事務所ブログ

2018年11月 9日 金曜日

販売店契約の解除の制限について

販売店契約の解除の制限について(契約期間満了に伴う更新拒絶及び約定解約権に基づく契約解消の場面において)

1 継続的契約の解消の制限
契約当事者が販売店契約等の継続的な取引関係にある場合において、約定解約権又は更新拒絶ができることを定めていた場合においては、契約当事者が定めたところに従い契約関係の解消をなしうるものであることを前提としつつも、信義則等を理由として、契約の解消が制限されうる場合がある。この点に関しては、いくつもの裁判例が、契約の解消に際して「やむを得ない事由」等を要求すること、又は信義誠実の原則等の一般条項を理由として、継続的契約の解消に対して制限を加えようとしている。以下、それらのうちの2つの裁判例について概観したい。
2 東京高判平成6年9月14日(判時1507号43頁)(やむを得ない事由を必要とするもの)
 「本件は、化粧品特約店契約に関する事案である。被告の特約店である原告が、特約店契約上の対面販売を行う義務に違反し、カタログ販売を始めた。被告の再三の是正勧告にも従わなかったため、被告は中途解約条項に従い特約店契約を解除し、出荷を停止した。そこで原告は商品引渡を受ける地位確認及び商品の引渡しを請求した」事案である(判タ1406号31頁)。
同判決は以下のとおり判示し、単に継続的契約であることのみを理由とするのではなく、個別事情を考慮したうえで、継続的供給契約上の信頼関係が著しく破壊されたことを理由として、本件契約の解約にはやむを得ない事由が認められるとしている。
「本件特約店契約はいわゆる継続的供給契約と解されるところ、このような契約についても約定によって解除権を留保できることはいうまでもない。しかし...本件特約店契約は、一年という期限の定めのある契約であるとはいえ、自動更新条項があり、通常、相当の期間に渡って存続することが予定されているうえ...(被控訴人との契約も二八年という長期間に達している。)、各小売店の側も、そのような長期間の継続的取引を前提に事業計画を立てていると考えられること、...商品の供給を受ける側において、ある程度の資本投下と、取引態勢の整備が必要とされるものであり、短期間での取引打ち切りや、恣意的な契約の解消は、小売店の側に予期せぬ多大な損害を及ぼすおそれがあること...などからすれば...約定解除権の行使が全く自由であるとは解しがたく、右解除権の行使には、取引関係を継続しがたいような不信行為の存在等やむを得ない事由が必要であると解するのが相当である。」「対面販売等の販売方法の不履行は、本件特約店契約上の債務不履行となる。」「その他、本件特約店契約の解除に至る経緯をみても、控訴人はまず、被控訴人の行っていた販売方法の改善勧告をし、その後、双方とも代理人である弁護士を通じて折衝を重ね、一旦は被控訴人も控訴人との本件特約店契約に沿う販売方法をとることを約束しながら、依然としてそれに反する販売方法を継続し、控訴人の再三にわたる右約束の実行の要求を拒否し、...従前の販売方法を変える意思を持たなかったものであることからすれば、控訴人の本件特約店契約に定められた販売方法の不履行は決して軽微なものとはいえず、継続的供給契約上の信頼関係を著しく破壊するものであり、本件では、右契約を解除するにつきやむを得ない事由があるというべきである。」
3 東京地判平成23年3月15日(平成21年(ワ)第6917号、平成21年(ワ)第39399号)判例秘書登載(信義誠実の原則等の一般条項を理由とするもの)
 本件は、被供給者の業績不振の場合には、供給者は本契約を終了することができるとの定めのある自動車特約販売契約の供給者が被供給者の業績不振を理由に新契約締結を拒絶した事件において、新契約締結拒絶の有効性が争われた事案である。
同判決は以下のとおり判示し、継続的契約関係であることや、販売店の契約への依存度が大きいこと等の事情から、何らの合理的理由なく新契約の締結を拒絶することは信義則に反するとしたうえで、本件における当事者間の個別事情に基づいて、新契約締結に応じなかったことには合理的理由があり、信義則には反しないとしている。
 「原告と被告は、毎年契約期間を1年間とする特約販売契約を締結して取引を続けてきたものであり、本件契約...は、本件契約が平成19年12月31日に終了し、自動延長するものではない旨を明記している。しかしながら、他方、一般に、自動車ディーラーは、初期に多額の投資をして何年もかけて投下資本を回収していくもので、営業実績を積み重ねて固定客を獲得する側面もあり、そのことは被告においても当然に理解して原告との契約を締結していたと推認される上、契約の一方当事者が当事者間の合意の下に取引の継続を前提とした投資を行っているような場合には、他方当事者は、契約期間の定めにかかわらず、取引の継続に向けて協力すべき信義則上の注意義務を一定の限度で負うと解されることからすれば、何らの合理的理由もないのに被告が新たな契約の締結を拒絶して原告との特約販売契約関係を終了させることは信義則に反して許されないというべきである。」「原告の協定台数達成率の全国平均との差は、平成16年が約48%、平成17年が約30%、平成18年が約42%、平成19年が約40%であったというのであるから、原告の営業実績は看過し難いほどに不良であったといわざるを得ない。」
他方で、「①本件ショールームの設計プラン及び場所は原告側で選択・決定したものであり、その転用は可能であって、現実にも既に中古車センターとして転用されていること」、「②...原告は、被告との取引の外、I車の正規ディーラー店及び××車の協力店を務め、それぞれ専用ショールームを有し、各ブランド車のほか、○×車や△△○車の販売、中古車販売や車検業務等を手掛けており、平成16年から平成18年までの原告の新車・中古車・整備・手数料・保険の売上合計のうち」被告の扱う「△△車関係の割合は20%前後にすぎなかったこと」、「③△△車の日本国内における市場シェアは高いものではないこと」、「④原告は、実際の契約関係の終了の数年前から再三にわたり書面等により業績不振と契約終了の可能性について警告されていたし、口頭による正式の申入れからでも終了までには半年程度の期間があったこと、「⑤被告においては平成20年もサービス・部品取引の契約の継続を申し入れており、原告の意向にかかわらずすべての取引を直ちに打ち切るというものではなかったこと」「等の事実を合わせて総合考慮すれば、本件において被告が平成20年以降の新契約の締結に応じなかったことには合理的な理由があり、これが信義則上許されないものとはいえないというべきである。」
4 裁判例上考慮されている個別事情
 継続的契約の解消に関して上記のものを含めて裁判例上現れた事案においては、その判断の要素として様々な要素が考慮されている。
具体的には、①自動更新条項の存在や、現実に自動更新が繰り返されていたなど、実際には契約が長期間継続することが期待されていたこと、②被解消者が当該取引のための設備投資や販売体制の整備などに多額の投資をしていたことや被解消者の相手方への経済的依存度などに基づいた契約関係の解消が被解消者に与える影響の度合い、③被解消者が固定客を獲得していたことなどの被解消者の取引への貢献、④被解消者の契約違反行為や背信行為、又は信用不安や財政状態の悪化、組織体制の変更などの事情の変更、⑤解約告知期間や損失補償の存在などの事情である。


投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office

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