代表弁護士ブログ

2016年9月 9日 金曜日

企業法務弁護士によるM&A

少数株主の排除
中小企業の大部分はオーナー経営の会社ですので、株式の全部または大部分をオーナー又はその一族が所有することになり、いわゆる同族会社と呼ばれることになります。税務申告書にも同族会社の判定基準が定められており、同族会社であるかどうかが届け出られることになります。一方、会社を長年経営してきた場合、従業員や親族の一部に株式を所有してもらうこともあり、また他の会社を買収するなどする過程で、第三者が発行済み株式の一部を所有することがあります。

私どもの相談を受ける会社でも、90パーセント以上の株式については、オーナー一族が所有しているものの、5%ないし10%程度の少数株式を従業員やその他の第三者が所有している場合があります。このような場合でも、大部分の総会決議事項については、オーナーの一存により決定されることになりますので、日常の経営の中では特に少数株主の意向を重視する必要はなく、少数株主の存在自体が問題とされることはなく、ケースによっては少数株主に対する株主総会の招集通知自体を行っていない場合も多くあります。

また、何世代も続いた会社については、相続の際に、親族に株式が分散され、所有関係が不明確な場合には、株主の特定自体が困難という状況もあります。

名義株と株主でない事の確認を求める訴え
上記のような場合には、まず現時点における本当の株主が誰であるかを確定させる作業が必要になります。会社の株主名簿や税務申告書に10年以上にわたり少数株主の名前が載っている場合であっても、過去の経過の中で、形式上その人に株式を所有してもらった形にしているが、名簿に載っている株主は本当は形式上株主にされただけで、株式の売買契約がなかったり、株式の引受に際して払込代金の支払いを行った形跡が存在しないような場合には、いわゆる名義株式とされ、形式上の株主は実質上の株主でないことになります。

本当の株主は株式の割り当てを受け株式対価の払込を行った人であり、また株式譲渡の際には真実の株式譲渡契約が締結され、譲渡代金の支払いと株主の名義書き換えが行われた人ですので、このような手続がなされていない場合は、名義株に該当することになります。

昔の商法では、会社の設立の際に発起人7名以上が必要であったことから、形式上7名の発起人を集め、お金を出していない形式上の発起人についても株式の引受があった外観が取られていることも多くあります。

そこで会社としては、真実の株主を株主名簿に反映させるため、名義上の株主に対して株主名簿からの削除を申し入れたいと考えます。しかしながら、会社の代表者から名義上の株主に対して、株主名簿から名前を削除したいと申し入れても、拒否されるのが通常ですので、会社としては、当該株主名簿上の株主として記載されている人を相手に、株主でないことを確認することを求めて訴訟を提起する必要が出てきます。

少数株主からの株式買取
少数株式を有する株主が真実の所有者であることが確認され、または少数株主が真実の所有者であるかどうかは不確定であるが長年継続して当該株主を株主として扱ってきたことからいまさら株主ではないと主張しても裁判上認められる可能性は少ないと思われるような場合には、当該株主に対して株式の買取を請求することが考えられます。

もちろん株式を譲渡するかどうかは、株主の任意ですので、多数は株主であっても少数株主に対して株式の譲渡を強制することはできません。あくまで少数株主の同意のもとに株式の買い集めを行うということになります。

株式の譲渡価格をいくらとするかについては、法律上明確な指針はなく、当事者が合意した価格で行うことになります。実際上は近時の取引事例に基づく取引事例方式や、純資産価格を発行済み株式数で除した価格(一株当たりの純資産価格)を用いるのが通常と思われます。

株式の買取の申し込みは、株主であるオーナー経営者が自ら買い取ることを申し出ることもあり、また会社自体が買主として申し出ることも可能です。但し、会社による株式の買い取り(自己株式の取得)については、会社に配当可能利益が存在することなど一定の制限があります。

株式併合
株主総会の特別決議により株式を併合する場合があります。例えば、1万株を発行している会社において100株を一株に併合するなどです。この場合、100株に満たない少数株主の株式は端株となり、金銭による清算がなされて、議決権のある株式を失うことになります。

