代表弁護士ブログ

2017年9月 7日 木曜日

Independent contractor agreementの秘密保持・競業避止

海外での事業を行うに際して、最初の段階で現地の人との間で雇用契約を締結するのではなく、Independent contractor Agreementを締結するのが如何に好ましいかはこれまで説明してきた通りです。Independent contractor agreementは秘密保持や競業避止に関しても、雇用契約の場合よりも会社の立場をより保護しえると言えます。多くの契約書では、会社の秘密保持、知的財産権の保護、競業避止等について必ずしも十分なケアがなされているとは言えません。そこで、以下具体的に見ていきたいと思います。

秘密保持及び競合避止契約の重要性

従業員を雇用する雇用契約書を締結する場合であっても、従業員が会社の秘密情報に接する機会は多くありますし、それらが外部に流出したり、違法に使用されて会社に損害を与えられる可能性がないとは言えません。また、従業員が会社を退職した後に、自分で独立して事業を開始したり、競合関係にある他の会社に移って御社の情報を流用される可能性もないわけではありません。そこで、多くの会社では、雇用契約書の中に秘密保持や競合避止に関する規定を入れることがありますし、雇用契約書の中に記載がない場合には、別途秘密保持や競合避止に関する誓約書の提出を求める場合も多いと思われます。

一般に雇用契約は継続的契約関係ですから、会社の秘密情報に接する機会が一層大いにも拘わらず、相互の信頼関係があるからといって、秘密保持に対する十分な対応がなされていないこともあります。また、従業員の転職の自由を制限してはいけないという労働法制上の要請から、秘密保持や競業避止に関する誓約書の提出を求める場合であっても、必ずしも厳格な決まりとなっていないことも多くあります。

多くの国では、労働者の保護法制があり、また判例上労働者の転職の自由を過度に制限する契約上の決まりは無効と判断されることとなっています。例えば、会社を退職した後に、当該会社と競合関係にある会社への就職を禁止する場合であっても、そのような禁止条項が有効かどうかが争われることになります。

競合避止条項の有効性を判断するに際して、一般には、従業員の地位、業務の内容、契約期間、対価の有無、禁止期間、地域や職種の限定の有無などがメルクマールとなります。従業員の地位について言えば、より高位にある従業員(例えば部長や課長)(雇用関係ではないですが取締役も高位にあると言えます)については、競合禁止が認められる可能性が高くなります。反対により下位にある一般の従業員については、競合禁止が認められる可能性が低くなりますので、競合禁止条項が無効と判断される可能性が高くなります。一般の従業員については、できるだけ転職の機会を認めないと生活が出来なくなってしまうという判断があるとともに、下位の地位にある社員については、秘密情報に接する機会が少なく、接する情報の重要性もそれほど大きくないことから、価値判断として、秘密情報の保護よりも従業員の転職の自由の方が重要視されるものと考えられます。

業務の内容も重要なメルクマールとなります。例えば、技術者で会社の核心的な秘密情報に接する社員であれば、競業避止がより認められやすくなるのに対し、一般の営業マン等であれば、その接する情報の秘密性がそれほど高くないと判断され、転職の自由に対する制限が認められにくくなってしまいます。また、高額の報酬を受領している社員や、退職時に高額の退職金を受領している社員であれば、競合避止義務が課される代わりに、十分な対価を得ているのであるから、その対価の中には、競合避止義務の対価も含まれていると判断される可能性も高くなります。反対に安い給料の社員については、転職の制限がなされる場合には、生活に困ってしまいますので、競合禁止も認められにくくなります。

同様に競合禁止条項の判断に際しては、禁止期間や禁止される職種や地域の限定があるかどうかも重要となります。日本の判例などを参考にすれば、1年程度の禁止期間については有効と判断される可能性が高いですが、2年を超えるような禁止期間を設けた契約書については無効と判断されるケースが多いようです。1年半の禁止期間については、微妙と判断されますので、その有効性はケースバイケースと言えます。地域的な限定や禁止される職種の限定がある場合には、競合避止契約の有効性がより認められやすくなります。従業員の立場からすれば、禁止された地域以外に就職することはできますし、禁止された職種以外の職業につくことは自由だからです。

このように、従業員に対する秘密保持契約条項や競合避止条項については、その有効性が争われることが多くありますので、会社の立場からすれば、契約書で定めたからと言って必ずしも安泰とは言えません。

これに対し、Independent Contractorの場合、独立した事業者ですので、競合避止や秘密保持についても、独立した契約当事者としてその功罪を独自に判断して契約を締結したと考えられますので、従業員の場合よりも秘密保持契約や競合避止契約が有効と判断される可能性は高いと思われます。

Independent Contractor Agreementにおける秘密保持義務としては、例えば次の様な条項が考えられます。

Each party (on its behalf and on behalf of its subcontractors, employees, or representatives, or agents of any kind) agrees to hold and treat all confidential information of other party, including, but not limited to, trade secrets, sales figures, employee and customer information, and any other information that the receiving party reasonably should know is confidential ("Confidential Information") as confidential and protect the Confidential information with the same degree of care as each party uses to protect its own Confidential Information of like nature.

