• 2020.09.01
  • 個人の法律相談

配偶者居住権

配偶者居住権の新設(民法1028条)

2020年4月1日から新しい相続法が施行され、配偶者居住権が認められるようになりました。これまで被相続人の死後、残された配偶者がそれまで居住していた建物に住み続けるためには、遺産分割手続を行って、その建物の所有権を取得する方法がありましたが、自宅以外の遺産が少ない場合には、配偶者は相続分に該当する財産を自宅で相続してしまい、それ以外の預貯金が手元に残らないという問題がありました。このような問題を解決するため、配偶者が居住建物の所有権を取得せずとも、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人の所有建物に対して、遺産分割の終了後にも配偶者にその建物の使用を認める配偶者居住権という使用権が認められることになりました。配偶者は、遺産分割協議、遺産分割調停、遺産分割審判において、終身、又は一定期間長期の居住権を取得できるようになります。配偶者居住権は、登記する必要があります。

配偶者短期居住権(民法1037条)

また、相続開始のときに無償で居住していた場合には、相続開始時から遺産分割終了時までの短い間、配偶者はその居住建物に無償で居住することができる配偶者短期居住権も認められています。配偶者短期居住権は、被相続人の居住建物を遺贈した場合や、反対の意思を表示した場合であっても、常に最低でも6か月は、配偶者の居住権は保護されます。

持戻し免除の意思表示の推定(民法903条4項)

相続法が改正され、婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、配偶者に居住用の建物又は敷地を遺贈又は贈与したときは、持戻し免除の意思表示があったと推定するという規定が追加されました。特別受益がある場合には、その分を遺産に組みなおして計算することを特別受益の持戻しといって、民法上はこちらが原則という建付けになっています。一方、持戻しにも例外あり、被相続人が「異なった意思を表示したときは、その意思に従う」と規定されており、この意思表示は「持戻し免除の意思表示」と呼ばれています。生前贈与は、配偶者の老後の生活の保障や、これまでの生活への貢献に報いる意味で、配偶者のためを思ってすることが多いものですが、被相続人が持戻し免除の意思表示をしていなかった場合には、結局生前贈与として遺産に持戻しがされ、被相続人が配偶者に対して生前贈与を行った趣旨が遺産分割の結果に反映されないことになってしまいます。そこで、民法では903条4項が新たに設けられ、婚姻期間が20年以上である配偶者の一方が他方に対して居住用不動産を遺贈又は贈与した場合については、被相続人は、その遺贈または贈与について持戻し免除の意思表示をしたものと推定すると規定されました。つまり、原則として特別受益を受けたものとして取り扱わなくてよいとされたのです。

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