株式併合に反対の株主は会社に対して反対の意思表明を行い、自分の株式を公正な価格で買い取ることを請求することが出来ますが、株主総会の特別決議がなされても依然として自分は株主であると主張することはできません。もし、少数株主の側において当該決議が不当であると考える場合には、少数株主の側から当該決議の無効を確認する訴えを提起しなければならないことになります。

同様の問題は他社との合併がなされた場合にも生じます。A社とB社が合併する場合には、通常それぞれの純資産価格等をもとに合併比率が定められ、その比率に満たない株式については端株として金銭の支払により清算されることになります。

オーナーとしては、株式併合により少数株主を排除することは手続き的には簡単ですが、もしオーナー側の目的が単なる少数株主の排除を目的とするものであるとすると、少数株主の側からは余りにも不当な決議であると主張されることになると思われます(裁判に訴えられるリスクが高まります)。そこで、株式併合を行う場合には、併合を行う正当な目的を明らかにする必要があると考えられます。

組織再編行為
例えばA会社が会社分割や株式交換などの組織再編行為により、B会社を設立し、A会社の資産をB会社に移転させた場合、A会社にはB会社の株式または譲渡対価のみが交付されることになります。A会社が事業譲渡を行う場合も同様です。この場合、B会社についてはA会社または新しいオーナーが全ての株式を所有することになりますので、100%会社が設立されることになり、少数株主が実質上いなくなってしまいます。その後A会社については、解散や清算がなされた場合、A会社は完全に消滅してしまいますので、A会社の株主は金銭の交付を受けるだけで、会社に対する議決権を完全に失ってしまうことになります。

最近では、例えば主たる株主が90%以上の株式を所有するような場合には、簡易な組織再編行為も認められることになっていますので、手続き的な負担もそれほど多くはありません。また、組織再編行為については、通常なにがしかのビジネス上の正当な目的があることが多いですので、株式併合の場合と比較して、正当性が高く、裁判に訴えられて敗訴するリスクは低いと言えます。また、会社法上、当該組織再編行為に反対する少数株主については、株式買取請求権が認められていますので、手続き的な正当性も高いと考えられます。そこで、少数株主を排除する手段としては、実際上はこの組織再編行為が用いられるのが一般的と考えられます。

全部取得条項付株式への転換
上記のような組織再編行為が取られない場合であっても、株式自体を取得条項付株式に変換してしまえば、会社は一定の事由の発生により株主から強制的に全ての株式を買い取ることが出来ます。もちろん株主のいない会社は考えられませんので、全部取得条項付株式について会社が既存の株式を取得する場合には、特定の人に対して新たに新株を発行することになります。

全部取得条項付株式に変換する場合には、株式の取得は容易になりますが、株式の転換などにおいて手続き上難しい面があることから、実務的にはあまり利用されていないのが現実です。

相続人に対する売渡請求
現在の株主の中の一人が亡くなり、その相続人が株式を取得する場合があります。会社としては、従前の株主が株主であることについては問題がないが、相続人が新しい株主になることについては、賛成できないということがあります。また、場合によっては、ある株主の株式を会社の名前で買い取りたいと思っていたが、その株主が譲渡に反対していたため買い取ることができなかったところ、その株主が死亡したというようなケースも考えられます(後者のケースは比較的頻繁に現れます)。

その場合、会社は、相続があった事実を知ってから1年以内の期間であれば、株主総会の決議によって、相続人が相続した株式を売り渡すよう相続人に対して請求することができます。この売渡請求は会社においては極めて都合がいいことから、かなり頻繁に使われているように思われます。

但し、上記の売渡請求を行うためには、会社の定款に売渡請求ができる旨をあらかじめ定めておくことが必要になります。少数株主を有する会社においては日ごろから上記の可能性を考え、売渡請求の規定を定款に書き込むよう対策を講じておくことが必要と考えられます。

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office

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