• 2020.09.01
  • 一般企業法務

契約作成上の注意点

契約書の作成において注意すべき点(内容の明確化、公平の観点)について

契約書作成の目的は、契約当事者間の権利義務関係を明確にすることによって、後日の紛争を防止することにあります。そのため、契約書作成において重要なことは、契約の成立、存続、終了の各段階における権利義務関係・条件等について、契約当事者間で共通認識が得られているかどうかということになります。契約書中で用いられる用語を統一し、定義を明確にしておくこと、契約当事者を明確にすることなどもこのために必要となるものです。また、契約は基本的には当事者に公平な内容となるようにするべきであると考えます。一方の当事者に一方的に有利な契約である場合には、法令上無効となる可能性もありますし、不当な扱いを受けた当事者との間で後々紛争となる可能性もあり、そのことで結果的に評判を貶めることにもなりかねません。公平な内容の契約を締結することが、結果的には全体としては、長い目で見た場合に当事者双方にとって利益となるものであると考えています。

強行規定に反する条項について

いわゆる強行規定とは、公の秩序に関する規定として、当事者の意思の如何を問わず無条件に適用され、その規定に反する当事者間の特約を無効とするという効力を有する規定です。強行規定としては、例えば、民法90条(公序良俗)の他にも、利息制限法、労働基準法、下請法、独占禁止法や消費者契約法における規定などがあり、各分野における特別法において定められています。強行規定に反する契約条項がある場合においては、強行規定に反する条項が無効となるというだけに留まらず、もし強行規定に違反する行為を行ったような場合には、その行為に対して行政上の制裁や刑事罰が科される可能性があるために注意が必要です。

公序良俗に反する条項(民法90条)

契約が、公の秩序または善良の風俗に反する事項を目的とする場合は、契約の全部または一部が無効になります。たとえば、犯罪行為を目的とする契約は無効になります。また、事業者間契約であっても、利用規約を用いて自社にとってあまりに有利な条項を一方的に定めてしまうと、公平の理念に反し、裁判所によって無効と判断される場合があります。

契約終了後も契約の効力を存続させる条項を設けることの利点について

当事者間の契約関係が終了すると、その契約上規定されていた権利義務関係は、法律上認められた権利を除いては、契約の終了とともに終了することになります。そこで、法律上の規定の有無を確認する手間を省きつつ、契約終了後も自己に有利な権利義務関係を存続させるために、必要な規定ごとに契約終了後もその効力が存続する旨の特約を契約上定めておくことが有益となります。

譲渡制限条項について

特定の相手方と契約を締結する場合、相手方の資力や能力、誠実さなど、誰が契約の相手方であるかということは重要な要素となります。また、相手方の所在地によっては、契約を履行するために負担しなくてはならないコストが変わってくることもあります。それにもかかわらず、相手方が自由に契約上の権利義務を譲渡できるとしてしまうと、契約関係が譲渡された相手方によっては、契約が誠実に履行されないなどの問題が生じる危険性があります。また、契約を譲り受けた者が競合企業であったような場合、意図せず秘密情報が競業企業に漏れてしまうことも考えられます。一方、契約期間が長期に及ぶ場合などには、契約を譲渡できる余地を残し、契約当事者の承諾等の一定の条件のもとで、契約当事者の変更を認めておくことが有益である場合も考えられます。

不可抗力免責条項について

地震、津波、戦争など、契約当事者が社会通念上要求される注意を尽くしても防止することが不可能な事由によって債務の履行が遅延したような場合に、契約当事者を債務不履行責任から免責する条項が不可抗力条項です。このような事故には、必ずしも当事者の帰責事由によるものか否か明らかではないものもあることから、当事者が責任を免れる不可抗力による場合を明確にするために、不可抗力の範囲を契約書に明示することが必要となります。

収入印紙の貼付が必要な契約書かどうかの判断について

印紙税が課税されるのは、印紙税法で定められた課税文書に限られています。この課税文書とは、次の三つのすべてに当てはまる文書をいいます。課税文書に該当するかどうかはその文書に記載されている内容に基づいて判断することとなりますが、その文書の内容判断に当たっては、その名称、呼称や記載されている文言により形式的に行うのではなく、その文書に記載されている文言、符号等の実質的な意味を汲み取って行う必要があります。(国税庁ホームページ)
① 印紙税法別表第一(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により証明されるべき事項(課税事項)が記載されていること。
② 当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること。
③ 印紙税法第5条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされている非課税文書でないこと。
非課税文書とは、印紙税法別表第一(課税物件表)の何れかに該当するが、除外規定により課税対象とならない文書のことであり、不課税文書とは、課税物件表の何れにも該当せず、課税対象とならない文書のことです。

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