代表弁護士ブログ

2020年6月 3日 水曜日

仮差押え(債権回収)について

仮差押えとは
仮差押えとは、裁判所の命令により、債務者がその財産を仮に差し押さえることで、債務者が勝手に処分することができないようにする手続きです。債権者は、裁判所に仮差押申立書を提出し、仮差押えの決定をもらう必要があります。裁判所による仮差押えの決定書は、債務者や第三債務者に送達され、債務者や第三債務者は、仮差押えされた財産を勝手に処分することができなくなります。

仮差押えの要件
仮差押えは、金銭の支払いを目的とする債権について、強制執行をすることができなくなる恐れがあるとき、又は強制執行をするのに著しい困難を生じる恐れがあるときに発することができるとされています(民事保全法20条1項)。従って、債権者の有する債権は金銭債権であることが必要です。また、仮差押えの決定を得るためには、申立人である債権者は自己の債権があることを裁判所に疎明しなければなりません。債権者は確定判決や公正証書を有している必要はありませんが、通常の場合契約書などで債権の存在をある程度証明できることが必要となります。仮差押命令は、特定の物に対して発しなければならないとされていますので、銀行預金、賃金債権、不動産、自動車など、仮差押えの対象となる物(債務者の有するもの)を特定して行うことが必要です(民事保全法21条)。

仮差押えによる財産処分の禁止
仮差押えを行う場合、債務者は、仮に差し押さえられた財産の処分が禁じられてしまいます。債権者からすれば、将来確定判決を得て強制執行する際に債権の引当となる財産が確保されることになります。

仮差押えによる債務者への心理的圧力
不動産に対する仮差押えがなされる場合、不動産の登記簿謄本に仮差押えがなされた旨の記載がなされることになります。銀行預金が仮に差し押さえられた場合、第三債務者である金融機関に対して裁判所から仮差押え決定書が通知されますので、金融機関がその預金者に仮差押えがなされたことを知ることができ、債務者の信用は著しく害されてしまうことになります。債務者としては、仮差押えのなされた状態をいつまでも放置しておくことがでませんので、債務者の側から債権者との和解を提案してくることが多くあります。

仮差押えの手続き(密行性の原則)
仮差押えは裁判所に仮差押え申立書を提出して行うことになりますが、仮差押えの申し立てがあることを債務者が知ってしまうと、債務者は仮差押決定が出る前にその財産を処分してしまう可能性があります。従って、仮差押えには密行性の原則が働き、債務者に知らせないうちに決定を出してもらう必要があります。そこで通常の訴訟手続きなどと異なり、仮差押えの決定手続きの中では債務者への呼び出しや債務者の審尋は行われません。

仮差押えを用いた債権回収
当事務所の顧問先が取引相手に1000万円を貸し付けて金銭貸付証書を作成していたにもかかわらず、債務の支払いがなされなかった件で、顧問先からの依頼により債務者の自宅に対して仮差押えの申し立てを行い、仮差押え決定を得ることができました。自宅への仮差押えがなされたことで、債務者は自宅を取られてしまうのではないかと心理的に強力なプレッシャーを受けることになり、債務者の側から1000万円の全額の支払いを行うので、仮差押えを取り下げてほしいとの提案があり、債権全額の回収を図ることができました。

仮差押え申し立てに係る担保提供
仮差押え決定の手続きでは、保全すべき権利及び保全の必要性について疎明しなければならないとされています(民事保全法13条2項)。通常の裁判の場合、証拠の優越と言えるレベルの証明が必要であるのに対し、保全処分では疎明(一応確からしいと言える程度に証拠を挙げること)で足りるとされています。従って、申立人の債権が本当に存在するかどうか必ずしも確証を持てない中で決定を出すことになりますので、場合によっては債権が存在していないなどの理由によって債務者に対して大きな損害が生じてしまう可能性があります。そこで、裁判所は仮差押えの決定を出す際には、申立人に対して担保を立てさせることを条件とするのが通常です(民事保全法14条)。担保金の額は請求額の10%から15%とされています。申立人が供託証書の写しを裁判所に提出し、担保金の供託を行ったことを裁判所に示した段階で、仮差押え決定がなされます。当事務所でも顧問先の依頼者からの依頼により、債務者が有する上場会社の株式を仮差押えするのに数千万円の担保を供託したことがあります。

供託金の還付
仮差押の際に供託した担保金は、確定判決、和解調書、相手方の同意書を得るまで還付されません。確定判決を得るまでに数年間を要する場合には、その間供託した金銭は拘束されたままとなります。仮差押えを行う場合には、担保金が長期にわたり拘束されてしまうことに常に注意しておくことが重要です。また、裁判上の和解を行う場合には、仮差押えの取り下げとともに、(債務者の側で)供託金の還付について同意する旨を和解調書の中に記載しておくことが重要になります。

差押命令、転付命令
仮差押えを行った債権者が本案の訴訟において勝訴した場合、勝訴判決を債務名義として仮差押えした財産に対して本差押さえを行うことができます。銀行預金であれば、その後転付命令や取立命令を得て、債権者は金融機関からの預金の払い戻しを受けて自己の債権に充当することができます。また、本案の勝訴判決を供託所に提示することで、担保金の還付を受けることもできます。


投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office

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