代表弁護士ブログ

2011年11月 4日 金曜日

英文合弁契約書(ジョイントベンチャー契約書)作成の基礎知識

ジョイントベンチャー(JV)とは複数の企業が互いに資金と技術を拠出して新会社を設立し、新会社を通じて事業を行うことを言います。ジョイントベンチャーを設立するに際しては、出資を行う企業同士で、ジョイントベンチャー契約書(Joint Venture Agreement)を作成することになります。

ジョイントベンチャー契約書では、JVの設立及び運営の基本的骨格を定めることになります。もちろん、JV契約書の作成は必須ではありませんし、その形式にも特別の定めはありませので、覚書(Memorandum)という名前で契約書が作成されることになったり、基本合意書(Basic Agreement)、株主間協定書(Shareholders' Agreement)というタイトルで株主間の権利義務の取決めを行う場合もあります。

ジョイントベンチャー契約書では、第一に会社の設立について、下記のような基本的事項を定める必要があります。
(1)会社の名称
(2)所在地
(3)資本金
(4)定款の内容
(5)事業の目的

資本に関しては、資本金の額だけでなく、お互いの出資比率、授権株式数、引受株式数、支払い方法、株式の種類などを定める必要があります。特に出資比率は、将来の経営権をいずれの当事者が有するかを決定するため極めて重要な要素になります。お互いが対等の立場で新会社を設立するという場合には、出資比率も平等で50対50とするのが合理的とも考えられます。しかし50対50の出資比率とした場合、当事者の一方が反対した場合には何も決められないという状態、いわゆるデッドロック(Dead Rock)の状態に陥ってしまうことになります。従って、50対50の出資比率を定めた場合にはデッドロックの解消方法についても検討し、合わせて契約書に規定しておくのが通常です。

出資の仕方は現金によるのが通常ですが、技術や工場などを現物出資する方法も考えられます。JVの目的は通常の場合双方の技術やノウハウ、販売網などを活用して事業の拡大をもたらすことになりますので、技術や工場が出資の対象となるということも十分にあり得るところです。その場合、技術や工場の価値をどのように判断するかが重要になってきますし、その手続きについては法令上の定めがあることも多くあります(税理士や鑑定評価人(Appraiser)による鑑定評価が要求されるなど)。

ジョイントベンチャー契約書では、新会社(JV)の運営(マネージメント)についての取決めも必要になってきます。通常次のような事項が定められます。
(1)株主総会に関する事項
(2)取締役会に関する事項
(3)代表取締役、役員に関する事項
(4)監査役及び会計監査に関する事項
(5)株式の出資比率、新株の発行に関する事項

会社の経営にとっては、代表取締役は1名であるのが多いですが、場合によっては代表権のある取締役を複数名とし、代表取締役会長をX社から選任し、代表取締役社長をY社から選任するということも多くあります。取締役の数についても出資比率に応じて選出したり、出資比率が同じの場合には、同数の取締役を選出したりすることが考えられます。しかしこの場合にも、上記と同様デッドロックの生じる可能性はありますので、デッドロックの解消方法について合わせて検討しておく必要があります。

新株の発行に関する事項は重要です。JVの場合には、通常株主割り当ての方法で、従前の株主に出資比率に応じた新株の割り当てがなされると考えられますが、その場合には出資に賛成でない株主に対しても出資が強制されることになります。割り当てを受けた株主としては、新株の引き受けを行い、追加資金の拠出に応じるか、新株引受を拒否し、出資比率の減少を受諾するかを判断せざるを得ないことになるからです。第三者に対して株式の割り当てがなされる場合にも、従前の株主にとっては出資比率の減少を招くことになりますので、支配権の喪失の可能性があり、重大な問題となります。

JVの運営については、資金が枯渇した場合に、銀行借り入れなどの間接金融の方法を用いるのか、社債や新株発行による直接金融の方法を用いるかも重要になります。事業が順調に進んでいる場合は問題が生じませんが、一旦事業の運営が怪しくなった場合には、JVの当事者には、追加で資金を拠出し、JVを買い取るか、出資金を実質上放棄し、JVから退却するかを選択せざるを得ないこともよくみられるところです。

契約の終了事由もJV契約にとって極めて重要な要素です。JVはお互いに協力して会社を設立する契約ですので、結婚のような要素がありますが、契約終了は離婚に相当するもので、当事者の負担も大きくなります。契約の終了については、期間の満了や目的達成による契約終了もありますが、通常は当事者の合意によって終了するか、当事者一方の持ち分を他方当事者が買い取るという形で終了するものと思われます。従って、どのような場合に、契約が終了し(契約の解除事由も含む)、相手方当事者の株式の扱いをどのようにするか、どちらの当事者がイニシアティブをとって解消を行うか(例えば債務不履行があった場合に、債務不履行を行っていない当事者が買い取りの申入れを行う権利を有するなど)を定めておきます。JV解消の方法として、一方当事者が一定の価格を提示して買付の申し込みを行い、他方当事者が売却に応じるか、当該価格での買い取り行うかを選択できるという方法(ロシアンルーレットとも言われます)もあります。

