代表弁護士ブログ

2017年11月10日 金曜日

企業法務弁護士による不祥事調査 ホワイトカラークライム

ホワイトカラークライムとは
犯罪という言葉で通常思いうかべるのは、殺人、窃盗、強盗、強姦などがあると思います。ホワイトカラークライムと言うのは、これらの暴力的犯罪ではなく、どちらかと言うと知能犯に近い犯罪です。クライムは犯罪を意味する言葉です。ホワイトカラーは文字通り会社の本社で働くホワイトカラーを指しています。ホワイトカラークライムとは、会社で働く従業員のうち、現場で働く人ではなく、デスクワークに従事している社員(例えば会社の部長や課長)が会社の業務に関連しておこす犯罪の事を言います。具体的には、横領、背任などです。

横領は、会社のお金やその他の財産の占有を自己の元に移して支配権を移転させることで実行されます。法律用語では領得といいます。例えば取引先に集金に行った際に受け取った10万円を会社にこっそり自分のものにしてしまう(自分の財布に入れる)が典型例だと思います。実際には大金が現金で移動させられることは少ないですので、多くの犯罪行為は銀行預金の移動によって行われます。

通常銀行預金を移動すれば、その記録が通帳に残りますので、すぐに会社にばれてしまい犯罪はできないのではないかと思われます。しかし、例えば、本来取引先に対して100万円請求すべきところを120万円の請求書を発行し、会社の名前の架空口座で取引先から120万円のお金の振り込みを受けた後、取引先の名前で100万円を会社の正当な口座に振り込んだ場合には、会社は本来請求すべき100万円が入金になっているので、横領されたという意識はないままになる可能性があります。取引先としても、会社から120万円の請求書が来て、120万円を振り込んだだけですので、まさかその金額が偽物だったと気づくことがないこともあります。このような例はかなり古典的なもので、税務署による税務調査などが行われた際に発覚したりします。

横領の他に多いホワイトカラークライムとしては背任罪があります。背任罪は、会社の利益を犠牲にして自己または第三者の利益を図る行為とされています。横領との違いは、金銭についての占有の移転がないことです。例えば、会社の営業部長が取引先から過度の接待を受け、本来100万円で購入すべき資材を130万円で購入したとします。この場合、会社は本来支払うべき金額よりも30万円多く支払ったことになりますので、30万円の損をしたことになります。

背任罪については、立証がかなり困難な点があります。上記の例で言えば、会社が購入した資材がなぜ130万円ではなく100万円なのかを立証しなければいけません。会社が資材の購入をする場合に、複数の業者にコンペを行わせる場合であっても、納入先の決定は必ずしも価格の多寡だけではなく、信頼性や経験、品質など様々な事情を総合判断して決定する必要がありますので、他社よりも金額的に高い資材を購入したからといって、そのことが直ちに背任罪とみなされるわけではありません。しかしながら、極めて過度の接待を受けたり、B社から資材を購入する見返りにB社から金銭を受け取っていたりした場合には、その取引は不正であるとみなされる可能性が高く、このような取引について放置しておくのは適切ではないと考えらえます。

また、背任罪において多い事例としては、架空取引があります。循環取引を含む架空取引については、担当者からのヒアリングでは皆さん一律に売り上げを伸ばさなければならないプレッシャーからついつい架空の取引を繰り返してしまいましたというような説明がなされることも多いですが、当該取引の過程で取引先に利益を流したり、担当者が個人的な利益を得ていることもありますので、そのような事実が本当に存在しないのかをしっかり確認することも必要となってきます。

なお、公務員が金銭の提供を受けて業者を恣意的に選んだような場合には、当該公務員について収賄罪が成立しますし、金銭を送った業者については贈賄罪が成立します。公務員の場合には、贈収賄がホワイトカラークライムの典型例と考えられます。この贈収賄は刑法上身分犯とされていますので、犯罪の成立には、金銭を受け取った人に公務員という身分があることが要件とされています。従って、民間企業の社員が取引先の業者から接待を受けたり、金銭をこっそりもらったりした場合であっても、上記の背任罪が成立することはあっても、贈収賄は成立しません。但し、郵便局の職員やNTTの社員については、一定の範囲で公務員とみなされることになっていますので、会社が民営化されたからといって取引先から金銭の受領を行う場合には贈収賄に該当することになります。弁護士や会計士が官庁の職務を行う場合などにも、その職務との関連では公務員とみなされることがあります。

ホワイトカラークライムへの対処
上記のとおり、民間企業におけるホワイトカラークライムの典型例としては横領と背任がありますし、公務員の場合には、贈収賄があります。そこで、もし会社においてこのような犯罪行為を認知した場合にどのように対処すべきかが問題となります。この点については、事実関係の確認、労働法による処罰、民事上の責任追及、刑事上の責任追及などを検討する必要があります。会社の総務や人事の担当が独自に行うこともあり得ますが、彼らは捜査の専門家ではありませんし、民間企業の立場としてどこまで調査を行っていいのかはっきりしないこともありえます。そこで、ホワイトカラークライムの認知をした場合には、外部の専門家(弁護士・会計士)により第三者調査委員会等を設置し、調査にあたってもらったり、外部の弁護士に報告書の作成を依頼したりすることになります。

