払を請求する場合には、差押えができる財産が日本国内にある場合には日本に管轄が認められます(3条の3第3号)。
不動産については、その不動産が日本にある場合には、日本国内で訴訟が可能です(3条の3第11号)。

不法行為
不法行為があった地が日本国内にあるときに日本の裁判所に管轄が認められます(3条の3第8号)。ただし、外国で加害行為が行われて、その結果だけが日本で発生した場合には、それが通常予見できないものについては、日本の管轄は認められません(3条の3第8号)。

管轄の合意
一般的に管轄に関する合意の有効性を民事訴訟法は認めています(3条の7第1項)。ただし、裁判権を行使できない外国の裁判所に専属的に管轄を認める合意は無効とされています(3条の7第4項)。たとえば、戦争などでその外国の司法制度が機能していない場合に、その外国でしか訴えを提起することができないといった合意は、無効になります。
後述しますが、専属的な管轄の合意以外には、特別の事情によって訴えが却下される可能性があるため(3条の9)、管轄合意によって、日本に管轄が必ず認められるようにするためには、その合意を専属的なもの(日本の裁判所にのみ訴えを適することができる旨の合意)としておく必要があります。
なお、将来に生じる消費者契約に関する紛争及び労働契約に関する紛争については、以下のような特則があり、その要件を満たさない限り、効力が認められません。

消費者契約に関する紛争の特則(3条の7第5項)
以下のいずれかの要件を満たさない限り、当該合意は無効とされます。
1. 事業者と消費者が、消費者契約締結の時において、消費者が住所を有している国の裁判所に訴えを適することができる旨の合意をするとき。ただし、この合意は専属的な合意であっても付加的な合意とされます。(1号)。
2. 消費者が国際裁判管轄の合意に基づき合意された国に裁判所に訴えを提起した場合、又は事業者が訴えを提起した場合に消費者が国際裁判管轄の合意を援用したとき(2号)。

労働関係に関する紛争の特則
以下のいずれかの要件を満たさない限り、当該合意は無効とされます。
1. 労働契約終了時の合意であって、その時の労働提供地の国の裁判所に訴えを提起できるとの合意をするとき。ただし、この合意は専属的な合意であっても付加的な合意とされます。(1号)。
2. 労働者が国際裁判管轄の合意に基づき合意された国に裁判所に訴えを提起した場合、又は雇い主が訴えを提起した場合に労働者が国際裁判管轄の合意を援用したとき(2号)。

特別の事情による訴えの却下
日本に裁判管轄が認められる場合でも、事案の性質、応訴による被告の負担の程度、証拠の所在地その他の事情を考慮して、当事者の衡平が害されるか、適正かつ迅速な審理の実現を妨げることとなる場合には、訴えの却下ができます(3条の9)。ただし、専属的合意管轄の場合には、却下されません。

管轄原因の優先関係
最後に、管轄原因が複数認められた場合に、その優劣について説明すると、専属的な合意があった場合には、法律により認められた管轄原因に優先します(ただし、法律上専属的な管轄が発生するものは除きます。(3条の10))。法律上の管轄原因または管轄の合意のうち専属的でないものについては、優先関係はなく、いずれかによって日本に管轄が認められれば、日本の裁判所に訴えを提起することができます。

なお、どこの国の法律が適用されるかという問題(準拠法)については、「法の適用に関する通則法」(「通則法」)によって判断されますが、こちらについては別の機会に説明をしたいと思います。
 


投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office

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