代表弁護士ブログ

2012年7月 2日 月曜日

M&Aを行う際の留意点4―クロージング、プレスリリース、ポストクロージング、独占禁止法上の届け出、インサイダー取引

クロージング
最終合意書では、クロージング日を定め、その日に必要書類の受け渡しや代金の決済を行うことになります。代金の決済については、通常銀行振り込みになると思われますので、クロージングの日には当事者双方がクロージング場所に集合し、代金の振込が完了したことを確認します。また、代金振り込みが完了した場合、売主は、株券を引き渡したり、登記に必要な関係書類を交付したりすることが必要になります。ケースによっては、銀行預金や代表印の引渡しが必要になる場合があります。役員の変更が必要な場合には、速やかに取締役会を開催し、退職役員の辞任届、株主総会の開催、新任取締役の選任などの手続きを行う必要があります。代金の決済に銀行融資を受ける場合には、金融機関に対して新たな担保設定を行うこともありますので、クロージングの手続きは複雑になります。事前に双方の当事者の了解のもとにクロージング手順書を作成し、クロージングの際に引き渡す書類のリストを作成し、そのリストをチェックしながら適切にクロージングが行われているかどうかを確認していく必要があります。

プレスリリース
上場会社が企業買収を行う場合、証券取引所規則に定められた軽微基準に該当しない限り投資家の投資判断に影響を及ぼす重要情報として、情報開示の対象となります。通常はプレスリリースの文案を事前に作成しておき、証券取引所への投げ込みを行うことになりますが、任意の開示としてホームページに開示されることがあります。また、会社法上の要請により新聞広告が必要になることもありますし、対象会社が上場企業の場合、TOBの手続きが必要になったり、5%ルールによる届け出、臨時報告書の提出などが必要になることもありますので、会社法及び証券取引法の関係法令のチェックが重要になります。

ポストクロージング
通常の売買の場合、クロージングによって取引はすべて完了になりますが、最終合意書の調印から決済(クロージング)までの間に企業内容に変動を生じたり、その後の主要な役職員の退職などで、当初と異なる状況が生じてくることがあります。最終合意書の中で、このような状況が生じた場合に、対価について調整を行う条項が入っている場合には、クロージング後一定の期間を経た段階で買収価格の調整を行う必要が生じてきます。これをポストクロージングといいます。ポストクロージングを円滑に進めるために、買収価格の一定割合(例えば買収価格を10億円とする場合、そのうち1億円)をエスクロー口座に入金しておき、最終合意書で定められた条件が満たされたことが確認された場合に、エスクロー口座の金銭をリリースし、売主に引き渡すということも多く取られます。エスクロー口座の開設については、日本の金融機関では取り扱ってくれないため、法律事務所や証券会社の名前で口座を開設したり、売主買主の連名で口座を開設することが考えられますが、将来の紛争の種になる可能性が高いですので、いずれの場合であっても、リリースの条件などを明確にしておく必要があります。

独占禁止法上の届け出
独占禁止法10条1項では、「会社は、他の会社の株式を取得し、又は所有することにより、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合には、当該株式を取得し、又は所有してはならず、及び不公正な方法により他の会社の株式を取得し、又は所有してはならない」と定められていますので、一定の市場における過度の支払力の集中を招くような企業買収は禁止されることになります。特定の企業が一定の市場を過度に支配してしまう場合には、市場による価格調整機能が働かなくなり、消費者の利益を害するというのが規制目的です。従って、大会社でなくとも、極めてニッチな市場においては競争制限違反による規制の対象となる可能性があります。また、独占禁止法10条2項では、買収者の企業集団の合算した国内売上額が200億円以上の場合で、買収対象企業の国内売上額とその子会社の国内売上額の合計が50億円以上の場合には、対象会社の株式の20%(正確には議決権割合で20%)以上を保有する企業買収を行う場合には、予め当該株式取得に関する計画を公正取引委員会に届け出なければならないとされています。独占禁止法の規制対象は売り上げを基準として判断されることになりますし、企業集団を合わせた売上基準を設けていますので、多くの事例で独占禁止法の適用対象になることがありますので、企業買収の際には、必ず10条2項の規制により事前届け出が必要かどうかをチェックすることが必要になります。

インサイダー取引
上場会社のM&Aを行う場合には、M&Aの事実自体が投資家の投資判断に影響を与える重大な事項になりますので、M&Aに関する情報はインサイダー情報に当たることになります。このような情報を事前に入手した会社関係者が、プレスリリースが行われる前に、当該上場会社(買い手の会社である場合と対象会社の場合の両方があります)の株式を売買することはインサイダー取引として刑事罰の対象となります。証券取引等監視委員会は、M&Aがなされた企業の株価の変動については常にチェックしていますので、プレスリリースがなされる前に、不適切な株価の変動がみられる場合には、取引を行う証券会社を通じて取引履歴を確認しますので、どのような名義(例えば妻や友人の名前を利用する場合)で行う場合であっても最終的には証券取引等監視委員会に全て見つかってしまうと考えるのが適切です。M&Aを行う企業としては、自社の社員などがインサイダー情報を活用し、インサイダー取引を行ってしまうことを防ぐため、できるだけ情報の拡散を防ぎ、社員に対してはインサイダー取引に関する教育を実施するなどの防止策を常日頃から検討しておく必要があります。

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office

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