事務所ブログ

2019年1月24日 木曜日

消費者の利益を一方的に害する条項について

消費者と事業者との間の契約においては、消費者契約法上、消費者の利益を一方的に害する条項は無効となること。

1 事業者が顧客に対して負う損害賠償責任を免除する条項の無効(消費者契約法8条)
 (1) 債務不履行責任の全部免除(同1項1号)
本号に該当する条項の例としては、
「いかなる理由があっても一切損害賠償責任を負わない」
「事業者に責に帰すべき事由があっても一切責任を負わない」
「事業者に故意又は重過失があっても一切責任を負わない」
といった、事業者の債務不履行による損害賠償責任を全て免除する旨の条項が、本号に該当し無効となる。

 (2) 故意・重過失による債務不履行責任の一部免除(同2号)
無効となる条項の例としては、
「事業者の損害賠償責任は○○円を限度とする」
といった条項がある。このような条項は、事業者の損害賠償責任を一定の限度に制限し、一部のみの責任を負わせるものであるため、債務不履行が事業者等の故意又は重過失によるものである場合には、その限りにおいて無効となる。

 (3) 債務の履行に関してされた不法行為責任の免除(同3号)
   無効となる条項の例としては(1)と同様である。
ここでの不法行為責任とは、民法第709条(不法行為による損害賠償)、第715条(使用者等の責任)、第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)及び第718条(動物の占有者等の責任)のほか、代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害に関する法人の損害賠償責任の規定(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第78条等)、商法第690条(船舶所有者の船長等に関する賠償責任)、製造物責任法第3条(製造物責任)等が考えられる。

 (4) 債務の履行に関してされた故意・重過失による不法行為責任の一部免除(同4号)
   「故意又は重大な過失」という損害を発生させた加害行為の行為者の主観的態様の程度を要件としている。したがって、第3号に掲げたもののうち、人の加害行為によらない不法行為の類型については本号の適用はない。よって、第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)及び第718条(動物の占有者等の責任)、製造物責任法第3条の場合には本号の適用はないと考えられる。

 (5) 瑕疵担保責任の全部免除(同5号)
   本号は、消費者契約において、事業者が民法第570条及び第634条に規定する瑕疵担保責任を負う場合で、瑕疵による損害賠償責任の全部を免除する条項をその限りにおいて無効とするものである

2 顧客が事業者に対して負う損害賠償責任を加重する条項の無効(消費者契約法9条)
 (1) 契約解除時の過大な違約金の定め(同1号)
本号の規定は、契約の解除に伴う損害賠償額の予定等の定めがある場合において契約が解除されたときに、当該事業者に生ずべき平均的損害の額を超える額の支払を消費者に請求することができず、その超過部分を無効とするものである。

 (2) 年14.6%を超える遅延損害金の定め(同2号)
   本号は、事業者は消費者契約においては、消費者が契約に基づく金銭の支払が遅延     した場合の損害賠償額の予定等を定めたときは、年14.6%を超える損害賠償を消費者に請求することができないこととしている。

3 消費者の解除権を放棄させる条項の無効(第8条の2)
(1)  債務不履行に基づく解除権を放棄させる条項(同1号)
本号は、事業者の債務不履行によって生じた消費者の解除権を放棄させる条項をその限りにおいて無効とするものである。

(2)  瑕疵担保責任に基づく解除権を放棄させる条項(同2号)
本号は、事業者から引き渡された消費者契約の目的物や仕事の目的物に瑕疵があったことによって生じた消費者の解除権を放棄させる条項をその限りにおいて無効とするものである。消費者は、民法第570条等の規定に従い、契約の解除をすることができることになる。

4 その他消費者の利益を一方的に害する条項が無効となる例(消費者契約法10条)
(1)  事業者からの解除・解約の要件を緩和する条項
例えば、民法第541 条により、相当の期間を定めた履行の催告をした上で解除をすることとされている場面について、特に正当な理由もなく、消費者の債務不履行の場合に事業者が相当の期間を定めた催告なしに解除することができるとする条項については、無効とすべきものと考えられる。

(2)  第8条の2に定めのない消費者の解除権を放棄させる条項
例えば、委任契約については、各当事者がいつでもその解除をすることができることとされている(民法第651条第1項)。このように、債務不履行や瑕疵担保責任に基づくもの以外の消費者の解除権を放棄させる条項は、第8条の2の適用によっては無効とならない。もっとも、そのような条項が、第10条の要件を満たす場合には、同条が適用されることにより無効となる。

(3)  事業者の証明責任を軽減し、又は消費者の証明責任を過重する条項
証明責任を法定の場合よりも消費者に不利に定める条項(例えば、債務不履行に基づく損害賠償責任(民法第415 条)に関し、事業者の「責めに帰すべき事由」を消費者に証明させる条項)は、無効となりうる。

(4)  消費者の権利の行使期間を制限する条項
瑕疵担保責任の権利の行使期間については、当該契約内容の特性等により任意規定と異なる定めをすることは許容されるべきであるが、正当な理由なく行使期間を法定の場合よりも不当に短く設定する条項は、民法第566 条第3項(権利の行使期間は事実を知ったときから1年以内)に比べ、消費者の義務を加重するものとして、無効となりうる。


投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office

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