企業法務弁護士による調査
犯罪の捜査は本来警察や検察官が行う仕事であり、通常の社員の場合、民間企業で従業員から任意に聞き取りを行う場合のノウハウは持ち合わせていないと思われます。また、会社の社員同士であれば人間関係もありますので、どこまで真実を明らかにすべきかについて躊躇を覚えることもあるかと思います。従って、ホワイトカラークライムの調査については外部の専門家に依頼するのが最も適切と考えられます。

そこで、どのような弁護士を雇うべきかが問題となります。新聞紙上などで取り上げられる大企業の不祥事の場合には、調査委員会が設立されることも多く、その場合に調査委員会のメンバーに就任する弁護士は検察官上がりの人であることが多いと思われます。しかし、通常の弁護士の場合であっても、研修所自体の研修においてヒアリングの訓練は受けていますし、毎日の業務自体がヒアリングによる事実の確認になりますので、ヒアリングによる調査の能力については問題ないと思われます。

弁護士は、犯罪行為の調査を依頼された場合は、関係する資料を読み込み、どこに問題があるのかを確認し、刑事法における構成要件事実の観点からどのような事実関係を確認すべきかを想定します。そして関係者からのヒアリングを行い、その結果をヒアリングメモというノートにまとめていきます。小さな事件であれば3名から5名程度のヒアリングで済むかと思いますが、複雑な案件や重大な案件については、10人、20人から話を聞かなければならない事態も想定されます。

報告書の作成を行うには、事実の確認と、原因、今後の対策を明確にする必要があります。特に重要なのは事実の確認で、関係者の記憶違いや、責任追及されることを免れるための偽証の可能性もありますので、客観証拠との比較を行いながら、どの証言が正しいかを判断していく必要があります。

最近の事例では、多くの客観証拠はプリントアウトされたハードコピーとしてではなく、パソコンの中にデータとして残されていることが多いと思います。従って、パソコンのデータの調査については、膨大な情報の中から必要な情報をどのようにして適切に抽出するかの問題と、既に抹消されたデータについてどのようにして復元するかの問題があります。いわゆるデジタルフォレンジックの手法です。

アメリカの裁判の場合、関係する証拠を隠滅すると、法廷侮辱罪として極めて高額の罰金の支払いが強制されたり、懲罰賠償により数十億円の支払義務が認定されたりすることもありますので、証拠の隠ぺいについては特に注意が必要になります。もちろん、証拠の隠ぺいと言っても特別なものではなく、eメールのデータをゴミ箱に捨て、その後ゴミ箱を空にするようなことです。このようなこともディスカバリーの妨害とみなされることになりますし、隠ぺいの意図がなくても法廷侮辱と認定される可能性もありますので、訴訟が開始されたことを知った場合には、幅広く関係部署に対してデータの抹消を行わないよう指示しておく必要があります。いわゆるリティゲーションホールドといいます。

労働法制上により責任の追及
上記の捜査によって犯罪事実があった事が明らかになれば、労働法上どのような処置をする必要があるかを検討する必要があります。この場合、手続面と実体面の両方を検討します。手続きの面としては、就業規則に基づく調査や処置をする必要がありますので、自己の会社の社員であるからと言って、自由に証言を強制したり、個人的なプライバシーに関与したりすることはできません。また、就業規則においては、処置を決定する場合に、当該従業員に告知・聴聞の機会を与えるべきことが定められていることも多いと思いますので、その規定に従う必要があります。また、諮問委員会や賞罰委員会の規定がある場合には、当該規程に従って委員会を開催し、当該委員会の手順によって処置を定める必要があります。

実体面としては、どのような懲戒手続きを取るべきかの選択が重要になります。戒告、休業命令、減給、諭旨退職、懲戒解雇等のうち、どの処置を選ぶかという問題です。比例原則が働きますので、行為の悪質さに応じた処置が必要です。例えば極めて軽微な違反に対し懲戒解雇をしたり、3箇月の休職を命じたりした場合、処置が厳しすぎるとして会社が訴えられる可能性もあります。昔と違い、従業員の側から会社が訴えられる機会も多くなりましたし、会社が敗訴する事例も多くありますので、注意が必要です。また、昔は保全処分か損賠賠償請求訴訟などに限られていましたが、最近では仲裁の手続やADR(選択的紛争解決手段)としての労働審判手続きなども充実していますので、公的な場所において処分の妥当性が判断される可能性が高いことについては、注意が必要です。

なお、懲戒解雇によって退職金を払わないなど、従業員に対する重大な不利益を与える場合には、労働基準監督署の事前の許可を要することもありますので、労働基準法や労使協定などの確認が必要になります。

