代表弁護士ブログ

2020年7月17日 金曜日

アメリカ人の遺産相続

アメリカ人を被相続人とする遺産相続
アメリカ人のご主人が亡くなり、日本国籍の奥様と日本国籍のお子様がアメリカ人のご主人の相続財産を相続する場合があります。相続財産が日本とアメリカにある場合の手続きについて検討します。

家事審判事件の国際裁判管轄について
相続に関する審判事件の管轄については、家事事件手続法3条の11第1項に規定があり、次の場合に日本の裁判所が管轄権を有するとしています。
1 相続開始の時における被相続人の住所が日本国内にあるとき
2 住所がない場合又は住所が知れない場合には、相続開始の時における被相続人の居所が日本国内にあるとき
3 居所がない場合又は居所が知れない場合には、被相続人が相続開始の前に日本国内に住所を有していたとき(日本国内に最後に住所を有していた後に外国に住所を有していたときを除く)
従って、日本国内に住所を有していたアメリカ人が亡くなった場合、遺産相続の審判事件については、日本の裁判所が管轄を有することになります。相続開始時に被相続人がアメリカに住所を有していた場合は日本の裁判所は家事審判事件についての管轄を有しないことになります。

家事調停事件の国際管轄
家事調停事件の管轄権については、家事事件手続法第3条の13において次のとおり定められています。
1 当該調停を求める事項についての訴訟事件又は家事審判事件について日本の裁判所が管轄権を有するとき
2 相手方の住所(住所がない場合又は住所が知れない場合には、居所)が日本国内にあるとき
3 当事者が日本の裁判所に家事調停の申し立てをすることができる旨の合意をしたとき
相続に関する審判事件の管轄については上記に記載したとおりで、相続の開始の時に被相続人の住所が日本国内にあるときは、日本の裁判所が家事審判事件の管轄を有することになります。その結果、被相続人が日本国内に住所を有する場合には、日本の裁判所が家事調停事件についても管轄権を有することになります。また、調停手続きについては、当事者が合意している限り管轄が認められますので、相続人である奥様とお子様が日本の家事調停手続きをとることについて合意している場合は、日本の裁判所が管轄を有することになります。

不統一国法における準拠法の決定について
日本の裁判所に手続きが係属した場合、日本の国際私法によって準拠法が判断されます。日本の国際私法では、被相続人の本国法が準拠法とされています(法の適用に関する通則法36条)。従って、日本の国際私法ではアメリカの法律が準拠法となりますが、アメリカでは、州によって適用される法律の内容が異なることになります。このような不統一国法における準拠法については、通則法38条3項において、「当事者が地域により法を異にする国の国籍を有する場合には、その国の規則に従い指定される法(そのような規則がない場合にあっては、当事者に最も密接な関係がある地域の法)を当事者の本国法とする。」とされています。例えば被相続人がニューヨーク州に住所を有していたような場合は、ニューヨーク州が最も密接な関係がある地域となりますので、ニューヨーク州法が準拠法となります。被相続人が日本に居住しており、アメリカに住所を有していない場合には、被相続人の出生地などを参考に最も関係のある地を決定することになると思われます。

被相続人の最後の住所地が日本の場合
被相続人がアメリカ人であり、最も密接な関係がある地がニューヨーク州であることからニューヨーク州法が準拠法となる場合、ニューヨーク州法では相続分割主義が採用されていますので、不動産については所在地の法律が適用になり、動産については、被相続人の住所地法が適用になります。従って、日本に所在する不動産については、ニューヨーク州法の適用により日本法が準拠法となります。このように日本の国際私法で一旦外国の法律を準拠法と定めたのち、外国の法律で日本の法律が準拠法となる場合を反致と言います。日本に所在する不動産については反致により日本法が適用されることになります。また、日本に所在する動産については、被相続人の最後の住所地が日本であることから、被相続人の最後の住所地法である日本の法律が準拠法になります。これに対し、ニューヨーク州に所在する不動産については、ニューヨーク州法が準拠法となり、ニューヨーク州に所在する動産については、被相続人の最後の住所地である日本法が準拠法となります。但し、ニューヨーク州に所在する相続財産の管理の問題はニューヨーク州の法律によって定められることになりますので、ニューヨーク州でプロベイトの手続きを要する場合には、動産であるか不動産であるかに拘わらず、プロベイトの手続きを取らなければなりません。

被相続人の最後の住所地がニューヨーク州の場合
被相続人の最後の住所地がニューヨーク州の場合、ニューヨーク州に所在する不動産については、不動産の所在地法であるニューヨーク州法が準拠法となり、ニューヨーク州に所在する動産については、被相続人の最後の住所地法であるニューヨーク州法が準拠法となります。一方、日本にある不動産については、相続分割主義により不動産の所在地法である日本法が準拠法となります。また、日本にある動産については、被相続人の最後の住所地法であるニューヨーク州法が準拠法となります。この場合日本にある財産について管理清算主義をとるニューヨーク州法が適用されるのかどうか、日本の財産について管理精算主義が適用になるとして、どのような手続きを取るべきかについては明確な指針が示されていません。考え方としては、ニューヨーク州の遺産管理人が日本の財産についても管理権限を有すると考える考え方と、日本の財産については、日本の法律に基づき、類似の手続きである相続財産管理人の選任を行うべきと考える考え方が考えられます。


投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office

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