代表弁護士ブログ

2017年9月 7日 木曜日

Independent contractor agreementにおける知財の保護

海外での事業を行う場合にも知的財産権の保護は重要になります。日本で事業を行っている範囲においては、御社の知的財産権が違法に利用される場合には、比較的簡単に違法行為の内容が特定され、これに対する差止め請求を行うことも可能となります。しかし、海外で事業を行う場合には、当然現地の言葉が利用されるわけですので、御社の知的財産権が侵害されていることを見つけられないことも多くあります。通常の雇用契約においても知的財産権についての考慮が必要となりますが、Independent Contractor Agreementを締結する場合においても、知的財産権の扱いについての配慮が必要となります。

知的財産権としては、一般的には、特許権、商標権、意匠権、著作権などがありますが、登録可能なこれらの権利に加え、トレードシークレット、ノウハウなどの保護も重要となります。登録可能な権利(例えば商標権)などについては、著名商標等一定の場合を除いて登録をしていないと保護されないことになります。特許権などを除いて一般的には先に登録した人が優先しますので、もし現地で事業を始めるのであれば、商標の登録などは最初に考えなければなりません。

私どもがこれまでに扱った事例でも、独立請負人やエージェント、販売代理店などが自らの名前で商標の登録を行っており、その後何年か立った後に、契約関係が終了する段階になって初めて、商標の登録が問題となるケースも多くあります。販売代理店契約の解除であれば、販売代理店から商標を移転する代わりに多額の金銭を要求される可能性もあります。同様に将来M&Aで会社の売却をしようとする場合であっても、商標登録が他人の名前でなされていることから、権利の移転に支障が生じているのではないかと問題となります。

中には、先に登録をすることで、将来金銭の要求ができるかもしれないと考える事業者もいますが、多くの事例では、最初から独立請負人やエージェントが悪意をもって商標の登録を自分の名前でするのではなく、最初は日本の会社が自らの名前で登録できない何がしかの事業があり、その後もそのまま登録が残っているというような場合ではないかと思われます。

Independent Contractor Agreementを作成する際において最も重要なのは、制作した著作物の著作権の帰属についてです。日本の会社としては、御社の商品やサービスをローカライズするために独立請負人に販促資料を作成してもらったり、取扱説明書などの作成を依頼することもあります。例えば、会社の従業員の場合には、このような職務に関して作成した著作物(work made for hire)については、職務上著作に該当し、著作権は会社にあると判断されます。従業員は会社から給料をもらい、労務の提供を行っているのですから、その過程で作成された著作権についても当然に会社に帰属するとの考えです。

これに対し、独立請負人(独立事業者)の場合、契約上の法律関係はありますが、法律上は独立した第三者ですので、職務上著作に関する著作権法の規定がそのまま適用になるわけではありません。従って、Independent Contractor Agreementのなかで、独立請負人(独立事業者)が作成した著作物については、著作権法に言うWork Productに該当し、その著作権は独立請負人(独立事業者)ではなく、会社(依頼者)に帰属するものであることを明確にしておく必要があります。

また、Work Productsはあくまで従業員による職務上著作に関するものですので、独立請負人の契約関係においてそのまま適用になるとは必ずしも言えません。そこで、万一職務上著作の概念に該当せず、会社(依頼者)に権利が帰属しないと判断される場合には、独立請負人(独立事業者)は、著作権に関する一切の権利を無償で会社(依頼者)に譲渡することや、ライセンスフィーの支払なしにいつでも無償で利用できることなどを定めておくことも重要になります。

知的財産権の中で著作権が特に重要となるのは、最近の業務はほとんどパソコンを利用して作業がなされているわけですから、その結果として作成されるソフトウェア上のソースコードが誰に帰属するかとして問題となるからです。

また、著作権については、著作者人格権についてのケアも必要となります。著作者人格権は、著作者に本質的に所属するもので、第三者に対して譲渡できないとの考えもあるからです。独立請負人(独立事業者)は著作者人格権を放棄し、このような権利を行使しないことを定めておく必要があります。

日本の国内においても、共同開発契約や、プログラムの制作にかかわる請負契約などにおいては、特許権や著作権の帰属に関する定めを規定することが多くあります。独立請負人は、毎日会社の仕事をすることを想定していますので、会社の従業員と同じように作業を行うこととなりますが、契約上は会社の外部の第三者ですので、その業務提供の過程で生じた知的所有権の扱いを定めておくことは必須と言えます。

