代表弁護士ブログ

2020年6月 4日 木曜日

労働審判の申し立てがなされた時の対応

労働審判とは
労働審判手続きとは平成18年4月から始まった労働事件専門の紛争解決手続きです。裁判に比べて労使間の紛争を迅速に解決します。対象となる事件は労務に関する事件に限定されますので、ほとんどの事件が未払残業代支払請求事件か解雇無効確認の請求になります。労働審判委員会は、労働審判官(裁判官)のほか、労働者代表の労働審判員、会社代表の労働審判員の3名で構成されます。審判手続きは裁判所の中で行われますが、通常の法廷とは異なる会議室のような場所で行われます。手続き的には、調停に近く、双方の主張を聞きながら労働審判官が妥当な解決案を提示し、当事者の了解を得る方向で審理が進められます。労働審判について異議のある当事者は異議申し立てを行うことができ、事件は通常訴訟に移行することになります。

迅速な紛争解決手続き
労働審判の特色は迅速に紛争を解決するところにあります。労働審判の申し立てがあった場合、通常40日以内に第1回の審判期日が指定され、申し立ての相手方である会社側は第1回期日前までに答弁書と証拠を提出することが求められます。40日と言っても実際には第1回期日の1週間前くらいまでに答弁書と証拠を提出するよう求められますので、準備の期間は最大でも30日程度に限られます。実際には極めて限られた時間ですので、会社側の弁護士としては、迅速に事案の概要を把握し、関係者からのヒアリングや証拠の検討、事件に関係する関係者の陳述書の作成などを行っていかなければなりません。第1回の期日において如何に説得力のある主張や説明ができるかが結果に対して大きな影響を与えることになります。事件の全体像を把握し、証拠による肉付けをしながら、しっかりとしたストーリーを示せるかどうかが重要となります。

第1回期日
第1回期日では、審判委員から双方の代理人に対して色々な質問がなされることが多く、通常の訴訟の場合と異なり、代理人はできるだけその場で回答することが求められます。この点で、第1回の期日には会社の代表者や事案の内容をよく把握している担当者も同席するのが好ましいと思われます。第1回期日では、双方に対して追加でどのような資料や証拠を提出するかについての指示がなされます。またあらかたの和解案の方向性が示されることもあります。弁護士としては、事前に事案の内容を把握し、労働審判官(裁判官)からの質問に適切に回答できるよう準備しておく必要があります。審判官(裁判官)からの質問内容はほとんどが事実に関連する質問ですので、事前にどれだけ事実経過を整理して理解し記憶しておくことができるかが重要となります。

第2回期日
第2回期日では、追加で提出された証拠の確認を行うとともに、審判委員から双方の当事者(代理人)に対して和解案が示されることになります。審判委員からはよく検討するようにということで示されますが、実際には強制に近く、和解案に合意するかどうかの判断を迫られるのに近いと考えられます。但し、ほとんどの事件では、一方当事者の意見のみに基づく一方的な和解案が出されることは少なく、双方の立場に配慮した和解案が出されることが多いと思われます。例えば解雇無効確認の事案では、解雇の無効は認められないが、会社は従業員に対して3か月から1年の給与に相当する和解金を支払うよう言われることがあります。当職らの経験では、和解金の金額としては給与の3月から6月の額に相当する場合が多く、12か月に近い和解金が提示された場合は、かなり申立人側に有利な和解提案であると考えています。その後に起こる訴訟を考えた場合、3月から6月の給料に相当する和解金の場合は会社側としては和解に応じたほうが好ましいと思われます。

第3回期日
第3回期日は双方が労働審判委員会の提示した和解案に同意することを確認するだけの手続きとなります。実際には、全体の8割近くが和解により解決しています。労働審判手続きが導入されたことで紛争の迅速な解決が図られるようになり、弁護士を含めた関係者の評価は極めて高くなっています。但し、全国的に見た場合、まだ労働審判の手続きが導入されていない裁判所のほうが多く、今後私法予算も検討しながら、地方での労働審判の定着が図られていくことになると思われます。

審判
3回までの労働審判期日に和解が成立しない場合は、労働審判という審判(決定)がなされることになります。審判に対して双方の当事者から不服がなければそのまま審判内容が確定し、当事者は審判の内容に従って金銭の支払いなどを行うことになります。審判に対して不服のある当事者がいる場合は、労働審判に対する異議申し立てを行い、事件は通常訴訟に移行します。当事務所で扱った事件の中でも当事者からの異議申し立てにより1件だけ通常訴訟に移行した事件があります。未払賃金支払請求訴訟に関するものですが、訴訟費用(弁護士費用を含む)を考えた場合、訴訟への移行が適切だったか疑念があります。当事者の思い入れが強い場合は訴訟による解決にならざるを得ないことになります。

労働審判における弁護士費用
労働審判は申し立てから70日程度で終了するのに対し、訴訟の場合1年から1年半以上の期間を要し、その間証拠の提出、検証、反論などに多くの時間を取られることになります。
弁護士の立場からしても手続きの準備に要する時間や負担は労働審判の3倍から5倍程度になることが多くあります。弁護士費用についても労働審判は着手金と成功報酬を合わせて80万円から100万円程度になることが多いのに対し、労働関係訴訟については着手金と成功報酬を合わせて100万円から300万円程度の報酬を要することになります。この点からしても、労働審判は費用的にも安く、労働事件の処理には向いていると考えられます。

労働審判における弁護士の活用
労働審判においては極めて限られた時間内で証拠を検討し、主張の方向性を定めて答弁書を作成していかなければなりません。会社の担当者だけで対応するのは極めて困難ですので、どうしても弁護士によるサポートが重要になると考えられます。会社の担当者としては、労働審判の申立書を受領した後、できるだけ早く法律事務所に相談することが重要です。事件を担当する法律事務所としては、着手が遅くなるほど準備の時間が少なくなり、準備に制約が課されてしまうからです。栗林総合法律事務所は、解雇無効や未払残業代支払い請求事件において労働審判や労働訴訟を多く扱った経験がありますので、労働審判についての代理が必要な場合はご連絡ください。


投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office

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