代表弁護士ブログ

2020年6月 4日 木曜日

予防法務(労務関係規則の作成)

予防法務の考え方
従前、労働法務については、労使対立構造を前提にして、経営者と従業員の立場をどのように調整していくかを中心として考えられていました。しかし現代では階級闘争の考えはなくなり、とくに長引く不況の中でどのようにして会社の存続を図っていくのかが重視されるようになっています。対立構造も労働者と経営者というよりも、正社員と非正規社員の待遇の違いをどのように調整していくのかが重要となっています。世の中全体を見ても、官庁からの指導はだんだんとなくなり、各企業が法律に基づき自己責任で判断を行い、紛争があった場合には、裁判所における司法によって事後的に解決する(法の支配)という方向に代わってきています。各企業は、予防私法の考え方に立ち、会社規則その他内部で作成された規範をもとに企業経営を行っていく体制に変化していかなければなりません。予防法務とは、あらかじめ契約書や規則を作成することによって当事者の権利義務関係を明確化し、紛争の発生を避けるという考え方です。貴社の経営も予防法務の立場に立ったものに変化して行く必要があります。

就業規則の作成・改定
就業規則は労務関係に関する会社の憲法(あるいはコレド)のようなものです。就業規則には、労働基準法により絶対に記載しなければならない絶対的記載事項と、会社の判断により記載しても記載しなくてもいい相対的記載事項があります。労働基準法の求める絶対的記載事項には、①始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、②賃金の決定、計算及び支払い方法、賃金の締め切り及び支払い時期、昇給に関する事項、③退職に関する事項(解雇の事由を含む)があります。すなわち、労働者が何時間働いて、どれだけの報酬をもらえるのかということは就業規則の根幹にあるものであり、会社の経営者としてはこれをしっかり守っていく必要があります。また、近時では、労働者の側が自分たちの権利を主張する一方で、就労時間内における労務の提供(単に一定の時間会社にいるだけでなく、その中でしっかりとした成果を残せるよう職務に専念する義務)を果たしているのかが懸念されるところもあります。解雇事由を含め、就業規則の絶対的記載事項にわたる部分は労使の約束の根幹になる部分ですので、この点をしっかり理解しておく必要があります。

賃金規定などの作成
賃金規定の内容をどのようにするかは会社によって千差万別と言えます。会社の規模や経営状態、業務内容等賃金規定の背景が著しく異なるためです。しかし、会社の経営がある程度安定し、新人社員の採用を含めて将来への発展を考える場合、賃金規定を整備し、従業員が安心して働ける体制を作ることも重要と考えられます。もちろん、会社の経営が不安定な状況では、賃金規定が経営の支障になり、会社の倒産を招いてしまうこともあります。従って賃金規定の策定は慎重に行う必要もあります。これらの要素も考慮しながら、会社が現在どのような経営上の位置にあり、将来の発展の土台をどのように整備していくかを考えた場合、賃金規定の整備は重要となってきます。社宅規定、慶弔規定、旅費交通費規定などは、従業員の福利厚生的意味合いだけでなく、資金の管理がなし崩し的ではなく、しっかりとしてルールにより管理されているという企業風土を作る意味でも重要となります。これらの規定についても経営の支障にならない範囲で企業実態に合ったものを作成していく必要があると思われます。

育児休業規定、介護休業規定
政府では、働き方改革も含め、育児休業・介護休業の取得を奨励しています。これまでに日本の会社員が家族との時間をほとんどとることなく会社に縛られていたことを考えると、これからの時代においてそれぞれの社員が家族との関係をしっかりと構築することは重要と思われます。一方育児や介護については本来国が制度として行うべきもので、それを企業の側に押し付けているのではないかという疑念もないわけではありません。しかしながら、国民の総体的幸せを考えた場合、労働者の精神的安定の面からも、家庭とのバランスを保った働き方が重要になることは間違いないと言えます。厚生労働省が作成する育児休業規定・介護休業規定のモデルはあまりにも難解過ぎて普通の企業ではそのまま使えないと思われます。各企業がそれぞれの企業の実態に即して制度を構築し、規則に落とし込んでいく必要があります。

セクハラ規定・パワハラ規定
セクハラやパワハラが違法と認識されて数年がたち、現在では社会の中にしっかりと定着していると言えます。会社がセクハラ規定やパワハラ規定を導入しだしたのもつい数年前からです。どの企業もまだ十分な経験がない中での制度構築となります。今日の社会においては、セクハラやパワハラが会社内部の秩序として存在することは間違いない事実ですので、これを会社の規範としてルールの中にしっかり取り込んでいくことが重要と考えられます。

会社規則の策定の意味
会社の規則は、会社の運営がその規則に則って行われることを従業員に示すものであり、経営者もその規則に拘束されます。会社の規則の存在により、会社の経営が人による恣意的支配によるものではなく、各自が認める公平なルールによるものであることを認識し、安心して企業生活に取り組むことができることになります。会社規則の作成は、事前に規範を提示して紛争の発生を防止するとともに、会社の文化(モラル)の中心となるものであり、会社を形作る重要な一部であると考えられます。


投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office

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