通常の場合、Independent Contractor Agreementの目的から全ての知的財産権は会社(依頼者、委託者)に帰属するものであり、独立請負人(独立事業者)に権利は残らないと規定するのではないかと思います。当事者の関係からすれば、これは当然であると考えます。それに対し、日本国内における共同開発契約の発想に基づき、独立事業者が作成した創作物については、独立事業者に工業所有権が帰属し、会社が作成した創作物については、独立事業者に工業所有権が帰属するというような定めをおくと、後々問題が発生し、日本の会社としては非常に困った事態にいたることも考えられます。独立請負人契約(独立事業者契約)を作成する際にはこのような点についての注意も必要です。

上記の他、独立事業者はその業務の提供の過程において、第三者の知的所有権を侵害していないこと、第三者の知的所有権を侵害するような著作物を会社の敷地内に持ち込まないこと、第三者から知的所有権の侵害があるとのクレームがあった場合には、即時に会社に報告することなど、第三者との間の知的財産権についての紛争については、自らの費用で解決し、会社に対して損害を与えないことなどの一般的な条項については、独立請負人契約書においても定めておく必要があります。

知的財産権の保護については、一般的な内容を記載すると契約書の内容が極めて長くなってしまいます。そこで、当該事案に応じてどのような知的財産権が創作される可能性がありどのような知的財産権を保護しなければならないのかを定め、その知的財産権保護に特化した条項を入れるのが好ましいと考えられます。

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office | 記事URL

2017年9月 7日 木曜日

Independent contractor agreementの秘密保持・競業避止

海外での事業を行うに際して、最初の段階で現地の人との間で雇用契約を締結するのではなく、Independent contractor Agreementを締結するのが如何に好ましいかはこれまで説明してきた通りです。Independent contractor agreementは秘密保持や競業避止に関しても、雇用契約の場合よりも会社の立場をより保護しえると言えます。多くの契約書では、会社の秘密保持、知的財産権の保護、競業避止等について必ずしも十分なケアがなされているとは言えません。そこで、以下具体的に見ていきたいと思います。

秘密保持及び競合避止契約の重要性

従業員を雇用する雇用契約書を締結する場合であっても、従業員が会社の秘密情報に接する機会は多くありますし、それらが外部に流出したり、違法に使用されて会社に損害を与えられる可能性がないとは言えません。また、従業員が会社を退職した後に、自分で独立して事業を開始したり、競合関係にある他の会社に移って御社の情報を流用される可能性もないわけではありません。そこで、多くの会社では、雇用契約書の中に秘密保持や競合避止に関する規定を入れることがありますし、雇用契約書の中に記載がない場合には、別途秘密保持や競合避止に関する誓約書の提出を求める場合も多いと思われます。

一般に雇用契約は継続的契約関係ですから、会社の秘密情報に接する機会が一層大いにも拘わらず、相互の信頼関係があるからといって、秘密保持に対する十分な対応がなされていないこともあります。また、従業員の転職の自由を制限してはいけないという労働法制上の要請から、秘密保持や競業避止に関する誓約書の提出を求める場合であっても、必ずしも厳格な決まりとなっていないことも多くあります。

多くの国では、労働者の保護法制があり、また判例上労働者の転職の自由を過度に制限する契約上の決まりは無効と判断されることとなっています。例えば、会社を退職した後に、当該会社と競合関係にある会社への就職を禁止する場合であっても、そのような禁止条項が有効かどうかが争われることになります。

競合避止条項の有効性を判断するに際して、一般には、従業員の地位、業務の内容、契約期間、対価の有無、禁止期間、地域や職種の限定の有無などがメルクマールとなります。従業員の地位について言えば、より高位にある従業員(例えば部長や課長)(雇用関係ではないですが取締役も高位にあると言えます)については、競合禁止が認められる可能性が高くなります。反対により下位にある一般の従業員については、競合禁止が認められる可能性が低くなりますので、競合禁止条項が無効と判断される可能性が高くなります。一般の従業員については、できるだけ転職の機会を認めないと生活が出来なくなってしまうという判断があるとともに、下位の地位にある社員については、秘密情報に接する機会が少なく、接する情報の重要性もそれほど大きくないことから、価値判断として、秘密情報の保護よりも従業員の転職の自由の方が重要視されるものと考えられます。

業務の内容も重要なメルクマールとなります。例えば、技術者で会社の核心的な秘密情報に接する社員であれば、競業避止がより認められやすくなるのに対し、一般の営業マン等であれば、その接する情報の秘密性がそれほど高くないと判断され、転職の自由に対する制限が認められにくくなってしまいます。また、高額の報酬を受領している社員や、退職時に高額の退職金を受領している社員であれば、競合避止義務が課される代わりに、十分な対価を得ているのであるから、その対価の中には、競合避止義務の対価も含まれていると判断される可能性も高くなります。反対に安い給料の社員については、転職の制限がなされる場合には、生活に困ってしまいますので、競合禁止も認められにくくなります。

