代表弁護士ブログ

2011年10月31日 月曜日

英文売買契約書作成マニュアル

海外の企業から商品を購入する場合や外国の企業に対して商品を販売する場合は、英語での売買契約書を作成する必要があります。最近中国やその他の中華圏との取引が増えたことから中には中国語での契約書を作成し、日本企業がその日本語のみを保有しているということもありますが、中国語でのニュアンスなども考慮すれば、英語での契約書を作成することが無難であると思われます。そのため、中華圏の国の企業と取引をする場合であっても、契約書は英語で作成するのが通常です。もちろん、日本企業が交渉上力が強い場合には、日本語の契約書を正本とし、英語の契約書を参考として作成する場合もありますが、ケースとしてはかなり限られていると思われます。

国際的売買契約書では、一回限りのスポット的な契約書と継続的な購買を意図した契約書の両方が考えられますが、いずれの場合であっても、基本的な構成に違いはありません。また、製品を売買して終了する場合と、外国企業に対して製造委託を行い、完成した製品を購入する契約(いわゆるOEM契約)の両方がありますが、後者の場合は、通常の売買に追加して、特許、商標などの知的所有権のライセンスと、製造に関する細かな取決めが行われるのが通常です。従って契約書の内容としてもかなり量の多いものとなります。

国際的売買契約書では、通常下記のような事項が記載されます。

1 表題部(Title)
2 頭書き(Premises)
3 全文(Whereas Clause)
4 本文
(1) 定義(Definition)
(2) 契約の基本合意
(3) 取引条件
(4) 契約期間
(5) 契約の終了事由
5 一般条項
(1) 契約の譲渡禁止(Assignment)
(2) 不可抗力(Force Majeure)
(3) 秘密保持(Secrecy)
(4) 通知(Notice)
(5) 準拠法(Governing Law)
(6) 管轄(Jurisdiction)
(7) 完全条項(Entire Agreement)
(8) 末尾文言(Closing)
6 署名欄


売買契約書のもっとも重要な事項は、数量、品質、価格になると思われます。何をいくらで買うかが取引当事者にとって一番関心のあることがらとなるからです。

品質(Quality)については、見本を提示し、その見本と同じものを売買の対象とする見本売買(sale by sample)、当該商品が有する標準的な品質の商品を売買の対象とする標準売買(sale on standard or type)、買主が売主に対して、材料、構造、性能などについて詳細な取決めをした仕様書(specification)を提示しそれに基づいて品質を決定し、売買を行う仕様書売買(sale by specification)などがあります。外国の企業との取引では、見本売買の場合であれば見本に厳格に一致していることが求められますし、仕様書売買の場合であっては、通常その業界で許された範囲内の食い違いを除き、仕様書にぴったりと一致した商品を提供することが求められます。例えば高いスペックの要求される半導体の製造装置や部品であれば、ミクロの単位で仕様書の内容に一致している必要があります。

購入者は商品を受領した後、直ちに品質検査を行い、もし不良品が存在する場合には、直ちにクレームを述べる必要があります。一定の時間までにクレームを述べなかった場合には、その商品を受け入れたものとして以後クレームを述べる機会を失ってしまうのが通常です。品質検査の方法としては、全品を検査する方法と、サンプルのみを抽出し、サンプルが問題なければ可とする抜き取り検査の方法が用いられることもあります(穀物、重油などは抜き取り検査が通常と考えられます)。

クレームの内容としては、代替品を要求する、損害賠償請求する、金銭減額請求をする、契約をキャンセルするなどと方法が考えられますが、債務不履行の際の一般的救済手段は国ごとに法律の内容が異なりますので、どの方法が認められるかは契約書の中で定めておく必要があります。

国際的取引において、どこまでの費用と責任を買主が負担し、どこからの費用と責任を売主が負担するかは重要になりますので、FOB(欄干渡し)、CIF(運賃保険料込の条件)などの条件について定めておく必要があることは前に記載したとおりです。

代金の支払い条件として、D/P(Document against Payment)(代金の支払いがあって初めて船積み書類の引渡しが行われる場合)、D/A(Document against Acceptance)(手形の交付と同時に船積書類の引渡しが行われる場合)、L/C(信用状)を利用した決済がなされる場合、TT(代金の振り込み送金がなされる場合)など様々な方法があることは以前記載したとおりですので、どの決済方法が用いられるかを明確にしておく必要がありますし、決済方法の違いによって、代金不払いのリスクが大きく異なってきますので、慎重に判断する必要があります。