民事上の責任追及
会社の金銭を横領した社員がいれば、会社としては当然その人から横領された金銭の回収を図らなければなりません。上記の通り、会社は犯罪捜査機関ではありませんので、事実認定は任意にされるものでしかすぎず、当然犯罪は成り立つであろうと思われるような場合であっても、犯罪が成立したと判断できるかどうか微妙な場合もありますし、従業員の側から反撃をされる可能性もありますので、注意しながら行う必要があります。意見の相違から紛争になる可能性が高いことを前提とすれば、できるだけ裁判所を利用して、事実の有無について公的な判断を求めるのが適切と思われます。一方最初から裁判を申し立てるのが適切でない場合もありますので、そのような場合には、まず当該従業員からヒアリングを行い、犯罪事実を認める書面への署名を求めるということもあり得ます。また、通常従業員が高額の資産を有していないことも考えれば、自宅の差押なども検討が必要かもしれません。

民事訴訟を通じて賠償金の請求を求めるのは極めて通常です。犯罪行為が認知しえる場合であっても、当該従業員の家族(例えば妻や両親)に対して、連帯保証を求めるのはやり過ぎとみなされる可能性も高く、場合によっては署名に押印するよう恐喝されたなどと従業員の家族から反撃を受けることも想定されます。

刑事上の責任追及
犯罪行為が明らかな場合には、刑事処罰を求めることも考えなければなりません。その場合、警察に対して被害届や告訴状を提出するということになります。被害届については、警察がそのような事実を知ったというだけですので、警察において応対義務はありませんが、刑事告訴の場合には、警察は放置しておくことはできず、必ず事実の捜査を行い、その結果を検察官に送付し、検察官による処分を求めなければならないことになります。最近は犯罪の通知をしたにも拘わらず、警察が動いてきれなかったとして問題視されるケースも多くありますので(特にDVの場合など)、警察としても処理に最新の注意が必要となってきます。これまでは、民事不介入の原則により、民事事件について警察が関与することはしないと言って逃げを打つことが出来ましたが、最近の傾向からすれば警察も真剣に扱わざるを得ない事件も多くなっているのではないかと思われます。

会社への影響
循環取引による架空売り上げなどは、粉飾決算を導くものですので、特に上場企業の場合、会社の存亡にかかわる問題となってきます。それほど金額が大きくない場合や、非上場の会社であっても、最近のコンプライアンスの経営が求められる時代背景からすれば、後日誰から聞かれても問題とならないようなきちんとした処置を取ることは極めて重要と言えます。

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2017年10月17日 火曜日

販売代理店契約の解除

売上を拡大させるためには新規の商材を必要とする場合があります。日本国内や海外の展示会などで新しい商品の紹介を受け、これを日本向けにカスタマイズすることで、日本の顧客に販売することを考えられるかもしれません。このような場合に海外のメーカーとの販売代理店契約(Distribution Agreement)を締結されることが多いのではないかと思います。販売代理店契約は独占的な場合もあれば、非独占的な場合もあります。日本における総代理店の地位を獲得できれば、日本国内における他の代理店を通じて商品の販売を行うこともできますので、より市場への浸透を図ることができます。

しかしながら、販売代理店契約を結んでいたにもかかわらず、国内市場での販売が思ったように伸びず、また会社の選択と集中などその他のさまざまな事情によって販売代理店契約を終了させる必要が生じてくることもあります。また、日本の販売代理店では今後も継続して契約を維持したいと考えていたにも関わらず、海外のメーカーサイドの都合によって代理店契約が終了せざるを得なくなることもあります。

販売代理店契約の解除については、代理店契約書の中でその手続きについて書かれていることが多いと思われます。例えば契約の期間中であれば理由のない一方的な解除ができないとか、契約期間中でもいつでも解除の通知を行うことができるが、3か月前の事前通知を要するなどです。

特に独占的な販売代理店契約の場合、日本国内での市場の獲得のために、販売代理店自体がかなりの設備投資を行っている可能性もあります。従って、判例上は継続的契約関係の解除の理論が適用になり、仮に契約書により理由のない解除ができるとされている場合であっても、合理的事由のない解除は無効と判断される可能性もあります。契約の解除を希望しない代理店としては、継続的契約関係の理論を主張して契約の更新を要求することになるかもしれません。

販売代理店契約の解除を行う場合には、通常当事者間で契約の解除について合意し、その内容を確認するため野契約解除合意書(Termination Agreement)を締結することになります。Termination Agreementでは、例えば、The Parties hereby shall confirm that the Distribution Agreement between the parties has been terminated as of June 30, 2017.(本契約の当事者は、本合意書により、2017年6月30日をもって、当事者間の販売代理店契約が解除されたことを確認する)などと記載されます。

但し、販売代理店契約は当事者間の継続的な契約関係ですので、単に契約が終了したことを確認するだけではなく、在庫の処理や、引継ぎ、競業避止、メンテナンス、商標の使用、ドメインの使用、著作権その他の工業所有権の帰属など、様々な事項について確認しておく必要があります。