同様に競合禁止条項の判断に際しては、禁止期間や禁止される職種や地域の限定があるかどうかも重要となります。日本の判例などを参考にすれば、1年程度の禁止期間については有効と判断される可能性が高いですが、2年を超えるような禁止期間を設けた契約書については無効と判断されるケースが多いようです。1年半の禁止期間については、微妙と判断されますので、その有効性はケースバイケースと言えます。地域的な限定や禁止される職種の限定がある場合には、競合避止契約の有効性がより認められやすくなります。従業員の立場からすれば、禁止された地域以外に就職することはできますし、禁止された職種以外の職業につくことは自由だからです。

このように、従業員に対する秘密保持契約条項や競合避止条項については、その有効性が争われることが多くありますので、会社の立場からすれば、契約書で定めたからと言って必ずしも安泰とは言えません。

これに対し、Independent Contractorの場合、独立した事業者ですので、競合避止や秘密保持についても、独立した契約当事者としてその功罪を独自に判断して契約を締結したと考えられますので、従業員の場合よりも秘密保持契約や競合避止契約が有効と判断される可能性は高いと思われます。

Independent Contractor Agreementにおける秘密保持義務としては、例えば次の様な条項が考えられます。

Each party (on its behalf and on behalf of its subcontractors, employees, or representatives, or agents of any kind) agrees to hold and treat all confidential information of other party, including, but not limited to, trade secrets, sales figures, employee and customer information, and any other information that the receiving party reasonably should know is confidential ("Confidential Information") as confidential and protect the Confidential information with the same degree of care as each party uses to protect its own Confidential Information of like nature.

(翻訳)
いずれの当事者も(それ自身のためだけでなく、あらゆる種類のその下請け、従業員、役員、エージェントのためにも)、トレードシークレット、販売量、従業員及び顧客の情報、その他受領当事者が合理的にみて秘密であると考えるその他の全ての情報を含め、相手方当事者の全ての秘密情報について秘密として保持し、その者自身の同種の秘密情報について用いられるのと同一レベルの注意を用いて秘密情報を保護するものとする。

上記は一般的な秘密保持条項ですが、独立請負人(独立事業者)の側から会社に差し入れる形式の契約書もあります。その場合の契約条項としては例えば次のようなものがあります。

You agree that during the term of this contract and for a period three years following the termination of this contract, you shall not directly or indirectly divulge or make use of any Confidential Information outside of your performance of your duty under this contract without the prior written consent of the Company.  You shall not directly or indirectly misappropriate, divulge, or make use of Trade Secret for an indefinite period of time, so long as the information remains a Trade Secret as defined by the applicable laws. 

(翻訳)
貴殿は、本契約の継続期間中及びその終了後3年間、会社からの事前の書面による許可がある場合を除き、直接的か間接的かを問わず、本契約に基づく貴殿の義務の履行以外には、秘密情報を漏えいし、又は使用してはいけない。適用になる法令によりトレードシークレットと認められる情報については、無制限の期間、直接的か間接的かを問わず、トレードシークレットを悪用し、漏洩し、使用してはならない。

最近の契約書では、秘密情報の返還に関する規定も多く含まれます。もちろん人の記憶の中にある情報の返還というのは難しいですが、記録媒体に記録されている場合には、契約が終了した段階でそのような媒体については、回収しておく必要があると考えられます。特に最近の秘密情報はほとんどすべてがデータ化され、PCのメモリやUSBで保管されていますので、かかる返還について定めておくことは重要と考えられます。

You agree to return to the Company all Confidential Information within five calendar days following the termination of the contract for any reason.

