事務所ブログ

2016年1月 7日 木曜日

法務航海日誌〈3〉-秘密の開示

弁護士 山原 英治

2016年1月4日
東京 晴れ  微風 

秘密の開示

明けましておめでとうございます。2016年が皆さんにとって良い年となりますように。

読者の皆さんは年末年始、いかがお過ごしだったでしょうか。故郷に帰省して親戚の方々と歓談した方、あるいはハワイのワイキキビーチであの緩やかな風を感じながら過ごされた方もいらっしゃったことでしょう。

さて昨年末に皆さんと無事出航したところですが、究極の航海といえば果てしない宇宙を冒険すること。私は元旦、話題のSTAR WARS「フォースの覚醒」を観ました。10年振りという新作で世界的に大ヒットしているようですが、ハンソロはじめエピソードIVからVIまで活躍したお馴染みのキャラクターが久々に登場し「お懐かし!」という感慨ありでした。



(映画のパンフレット:さっそくTIEファイターに追いかけられるミレニアム・ファルコン)

今回の新作では早々にある重要登場人物の秘密が開示されていて、この後どうなるのか、続編に大いに期待が高まります(これから観る人達も多いと思いますので、エチケット上、どんな秘密かはここでは内緒)。ところでこの航海法務日誌のテーマの一つに企業法務に関する諸論点を「航海」することがあります。年頭にあたり何を書こうか考えていたのですが、まずは法務部員、特に若手にとって直面しやすい守秘義務契約から行こうかと思います。私は、企業法務の遂行に当たり極めて重要でありながら、多くの法務部員にその重要性が今一つ理解されていない事項だと考えるからです。

守秘義務契約は英語ではNo Disclosure Agreementと表現され、会社内ではNDAと簡単に言われることが多いと思います(あるいはConfidential AgreementからCAとも言われます)。このNDAは取引自体に直接関わる出資契約書などよりかなり前段階で、その投資判断を左右する「秘密の開示」を受けるために、案件組成の入り口で登場します。私の場合、投資銀行などの主として情報取得者側として多数のNDAを処理してきました。

多くの会社、特に日系企業ではNDAを法務部員の中でも比較的経験が浅い若手が担当しているように思います。先輩たちは「もっと重要な契約書」の交渉で忙しいから。しかし、投資案件だろうが融資案件だろうが買収案件だろうが、いかなる案件でもNDAを迅速に締結して対象案件情報を情報提供者側から取得し、速やかなる分析をしなければ商機を失ってしまいます。NDA締結のスピードは情報開示側がこちら側(情報取得者側)の当該案件に対する真剣度を測る、まず第一のチェック・ポイントだからです。実に、営業部担当者はインハウスカウンセルから極めて迅速なコメント、できれば30分以内にNDAに関するファースト・コメントを(しかもできるだけミニマムで!)欲しいと思っています。とにかくNDAを締結して情報開示を得なければ先に進めないからです。この問題は当然のはずなのですがNDAに対する法務部員のコメント出しに時間をかけすぎているのが現実だと思います。これが法務部に対する苦情、評価低迷の大きな要因になっていると思います

NDAの迅速な締結が債権回収に決定的な影響を与える場合もあります。私が信用不安のある会社に対する債権者側担当弁護士となっていた際、当該会社がData Room(資産状態を公平に債権者に開示するための情報部屋)設定したので、そこにアクセスをしようとしたことがありました。当該会社担当の法律事務所がNDAの締結をクライアントに求めてきました。すでに債務者は金融機関主導の事業再生ADRに入っており状況は急を要するものと判断され、私は急ぎNDAを精査し、必要最小限度のコメントとリスクの所在を指摘し、更にその実務経験上のリスクの軽重をアドバイスしました。NDA条件の交渉は認めない、と告知されていたためです。クライアントにおいて了解のうえNDAを迅速に締結、Data Roomへアクセスし資料分析に入ったうえで債務者との間で債権調整交渉に入りました。ところが後で知ったのですが、同じ案件で他の債権者は債務者側担当弁護士とNDAの条項変更交渉に入ってしまい、交渉平行線のままなかなかData Roomへのアクセスができず、その結果、漸くアクセスした直後に当該債務者は法的倒産申立てに入ってしまったのです。その債権者のリーガルカウンセルの指導によったのかもしれませんが、当該債権者は債務者が法的倒産手続に入る直前の、相対的に柔軟・有利に契約条件を調整できるわずかな機会を失ったと推測されます。かように債権回収に決定的な影響をNDAが与えることがあるので、何が最低必要なのか、ポイントを押さえたリスクの現実的な把握が非常に重要です。

この法務航海日誌では、この後いくつかの具体的な条項について観察していこうと思うのですが、予めお断りしておきますが、NDAの処理は適用法令だけでなく当該会社のポリシーや情報管理システムが大きく関わるということです。極端に言えば守秘義務についてあまり重視しない会社であれば、先方の提示する「雛形」にそのままサインすれば足ります。それは早い。しかし、「情報開示者はいかなる時でも情報受領者の営業所に立ち入り『機密情報』の管理状況を検査する権利を有する。」という条項があったりしますが、丸呑みで大丈夫でしょうか? 「契約終了時、情報受領者は直ちに『機密情報』を情報開示者に返還しなければならない。」という条項もありますが、貴社のデータシステムはそのような「返還」が可能でしょうか?

ちょっと考えてみてください。 

今年は今日月曜からいきなり仕事始め。皆さんのフォースは覚醒してきましたか?
航海継続


投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office

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