• 2020.09.01
  • 個人の法律相談

刑事事件における弁護活動

刑事事件の手続き

逮捕・検察官への送致

現行犯逮捕、令状逮捕の場合、警察は逮捕後48時間以内に被疑者の身柄を検察官に送致しなければなりません。その間は、被疑者は警察署内の留置場に拘束されたまま、警察官は事件についての事情聴取を行います。

勾留と勾留取消請求

検察官は24時間以内に裁判所に対して、勾留請求を行うか、被疑者の身柄を解放しなければならないとされています。検察官による勾留請求がされると、事件を担当する裁判官が勾留を認めるかどうか判断します。勾留の基準は、被疑者が定まった住所を持っているかどうか、証拠隠滅や逃亡の恐れがあるかどうかによって決められます。勾留決定がなされた場合、通常10日間、拘置所(または警察署の留置所である代用監獄)に勾留されることになります。やむを得ない場合には検察官から勾留延長請求され、裁判官が延長する必要があると判断した場合には、さらに約10日間勾留が延長されることがあります。検察官から勾留請求が出された場合、弁護人としては勾留請求却下の申し立てを行い、勾留が決定された後は勾留決定を争う準抗告や勾留取消請求を行うことができます。

起訴

勾留期間が満了する前に検察官が、公判請求するか、略式命令を請求するか、不起訴にするかを決定します。検察官が特定の事件について裁判所に審判を求めることを起訴といい、公判請求と略式命令請求がこれに当たります。100万円以下の罰金・科料に相当する軽微な事件について被疑者が略式起訴に異議がなければ、家庭裁判所が公判手続を経ることなく略式起訴が行なわれます。簡易裁判所が捜査の結果をもとに罰金・科料の金額を決めます。略式起訴で決められた金額を指定された期日までに罰金や科料を納めるように裁判所が下す命令を略式命令と言います。略式命令の請求は検察官によって起訴と同時になされます。

起訴後の勾留と保釈請求

勾留中に起訴された場合には起訴後も勾留が続くことが多くあります。起訴後の勾留は被告人勾留と言われます。被告人勾留の場合には期限がなく、裁判が終了するまで継続します。弁護人は起訴後に勾留する必要がないと考えられる場合は保釈の請求を行うことができます。保釈を行うかどうかは裁判所の決定によって定められます。裁判所は保釈を認める場合は、保釈保証金を納付することを条件とするのが一般的です。一方、被疑者が罪を認めている場合や罪証隠滅の恐れがない場合には、逮捕や勾留などの身体的な拘束をされることなく、刑事手続きが行われます。被告人が拘留されないで起訴される場合を在宅事件と呼ぶことがあります。在宅事件の場合は、まず警察で捜査が開始され、捜査がある程度されると検察に送検され、検察官がさらに事情聴取や捜査を行い、最後に検察で公判請求するか、略式裁判を請求するか、不起訴にするかを決定します。

裁判

公判請求を受けた裁判所は公開の法廷で裁判を開きます。裁判ではまず、人定質問、起訴状の朗読、黙秘権などの権利の告知、起訴状に書かれている犯罪事実を認めるかどうかの罪状認否などを行います。次に,検察官と弁護人が提出し採用された証拠について証拠調べが行われます。検察官は、証拠や証人によって被告人が有罪であることを立証し、弁護人は被告人にとって有利な事情を立証することになります。被告人に対しても質問が行われます。証拠調べが終わると、検察側と弁護側から意見陳述が行われ、検察官が被告人に対する求刑を行います。判決を言い渡すための裁判で判決が言い渡されます。執行猶予付判決だった場合にはそのまま身柄は釈放されます。判決に不服がある場合には控訴することができ、判決の言い渡し日から14日以内に控訴を申し立てることができます。

勾留に関する弁護活動

検察官が勾留決定した場合、拘置所に勾留されることになりますので、毎日の仕事を始めとして私生活に重大なダメージを受けることになります。万一犯罪の嫌疑を受けて逮捕された場合には、検察官による勾留請求がなされるかどうか、裁判所が勾留決定を出すかどうかは、極めて大きな分かれ目となります。当事務所では、勾留請求がなされるまでの最大72時間を極めて重要な時間ととらえ、身柄の釈放がなされるよう、被疑者との面会、家族(または職場の上司)との連絡、身元引受人の確保、被害者との示談交渉、関係者からの聞き取り、その他証拠の収集、検察官への上申書の提出等の業務を行います。万一検察官から裁判所に勾留請求がなされた場合には、身柄の釈放を目指して、勾留請求が却下されるよう裁判所に要求していきます。具体的には、裁判所に対する上申書を提出するとともに、裁判官に面談し、勾留の必要がないことを説明します。万一、裁判所が勾留決定を行った場合であっても、身柄を拘束される理由やその必要がない場合には、勾留決定に対する準抗告や勾留取消請求を行います。

起訴防止の弁護活動

起訴されていない状態にある場合、起訴されるか否かはたいへん重要なポイントになります。起訴されなければ当然裁判にもかかりませんし、前科にもなりません。起訴を未然に防ぐことはもっとも望ましい事件の解決方法の一つだといえます。当事務所においては、起訴前において、被害者との示談、身元引受人の確保、検察官との面会などにより、不起訴に向けた環境を整え、起訴を未然に防ぐための弁護活動を行います。起訴されない場合として、嫌疑が不十分である場合や、犯罪の嫌疑はあっても、起訴を猶予するのが相当であると考えられる場合などがあります。

起訴後の弁護活動(保釈請求)

弁護人に選任された後、被告人が身柄を拘束されている場合は、まず被告人と接見を行い、事件に関する事情を伺います。身柄を拘束されていない場合は、当事務所に来所いただき、事情を伺うことになります。事情を伺った上、今後の裁判手続等に関して具体的な説明を行います。検察側が裁判で犯罪事実等を立証するために裁判所に提出する予定の資料を取得します。検察側の資料を検討した上、裁判に向けた基本的な方針を決定します。起訴後は、被告人の身柄拘束に関し、保釈請求をすることができます。保釈が認められる場合、保釈金が必要となります。この保釈金の額は数百万円にのぼることもありますが、保証協会から保釈金に必要な額の大半を借り入れることができる場合もあります。当事務所では、被告人の早期身柄解放に向け、相談に応じて積極的に保釈請求を行います。

裁判での弁護活動

弁護側として立証するべき事実に関して適切な証拠資料を収集し、裁判における弁護側の主張(弁論要旨)を書面化します。裁判に提出する証拠には、客観的な証拠のみではなく、証人による証言や被害者との示談なども含まれます。当事務所では、証人との事前の打ち合わせや被害者との示談交渉の代理も行います。裁判の前に、検察及び裁判所と裁判の進行方針等に関して事前の打ち合わせを行います。この打ち合わせにより、裁判の円滑な進行が促進されます。裁判で争われる争点は大きく分けて二つ考えられます。一つは犯罪の成否です。すなわち、起訴された内容の犯罪があったのかどうか、また、被告人が行った犯罪であるかどうかという争点です。もう一つは情状事実です。すなわち、犯罪を行ったことを前提として、量刑の軽重に影響を与える事実に関する争点です。被告人が犯罪を行ったことを認める場合、通常、裁判は次に説明する情状事実に関する問題のみに関心が置かれ、審理期間が比較的短いものとなります。当事務所では、以上の二つの争点に関して、質の高い弁護活動を行えるよう、事件に関する十分な事情聴取・検討証拠収集を行った上裁判に臨んでいます。

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