(翻訳)
貴殿は、理由の如何に拘わらず、本契約が解除された後、5日以内に、全ての秘密情報を会社に返還しなければならない。

競合避止条項
独立事業者(独立請負人)は御社の秘密情報にアクセスする機会を多く有していますので、そのような御社の秘密情報を用いて他で自分自身が事業を行ったり、外の会社への業務提供を行うに際して御社の秘密情報が利用されたりすることは何としても禁止したいと考えるのではないかと思います。従業員の場合よりも、契約期間が短いこと、会社への忠誠心が少ないこと、外の会社の業務を請け負う機会が多いことなどからすれば、従業員の場合よりも、競業避止についてはより詳細な取り決めを行っておく必要があると思われます。

私どもの経験でも、独立事業者(独立請負人)が、会社の顧客情報や技術的情報を用いて他と事業を行い、依頼者の情報が漏えいしてしまったとして問題となったケースも多くあります。特に顧客情報は比較的利用されやすいことから、契約上の制限を設けるだけでなく、顧客情報の記録されたパソコンやサーバーへのアクセスを禁止したり、制限したりすることも検討する必要があると思われます。

競合避止条項については、次のように記載することが考えられます。下記の文例は、極めて簡略なものですので、実際にはより詳細な取り決めが必要となります。

Contractor covenant and agree that, during the term of this contract and two years after the termination hereof, Contractor will not conduct business competitive with that of the Company or work for the company competitive with the Company.

(翻訳)
独立事業者は、本契約の期間中及びその後2年間、会社の事業と競合する事業を行わず、会社と競合関係にある会社で働かないことを約束し、同意する。

競合避止契約条項に、競合避止の期間や地域的制限を入れた方が好ましい(後日裁判所で無効と判断されるリスクが少なくなる)と言う点は上記に述べた通りです。競合避止については、当該事案の性質や、独立事業者(独立請負人)の立場なども考慮に入れながら、その事案にふさわしい内容を作っていく必要があります。

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2017年8月31日 木曜日

Independent contractor agreement(独立請負契約書)の作成

Independent contractorは、直訳すれば独立した請負人ということですから、建物の建築や、報告書の作成等一定の定まった成果を提出することを行う当事者のようにも思われますので、果たして現地の職務従事者が独立した請負人に該当するかどうか疑問を有するのではないかと思います。しかし、contractorというのは、意味的には契約当事者ということで請負的要素よりも、独立した契約者という意味合いが強いと思われます。

従って、日本の民法で考える請負人(例えば大工さんや研究所)などよりもより広い概念であると考えられます。ポイントは、当該職務従事者が、従業員として会社に雇われている(雇用されている)との認識であるか、自らは自営業者であり、会社から依頼された職務を遂行して、その対価を得るものだと考えているかによります。

例えば、会社の事務所に通って電話番を行う職務(月曜日から金曜日まで毎日8時間働く)であっても、従業員としてその勤務時間を拘束され、その対価を受けているということであれば雇用契約になりますが、自らは独立した自営業者であり、会社との契約で一定のサービス(電話のアポインター)を提供し、契約で定められた対価を得ているということであれば、自営業者と考えることもできます。

中小企業が初めて海外での業務を展開する場合に最初に必要となるのは、例えば次のような業務ではないかと思います。
・現地の市場調査
・現地の法令調査
・支店または子会社の立上げ業務(事務所の選定や賃貸借契約書の締結)
・日本法人との連絡、業務の遂行状況の報告
・見込み顧客の獲得
・マーケティング資料の作成
・サービスのローカライズ
・人の採用、管理

上記のような業務については、雇用契約による従業員に行わせるのが通常であるとの認識があるかもしれませんが、コンサルタントや請負人(independent contractor)に行わせることでも何ら問題ありません。もちろん、雇用契約か請負契約かは、契約書の名称だけでなく、業務の遂行状況等実質に基づいて判断されますので、先に説明したメルクマールに注意しながら、実際の業務の内容が雇用契約であるとみなされないよう注意する必要はあります(時間管理の有無、管理監督の有無)。

(業務内容に関する定め)
Independent contractor agreementの作成に際しては、上記のような点に注意しながら、提供するサービスの内容を定める必要があります。業務の内容については、通常色々な職務が含まれますので、箇条書きにすることでも問題ありません。サービスの内容を定める条項としては例えば次のようになります。

Contractor agrees to perform work for the Company on the terms and conditions set forth in this agreement, and agrees to devote all necessary time and attention to the performance of the duties specified in this agreement.  Contractor's duties shall be as follows:---- Contractor further agrees that in all such aspects of such work, Contractor shall comply with the policies, standards, regulations of the Company from time to time established, and shall perform the duties assigned faithfully to be best of his ability, and in the best interest of the Company.

(翻訳)
請負人は、本契約書の条項に基づき、会社に対して職務の遂行を行うこと、及び本契約書に定められた義務を遂行するために必要な時間と労力を尽くすことに同意します。請負人の義務は次の通りです。(義務の内容を箇条書きにする)請負人は、さらに、業務の遂行に際しては、会社がその都度定める方針、基準、規則を遵守し、能力のかぎりにおいて、会社の利益の為にその職務を行うことに同意します。

また、職務の内容については、より簡潔に記載することもできます。例えば次のようなものが考えられます。

During the Term, the Company may engage the Contractor to provide the following services as needed, or other such services as mutually agreed upon in writing by the Parties.