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2011年10月28日 金曜日

国際取引契約の作成マニュアル レターオブインテント

レターオブインテント(Letter of Intent)は、契約書の作成途中において作成される書面で、交渉の過程で合意された事項を箇条書きのような簡単な形式でまとめた書類です。当事者がそれぞれその内容を確認し、自分の意向と一致していることを確認する趣旨で、双方の当事者がサインをします。

レターオブインテントを作成する目的としては、(1)取引の基本的内容(当事者の住所、名称、目的、対象物、価格等)を確認する趣旨で作成するもの、(2)交渉の途中で、ひとまず合意された事項を確認し、今後協議すべき対象を明確にする趣旨で作成するものなどがあります。レターオブインテントの様式については特に決まりがありませんので、箇条書きのような形や、契約書の簡略版のような形を用いる場合もあります。

レターオブインテント自体は、当事者間の合意事項を確認するものですが、原則として、その内容がそのまま法的拘束力をもつものではなく、レターオブインテントに記載されていることのみを理由として、相手方を訴えることはできません。このようにレターオブインテントには法的拘束力がないというのが原則ですが、当事者が異なった意思で作成することもありますので、法的効力に関する争いを避ける趣旨で、レターオブインテントには法的拘束力がないことを書面上明らかにすることが多いと言えます。

レターオブインテントは、契約交渉の過程で、交渉で協議され合意された事項を明らかにする趣旨で作成される場合もありますので(上記(2))、そのような内容は会議議事録(minutes of meeting)と同様のものです。従って、あえてレターオブインテントの形で作成しなくても、協議の内容を会議議事録の形でまとめることでもその目的を達しえると考えられます。

タームシート(Term Sheet)も、取引の基本的事項をまとめたものですので、レターオブインテントと同様の機能(上記(1))を有することになります。国際的ファイナンスでは、タームシートが用いられますので、通常金融機関からファシリティの基本的内容についてタームシートが提示されることになり、借主はその内容を確認して、協議を行うということになります。

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2011年10月27日 木曜日

国際取引契約の作成マニュアル 秘密保持契約書

秘密保持契約書(Non-Disclosure Agreement)は、外国の企業と取引を開始するにあたって最もよく作成される契約書です。Non-Disclosure Agreement(NDA)、Confidentiality Agreement(CA)などと呼ばれていますがいずれの場合もその内容は同じです。

秘密保持契約書では、次のようないくつかの基本的事項を定める必要があります。
(1)秘密情報とは何か(秘密情報の定義及び除外情報)
(2)秘密保持と目的外使用の禁止
(3)秘密保持義務の及ぶ範囲
(4)損害賠償
(5)契約期間

上記の他、裁判管轄や準拠法が定められたり、差止めその他権利救済方法が定められる場合もあります。

秘密情報とは、当事者が秘密として指定した情報で第三者に知られていない情報です。秘密情報の秘密性をしっかりと確保するためには、どの情報が秘密情報であるかを明確にする必要があることから、秘密情報の定義を明確に定めておく必要があります。通常、文書で開示する情報については、当該文書に秘密情報であること(マル秘など)を記載しておき、口頭で開示する場合には、開示の時点で秘密情報であることを口頭で伝え、開示後数日以内に書面によって開示された情報が秘密情報であることを通知する必要があるなどと定められます。

除外情報は、秘密保持の対象とならない情報が何であるかを定めた規定で、開示の時点で既に公知である情報(一般に知られた情報)や、開示を受けた当事者(情報受領当事者)が開示された情報によらずに独自に開発した情報などがこれに該当することになります。除外情報については、定型の記載方法がありますので、この記載方法に従うのが無難です。

秘密保持契約書を締結する目的は、開示された情報が秘密として保持されること、第三者に無許可で漏洩・開示されないことを確認するものです。情報の保管の仕方については、どの程度の注意義務が要求されるのか(自己の機密情報と同程度の管理の仕方で足りるのか)、複製(コピーを作成すること)は可能かなどを細かく定める場合もあります。

秘密保持義務の及ぶ範囲では、どの範囲の第三者が秘密保持義務を負うのかを定めます。通常契約の当事者以外の全ての者が第三者に該当しますが、例えば、社内の人間で業務の遂行上当該情報に接する必要のある人、会計士、弁護士などのプロフェッショナルなどは第三者の範囲から除かれることになります。開示を受ける社内の役員、従業員は、情報受領当事者と同程度の注意義務を負うことを定めることもあります。

