代表弁護士ブログ

2020年6月 4日 木曜日

違法行為差し止め仮処分申立て(会社関係訴訟)

事案の概要
X会社の株式の20パーセントをA会社が所有している状況で、X会社からB会社に20億円の貸し付けを行い、B会社がA会社からX会社の株式20%を20億円で取得しようとしている場合に、裁判所に対して株式譲渡禁止の仮処分の申し立てを行い、裁判所から株式譲渡禁止の仮処分決定を得ました。

支配権をめぐる争い
支配権をめぐる争いが生じた場合、どちらのグループがより多くの株式を取得するかがポイントとなることがあります。より多くの株式を有するグループは株主総会において自らの候補者を取締役に選任することができ、取締役の多数を通じて会社を支配することができるからです。ある程度規模の大きな会社の場合、株式の評価額も大きくなりますので、株式の移転を行うためには対価となる現金の準備を行う必要があります。この現金の準備ができないと経営支配権をめぐる争いにおいて敗れてしまうことになります。そこで、会社の資金を一旦自分たちの支配下にある会社に貸付け、その資金で株式を買い取ることを検討することがあります。しかしながら、このような資金の貸し付けや株式の移動は、経営者が自らの利益を図るために会社の資金を利用して行うもので、違法な取引と考えられます。

取締役の違法行為の差止請求
6か月前から引き続き株式を有する株主は、取締役が株式会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をする恐れがある場合において、当該行為によって株式会社に著しい損害が生じる恐れがあるときは、当該取締役に対し、当該行為を辞めることを請求することができるとされています(会社法360条1項)。また、株式の譲渡制限のある公開会社でない株式会社については、6か月前から引き続きという要件は課せられませんので、当該請求を行う時点で株式会社の株主であれば請求を行うことができます。公開会社の場合、株主に制限を加えないと、誰でも少しだけの株式を取得して直ちに差止請求ができることになりますが、このような濫用的権利行使を制限するために6か月以上株式を有する株主に限り差止請求ができるとされています。反対に、株式の譲渡制限のある閉鎖会社の場合、株式取得に取締役会の同意を要しますので、濫用的差止請求を行う目的のみで株式を取得することは考えられませんので、6か月の期間の要件はかけられていません。

株式会社に著しい損害が生じる恐れがあるとき
会社の業務執行は取締役に委任されていますので、取締役の行為をいちいち指し止めるのは適切ではなく、「著しい損害」が生じる場合にのみ、取締役の行為を差止めることができるとされています。取締役が任務を怠ったことにより会社に損害が生じた場合は、役員に対する損害賠償請求で損害の回復を行うことができます(423条1項)。しかし、著しい損害が生じる可能性がある場合にまで、損害が生じてのみ賠償請求できるとするのでは遅すぎるため、「損害が生じる恐れがあるとき」に、違法行為を事前に差止めることができるようにしたのが本条です。

差止請求訴訟
違法行為を行おうとする取締役の行為の差止請求は会社に対して書面を提出することで請求することができます。会社に対する違法行為差止め請求の書面は、通常弁護士などの専門家に依頼して行うことが多いと思われます。株主から違法行為差止請求の書面が送付されたにもかかわらず取締役が自ら違法行為を取りやめない場合は、当該株主は、裁判所の命令によって違法行為を差止めさせるため、裁判所に対して違法行為の差止請求訴訟を提起することができます。但し、通常訴訟においては勝訴判決が出るまで取締役を拘束する効力が生じないため、訴訟によって争われている間に違法行為が行われてしまい、既成事実が作られてしまうという可能性があります。そこで、株主としてはより迅速に差止めの効力が生じる法的手段を検討する必要が出てきます。

取締役の違法行為差止仮処分
取締役が違法行為をまさに行おうとしている場合、株主が取締役による違法行為を直ちに取りやめさせる方法として、取締役による違法行為の差止を求める仮処分の申し立てを行うことができます(民事保全法23条2項)。保全命令の申し立てについては、被保全権利と保全の必要性についての疎明が必要になります(民事保全法13条1項)。上記の通り、株主は一定の要件の下で取締役の違法行為の差止を請求することができます(会社法360条1項、2項)。株主が差止を求めることができるこの権利が被保全権利となります。従って、仮処分の申し立てを行う株主としては、会社法360条1項、2項の要件を満たしていることを疎明することが必要になります。また、保全の必要性については、申立人(債権者)に著しい損害が生じる急迫の危険があることを疎明することが必要になります。取締役が株主に著しい損害を加えることになる違法行為をいまにも行おうとしていることを疎明することになります。違法な行為についての決議を行おうとする株主総会の招集通知の写しや、当該取引の契約書案、企画書などが疎明資料となります。書面による疎明資料の入手が難しい場合は関係者からの陳述書を提出することで疎明を行うことになります。被保全権利と保全の必要性についての疎明ができた段階で裁判所は差止の仮処分決定を出すことになります。

会社の資金を用いて会社の株式を取得する行為
本件では、会社の資金を用いて会社の株式を取得しようとするものであり、実質上自己株式の取得に該当するものです。しかも、本件での取締役は自己の支配権を確保する目的の達成のため、会社の資金を自分がコントロールしている会社に貸し付けようとしています。本件では、これらの行為を裁判所が認定してくれ、A会社に対して株式譲渡禁止の仮処分の決定をいただくことができました。本件では、申立人は、A会社の株主ですがX会社の直接の株主ではないことから、X会社による資金の貸し付けを止めるのではなく、A会社による株式譲渡を違法であるとして、これを禁止する仮処分の申し立てを行うことになりました。

仮処分の効果
取締役の違法行為を差止めるためには仮処分は非常に効果的な手段になります。会社の取締役会が反対派グループに支配されている状況で、本件のような株式の移転を認める場合には、少数派の株主によって過半数の株式を取得されてしまう可能性もあります。一族の内紛において支配権をめぐる紛争が生じた場合、持株会社の支配権や持株会社の有している対象会社の株式をどちらのグループが獲得できるかによって勝敗が決してしまう場合が多くあります。そこで、現在取締役会の過半数を占めるグループ、あるいは現在代表取締役に就任しているグループは、持株会社の株式又は持株会社が有している対象会社の株式をどのようにして自己の支配下に移すかを考えることになります。このような中で、取締役の権限を越えた違法行為がなされる可能性があります。相手方グループとしては、処分禁止の仮処分など裁判上の手続きを活用することで、支配権の変動を生じさせるような株式の移動が生じないよう断固たる措置を講じる必要が出てきます。

栗林総合法律事務所のサービス内容
栗林総合法律事務所では、取締役による違法行為がなされようとする場合、違法行為の差止請求や仮処分を活用することで、取締役による違法行為を阻止するための申し立てを扱っています。また、本件のような支配権をめぐる紛争では、裁判外での多数派工作も必要であり、また自分たちのグループの正当性を基礎づける事実の主張も必要となります。栗林総合法律事務所では、裁判上の手続きだけでなく、株主総会の開催、委任状の勧誘、関係者への通知・説得、違法行為についての刑事告訴等様々な手段を通じて貴社の立場をサポートしていきます。



投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office

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