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office | 記事URL

2011年11月 2日 水曜日

英文販売代理店契約書作成の基礎知識

日本の企業が自社の製品を海外で販売するために、海外の会社を販売代理店に指名して自社の製品を販売してもらうことがあります。同様に、外国企業の製品を日本で販売するために、日本企業が外国企業の販売代理店に指名されることがあります。このような場合に作成される契約が販売代理店契約(Distributorship Agreement)です。

エージェント契約(Agent Agreement)と言われる場合もありますが、通常販売代理店とエージェントの区別はそれほど厳密ではありません。あえて言えば、販売代理店は、外国企業の商品を自ら購入し、代理店自らが売買契約の当事者となって現地の顧客に商品を販売する場合であり、エージェントは単に商品の売買の取り次ぎをするだけで、売買契約書自体は、製造業者とエンドユーザーとの間に直接締結される場合ということもできますが、その内容については、契約ごとに異なる扱いがありますので、それぞれチェックが必要になります。

販売代理店契約では、第一に、売主が販売代理店を販売代理店に指名し、販売代理店は指定された商品を当該国で販売することを約束することが必要になります。その際、販売地域(Territory)がどの範囲であるかは重要ですので、販売地域の特定を行う必要があります。また、当該Territoryの中で、独占的に販売する権限を有するのか、非独占的な代理店契約であるのかも重要になってきます。

独占的代理店契約(Exclusive Distributorship)の場合、売主は、当該地域の中では、他の代理店を販売代理店に指名することができませんので、代理店の指名は慎重に行う必要があります。一方代理店の側では、Exclusiveな契約の場合には、人材の採用、広告宣伝活動など営業活動などに思い切って投資を行い、当該商品の販売に専念することができますが、非独占(Non-Exclusive)な契約の場合には、他の販売代理店が指名され、同一の商品が競合して市場で販売される可能性がありますので、投資についても慎重にならざるを得ないことになります。従ってExclusiveな契約とするか、Non-Exclusiveな契約とするかは、双方にとって極めて重要な事柄になります。

販売の形態として、代理店が直接顧客と契約を取り交わし、代理店が顧客との契約の当事者になる場合と、代理店は顧客を紹介するのみで、売買契約自体は、売主と顧客との間で直接取り交わされることになる場合の双方がありますので、そのどちらであるかを明確にします。代理店が直接顧客と契約を締結する場合には、当然マージンも大きくなりますが、一方で顧客との取引契約上の責任も負うことになります。例えば、顧客からクレームがあった場合には、瑕疵担保責任や債務不履行責任による損害賠償義務を負う可能性も出てきます。

代理店が単に顧客を紹介するだけの場合、代理店は売主と顧客との間に契約が成立した時点で一定のマージンをもらえることになりますが、自らが当事者として契約を締結する場合に比較しマージンの割合は小さくなります。

代理店が在庫のリスクを負うのかどうかも重要な要素です。もし代理店が一定の商品の買取責任を負う場合には、商品が販売できなかった場合には当該商品を自ら引き受けなければならなくなりますので、リスクの大きな取引であると言えます。この場合は、できるだけ在庫量の調整が行えるようにしたり、マージンを大きくしてもし販売できなかった場合のリスクをヘッジするなどの方法を合わせて検討する必要があります。

販売代理店契約のほとんどの条項が代理店の義務を定めたものになります。代理店の義務としては、次のようなものが考えられます。
(1)品質、ブランドの維持義務
(2)販売努力義務
(3)最低販売数量の約束
(4)宣伝活動の方針
(5)販促活動の内容
(6)報告義務

販売代理店契約においては契約期間も重要な要素となります。通常外国の商品を販売する場合には、当該商品の周知活動などに多額の投資を要することになりますので、突然契約を解除された場合には、代理店側に不足の損害が生じてしまう可能性があります。一方売主の側としては、できるだけいつでも契約の解除をできるようにしておかないと、当該代理店の実力が不十分で十分に市場に浸透できない場合には、競合会社に市場を取られてしまう可能性もありますので、実力のない代理店は首にして、別の代理店を探したいという要望がある得るところです。

代理店契約の期間が定められている場合であっても、繰り返し契約が更新された場合には、当事者としてはいつまでも契約が続くものと期待することがありますので、このような継続的契約関係の解除については、正当な理由を必要とするという判例法理があります(国によっては継続的契約関係の解除に制限があることを法令で定めていることも考えられます)。継続的契約関係の解除は、実務上もよく問題になることですので、外国の代理店を指名する場合には、現地の法令についてのチェックも必要になるかもしれません。