例えば、販売代理店が購入済みの在庫については、在庫が亡くなるまでは市場で継続して販売するとか、メーカーが一定の割引価格により買い戻すことが定められるかもしれません。新しい代理店が継続して販売する場合には、新規の代理店に買い取ってもらうことになる可能性もあります。また、注文済みの商品がある場合、その商品について契約を履行し、日本に商品を引き渡すべきか、既に契約終了について合意されたのであるから、新規の注文でまだ履行が完了していないものについては、販売代理店契約の記載に拘わらず、当事者間の新規合意に基づき、解除できるとすることになるかもしれません。

長期の契約の場合、契約の解除通知がなされてから実際に契約が終了するまでに3か月とか6か月の余裕があるのが多いと思われますが、この間の契約関係を明確にするために、暫定的な地位について取り決める場合も多くあります。例えば暫定解除契約書(Interim Termination Agreement)を締結し、契約の終了通知は6月末で、契約の終了は12月末とし、その間の6か月における双方の当事者の法的地位について取り決めるなどです。例えば、販売代理店はこの6か月の期間中に日本にある在庫を売り切れるよう誠実に努力するものとし、12月末の段階で売れ残った商品在庫については、メーカーが通常卸価格の8かげで購入すると定めることなどです。

上記の他、商標の扱いについて問題とされることも多くあります。メーカーが日本国内で商標の出願をし、商標を有している場合は、特に問題となりませんが、販売代理店が商標やドメインを有している場合には、販売代理店が有している商標やドメインをメーカーや新たらしい販売代理店にどのようにして引き継ぐかを定めておく必要もあります。もちろん無償で権利の移転がなされ、その手続きについて当事者の了解がある場合には、その手続のみを定めればいいわけですが、例えば株式の買取などその他の条件が決まっていない場合には、商標権の移転がこれらの条件と交換条件とされることもあります。結局メーカと販売代理店は、契約の終了に関して包括的な合意を行うほかなく、その中には、上記のような在庫の扱い、商標やドメインの扱い、競業避止、株式の買取、損害賠償など、当事者の契約関係を終了させるために必要な全ての事項について定められることになります。

販売代理店契約を解除する場合には、先方から上記のような取扱いの一部についてのみ提案がある場合であっても、それぞれの条件が互いに影響し合っていること、これらの関係を全部考慮した上で、調整的な趣旨で金銭の支払いが合意されることなどを考慮の上、起こり得る全ての問題点について包括的に合意する必要があります。

海外のメーカーが契約の当事者であるような場合には、契約交渉自体がかなり負担にはなりますが、私どもが扱ってきた多くの事例では、調整金としての賠償額も数千万円から数億円になることも多くありますので、慎重かつ粘り強く衡量していくことが重要と思われます。

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2017年9月 7日 木曜日

Independent contractor agreementにおける知財の保護

海外での事業を行う場合にも知的財産権の保護は重要になります。日本で事業を行っている範囲においては、御社の知的財産権が違法に利用される場合には、比較的簡単に違法行為の内容が特定され、これに対する差止め請求を行うことも可能となります。しかし、海外で事業を行う場合には、当然現地の言葉が利用されるわけですので、御社の知的財産権が侵害されていることを見つけられないことも多くあります。通常の雇用契約においても知的財産権についての考慮が必要となりますが、Independent Contractor Agreementを締結する場合においても、知的財産権の扱いについての配慮が必要となります。

知的財産権としては、一般的には、特許権、商標権、意匠権、著作権などがありますが、登録可能なこれらの権利に加え、トレードシークレット、ノウハウなどの保護も重要となります。登録可能な権利(例えば商標権)などについては、著名商標等一定の場合を除いて登録をしていないと保護されないことになります。特許権などを除いて一般的には先に登録した人が優先しますので、もし現地で事業を始めるのであれば、商標の登録などは最初に考えなければなりません。

私どもがこれまでに扱った事例でも、独立請負人やエージェント、販売代理店などが自らの名前で商標の登録を行っており、その後何年か立った後に、契約関係が終了する段階になって初めて、商標の登録が問題となるケースも多くあります。販売代理店契約の解除であれば、販売代理店から商標を移転する代わりに多額の金銭を要求される可能性もあります。同様に将来M&Aで会社の売却をしようとする場合であっても、商標登録が他人の名前でなされていることから、権利の移転に支障が生じているのではないかと問題となります。

中には、先に登録をすることで、将来金銭の要求ができるかもしれないと考える事業者もいますが、多くの事例では、最初から独立請負人やエージェントが悪意をもって商標の登録を自分の名前でするのではなく、最初は日本の会社が自らの名前で登録できない何がしかの事業があり、その後もそのまま登録が残っているというような場合ではないかと思われます。

Independent Contractor Agreementを作成する際において最も重要なのは、制作した著作物の著作権の帰属についてです。日本の会社としては、御社の商品やサービスをローカライズするために独立請負人に販促資料を作成してもらったり、取扱説明書などの作成を依頼することもあります。例えば、会社の従業員の場合には、このような職務に関して作成した著作物(work made for hire)については、職務上著作に該当し、著作権は会社にあると判断されます。従業員は会社から給料をもらい、労務の提供を行っているのですから、その過程で作成された著作権についても当然に会社に帰属するとの考えです。

