事務所ブログ

2017年5月12日 金曜日

企業法務弁護士による遺産相続 類似業種比準方式における斟酌率

再度、類似業種比準価額方式による一株当たりの株価の計算式を見てみます。

 A×(B'/B+C'/C+D'/D)÷3×X

A:類似業種の株価
B:類似業種の1株当たりの配当金額
B':評価会社の1株当たりの配当金額
C:類似業種の1株当たりの年利益金額
C':評価会社の1株当たりの年利益金額
D:類似業種の1株当たりの帳簿上の純資産価額
D':評価会社の1株当たりの帳簿上純資産額

既に、A、B、C、Dの値は確定し、下記のように計算されました。

300円×(2/1+150/100+1500/2000)÷3×X

A:類似業種の株価 300円
B:類似業種の1株当たりの配当金額 1円
B':評価会社の1株当たりの配当金額 2円
C:類似業種の1株当たりの年利益金額 100円
C':評価会社の1株当たりの年利益金額 150円
D:類似業種の1株当たりの帳簿上の純資産価額 2000円
D':評価会社の1株当たりの帳簿上純資産額 1500円

そこで、最後に斟酌率であるXについて検討します。斟酌率は会社の規模に応じて異なり、大会社の場合は0.7、中会社の場合は0.6、小会社の場合は0.5とされています。このように最後に斟酌率をかけることになりますので、類似業種比準方式で計算した場合は、同じ利益、配当、純資産の上場会社の平均値よりも株価は低くなります。例えば、類似業種の平均株価が100円で、配当金額、年利益金額、帳簿上の純資産価額が類似業種の平均とまったく同一だった場合、A×(B'/B+C'/C+D'/D)÷3の値は100円となりますが、斟酌率をかけますので、類似業種比準価額方式により算出した値は、大会社で70円、中会社で60円、小会社で50円ということになります。このように斟酌率を考慮することによって、類似業種比準価額方式で計算した値が上場会社の場合よりも小さくなるのは、非上場会社の場合、株式の流動性に欠けることになりますので、このような事情を加味したためと思われます。

そこで、大会社、中会社、小会社の区別はどのようにするのかが問題となります。この点についても国税庁で基準が定められており、卸売・小売・サービス業の場合と、それ以外の場合(例えば製造業など)で異なった基準が用いられます。例えば、卸売・小売・サービス業以外の会社について、規模による分類は次の通りです。

 大会社 純資産10億以上かつ従業員50人超、又は取引金額20億以上
 中会社
 (中の大)純資産7億以上かつ従業員50人超、又は取引金額14億以上20億未満
 (中の中)純資産4億以上かつ従業員30人超、又は取引金額7億以上14億未満
 (中の小)純資産5千万以上かつ従業員5人超、又は取引金額8千万以上7億未満     
 小会社 純資産5千万未満又は従業員5人以下、又は取引金額8千万未満

上記の内、純資産と従業員の数は「かつ」となっていますので、両方の条件を満たす必要があります。例えば純資産が8億円で、従業員が80名の会社は、「従業員10億円以上かつ従業員50人超」の条件を満たさず、この要件については、大会社の要件を満たさないことになります。同様に純資産5億円で従業員20名の会社は、純資産4億円以上ではありますが、従業員数が30人に満たないことになりますので、中の中の条件うち、「純資産4億円以上かつ従業員30名超」の要件は満たさないことになります。

また、上記の要件のうち、「純資産・従業員基準」と、「取引金額基準」は「又は」で結ばれていますので、どちらかの条件を満たせばいいことになります。例えば、純資産8億円で従業員40名の会社は、「純資産10億円以上かつ従業員50人超」の要件は満たしていませんが、取引金額が21億円であれば「取引金額20億円以上」の要件は満たしていることになりますので、「大会社」に該当することになります。

このようにまず、評価対象会社が大会社か、中会社か、小会社かを確認し、その規模に応じて斟酌率0.7、0.6、0.5の何れかの値を乗じることになります。通常相続税評価の場合や、同族間での株式の売買の場合には、株価を低く算定したいと考えると思いますので、大会社よりは中会社、中会社よりは小会社の方が有利と考えるかもしれません。また、反対に、M&Aなどの場合において株式の評価額を高くし、高い金額で売却したいと考える場合には、株価を高くするために、大会社に該当するとしたいと考えるかもしれません。

但し、大会社、中会社、小会社の分類は、会社の財務諸表に基づき客観的に確定されるわけですので、一般的には、当事者が勝手に操作することができるわけではありません。しかしながら、従業員の数については、ある程度の増減を調整することが可能かもしれませんし、取引金額(売上高)についても、きわどい内容の数字の場合には、売上を延ばしたり、反対に売り上げをセーブしたりすることで、上の分類にしたり、反対に下の分類にしたりすることも可能とする余地はあります。

また、下記に述べますが、類似業種比準方式による株価の算定については、上記の斟酌率の他に、類似業種比準価額と純資産価額のウエイトも考える必要があります。例えば相続の場合で、相続税評価額を下げたいと考える場合でも、下の分類にした方が必ずしも有利とは限りません。なぜなら、下の分類になるほど、純資産価額のウエイトが大きくなりますので、せっかく類似業種比準価額を下げたとしても、純資産価額が高いことにより、結果的に株価が高くなってしまうことがあるからです。この点、類似業種比準価額と純資産価額のどちらが株価を下げることになるかは財務状況に応じて会社ごとに定まることになりますので、最終的な計算をしてみないと上の区分と下の区分のどちらが有利かを一概に判断することはできません。

上記の計算により、仮に評価対象会社が中会社に該当する場合は、斟酌率は0.6ですので、類似業種比準方式による計算式(株価の算定)は次の通りとなります。

300円×(2/1+150/100+1500/2000)÷3×X
=300×(2+1.5+0.75)÷3×0.6
=255円

この会社の場合、配当は50円当たり2円で、類似業種における上場会社の平均値の2倍あり、利益も1.5倍ありますが、純資産が類似会社に比較して少ない(3/4)ことになります。また、規模による斟酌率も考慮した結果、255円が相当と言うことになり、類似業種の上場会社の平均値よりも多少低い価額が算出されることになりました。

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office

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