(翻訳)
本契約の期間中、会社は、必要に応じて、次のサービス、または当事者間で別途書面による合意したサービスを提供するよう請負人に対して委託することができる。

(契約期間)
契約期間については、一定の期間を定める方式と、業務の完了までと定める方式が考えられます。契約期間を定める方式としては次のようなものが考えられます。雇用契約の場合には、契約の解除については労働法規による制約がありますが、請負契約についてはそのような制約はありませんので、契約期間を1年と定めておきながら、会社の側では、契約期間の途中であっても、いつでも契約を終了させることができると定めることも可能です。
This agreement shall commence on the signing of this agreement and be effective for one year thereafter.  This agreement may be terminated by the Company immediately in the sole discretion of the Company.  Contractor may terminate this agreement upon fourteen days written notice to the Company. 

(翻訳)
本契約は、本契約書の締結と同時に効力を生じ、その後1年間有効とします。会社は、その判断に基づき、いつでも本契約を中途で解除することができます。請負人は、会社に対して14日前に事前に書面による通知をすることで、本契約を解除することができます。

一方、業務の終了までとする場合には次の様な条項も考えられます。
This agreement shall take effect as of the effective date, and remain in full force and effect until the Contractor has completed the Service, unless earlier terminated under this agreement.

(翻訳)
本契約は効力発生日において効力を生じ、本契約に基づき中途解約がなされる場合を除き、請負人がサービスを完了するまで効力を有する。

(独立請負人であることの確認条項)
Contractor agreementはそのタイトルからすれば、請負契約であると明示されているわけですが、当事者において法的性質について意見の相違がある場合が考えられます。また、万一仮に契約の終了や追加報酬の支払いについて裁判になった場合にも、契約上の地位について明示しておくことは有効であると考えられます。そこで、ほとんどのIndependent contractor agreementにおいては、独立した請負人であり、従業員でないことが注意的に記載されています。
The Parties intend that the Contractor be engaged as independent contractors of the Company.  Nothing contained in this agreement will be construed to create the relationship of employer and employee.  The Contractor will not be entitled to worker's compensation, retirement, insurance or other benefits afforded to employees of the Company.

(翻訳)
当事者は、請負人が独立した自営業者として雇われることを意図している。本契約書のいずれの条項も、雇主と従業員との雇用関係を創出するものとはみなされてはならない。請負人は、労災保険、退職金、社会保険、その他会社の従業員に対して認められる権利を与えられるものではない。

(その他の条項)
上記のほか、independent contractors agreementで注意すべき点がいくつかあります。

知的財産権
請負人が、その業務の遂行過程において創作した知的財産権が会社に帰属することを明確にしておく必要があります。例えば、ソフトウェアのプログラムや、著作物に関する著作権などです。雇用契約の場合には、職務上著作と認められる限り、当然に会社の所有となりますが、請負契約の場合には、その帰属について明確ではありませんので(当事者が合意により自由に定めることができる)、契約書においてきちんと定めておく必要があります。

秘密保持
請負人は業務の遂行過程において、会社の秘密情報に接する機会が多くあります。また、会社の側からすれば、請負人は、身内である従業員ではなく、外部の人ですから、提供した秘密情報を他の競業者(コンペティター)に提供されたり、その秘密情報を使って請負人が自ら事業を行ったりすることも十分に想定されるところです。従って、秘密保持義務についてきちんと定めておくことは最低限必要となります。秘密保持義務については、independent contractor agreementの中で定めることでも構いませんし、それとは別に秘密保持契約書(NDA)を締結したり、定型的なフォーマットのNDAをindependent contractor agreementの添付資料(別紙)とすることも考えられます。また、可能であれば、non-competition clause(競業避止義務)についても定めておくのが好ましいと考えられます。雇用契約の場合、秘密保持義務と競業避止義務をセットで定め、従業員の雇用に際して契約書にサインさせることが多いと思いますが、independent contractorの場合は、請負人が会社のノウハウなどを用いて将来競業を行ったり、他の会社に情報を漏らす可能性も十分に考えられますので、競業避止についての配慮も必要と考えられます。