これに対し、独立請負人(独立事業者)の場合、契約上の法律関係はありますが、法律上は独立した第三者ですので、職務上著作に関する著作権法の規定がそのまま適用になるわけではありません。従って、Independent Contractor Agreementのなかで、独立請負人(独立事業者)が作成した著作物については、著作権法に言うWork Productに該当し、その著作権は独立請負人(独立事業者)ではなく、会社(依頼者)に帰属するものであることを明確にしておく必要があります。

また、Work Productsはあくまで従業員による職務上著作に関するものですので、独立請負人の契約関係においてそのまま適用になるとは必ずしも言えません。そこで、万一職務上著作の概念に該当せず、会社(依頼者)に権利が帰属しないと判断される場合には、独立請負人(独立事業者)は、著作権に関する一切の権利を無償で会社(依頼者)に譲渡することや、ライセンスフィーの支払なしにいつでも無償で利用できることなどを定めておくことも重要になります。

知的財産権の中で著作権が特に重要となるのは、最近の業務はほとんどパソコンを利用して作業がなされているわけですから、その結果として作成されるソフトウェア上のソースコードが誰に帰属するかとして問題となるからです。

また、著作権については、著作者人格権についてのケアも必要となります。著作者人格権は、著作者に本質的に所属するもので、第三者に対して譲渡できないとの考えもあるからです。独立請負人(独立事業者)は著作者人格権を放棄し、このような権利を行使しないことを定めておく必要があります。

日本の国内においても、共同開発契約や、プログラムの制作にかかわる請負契約などにおいては、特許権や著作権の帰属に関する定めを規定することが多くあります。独立請負人は、毎日会社の仕事をすることを想定していますので、会社の従業員と同じように作業を行うこととなりますが、契約上は会社の外部の第三者ですので、その業務提供の過程で生じた知的所有権の扱いを定めておくことは必須と言えます。

通常の場合、Independent Contractor Agreementの目的から全ての知的財産権は会社(依頼者、委託者)に帰属するものであり、独立請負人(独立事業者)に権利は残らないと規定するのではないかと思います。当事者の関係からすれば、これは当然であると考えます。それに対し、日本国内における共同開発契約の発想に基づき、独立事業者が作成した創作物については、独立事業者に工業所有権が帰属し、会社が作成した創作物については、独立事業者に工業所有権が帰属するというような定めをおくと、後々問題が発生し、日本の会社としては非常に困った事態にいたることも考えられます。独立請負人契約(独立事業者契約)を作成する際にはこのような点についての注意も必要です。

上記の他、独立事業者はその業務の提供の過程において、第三者の知的所有権を侵害していないこと、第三者の知的所有権を侵害するような著作物を会社の敷地内に持ち込まないこと、第三者から知的所有権の侵害があるとのクレームがあった場合には、即時に会社に報告することなど、第三者との間の知的財産権についての紛争については、自らの費用で解決し、会社に対して損害を与えないことなどの一般的な条項については、独立請負人契約書においても定めておく必要があります。

知的財産権の保護については、一般的な内容を記載すると契約書の内容が極めて長くなってしまいます。そこで、当該事案に応じてどのような知的財産権が創作される可能性がありどのような知的財産権を保護しなければならないのかを定め、その知的財産権保護に特化した条項を入れるのが好ましいと考えられます。

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2017年9月 7日 木曜日

Independent contractor agreementの秘密保持・競業避止

海外での事業を行うに際して、最初の段階で現地の人との間で雇用契約を締結するのではなく、Independent contractor Agreementを締結するのが如何に好ましいかはこれまで説明してきた通りです。Independent contractor agreementは秘密保持や競業避止に関しても、雇用契約の場合よりも会社の立場をより保護しえると言えます。多くの契約書では、会社の秘密保持、知的財産権の保護、競業避止等について必ずしも十分なケアがなされているとは言えません。そこで、以下具体的に見ていきたいと思います。

秘密保持及び競合避止契約の重要性

従業員を雇用する雇用契約書を締結する場合であっても、従業員が会社の秘密情報に接する機会は多くありますし、それらが外部に流出したり、違法に使用されて会社に損害を与えられる可能性がないとは言えません。また、従業員が会社を退職した後に、自分で独立して事業を開始したり、競合関係にある他の会社に移って御社の情報を流用される可能性もないわけではありません。そこで、多くの会社では、雇用契約書の中に秘密保持や競合避止に関する規定を入れることがありますし、雇用契約書の中に記載がない場合には、別途秘密保持や競合避止に関する誓約書の提出を求める場合も多いと思われます。

一般に雇用契約は継続的契約関係ですから、会社の秘密情報に接する機会が一層大いにも拘わらず、相互の信頼関係があるからといって、秘密保持に対する十分な対応がなされていないこともあります。また、従業員の転職の自由を制限してはいけないという労働法制上の要請から、秘密保持や競業避止に関する誓約書の提出を求める場合であっても、必ずしも厳格な決まりとなっていないことも多くあります。

