代表弁護士ブログ

2020年5月 7日 木曜日

新型コロナウイルス対応~人事労務分野~

緊急事態宣言が5月末まで延長されることになりました。多くの企業では3月途中から在宅勤務や休業措置をとっていますが、このまま緊急事態宣言が何か月も継続し、仕事を行うことができない状態が続いてしまうと、いかに政府からの緊急融資制度が利用できたとしても、そう遠くない段階で事業資金が底をつく可能性が高くなってきます。国の側からは雇用維持のために、雇用調整助成金の活用が言われていますが、申請手続き自体が非常に難解で難しい上に、助成金の金額自体に一人一日当たり8500円の上限があるため、仮に雇用調整助成金が満額出たとしても、支給額との差額は事業主が負担しなければならないことになります。また、仮に8500円の上限額(月額17万8500円)の引き上げがあったとしても、通常の社員の給与を賄うのには到底不足すると言わざるを得ません。
個人事業主としては、売り上げが全く期待できない状況の中でどのような形で事業の継続を行っていくのか(従業員の解雇を含めどこまで経費の削減に取り組むのか)、あるいは事業の清算をし、再起にかけるかを検討せざるを得ない状況に陥る可能性もあります。多くの事業主にとって雇用の問題は賃料の支払いと同様に事業運営にとって極めて重大な問題となってきています。

当事務所では、コロナウィルスによる緊急事態宣言の下で、従業員の解雇は認められるのかどうか、雇用関係への対応をどのように考えるべきかを、法律の観点からまとめてみました。実際の問題では、それぞれの事情に応じてより突っ込んだ対応を取らざるを得ないこともあると思われます。当事務所では、コロナウィルスに関連する労務問題についての電話相談を受け付けていますので、ご不明な方はいつでも電話(03-5357-1750)でご相談ください。


新型コロナウイルス対応~人事労務分野~

Q1 従業員が新型コロナウイルスに感染しました。従業員を休業させた場合、その期間の休業手当を支払う必要はありますか。

A 原則として、休業手当の支払いは不要と考えられます。
  労働基準法第26条では、「使用者の責に帰すべき事由」による休業の場合には、使用者は休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないとされています。もっとも、不可抗力の場合には休業手当の支払義務はありません。
  ここでいう不可抗力とは、①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故であること、の2つの要件を満たすものでなければならないと解されています。
  新型コロナウイルスに感染した場合、感染症法に基づき、都道府県知事が該当する労働者に対して就業制限や入院の勧告等を行うことができます。
  そのような都道府県知事が行う就業制限により労働者が休業する場合は、一般的に「使用者の責に帰すべき事 由による休業」には該当しないと考えられますので、休業手当を支払う必要はありません。

Q2 従業員から発熱などの症状があると報告を受けました。新型コロナウイルスに感染しているかは分かりませんが、他の従業員への感染を恐れ、念のために休んでもらうことにしました。その場合、従業員に対して休業手当を支払う必要はありますか。

A  業務可能な状態の従業員に対して、発熱などの症状があることのみをもって、使用者の自主判断で休業させる場合には、基本的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当すると考えられますので、休業手当を支払う必要があると考えられます。
   もっとも、医師から休業が必要との診断が出ている場合や帰国者・接触者相談センターへの問い合わせが呼びかけられている状態の症状であれば、もはや「業務可能な状態」とはいえないため、使用者の自主判断による休業には該当しないと考えられます。
   その場合には、休業手当を支払う必要はありません。

Q3 従業員が発熱などの症状があるとして、自主的に休んでいます。この従業員に対して休業手当の支払う必要はありますか。

A  従業員が自主的に休む場合は、通常の病欠と同様に取り扱って構いません。そのため、休業手当を支払う必要はありません。

Q4 新型コロナウイルス対策として、政府や自治体の要請に基づいて事業所を閉鎖しました。閉鎖した事業所の従業員に対して休業手当を支払う必要はありますか。

A  政府等の要請に基づく事業所の閉鎖は、一般的に「使用者の責に帰すべき事由による休業」には該当しないと考えられるため、原則として、休業手当を支払う必要はありません。もっとも、テレワーク(在宅勤務)などの方法により従業員を業務に従事させることができるにもかかわらず、休業させる場合には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当すると考えられ、休業手当を支払う必要があると考えられます。