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office | 記事URL

2017年8月29日 火曜日

Independent Contractors Agreement(請負契約書)の活用

中小企業が海外展開を行う場合、まず最初に海外の拠点をどのように作るかが問題となります。支店(branch office)の設立や子会社(subsidiary)の設立が最初に思われますが、その前に現地の市場調査や、簡単な活動を開始し、事業の採算性が見込まれることが明らかになった段階で子会社の設立に進みたいと思われることが多いと思われます。

現地での活動を開始する場合には、最初に人を雇う必要があります。現地に子会社が存在する場合には、その子会社を雇主として契約を締結することになります。すなわち子会社と現地の従業員との間の雇用契約となります。また、現地に子会社が設立されていない場合には、日本の会社が雇主になり、現地の従業員を雇用するという形態をとることになるかもしれません。

しかしながら雇用契約(employment agreement)については、それぞれの国で労働者の保護が図られていますので、仮に雇用契約書の中で日本法を準拠法と定めたとしても、労働者の保護については、現地の労働法制が強制的に適用になることが多いと思われます(労働法の強行法規性)。雇用契約書の内容が現地の労働法制に違反する場合には、雇用契約書の内容ではなく、現地の労働法制が優先的に適用になり、現地の労働法制に違反する範囲において雇用契約の内容は無効と判断されることになります。仮に日本の法人が雇主になり、現地の従業員を雇用する場合であっても、実際に労務を提供している場所の労働法制が優先適用になりますので、当該雇用関係については、日本法ではなく、現地の労働法制が適用になることになります。

また、雇用契約の場合、社会保険料の支払や雇用保険への加入など、従業員を保護するための制度が適用になりますので、会社はこれらの保険への加入も強制されることになります。さらに、雇用契約の場合、仮に事業がうまくいかず、現地の事業を閉鎖しようとしても、従業員の解雇が認められるのかどうかが重要となってきます。

そこで、上記のような雇用契約における制約を回避するためには、現地の人を従業員として採用するのではなく、独立の請負人として採用することができるかどうかが問題となります。請負契約(independent contractor agreement)が一定の業務に対して対価を支払うことを約束する契約ですから、それぞれが独立した当事者間の契約であり、雇用とは異なりますので、労働法規の適用もないことになります。

もちろん、実体が雇用契約であるにも関わらず請負契約の形を取ったからと言って、労働法制の適用を免れることができるわけではありません。従って、請負契約を行う場合には、実際の契約関係が雇用ではなく、請負であることを明確にする必要がありますし、実際の業務の遂行においても、雇用契約とみなされないよう注意をしておく必要があります。もし、請負契約ではなく、雇用契約であると判断されることになると、現地の行政機関の介入を招き、年金や社会保険料の未払を理由として行政機関による科料の制裁を科されたり、税務署から源泉徴収税について課税されたりするリスクも存在することになります。現地の人が業務の遂行中にけがをした場合には、労災保険への未加入を理由として科料の制裁を科される可能性もありますし、当該業務提供者との間において裁判に発展する可能性も考えられます。

そこで、どのような場合が雇用契約に該当し、どのような場合が請負契約に該当するかを慎重に判断する必要があります。また、このような判断基準に十分に注意することで、雇用契約とみなされるリスクをできる限り回避することも重要になってきます。

雇用契約か請負契約かの判断に際しては、業務の遂行に対する管理監督が行われているかどうかが最も重要なファクターとなります。雇用契約の場合、業務の遂行に際して使用者の管理監督権限が及ぶことになりますし、反対に請負契約の場合には、業務の遂行について使用者の管理監督権限は及ばず、業務遂行者の裁量に任されていることになります。実際の判断に際しては、当該業務遂行者の能力、権限、時間管理、業務遂行場所、法的権限等を中心に判断されることになります。

例えば、弁護士を雇う場合には、(社内弁護士などを除く)通常の場合弁護士は、職務上の能力が高く、業務の遂行について裁量権を有していますので、当該弁護士は労働者ではなく、(委任か請負かは別として)外部の契約関係者と判断されることになると思われます。また、請負契約においても労務提供時間について1日あたり8時間をめどとするということを定めることは可能ですが、勤務時間を厳格に定め、朝9時から夕方6時まで就労するということを具体的に指示している場合には労働契約と判断される可能性が高くなってくることになります。請負人は、一定の業務の遂行を約束するものですので、依頼された業務が完成できる限り、いつ、どれだけ業務を行うかについては、当該業務提供者の裁量に任せられることになります。