多くの国では、労働者の保護法制があり、また判例上労働者の転職の自由を過度に制限する契約上の決まりは無効と判断されることとなっています。例えば、会社を退職した後に、当該会社と競合関係にある会社への就職を禁止する場合であっても、そのような禁止条項が有効かどうかが争われることになります。

競合避止条項の有効性を判断するに際して、一般には、従業員の地位、業務の内容、契約期間、対価の有無、禁止期間、地域や職種の限定の有無などがメルクマールとなります。従業員の地位について言えば、より高位にある従業員(例えば部長や課長)(雇用関係ではないですが取締役も高位にあると言えます)については、競合禁止が認められる可能性が高くなります。反対により下位にある一般の従業員については、競合禁止が認められる可能性が低くなりますので、競合禁止条項が無効と判断される可能性が高くなります。一般の従業員については、できるだけ転職の機会を認めないと生活が出来なくなってしまうという判断があるとともに、下位の地位にある社員については、秘密情報に接する機会が少なく、接する情報の重要性もそれほど大きくないことから、価値判断として、秘密情報の保護よりも従業員の転職の自由の方が重要視されるものと考えられます。

業務の内容も重要なメルクマールとなります。例えば、技術者で会社の核心的な秘密情報に接する社員であれば、競業避止がより認められやすくなるのに対し、一般の営業マン等であれば、その接する情報の秘密性がそれほど高くないと判断され、転職の自由に対する制限が認められにくくなってしまいます。また、高額の報酬を受領している社員や、退職時に高額の退職金を受領している社員であれば、競合避止義務が課される代わりに、十分な対価を得ているのであるから、その対価の中には、競合避止義務の対価も含まれていると判断される可能性も高くなります。反対に安い給料の社員については、転職の制限がなされる場合には、生活に困ってしまいますので、競合禁止も認められにくくなります。

同様に競合禁止条項の判断に際しては、禁止期間や禁止される職種や地域の限定があるかどうかも重要となります。日本の判例などを参考にすれば、1年程度の禁止期間については有効と判断される可能性が高いですが、2年を超えるような禁止期間を設けた契約書については無効と判断されるケースが多いようです。1年半の禁止期間については、微妙と判断されますので、その有効性はケースバイケースと言えます。地域的な限定や禁止される職種の限定がある場合には、競合避止契約の有効性がより認められやすくなります。従業員の立場からすれば、禁止された地域以外に就職することはできますし、禁止された職種以外の職業につくことは自由だからです。

このように、従業員に対する秘密保持契約条項や競合避止条項については、その有効性が争われることが多くありますので、会社の立場からすれば、契約書で定めたからと言って必ずしも安泰とは言えません。

これに対し、Independent Contractorの場合、独立した事業者ですので、競合避止や秘密保持についても、独立した契約当事者としてその功罪を独自に判断して契約を締結したと考えられますので、従業員の場合よりも秘密保持契約や競合避止契約が有効と判断される可能性は高いと思われます。

Independent Contractor Agreementにおける秘密保持義務としては、例えば次の様な条項が考えられます。

Each party (on its behalf and on behalf of its subcontractors, employees, or representatives, or agents of any kind) agrees to hold and treat all confidential information of other party, including, but not limited to, trade secrets, sales figures, employee and customer information, and any other information that the receiving party reasonably should know is confidential ("Confidential Information") as confidential and protect the Confidential information with the same degree of care as each party uses to protect its own Confidential Information of like nature.

(翻訳)
いずれの当事者も(それ自身のためだけでなく、あらゆる種類のその下請け、従業員、役員、エージェントのためにも)、トレードシークレット、販売量、従業員及び顧客の情報、その他受領当事者が合理的にみて秘密であると考えるその他の全ての情報を含め、相手方当事者の全ての秘密情報について秘密として保持し、その者自身の同種の秘密情報について用いられるのと同一レベルの注意を用いて秘密情報を保護するものとする。

上記は一般的な秘密保持条項ですが、独立請負人(独立事業者)の側から会社に差し入れる形式の契約書もあります。その場合の契約条項としては例えば次のようなものがあります。

You agree that during the term of this contract and for a period three years following the termination of this contract, you shall not directly or indirectly divulge or make use of any Confidential Information outside of your performance of your duty under this contract without the prior written consent of the Company.  You shall not directly or indirectly misappropriate, divulge, or make use of Trade Secret for an indefinite period of time, so long as the information remains a Trade Secret as defined by the applicable laws. 

