代表弁護士ブログ

2013年4月24日 水曜日

信託法の改正と財産管理の新しい形【第3回】

第3 遺言代用信託と後継ぎ遺贈型の受益者連続信託
1 遺言代用信託
 遺言信託は、遺言の一種ですので、遺言の要式性が要求されるとともに、その効力は委託者の死亡によって発生することになります。一方、遺言代用信託の場合は、委託者が生存中に自らを受益者として信託を設定し(このように委託者=受益者である信託を受益信託と言います)、委託者が死亡した場合にあらかじめ定めていた者に受益権が移る信託です。従って、委託者の死亡後は信託行為の中で定めていた受益者が受益者となります。例えば、委託者が、自分の持家を信託財産とし、自らを受益者として信託を設定し、自分が死んだ後は、自分の妻(ないし自分の子供)を受益者とすると指定することができます。
 遺言代用信託は、信託契約により生前中から信託を設定するものですので、委託者による取消しが制限され、受益者の地位の安定が図られます。また、上記の通り、遺言による様式性を回避することができ、様式性の欠如による無効となる恐れを避けることができます。生前中に信託を設定することで、当該財産が遺産の範囲から除外され、相続人による紛争を回避することが出来るメリットも考えられます。但し、遺言代用信託の場合も、遺留分減殺請求の規定は適用になりますので、他の相続人の遺留分を侵害する場合には、遺留分減殺請求の対象となる可能性があることに注意を要します。

2 後継ぎ遺贈型の受益者連続信託
 信託法91条では、受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定めのある信託の設定が可能としています。例えば、委託者が、自宅を信託財産とする信託を設定し、自己の生存中は、委託者を受託者とするが(上記の受益信託)、自分の死亡後は、妻を受益者とし、妻の死亡後は自分の子供を受益者とするというような定めをすることが可能となりました。このような信託を後継ぎ遺贈型の受益者連続信託と言います。
 上記のように委託者が自分の死亡後の受益権をいつまでも定めることができるとすると、委託者にとっては自分の死亡後も自分の意思で財産の帰属を差配することができ、非常に有益と思われますが、一方、信託が終了するまで、当該信託財産の受益権ないし所有権の最終的な帰属者が定まらないことになりますので、不確定な財産を生み出すことになり、場合によっては取引の安全を害する可能性もあります。そこで、信託法では、上記のような後継ぎ遺贈型受益者連続信託については、当該信託がされた時から、30年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって、当該受益者が死亡するまで、または当該受益権が消滅するまでその効力を有するとしています(91条)。すなわち、信託の設定後30年経過した後に、新たに信託受益権を取得した者が死亡した時点で信託は終了することになります。例えば30年目の時点でAさんが信託受益権有しており、40年目にAさんが死亡し、Bさんが信託受益権を取得した場合、Bさんが死亡した時点で信託は終了することになります(Bさんが信託受益権取得後50年生存した場合は、信託設定時から90年信託が存続することになります)。
 民法の相続による定めでは、相続人が法律によって定められており、遺言書を作成する場合でも、必ずしも委託者の希望通りに財産の承継を行うことが出来ない場合が多くあります。後継ぎ遺贈型受益者連続信託は、アメリカなどではよく利用される制度ですが、今回信託法の改正によって日本でもこれが認められたことの価値は非常に大きいと思われます。
 例えば、田中一郎には前妻(死亡)との間に子供である田中二郎おり、その後、後妻である花子(旧姓高橋)と結婚したとします。法定相続では、田中二郎と後妻の花子が半分ずつ財産を相続することになりますが、田中一郎としては、後妻の生活が心配であることから少なくとも後妻の生存中は後妻を自宅に住まわせたいと考えています。一方、田中一郎の自宅は田中家から代々承継した財産であるので、後妻の死亡後はその財産を田中二郎に承継してもらいたいと考えていたとします。もし、田中一郎が遺言を書き、後妻である花子に相続させたとすると、花子は生存中にその財産を処分してしまうことが可能となりますし、仮に花子が遺言を書かずに死亡した場合には、当該財産は花子の法定相続人である高橋家のだれか(例えば両親や兄弟)が相続してしまうことになり、田中一郎の望みをかなえることはできなくなります。
 このような場合に、後継ぎ遺贈型の受益者連続信託により、自宅を信託財産とする信託を設定し、田中一郎の死亡後は花子を受益者とし、花子の死亡後は田中二郎を受益者とすることで、一郎の目的を達することができます。もし花子の死亡によって信託を終了させたいのであれば、花子の死亡を信託の終了事由とし、田中二郎を元本受益者と定めることで、花子の死亡後は田中二郎が当該不動産の所有者となることもできます。
 同様の事例は妻に連れ子がいる場合でも生じると思われます。例えば、田中一郎が花子と結婚したところ、田中一郎が子供を設けることなく死亡した場合、法定相続分としては花子が3分の2(花子と一郎の両親が相続人の場合)ないし4分の3(花子と一郎の兄弟が相続人の場合)を取得することになり、花子の死亡後は、花子が相続した財産は花子の親族に相続されてしまうことになります。もし、田中一郎がその財産を田中家から相続したものである場合は、田中一郎としては田中家の出身である自分の兄弟などに相続してもらいたいと考えるかもしれません。このような場合にも、後継ぎ遺贈型受益者連続信託を活用することで、花子の生存中は一郎の財産から生じる利益(例えば賃貸マンションの賃料)を花子に取得させ、花子の生活を保障するとともに、花子の死亡後は、田中一郎の兄弟に承継させることで、最終的に当該財産の所有権を田中家に帰属させることができます。
 このように、後継ぎ遺贈型の受益者連続信託は、委託者の死亡後における財産の受益者を何代にもわたって定めることが出来る制度ですので、相続について活用することで、従前できなかった新しい財産の承継方法に大きな道を開くと考えられます。

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office

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