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office | 記事URL

2011年11月 1日 火曜日

英文ライセンス契約書作成の基礎知識

外国企業に技術供与を行う場合や外国企業から技術導入を行う場合には、ライセンス契約書(License Agreement)を作成します。ライセンスの対象となる技術は、特許(Patent)、著作権(Copyright)、商標(Trademark)、意匠(Industrial Design)、実用新案(Utility)、ノウハウ(Know-how)など様々なものがあります。

英文契約書では、技術を供与する側の当事者をライセンサー(Licensor)といい、技術の使用許諾を受ける側の当事者をライセンシー(Licensee)といいます。ライセンサーは技術の使用を許諾し、ライセンシーは当該技術の使用許諾を受け、これを使って製品を製造することができることになります。

ライセンシーは、技術の使用許諾の対価(見返り)として、ライセンサーに対してライセンスフィーを支払う必要があります。ライセンスフィーの種類としては、一回限りの支払であるランプサムペイメント(Lump Sum Payment)の方法と、分割払いの方法であるインストールペイメント(Install Payment)の方法が考えられます。ランプサムペイメントは契約締結時にロイヤルティの全額を一度に支払うものですので、イニシアルペイメント(Initial Payment)とも言われます。インストールペイメントは、分割払いの方法で、ランニングロイヤルティ(Running Royalty)とも呼ばれ、通常契約期間全体にわたって販売した製品の販売価格などを基準に定められた金額を支払うものです。イニシアルペイメントとランニングロイヤルティは、両方の支払いが要求されることもあります(例えば契約締結時に1億円を支払い、その後、売上高の3%を毎年支払うなど)。

ロイヤルティの計算方法としては、売上高をベースにその何パーセントとする方法(グロスの計算方法)と、売上高から製造原価などを控除した粗利や、間接経費を控除した営業利益を基準として、その何パーセントとする方法(ネットの計算方法)などがあります。

このようにロイヤルティの計算は通常の場合、売上高に応じて決められることになりますので、ライセンシーが売り上げ努力をしない場合には、ロイヤルティは発生しないことになり、ライセンサーとしては好ましくない結果となってしまいます。そこで、毎年支払うべき最低金額(ミニマムロイヤルティ)を定めておき、どんなに売り上げが少ない場合であっても、最低限ミニマムロイヤルティの金額は支払わなければならないと定めることもあります。

国際的ライセンス契約においては、移転価格税制(Transfer Pricing Taxation)についても考慮が必要です。ライセンスの対象となる技術は無形物であるのが通常ですので、技術の供与に利益の移転が伴うことに気付かず、場合によってはライセンスフィーの支払を定めず無償で権利の使用を許諾する場合も考えられます。例えば日本の親会社が優れた技術を有しており、シンガポールに所在する日本の子会社又はJVに対して無償で当該技術の使用を許諾するとします。もし当該技術に経済的価値があり、第三者間取引(Arms' Length Transaction)の場合には当然にライセンスフィーの支払いが必要であったとすると、日本の企業は本来要求すべきライセンスフィーの支払いを受けず、反対にシンガポールの子会社はライセンスフィーの支払いを免れることになりますので、日本の企業の利益がライセンスフィー相当額だけ損をしたことになり、シンガポールの子会社は同額の利益をあげたことになります。

国際税務の世界では、本来日本の源泉となるべき利益が海外に移転し、日本での課税を行えなくなってしまったのであるから、第三者間取引において通常支払うべき金額の利益が日本企業に発生したものとして日本企業に課税を行うというのが移転価格税制です。従って、親子会社の間で技術移転を伴う取引がなされる可能性がある場合には、技術移転が存在しないかを検討し、移転価格税制適用のリスクがある場合には、ライセンス契約を作成して適切な額のライセンスの授受を行うのが相当であると思われます。

ライセンスフィーをどのように計算するかは難しい問題がありますが、工業統計などを利用して一般的な料率を定めるのが一般と思われます。一律に製造原価に数パーセントの価格を上乗せするという方法もあります。

ライセンス契約では、ライセンサーにとっては、相手方であるライセンシーがどれくらいの製品を製造、販売しているかによってフィーの価格が異なってきますので、ライセンシーは正確な会計帳簿を作成し、売上、原価計算を正確に行っておく必要があります。また、ライセンサーとしては、ライセンシーの工場への立ち入り検査、帳簿の閲覧などを行って、申告された売上高などの数字が正しいものであるかを確認できるようにしておく必要があります。そこで、契約上もGAPP(当該国で一般に公正妥当と認められた企業会計原則)に基づく会計帳簿の作成、工場への立ち入り検査などについて定められることが多くあります。

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office | 記事URL

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