事務所ブログ

2013年6月 4日 火曜日

強制執行手続概説(4)

代表弁護士 栗林 勉
1 開始決定・差押え

 強制執行申立がなされ、申立書の記載に不備がない場合には、裁判所は強制競売開始決定を行い、裁判所書記官は、管轄法務局に嘱託して対象となる不動産の差押登記等を行います。また、債務者に対しては、開始決定正本が送達されます。競売手続きと滞納処分手続きが競合する場合には、原則として差押先着主義が働きますので、先に差押えがなされた手続きが進行することになります。
 執行裁判所は、執行官に現況調査を命じ、現況調査報告書を提出させるとともに評価人に目的不動産の評価を命じ、 評価書を提出させます。現況調査報告書には、土地の現況地目、建物の種類・構造など、不動産の現在の状況のほか、不動産を占有している者やその者が占有する権原を有しているか否か、買受人が引き受けなければならない権利の有無などが記載され、不動産の写真などが添付されます。評価書には、競売物件の周辺の環境や評価額が記載され、不動産の図面などが添付されます。そのほか、裁判所書記官は、目的不動産の権利関係(担保権や用益権の設定があるかどうか、賃借権が設定されているかどうかなど)を調査し、物件明細書を作成します。裁判所書記官は、物件明細書・現況調査報告書・評価書(いわゆる3点セット)の写しを執行裁判所に備え置いて一般に公開します。

 上記3点セットがそろった後、執行裁判所は、不動産の売却の基準となる価格として売却基準価額を定めます。売却基準価格から2割を引いた額が買受可能価額となります。裁判所書記官は、売却の日時、場所、売却方法を定め、売却の日時・場所等を公告します。期間入札の場合、買受希望者は、売却基準価格の2割相当額の保証金を納付し、入札期間内に、入札金額を記載した入札書と保証金の振込証明書等を執行官に提出します。開札期日において執行官が開札を行い、最も高い金額を提示した買受希望者が最高価買受申出人となり、裁判所は売却決定期日において売却許可決定を行います。

 期間入札によっても、買受可能価額以上の入札がない場合には、再度の入札を行い、それでも買受希望者が現れない場合には、特別売却を行います。特別売却では、特別売却期間内に裁判所の定めた金額以上での買受希望者が現れた場合に、最初に買受の申し出をした人が買受をすることが出来ることになります。入札手続及び特別売却手続を行っても買受希望者が現れない場合には、裁判所は競売手続きを取消すことができます。
 売却許可決定が確定した時は、買受人は、裁判所書記官の定めた期限までに代金を執行裁判所に納付しなければなりません。買受人が買受申出の際に提供した保証金は、代金に充当することができますので、買受人は買受価格から保証金の金額を差し引いた金額を納付することになります。買受人は代金の納付を完了した時に不動産の所有権を取得することになります。買受人が代金を納付しないときは、売却許可決定は無効となり、買受人は保証金の返還を請求することができなくなります。
 買受人が代金を納付した時は、裁判所書記官は、法務局に嘱託し、買受人への所有権移転登記を行うとともに、売却により消滅する抵当権等の抹消登記を行うことになります。

2 配当の実施

 不動産の代金など代金の納付があった場合には、執行裁判所は、配当期日において配当表を作成し、配当表にもとづいて配当を行います。配当を受けることができる債権者の範囲は、1.差押債権者、2.配当要求の終期までに配当要求をした債権者、3.差押えの登記前に登記された仮差押えの債権者、4.差押えの登記前に登記された先取特権者、質権者、抵当権者で、競売により担保権の消滅する債権者、になります。なお、1.の差押債権者については、配当要求の終期までに強制競売又は一般の先取特権の実行としての競売の申立をした差押え債権者に限るとされていますので、自ら競売の申立を行う必要があります。
 配当は実体法に規定された優先順位に基づいて行われますので、上記の順位にある債権者がいる場合には、その債権者が100%弁済を受けるまで、後順位の債権者は配当を受けることはできません。例えば、不動産の売却代金が1億円で、第1順位の抵当権者の債権額が8000万円の場合、第2順位の抵当権者は第1順位の抵当権者に対する8000万円全額の配当がなされた後に初めて配当にあずかれることになります。同順位の債権者の間においては平等に案分して配当がなされます。なお、租税債権については、租税債権優先の原則が働きますので、担保権を有しない一般の債権者と租税債権者がいる場合には、租税債権者に対して全額の弁済を行って後、残高があって初めて一般の債権者に対して配当がなされることになります。担保権を有する債権者や仮差押えを行った債権者と、租税債権の優劣については、交付要求の時期にも関わり複雑ですので、案件ごとに詳細に検討する必要があります。
 


投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office

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