(翻訳)
貴殿は、本契約の継続期間中及びその終了後3年間、会社からの事前の書面による許可がある場合を除き、直接的か間接的かを問わず、本契約に基づく貴殿の義務の履行以外には、秘密情報を漏えいし、又は使用してはいけない。適用になる法令によりトレードシークレットと認められる情報については、無制限の期間、直接的か間接的かを問わず、トレードシークレットを悪用し、漏洩し、使用してはならない。

最近の契約書では、秘密情報の返還に関する規定も多く含まれます。もちろん人の記憶の中にある情報の返還というのは難しいですが、記録媒体に記録されている場合には、契約が終了した段階でそのような媒体については、回収しておく必要があると考えられます。特に最近の秘密情報はほとんどすべてがデータ化され、PCのメモリやUSBで保管されていますので、かかる返還について定めておくことは重要と考えられます。

You agree to return to the Company all Confidential Information within five calendar days following the termination of the contract for any reason.

(翻訳)
貴殿は、理由の如何に拘わらず、本契約が解除された後、5日以内に、全ての秘密情報を会社に返還しなければならない。

競合避止条項
独立事業者(独立請負人)は御社の秘密情報にアクセスする機会を多く有していますので、そのような御社の秘密情報を用いて他で自分自身が事業を行ったり、外の会社への業務提供を行うに際して御社の秘密情報が利用されたりすることは何としても禁止したいと考えるのではないかと思います。従業員の場合よりも、契約期間が短いこと、会社への忠誠心が少ないこと、外の会社の業務を請け負う機会が多いことなどからすれば、従業員の場合よりも、競業避止についてはより詳細な取り決めを行っておく必要があると思われます。

私どもの経験でも、独立事業者(独立請負人)が、会社の顧客情報や技術的情報を用いて他と事業を行い、依頼者の情報が漏えいしてしまったとして問題となったケースも多くあります。特に顧客情報は比較的利用されやすいことから、契約上の制限を設けるだけでなく、顧客情報の記録されたパソコンやサーバーへのアクセスを禁止したり、制限したりすることも検討する必要があると思われます。

競合避止条項については、次のように記載することが考えられます。下記の文例は、極めて簡略なものですので、実際にはより詳細な取り決めが必要となります。

Contractor covenant and agree that, during the term of this contract and two years after the termination hereof, Contractor will not conduct business competitive with that of the Company or work for the company competitive with the Company.

(翻訳)
独立事業者は、本契約の期間中及びその後2年間、会社の事業と競合する事業を行わず、会社と競合関係にある会社で働かないことを約束し、同意する。

競合避止契約条項に、競合避止の期間や地域的制限を入れた方が好ましい(後日裁判所で無効と判断されるリスクが少なくなる)と言う点は上記に述べた通りです。競合避止については、当該事案の性質や、独立事業者(独立請負人)の立場なども考慮に入れながら、その事案にふさわしい内容を作っていく必要があります。

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office | 記事URL

2017年8月31日 木曜日

Independent contractor agreement(独立請負契約書)の作成

Independent contractorは、直訳すれば独立した請負人ということですから、建物の建築や、報告書の作成等一定の定まった成果を提出することを行う当事者のようにも思われますので、果たして現地の職務従事者が独立した請負人に該当するかどうか疑問を有するのではないかと思います。しかし、contractorというのは、意味的には契約当事者ということで請負的要素よりも、独立した契約者という意味合いが強いと思われます。

従って、日本の民法で考える請負人(例えば大工さんや研究所)などよりもより広い概念であると考えられます。ポイントは、当該職務従事者が、従業員として会社に雇われている(雇用されている)との認識であるか、自らは自営業者であり、会社から依頼された職務を遂行して、その対価を得るものだと考えているかによります。

例えば、会社の事務所に通って電話番を行う職務(月曜日から金曜日まで毎日8時間働く)であっても、従業員としてその勤務時間を拘束され、その対価を受けているということであれば雇用契約になりますが、自らは独立した自営業者であり、会社との契約で一定のサービス(電話のアポインター)を提供し、契約で定められた対価を得ているということであれば、自営業者と考えることもできます。

中小企業が初めて海外での業務を展開する場合に最初に必要となるのは、例えば次のような業務ではないかと思います。
・現地の市場調査
・現地の法令調査
・支店または子会社の立上げ業務(事務所の選定や賃貸借契約書の締結)
・日本法人との連絡、業務の遂行状況の報告
・見込み顧客の獲得
・マーケティング資料の作成
・サービスのローカライズ
・人の採用、管理

上記のような業務については、雇用契約による従業員に行わせるのが通常であるとの認識があるかもしれませんが、コンサルタントや請負人(independent contractor)に行わせることでも何ら問題ありません。もちろん、雇用契約か請負契約かは、契約書の名称だけでなく、業務の遂行状況等実質に基づいて判断されますので、先に説明したメルクマールに注意しながら、実際の業務の内容が雇用契約であるとみなされないよう注意する必要はあります(時間管理の有無、管理監督の有無)。

(業務内容に関する定め)
Independent contractor agreementの作成に際しては、上記のような点に注意しながら、提供するサービスの内容を定める必要があります。業務の内容については、通常色々な職務が含まれますので、箇条書きにすることでも問題ありません。サービスの内容を定める条項としては例えば次のようになります。

Contractor agrees to perform work for the Company on the terms and conditions set forth in this agreement, and agrees to devote all necessary time and attention to the performance of the duties specified in this agreement.  Contractor's duties shall be as follows:---- Contractor further agrees that in all such aspects of such work, Contractor shall comply with the policies, standards, regulations of the Company from time to time established, and shall perform the duties assigned faithfully to be best of his ability, and in the best interest of the Company.