(翻訳)
いずれの当事者も(それ自身のためだけでなく、あらゆる種類のその下請け、従業員、役員、エージェントのためにも)、トレードシークレット、販売量、従業員及び顧客の情報、その他受領当事者が合理的にみて秘密であると考えるその他の全ての情報を含め、相手方当事者の全ての秘密情報について秘密として保持し、その者自身の同種の秘密情報について用いられるのと同一レベルの注意を用いて秘密情報を保護するものとする。

上記は一般的な秘密保持条項ですが、独立請負人(独立事業者)の側から会社に差し入れる形式の契約書もあります。その場合の契約条項としては例えば次のようなものがあります。

You agree that during the term of this contract and for a period three years following the termination of this contract, you shall not directly or indirectly divulge or make use of any Confidential Information outside of your performance of your duty under this contract without the prior written consent of the Company.  You shall not directly or indirectly misappropriate, divulge, or make use of Trade Secret for an indefinite period of time, so long as the information remains a Trade Secret as defined by the applicable laws. 

(翻訳)
貴殿は、本契約の継続期間中及びその終了後3年間、会社からの事前の書面による許可がある場合を除き、直接的か間接的かを問わず、本契約に基づく貴殿の義務の履行以外には、秘密情報を漏えいし、又は使用してはいけない。適用になる法令によりトレードシークレットと認められる情報については、無制限の期間、直接的か間接的かを問わず、トレードシークレットを悪用し、漏洩し、使用してはならない。

最近の契約書では、秘密情報の返還に関する規定も多く含まれます。もちろん人の記憶の中にある情報の返還というのは難しいですが、記録媒体に記録されている場合には、契約が終了した段階でそのような媒体については、回収しておく必要があると考えられます。特に最近の秘密情報はほとんどすべてがデータ化され、PCのメモリやUSBで保管されていますので、かかる返還について定めておくことは重要と考えられます。

You agree to return to the Company all Confidential Information within five calendar days following the termination of the contract for any reason.

(翻訳)
貴殿は、理由の如何に拘わらず、本契約が解除された後、5日以内に、全ての秘密情報を会社に返還しなければならない。

競合避止条項
独立事業者(独立請負人)は御社の秘密情報にアクセスする機会を多く有していますので、そのような御社の秘密情報を用いて他で自分自身が事業を行ったり、外の会社への業務提供を行うに際して御社の秘密情報が利用されたりすることは何としても禁止したいと考えるのではないかと思います。従業員の場合よりも、契約期間が短いこと、会社への忠誠心が少ないこと、外の会社の業務を請け負う機会が多いことなどからすれば、従業員の場合よりも、競業避止についてはより詳細な取り決めを行っておく必要があると思われます。

私どもの経験でも、独立事業者(独立請負人)が、会社の顧客情報や技術的情報を用いて他と事業を行い、依頼者の情報が漏えいしてしまったとして問題となったケースも多くあります。特に顧客情報は比較的利用されやすいことから、契約上の制限を設けるだけでなく、顧客情報の記録されたパソコンやサーバーへのアクセスを禁止したり、制限したりすることも検討する必要があると思われます。

競合避止条項については、次のように記載することが考えられます。下記の文例は、極めて簡略なものですので、実際にはより詳細な取り決めが必要となります。

Contractor covenant and agree that, during the term of this contract and two years after the termination hereof, Contractor will not conduct business competitive with that of the Company or work for the company competitive with the Company.

(翻訳)
独立事業者は、本契約の期間中及びその後2年間、会社の事業と競合する事業を行わず、会社と競合関係にある会社で働かないことを約束し、同意する。

競合避止契約条項に、競合避止の期間や地域的制限を入れた方が好ましい(後日裁判所で無効と判断されるリスクが少なくなる)と言う点は上記に述べた通りです。競合避止については、当該事案の性質や、独立事業者(独立請負人)の立場なども考慮に入れながら、その事案にふさわしい内容を作っていく必要があります。

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office

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