事務所ブログ

2018年4月20日 金曜日

ユーロリーガル年次総会参加

EU統合と法律業務
ユーロリーガルは、ヨーロッパ各国所在の法律事務所で作る任意の団体です。イギリスの法律事務所を除き、全て中規模から小規模の法律事務所がメンバーですが、民間の法律事務所の抱える問題について率直な意見交換を行い、業務の上でも相互に協力しあうことを目的としています。とりわけヨーロッパについては、EUの統合後、人と財貨の移動が自由になされるようになったため、国境を超えた法律問題が多くなっています。特に会社の法律問題を取り扱う企業法務の分野においては、一つの国の法律だけで解決できる問題ではなく、複数の国の法律について統合的にアドバイスを行う必要があるケースが増えています。イギリスなどの大手法律事務所は、EU統合を機会にヨーロッパ全土に支店を展開し、事業規模を拡大させてきました。一方で中小規模の法律事務所の場合、自前でヨーロッパ全土に支店を展開することは極めて困難といえます。ユーロリーガルのような弁護士の団体は、相互に仕事を融通しあい、協力して業務に取り組んでいきますので、夫々が小規模ながらも、大規模の法律事務所に匹敵するサービスを提供することができることになります。依頼者の立場からしても、大規模の法律事務所は報酬も高いし、親身になって相談してくれないのではないかという懸念事項がありますが、反対に中小規模の法律事務所であれば、リーズナブルな報酬体系の中で、代表者と直接話をすることができ、依頼者の立場に立ったきめ細かなアドバイスが期待できるというメリットもあります。ユーロリーガルは、実際には20年以上の歴史がありますので、必ずしもEU統合のみが組織化の理由ではないかもしれませんが、限られた数のメンバー相互間で、極めて親密な親交を行っている団体です。

ユーロリーガルでは年に1回の年次総会が行なわれます。本年度はスイスのチューリッヒで行われました。これまでも、開催地としては、バルセロナやアムステルダムなど歴史のある中世の都市が選ばれ、ゆったりとした気分の中で会議が行なわれていました。来年度はポーランドでの開催が予定されています。スイスのチューリッヒは日本から直行便があり、10時間程度でチューリッヒの国際空港に着くことができます。空港は比較的チューリッヒの中心に近く、電車で30分程度でチューリッヒのセンター駅まで到着することができました。ユーロリーガルの会議には、全部で20名程度の弁護士が参加していましたが、スイス、イタリア、スペイン、イギリス、フランス、ドイツ、オランダ、ポーランド等、ヨーロッパの各地の弁護士が参加しており、自由闊達な議論はすごく参考になりました。特に中心として活躍している50歳前後の弁護士であるカイ・サドバッチ弁護士(ドイツ人弁護士)、オリビア・マンデル弁護士(フランス人弁護士)はこれまでも数年にわたり栗林とも個人的付き合いがありますので、懐かしい友達にあった感じで、とてもリラックスして話ができました。また、先方も日本からわざわざ来てくれたということで、会議の冒頭で全員に栗林の紹介をいただき、また栗林の方から簡単なスピーチを行う時間まで取ってくれました。栗林は、自分の自己紹介もありますが、東京弁護士会の国際委員会担当でもありますので、ヨーロッパの地方都市の弁護士会と東京弁護士会の友好協定の可能性について話をしました。

年次総会では、翌年度の議長を決めるとともに、会計報告や、翌年度の会議の開催地、担当役員等に決定などを行いました。また、総会終了後には、丸1日間かけて、メンバーによる簡単な講演や外部講師によるシンポジウムなどが行なわれました。最初のテーマは、タクシーの配車会社であるウーバー等の広がりにより、そこで働く人は労働者なのか、独立事業者なのかが問題となっている現状と、それに対する裁判所の判断についての報告がありました。日本でも、労務問題が極めて重要となっていますが、ヨーロッパでもほとんど同じ議論が行なわれているようです。但し、日本のよりも当事者の選択の自由に重きを置き、当事者が独立事業者として契約している以上、かかる法律関係を前提とし、これをどこまで修正していけるかと言う形の議論になっています。日本の場合、裁判所が労働者か請負契約かということで、いくつかの基準を用いて判断してしまいますが、当事者間の契約書の意味などはヨーロッパに比べてウェイトが低いように思われます。

次のテーマは、フランスやドイツにおいて裁判所に提出する証拠についてフランス語やドイツ語への翻訳文が必要なくなったという制度の改正についての報告です。私の友人であるサドバッチ弁護士とマンデル弁護士から報告がありました。日本でもそうですが、裁判所に提出する資料については、基本的に全て裁判所の所在する国の言語に翻訳し、翻訳証明書を提出させるのが通常です。しかし、ヨーロッパの人の移動が一層激しくなり、ヨーロッパの社会の中で英語の締めるウェイトの大きくなっている状況下では、英語文書についてわざわざフランス語やドイツ語に翻訳する必要はないとの認識が大きくなり、それを裁判所も認めたということだと思います。現地で実務を行う弁護士にとっては極めて大きな制度改正であると思われます。

最後にヨーロッパの法律事務所に勤務する弁護士の世代間のギャップについての講演がありました。50歳代なかば以上のオールドジェネレーション、40歳代のベビーブーマー、30歳代のXジェネレーション、20歳代のYジェネレーション、10歳代のZジェネレーションなどを挙げて、各年代の相違や考え方を紹介し、法律事務所の人の採用やオペレーションの中で、これらの世代との関係をどのように構築していくべきかについての話です。法律事務所が発展していくためには、それぞれの個性を尊重し、みんなが一つの方向についてやる気を以って取り組んでいける体制を築くことが重要であること、そのために社内イベントなどを頻繁に行い、親密な人間関係を構築しておくべきことなどの話がありました。日本で言えば社員旅行や、懇親会などに相当するのではないかと思いますが、職場内部での様々な取り組みも重要になるかと思います。

1日目は、懇親会を兼ねた食事会があり、2日目もセミナーの終了後、スイスの高級なレストランに招待いただき、20名程度のメンバーとその家族を含めた夕食会が開催されました。仮に栗林が個人で旅行したとしても、本当にディープなヨーロッパンの内部を知ることはできないと思いますが、今回のような機会を通じて、大勢の弁護士と知り合うことができ、メンバーの一人として受け入れてもらえたことは本当にありがたいと思います。


投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office

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