このように請負契約であると評価されるためには、当該業務提供者の専門的能力を評価して対価を支払うことを定めること、業務提供者に業務遂行に関する裁量権限を与えること、業務提供に関する時間管理をあまり厳格にしすぎないようにし、業務提供者に対して業務提供時間についての裁量を与えること、業務遂行場所もできるだけ自由とすることなどに注意することが必要になります。しかしながら、これらについては、評価的要素も多く含まれますので、請負契約とするために、絶対にこうしなければいけないという基準があるわけではありません。仮に、一つのめどとして1日の業務提供時間を8時間とすることを定めたとしても、そのことが直ちに雇用契約であると判断されることにつながるわけではありません。

なお、現地での販路の拡大をめざし、顧客の勧誘などを委託し、成果に応じて報酬を支払う形態としてagent agreement(エージェント契約)やdistributor agreement(販売代理店契約)を作成することも考えられます。エージェント契約や販売代理店契約の区別としては、契約締結についての法的な代理権限を有しているかどうか、単なる顧客の紹介にとどまるのか、サービスや商品を自らのリスクにより販売するか、中継ぎに止まるかなどによって区別されますが、いずれもIndependent agreementにおける請負人よりもより独立性が高い形態と考えられます。

雇用契約と判断された場合の会社の負担をまとめれば次のようになります。
・準拠法の定め如何に拘わらず、現地の労働法制(法律)が強制適用される
・管轄合意にかかわらず、労働者から裁判を起こされた場合の裁判管轄は、労働者の労務の提供場所となる
・労働者の解雇について制約がある(正当事由がないと解雇できなかったり、解雇に際して一定の金銭の給付が求められることがある)
・社会保険(social insurance)への強制加入が要求され、会社が一定の負担を求められる
・雇用保険への加入が強制される
・労災保険への加入が強制される
・残業代の支払が強制される
・給与の支払について源泉徴収が必要

反対に請負契約の場合には、次のように言えます。
・準拠法(どこの国の法律が適用になるか)を当事者の合意によって定めることができる
・裁判管轄について当事者の合意で定めることができる(例えば、裁判については日本の裁判所で行わなければならないと定めることができる)
・社会保険、雇用保険、労災保険などへの加入が必要ない
・残業代の支払が必要ない(労務管理が不要)
・源泉徴収義務が必ずあるわけではない

このように使用者からすれば、請負契約は圧倒的に有利と言えます。従って、中小企業が海外展開を行うに際して現地の人を採用するには、independent contractor agreementの採用の可否について検討することは重要と思われます。なお、コンサルタント契約書(consultant agreement)も雇用契約ではなく、独立した第三者との契約と言う意味では、independent contractor agreementの一つと考えられます。コンサルタント契約書と請負契約書の違いは必ずしも明確ではありませんが、請負契約書では特定の成果が求められることがより明確にされている場合(行われた成果に対して対価を払うという関係がより明瞭)と考えることができます。

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2017年5月18日 木曜日

企業法務弁護士による遺産相続 可分債権の扱い

平成28年12月19日の最高裁決定は、預金債権については、当然に分割されるのではなく、遺産分割の対象となるというものですが、この意味について確認したいと思います。

民法896条では、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」としていますので、現金や不動産のほか、債権や預金も相続人が承継することになります。また、民法898条では、「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。」とし、民法899条では、「各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。」とされています。

従って、現金、預金、不動産、債権については、いずれも相続財産であり、本来であれば共同相続人間で共有状態になると思われます。この共有については、民法の共有と性質的には同じですが、共有関係の解消については、民法に定める共有物分割手続き(民法256条)ではなく、遺産分割手続きによるべきとされています。遺産分割手続きとしては、共同相続人間の合意により遺産分割協議書を作成する方法と、共同相続人間で合意ができない場合には、家庭裁判所に申し立てをして遺産分割調停を行う必要があります。また、遺産分割調停の手続において協議が整わない場合や、協議が適切でないと思われる場合には、家庭裁判所が審判を行い、誰がどの財産を取得するかについては、最終的には家庭裁判所がその裁量に基づいて判断するということになります。

一方民法第三編第一章第三節では、「多数当事者の債権及び債務」について規定しており、第一款「総則」では、「数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。」と規定しています。すなわち債権を複数人が有する場合は、総則の規定が適用になり、各権利者は、等しい割合で権利を有することになります。この点から、可分債権(分割可能な債権)については、当然に分割がなされ、各債権者は分割された権利のみを取得するという結論が導かれることになります。