Q5 テレワーク(在宅勤務を含む)を導入することにしましたが、テレワーク中も労働時間を管理する必要はあるのでしょうか。また、労働時間の管理が必要な場合にはどのように管理すればよいでしょうか。

A  使用者には、労働時間を適正に把握する義務があり(労働基準法第108条及び労働基準法施行規則第54条)、この義務はテレワークであっても変わりません。
   確かに、自宅等でのテレワークの場合、労働時間の把握は難しくはなりますが、メール等での報告によって始業・終業時刻を管理する方法やパソコンの使用時間の記録を照合するなどの方法により労働時間の管理することができます。
なお、所定労働時間又は業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす「事業場外みなし労働時間制」(労働基準法38条の2)を採用する場合には、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難であることが必要です。通信手段の発達により従業員に対して容易に業務の指示等を行うことができますので、事業場外みなし労働時間制の適用が認められる場合は限られていると考えられます。

Q6 テレワークの費用は会社が負担するのでしょうか。

A  テレワークに関わる費用負担区分については、テレワークを導入する前に、通信費・水道光熱費などの負担について明確なルールをつくることが望ましいです。
   労働基準法第89条第1項第5号では、「労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項を就業規則に定めなければならない。」と規定されていますので、必要に応じて就業規則の変更をしなければなりません。

Q7 新型コロナウイルスの影響で事業の売上が激減しました。今後の見通しは明るくないため、この機会に従業員を解雇したいのですが、解雇できますか。

A  使用者側の理由に基づいて従業員を解雇する場合には、①人員削減の必要性、②解雇回避努力を尽くしたこと、③被解雇者選定の客観性・合理性、④解雇に至る手続きの妥当性の4つ点を総合的に考慮して判断されると解されています。
   そのため、単に、今後の見通しが明るくないという理由のみでは従業員を解雇することはできませんので、解雇については慎重に検討する必要があります。
   なお、雇用調整助成金の特例措置を受け、雇用の維持を図ることも検討すべきと考えます。

Q8 雇用調整助成金の特例措置について、簡単に教えてください。

A  雇用調整助成金とは、景気変動などによって、会社の業績に悪影響があった場合に、会社側が行った雇用調整(休業・教育訓練・出向などの措置)に対して助成金を支給することにより、従業員の雇止めや解雇を防ぐための制度です。
   今回の特例措置は、新型コロナウイルスの影響により、業績が悪化したなどの理由によって従業員を休業させた場合に、支払った休業手当の一部を助成するものです。平時の雇用調整助成金よりも支給要件が緩和され、また、助成率も高くなっています。
   例えば、中小企業において従業員の解雇を行わない場合、助成率は10分の9となります(ただし、従業員1名1日あたり8,330円が上限となります)。

Q9 新型コロナウイルスの影響で、経営が悪化しています。当社は従業員に対して毎年6月と12月に賞与を支給していますが、賞与を減額または不支給とすることはできますか。

A  賞与は、毎月の給与のように、必ず支給しなければならないものではなく、支給要件、算定方法等は、使用者と労働者との間で自由に決めることができるのが原則です。
   そのため、賞与の支給要件、算定方法等が就業規則や労働協約等に特に定められていない場合には、経営の悪化を理由に賞与を減額または不支給とすることはできます。
   もっとも、就業規則や労働協約等で賞与の支給が確定しているような場合には、一方的に賞与を減額または不支給とすることはできません。
   例えば、就業規則で「賞与は、会社の業績、個人の勤務成績、勤怠等を総合的に勘案し、各人ごとに決定する。会社の業績の低下等やむを得ない場合には支給しないこともある。」などと規定している場合には、会社の経営が悪化した場合には、賞与を減額または不支給とすることができると考えられます。他方、就業規則で「賞与は、毎年6月と12月に、基本給の2ヶ月分ずつを支払う。」などと規定している場合には、賞与の支給が確定しているといえ、一方的に賞与の減額または不支給とすることはできません。



投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office

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