(翻訳)
請負人は、本契約書の条項に基づき、会社に対して職務の遂行を行うこと、及び本契約書に定められた義務を遂行するために必要な時間と労力を尽くすことに同意します。請負人の義務は次の通りです。(義務の内容を箇条書きにする)請負人は、さらに、業務の遂行に際しては、会社がその都度定める方針、基準、規則を遵守し、能力のかぎりにおいて、会社の利益の為にその職務を行うことに同意します。

また、職務の内容については、より簡潔に記載することもできます。例えば次のようなものが考えられます。

During the Term, the Company may engage the Contractor to provide the following services as needed, or other such services as mutually agreed upon in writing by the Parties.

(翻訳)
本契約の期間中、会社は、必要に応じて、次のサービス、または当事者間で別途書面による合意したサービスを提供するよう請負人に対して委託することができる。

(契約期間)
契約期間については、一定の期間を定める方式と、業務の完了までと定める方式が考えられます。契約期間を定める方式としては次のようなものが考えられます。雇用契約の場合には、契約の解除については労働法規による制約がありますが、請負契約についてはそのような制約はありませんので、契約期間を1年と定めておきながら、会社の側では、契約期間の途中であっても、いつでも契約を終了させることができると定めることも可能です。
This agreement shall commence on the signing of this agreement and be effective for one year thereafter.  This agreement may be terminated by the Company immediately in the sole discretion of the Company.  Contractor may terminate this agreement upon fourteen days written notice to the Company. 

(翻訳)
本契約は、本契約書の締結と同時に効力を生じ、その後1年間有効とします。会社は、その判断に基づき、いつでも本契約を中途で解除することができます。請負人は、会社に対して14日前に事前に書面による通知をすることで、本契約を解除することができます。

一方、業務の終了までとする場合には次の様な条項も考えられます。
This agreement shall take effect as of the effective date, and remain in full force and effect until the Contractor has completed the Service, unless earlier terminated under this agreement.

(翻訳)
本契約は効力発生日において効力を生じ、本契約に基づき中途解約がなされる場合を除き、請負人がサービスを完了するまで効力を有する。

(独立請負人であることの確認条項)
Contractor agreementはそのタイトルからすれば、請負契約であると明示されているわけですが、当事者において法的性質について意見の相違がある場合が考えられます。また、万一仮に契約の終了や追加報酬の支払いについて裁判になった場合にも、契約上の地位について明示しておくことは有効であると考えられます。そこで、ほとんどのIndependent contractor agreementにおいては、独立した請負人であり、従業員でないことが注意的に記載されています。
The Parties intend that the Contractor be engaged as independent contractors of the Company.  Nothing contained in this agreement will be construed to create the relationship of employer and employee.  The Contractor will not be entitled to worker's compensation, retirement, insurance or other benefits afforded to employees of the Company.

(翻訳)
当事者は、請負人が独立した自営業者として雇われることを意図している。本契約書のいずれの条項も、雇主と従業員との雇用関係を創出するものとはみなされてはならない。請負人は、労災保険、退職金、社会保険、その他会社の従業員に対して認められる権利を与えられるものではない。

(その他の条項)
上記のほか、independent contractors agreementで注意すべき点がいくつかあります。

知的財産権
請負人が、その業務の遂行過程において創作した知的財産権が会社に帰属することを明確にしておく必要があります。例えば、ソフトウェアのプログラムや、著作物に関する著作権などです。雇用契約の場合には、職務上著作と認められる限り、当然に会社の所有となりますが、請負契約の場合には、その帰属について明確ではありませんので(当事者が合意により自由に定めることができる)、契約書においてきちんと定めておく必要があります。

秘密保持
請負人は業務の遂行過程において、会社の秘密情報に接する機会が多くあります。また、会社の側からすれば、請負人は、身内である従業員ではなく、外部の人ですから、提供した秘密情報を他の競業者(コンペティター)に提供されたり、その秘密情報を使って請負人が自ら事業を行ったりすることも十分に想定されるところです。従って、秘密保持義務についてきちんと定めておくことは最低限必要となります。秘密保持義務については、independent contractor agreementの中で定めることでも構いませんし、それとは別に秘密保持契約書(NDA)を締結したり、定型的なフォーマットのNDAをindependent contractor agreementの添付資料(別紙)とすることも考えられます。また、可能であれば、non-competition clause(競業避止義務)についても定めておくのが好ましいと考えられます。雇用契約の場合、秘密保持義務と競業避止義務をセットで定め、従業員の雇用に際して契約書にサインさせることが多いと思いますが、independent contractorの場合は、請負人が会社のノウハウなどを用いて将来競業を行ったり、他の会社に情報を漏らす可能性も十分に考えられますので、競業避止についての配慮も必要と考えられます。

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office | 記事URL

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