代表弁護士ブログ

2020年7月 6日 月曜日

取締役の責任免除

取締役の善管注意義務
株式会社と役員及び会計監査人との関係は、委任関係となり(会社法330条)、委任に関する民法の規定が適用になります。従って、株式会社の役員は、会社に対して、民法の規定により善管注意義務を負うことになります(民法644条)。職務上の過失によって会社に損害を与えた場合は、善管注意義務違反として会社に対する損害賠償責任を負います。例えば、会社の金銭を十分な担保を取ることなく第三者に貸付け、回収不能となって会社に損害を与えた場合は、善管注意義務に違反したと考えられますので、当該貸し付けに賛成した取締役は会社に対して損害賠償責任を負うことになります。

取締役の忠実義務
取締役は、法令及び定款の定め並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のために忠実にその職務を行わなければならないとされています(会社法355条)。いわゆる忠実義務の規定です。会社の利益と個人の利益が相反する場合に、会社の利益を犠牲にして自分や第三者の利益を図ってはいけないという義務です。

役員の損害賠償責任
取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人は、その任務を怠ったときは会社に対して損害賠償責任を負うことになります(会社法423条1項)。取締役が善管注意義務や忠実義務に違反した場合は民法の規定により会社に対して損害賠償責任を負いますが、会社法の規定は任務の懈怠により役員が会社に対して責任を負うことを明確にしたものです。

経営判断の原則
株式会社の役員の責任を判断するについては、経営判断の原則が適用になります。経営判断が適切であったかどうかは、次の基準に基づき判断されます。
① 経営判断の事項について取締役が利害関係をもっていないこと
② 経営判断の事項について、当該状況の下で、適切であると合理的に取締役が信じる範囲で十分に情報を得ていること
③ 当該経営判断は会社の利益になると取締役が理性的に信じたこと
④ 法令違反の経営判断ではないこと

会社に対する損害賠償責任の免除
株式会社の役員の会社に対する損害賠償責任については、総株主の同意によって免除することができます(会社法424条)。ある程度規模の小さな会社であれば、株主数も限られていますので、全株主から同意を得て責任を免除することもあると思われます。

責任の一部免除
役員が職務執行について善意でかつ重過失のない時は、株主総会の決議により、最低責任限度額を超える額について責任を免除することができます(会社法425条1項)。この場合、取締役は、責任免除の決議を行う株主総会において、「責任の原因となった事実及び賠償の責任を負う額」、「免除することができる額の限度及びその算定の根拠」、「責任を免除すべき理由及び免除額」について説明をすることが必要です。最低責任限度額については次のようになっています。
① 代表取締役・代表執行役 年間報酬額の6倍
② 代表取締役以外の取締役・代表執行役以外の執行役  年間報酬額の4倍
③ その他の取締役、会計参与、監査役、会計監査人  年間報酬額の2倍

取締役等による免除に関する定款の定め
監査役設置会社などについては、当該役員が職務を行うについて善意でかつ重大な過失がない場合は、責任の原因となった事実の内容、当該役員等の職務の執行の状況その他の事情を勘案して特に必要と認めるときは、最低責任限度額を超える部分について、取締役の過半数の同意によって免除することができる旨を定款で定めることができます(会社法426条1項)。

責任限定契約
業務執行取締役以外の取締役、会計参与、監査役、会計監査人の会社に対する責任については、当該役員が職務を行うについて善意でかつ重大な過失がない場合は定款に定めた額の範囲内であらかじめ株式会社が定めた額と最低責任限度額のいずれか高い額を限度とする旨の契約を締結することができる旨を定めることができるとされています(会社法427条1項)。いわゆる責任限定契約です。

役員等賠償責任保険(D&O保険)
会社の役員が会社に対して損害賠償責任を負う場合に、その損害を役員に代わって会社に支払ってもらう保険です。役員が多額の損害を個人で追う場合、役員の責任が大きくなりすぎて役員になり手がいなくなってしまいます。そこで、役員の責任を補填する保険がD&O保険となります。D&R保険の保険料を会社が負担することも可能となっています。



投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office

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