損害賠償、権利救済方法とは、情報受領当事者が秘密保持義務に違反し、不正に情報の開示・漏えいがなされた場合に、情報提供者は、情報受領当事者に対してどのような権利行使ができるかを定めるものです。秘密情報の不正開示は不法行為に該当しますので、不正な開示によって損害を被った当事者が、情報開示当事者に対して損害賠償請求を行うことができることは当然ですが、仮に損害賠償責任が認められたとしても、秘密情報が開示されたという事実自体は消えることがありませんので、情報開示当事者としては回復不可能な重大な損害を被ることもあります。そのような情報開示当事者には、差止め請求、仮処分などの法的手段が認められることを明確にすることもあります。

秘密保持期間としては、取引基本契約の存続する限りというのが通常ですが、当初から5年ないし10年という確定期限を定めている場合もあります。仮に5年の期間を定めたとして、その後秘密情報が開示されても問題ないかということもありますので、基本的な取引が存続する限り秘密保持義務が続くことを定めるのが好ましいいと考えられます。また、契約が終了した段階で直ちに情報の開示がなされてもいいとなると、秘密情報の提供者が不当に損害を被る可能性もありますので、基本契約書の終了後●年が経過するまで、情報受領者が秘密保持義務を負うことを定めておくのが好ましいと考えられます。

上記のような秘密保持契約書はほとんど定型的パターンがありますので、契約書の作成それ自体はそれほど難しいということはありません(もちろん、秘密情報の重要性を考慮しながら、当事者間の関係を正確に反映するためには、ある程度の工夫は必要になってきます)が、本当に秘密性を確保しようとする場合に、どのようにして確保できるかについては慎重に考慮する必要があります。例えば、ワード文書で送った場合には、コピーされて転送されやすくなるなど、秘密性が害される恐れが高いと言えます。また、文書送付にパスワードをかけることを要求するのは当然です。FDに格納された情報であれば、FDを金庫で保管し、金庫を開ける権限者を限定しておくとか、ハードコピーは固くバインドし、写しの作成を一切禁止するなどの考慮も必要になってきます。

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2011年10月26日 水曜日

国際取引契約の作成マニュアル

国際取引契約としては様々な種類の契約書が考えられます。英文の契約書としては次のような契約書が最もよくみられるものです。

・秘密保持契約(Non-Disclosure Agreement)
・レターオブインテント(Letter of Intent)
・物品売買契約(Sale and Purchase Agreement)
・ライセンス契約(License Agreement)
・製造委託契約書(Manufacturing License Agreement)
・販売代理店契約書(Distributorship Agreement)
・ジョイントベンチャー契約書(Joint-Venture Agreement)

秘密保持契約書(Non-Disclosure Agreement)
秘密保持契約書は、Non-Disclosure Agreementの表記を略してNDAとか、Confidentiality Agreementの表記を略してCAなどと呼ばれています。いずれのタイトルを使う場合であっても内容や効力に相違はありません。一定の取引を開始するに際して、当事者間で開示された相手方の秘密情報を秘密として管理し、第三者に対して開示しないことを約する契約書です。

レターオブインテント(Letter of Intent)
レターオブインテントは、LOIと略されることもあり、契約書の作成途中において当事者が合意した事項を定める文書です。それ自体は契約ではありませんので、原則として法的拘束力がないと考えられますが、法的効力の有無について争いが生じることもありますので、LOIの中で法的拘束力のないものであることを明確にしておくのが好ましいと思われます。

物品売買契約書(Sale and Purchase Agreement)
物品売買契約書は、最も典型的な契約であると考えられます。売主は一定の商品を販売し、買主は一定の対価の支払いによって当該商品を購入する契約です。外国から商品を輸入する場合には、日本の契約書とは異なる様々な取決めがなされることになります。

ライセンス契約書(License Agreement)
ライセンス契約書は、ライセンサーが特許、商標、著作権、実用新案権、ノウハウその他の知的所有権の使用をライセンシーに許諾するものです。通常一定の対価の支払いがなされ、それによってライセンシーは当該知的所有権を利用して商品の開発などを行うことができます。

製造委託契約書(Manufacturing License Agreement)
製造委託契約書とは、自己の所有する技術、商標などを第三者に使用許諾し、自己の商標を使って製品の製造を行うことを委託する契約書です。ライセンス契約書と、販売契約書のミックスの形をとります。

販売代理店契約書(Distributorship Agreement)
販売代理店契約書は、自己の商品を外国で販売するため、外国の代理店を販売代理店に指名し、当該販売代理店が外国で商品を販売する際に従うべき事項を定める契約書です。Distributorship Agreementとか、Agent Agreementというタイトルで作成されることがあります。