このことから、相続財産の中に含まれている可分債権については当然に分割され、各相続人は、遺産分割手続きを経ることなく、法定相続分に従った権利を取得するという結論になります。例えば、遺産の中に損害賠償請求権や、相続発生時よりも前に発生した債権(保険金支払請求権や家賃債権など)がある場合には、当然に分割されて各相続人がその権利を取得することになります。例えば、XがYに対して1000万円の損害賠償請求権を有していたところ、Xが死亡し、Xの長男Aと次男Bが法定相続をしたとします。この場合、AとBは、遺産分割手続きを経ることなく、Yに対してそれぞれ500万円の損害賠償請求権を取得することになります。

家賃債権についても同様の考えになりますので、Xが所有する建物をYに賃貸しており、Yが賃料(例えば1000万円)の支払いを怠っている場合には、AとBは500万円ずつ債権を承継することになりますので、例えばAがYに対して賃料支払請求訴訟を起こそうと考えた場合には、1000万円全額の請求をするのではなく、自己が取得した500万円分しか裁判を起こせないことになります。

もちろん、AがBからの委任を受け、Bの取得した債権についても一緒に権利行使することは可能ですが、AとBが遺産分割などで争っているような場合には、Bからの委任を受けることもできないため、裁判においては自己の権利部分しか権利行使できないことになります。

上記平成28年12月19日の最高裁決定は、可分債権についての上記の性質について変更をもたらすものではありませんから、遺産に含まれていた可分債権が当然に分割され、共同相続人が法定相続分に基づいて当然承継する(当然承継説)という前提自体は異なることはありません。

 会社の経営者が亡くなった場合によく問題となるのは、会社の経営者が会社(特に非上場の会社)に対して多額の貸付債権を有している場合です。会社の経営者が長年にわたり会社の経営を行ってきている場合には、時には資金不足で役員の報酬の支払もできないような事態に陥ることもよく考えられ、その場合、会社の代表者は自らの役員報酬を実際には受領せず、一旦支払われた報酬部分を会社に対して貸し付けたという形を取ることが多くあります。また、会社が多額の設備投資を検討している場合や、会社の資金繰りが困難になった状態で、会社自身が信用不足などの理由で金融機関からの借入を行うことができないような場合には、経営者が自ら金銭の借入を行い、その資金を会社に対して貸し付けたり、手持ち資金を会社に対して貸し付けたりすることは多くあります。また、経営者が会社に対して本社ビルや工場敷地を賃貸しているにも関わらず、会社に十分な資金がないことから、家賃を実際には受け取っていないという場合も考えられます。

 このような場合には、損益計算上は経営者から会社への貸付けとして認識され、会社の貸借対照表にも経営者からの借入債務として計上されることになります。このような貸借は、何十年にもわたって継続して行われており、返済と貸付が繰り返されていることから、会社の経営者についての遺産相続が発生した段階で、債権の発生原因となる証書が残っていないということも多くあります。また、数十年前から発生した債権であることなどの理由で、発生原因自体よく分からないということも多くあるのではないかと思われます。

 私どもで相談を受ける事案でも、会社の経営者が亡くなったあと、会社の貸借対照表を確認したところ、会社に対して1億円の債権があるが、このような債権は請求できるのかという相談を受けることがよくあります。実際には、債権の存在を会社が認めるかどうかや、会計帳簿がきちんと作成されていたかどうか、債権の発生原因としてどのようなことが考えられるのかを事案ごとに検討しなければなりませんが、原因証書が存在しない場合であっても、会社が貸借対照表に記載することで債務の存在を確認していることから、原則としては、会社に対する債権は存在するということになります。

 そこで、可分債権は相続開始時において当然分割され、法定相続分に基づいて各相続人が取得するという上記の原則が問題となってきます。例えば相続人であるAとBが会社に対する債権1億円を相続するとすると、各相続人は5000万円ずつの債権を取得し、会社に対してそのお金を返せと請求できることになることになります。例えば被相続人の長男のAが会社を承継した場合に、遺産分割が進まないことに腹を立てたB(次男)が会社に対して債権を行使し、5000万円の支払請求訴訟を起こすことが可能となるということになります。

 また、同様に、1000万円の未払家賃の請求を起こす場合であっても、他の共同相続人が了解しない場合(協力しない場合)には、法定相続分である500万円しか裁判を起こせないことになります。

一方、相続税との関係では、1億円の債権全額を相続財産に加算しなければならないのかが問題となります。相続税との関係では、債権の評価を行い、その評価額での申告ということになると思われます。

 上記のように、当然分割される可分債権については、遺産分割の対象とならないことになりますが、例えば相続人の一人が特別受益を受けていたような場合には、相続人間で不公平が生じてきます。これが、上記の最高裁決定で問題とされた点ですが、特別受益の問題については、別途詳細に述べたいと思います。

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office | 記事URL

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