事務所ブログ

2019年1月23日 水曜日

相続法の改正 持戻し免除の意思表示の推定規定

平成30年7月6日、国会で、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律が成立し、相続法が多岐にわたって、改正されることになりました。
 今回のブログでは、遺産分割の際の配偶者の保護の規定について、ご説明いたします。

1 持戻し免除の意思表示の推定規定
(1)新民法第903条4項が新たに追加され、婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、配偶者に居住用の建物又は敷地を遺贈又は贈与したときは、持戻し免除の意思表示があったと推定するというものです。
(2)この改正を理解するためには、特別受益という言葉を理解する必要があります。
 特別受益とは、相続人が複数いるときに、一部の相続人が被相続人から受けた遺贈、または婚姻、養子縁組、生計の資本として受けた贈与のことを言います(民法903条)。相続が開始して相続人間で相続分を確定させる際には、相続財産にどのようなものがあるのかを調べることになるのですが、たとえば生前贈与などで不動産を受けっていた相続人がいた場合には、この不動産の価額を遺産に組み込んで(持ち戻して)計算することになります。
 たとえば、20年以上の婚姻関係がある夫婦で、夫が亡くなり妻と子1人が夫の遺産を相続したとします。亡くなった時の夫の遺産は、2000万円の銀行預金のみでしたが、生前妻に価額が1000万円の贈与をしていたとします。この場合、1000万円の生前贈与は特別受益になりますので、妻は、1000万円の特別受益があることになります。この1000万円は遺産に組み込んで計算することになりますので、夫の遺産を2000万円+1000万円の合計3000万円として、妻と子の相続割合である1:1で按分すると、妻の相続分は1500万円、子の相続分も1500万円ということになります。しかし、妻は1000万円の生前贈与を受けていますので、すでに1000万円を受け取っていると理解し、1500万円から1000万円を差し引いた500万円の預金を相続することになるわけです。
 このように、特別受益がある場合に、その分を遺産に組みなおして計算することを特別受益の持戻しといって、民法上はこちらが原則という建付けになっています。
(3)しかし、持戻しにも例外あり、民法903条3項に規定があります。つまり、被相続人が「前項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う」と規定されているのです。この前項の規定と異なった意思というのを、「持戻し免除の意思表示」と呼んでいます。
 さきほどの例で、持戻し免除の意思表示がある場合には、1000万円は遺産に持ち戻されませんし、相続分から引かれることもありませんので、2000万円を妻と子の2人で1000万円ずつ分けることになります。よって妻は、生前贈与された1000万円の不動産以外に、1000万円の銀行預金を相続することができます。
 このように、現在の民法では、原則特別受益の持戻しがあり、例外的に持戻し免除の意思表示がある場合には、持戻しはされないことになります。
(4)しかし、生前贈与は、配偶者の老後の生活の保障や、これまでの生活への貢献に報いる意味で、配偶者のためを思ってすることが多いものですが、上記のように計算すると結局、生前贈与を受けていてもいなくても、変わらないことになってしまいます。被相続人が配偶者に対して生前贈与を行った趣旨が、遺産分割の結果に反映されないのです。
(5)そこで、新民法では903条4項が設けられ、婚姻期間が20年以上である配偶者の一報が他方に対して居住用不動産を遺贈又は贈与した場合については、被相続人は、その遺贈または贈与について持戻し免除の意思表示をしたものと推定すると規定されました。つまり、原則として特別受益を受けたものとして取り扱わなくてよいとされたのです。
 上記の例では、生前贈与された1000万円は、相続財産に組み戻す必要がなくなりますので、銀行預金について1000万円ずつ相続することになり、最終的に妻は2000万円(自宅の評価額1000万円と預金1000万円)取得することになり、持ち戻される場合より多くの財産を取得することができます。


投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office

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