ジョイントベンチャー契約書(Joint-Venture Agreement)
ジョイントベンチャー契約書とは、二つ以上の会社がそれぞれ資本を出し合い、新しい会社を設立し、新しく設立した会社を通じて事業を行っていく際に、どのような形で事業を進めていくか、事業運営についての骨格を定める契約書です。各々の当事者の出資比率や、JVにおける役員の選任方法、配当の仕方などを定めます。会社の設立に関する事項や、マネージメントの基本的事項のみをJV契約書の中で定め、マネージメントの詳細については、株主間の合意であるShareholders Agreementを別途作成することもあります。

私のブログでは、次回以降、上記の様々な契約書について、ひとつひとつどのような観点に注意しながら作成する必要があるかを説明していきたいと思います。

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office | 記事URL

2011年10月25日 火曜日

国際取引契約における一般条項(General Provision)

英文契約書を作成する場合、契約の種類に拘わらず一般的に定められる条項があります(もちろん契約書の内容によってはそのような条項が一切ないものや、簡略化されて記載されるもの、一部の条項のみ記載されるものなど様々ですが)。このような規定は一般条項(General Provision)と言われています(契約書の中では雑則:Miscellaneousといわれることもあります)。一般条項としては次のような規定があります。

契約期間(Duration)
契約の始期と終期を定めます。期間満了後、自動更新がなされる場合には、そのような記載がなされることになります。

契約解除事由(Termination)
契約の途中解除事由を定めます。債務不履行や、破産などの信用棄損などの場合において、通知後何日以内に瑕疵の治癒されない場合には、契約が終了するという形で記載されます。一定の事由の発生によって契約が当然終了する場合や、解除予告通知を送付し一定期間の経過後に契約が終了する場合があります。

譲渡禁止(Assignment)
契約上の権利や契約上の地位の移転を禁止する条項です。権利の譲渡とは、契約上発生した個別の権利を移転することを言い、契約上の地位の移転は契約に関する権利義務を包括して第三者に移転することをいいます。多くの契約書では、契約上の権利の移転、契約上の地位の移転はいずれも相手方の同意がない限り禁止されることになります。

不可抗力(Force Majeure)
不可抗力とは、両当事者のいずれの責任でもない事由の発生により契約上定められた義務の履行ができなくなる事態を言います。このような場合に、義務を履行しなかったとしても、債務不履行とはみなされないと定められます。不可抗力の事由としては、戦争や大規模の地震などがあります。通常不可抗力が問題となるケースはありませんが、今回発生した東日本大震災のような場合には、被災地については不可抗力事由が発生したとみなされるケースが多くあると思われます。

秘密保持(Secrecy)
契約の履行の際に相手方当事者に対して開示する情報について、第三者への開示を禁止する条項です。契約の当事者は一定の取引の完成に向けてお互いに協力する立場にありますので、秘密情報を相手方に開示することも多くあります。このような場合に秘密保持条項を設けておかないと、当事者の秘密情報が思わぬ第三者に開示され、回復不可能な損害を被ることがあり得ます。

通知(Notice)
外国の当事者への通知方法としては、ファックス、郵便、eメールなどがありますが、どの方法によって通知した場合に、有効な通知とみなされるかをあらかじめ定めておきます。また、通知の受取人を定めておかないと、相手方当事者に通知したつもりでも、相手方から通知を受領していないというクレームがなされることも考えられます。従って、通知の方法、受領権限者の名前、通知文書の送付先住所、通知の効力発生時期などをあらかじめ定めておくことが多くあります。

準拠法(Governing Law)
お互いに国籍を異にする当事者間の取引では、どちらの国の法律に準拠して契約書が解釈されるのかが重要になることがあります。一方の国では有効な契約条項が他方の国では無効と判断される可能性もあるためです。準拠法の定めは極めて一般的な条項といえます。

管轄(Jurisdiction)
当事者間に紛争が生じた場合に、どこの国の裁判所により紛争の解決を行うかを定める規程です。Exclusive(独占的)な裁判管轄が定められる場合には、当該契約に関する紛争については、その裁判所のみが管轄を有し、他の裁判所は管轄を有しないことになります。他の裁判所に対して提起された訴えは裁判管轄を有しないことを理由として却下されることになります。Non-exclusiveな裁判管轄が定められた場合には、契約に定められた管轄裁判所が裁判管轄を有することになりますが、法律によってその他の裁判所も裁判管轄を有する場合には、他の裁判所に訴訟を提起することもできることになります。

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office | 記事URL

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