代表弁護士ブログ

2012年6月27日 水曜日

M&Aを行う際の留意点3―デューデリジェンス(DD)、契約交渉、最終合意

デューデリジェンス(DD)
デューデリジェンスは、ビジネス、法務、会計の面から行う対象企業の精査になります。基本的方向としては、役員その他重要なキーマンからのヒアリングを行うマネージメントインタビューと、提出書類をもとに法務、会計の面から企業の内容を精査する法務デューデリ、会計デューデリがあります。マネージメントインタビューでは、主要な取引先や、販売価格、営業利益率、商品・在庫の動向、営業戦略などについて確認することになります。法務デューデリでは、会社の設立以来の株式の移動に関する資料を確認し、株式の発行及び株式の移動が法的手続きにのっとり適正に行われているかどうか、取締役会決議、株主総会決議が適切に行われているかどうか、不動産・知的所有権その他の資産について、法律上有効な登記・登録手続きがなされているかどうか、取引先との契約関係で不当に不利な内容の問題のある条項が存在しないかどうか、営業許可が有効に取得されており、業務の内容に法令違反などの可能性がないかどうか、訴訟その他潜在的リスクが存在しないかどうか、などを確認することになります。会計デューデリでは、会社の伝票を確認し、会計帳簿が適切に作成されているかどうかをチェックするとともに、税務会計面からのリスクの有無を判断することになります。企業買収は、成功すれば企業の発展に大きく貢献するものですが、一方で、問題ある企業を買収した場合には、大きなリスクを引き受けることになり、一つの買収の失敗で企業の存続を脅かすリスクさえ抱え込んでしまうことになります。かかる意味でデューデリジェンスは時間と労力、コストを要する作業ですが、M&Aの手続きにおいては極めて重要なプロセスであると考えられます。

契約交渉
契約交渉としては、売買の対象を何にするのか(株式であれば全部の株式か一部の株式か)、対価をいくらにするのかが重要な交渉対象となります。会社の企業価値の評価については、純資産価格方式、類似会社方式、収益還元方式、将来収益の現在価値を基準とするDCF方式など様々な方法があります。一般的には、これらの方式の内、2つまたは3つの算定方式により企業価値をだし、その加重平均によって算出することが多く用いられます。もちろん、企業の内容は様々であり、M&Aを決断するに至った事情も様々である上、とりわけ相対方式の場合、売主の売りたい価格と買主の買いたい価格が一致したところが適正価格と言えますので、事業価値の算定は一つの参考ではあっても必ずしもそれに従わなければならないわけではありません。また、会社の帳簿は、継続企業としての会計原則に従って作成されるものですので、必ずしも企業の売買価格を算定するために作成されているものではありませんので、買収に際しては帳簿価格の修正が必要になることがあります。多くの事例では、役員・従業員の退職金の積立不足の補正、帳簿に記載された売掛債権のうち回収見込みの少ない債権の除去、在庫棚卸による在庫価格の調整、取得価格で計上されている所有不動産の時価への洗い替えなどが行われます。

最終合意
株式譲渡の場合であれば、株式譲渡契約書を作成し、当事者双方が調印することになります。同様に、事業譲渡の場合であれば、事業譲渡契約書を作成し、当事者双方が調印することになります。いずれの場合でも、対象となる株式、事業の内容を明確にし、その対価がいくらで、どのような方法によりいつ支払うかを明確にする必要があります。また、いずれの契約書でも、保証表明条項が重要となり、売主は契約書に定められた内容が間違いないことを保証・表明することになります。もし、企業の内容が当初教えられていた内容と異なる場合には、保証表明違反として売主は損害賠償責任を負う可能性もあります。保証表明として、どのような内容を盛り込むかは、当事者間の協議で定められることになりますので、売主としてはできるだけ保証表明の範囲を狭くしたいと考えますし、買主としては保証表明をできるだけ広く規定し、万一問題がある場合には、代金の減額や損害賠償によって価格の実質的修正を図りたいと考えることになります。最終合意書は、法律的効力を有することになりますので、その後は最終合意書で定められた条項の履行に向けた行動を行っていく必要があります。また、最終合意書に調印した場合、従業員、取引先への告知を行い、クロージングに向けて準備を進めていくことになります。なお、最終合意書を締結する前に、売主、買主とも取締役会で当該契約書に調印することを了承する内容の取締役会決議を経ておく必要があります。

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2012年6月25日 月曜日

M&Aを行う際の留意点2―買収スキームの確定、事業譲渡と会社分割、株式取得、LOI

買収スキームの確定
M&Aの手法としては、合併、株式取得、事業譲渡、会社分割、株式交換等様々な種類が考えられます。買手のニーズや売手のニーズを考慮しながら、どの方法が最も適した方法であるかを検討する必要があります。その際、法務面からは、手続きの簡便さ、スケジュールその他時間的制約、潜在リスクを承継することをどこまで受容することができるかなどを検討する必要があります。税務面からは、どの方法がもっとも節税効果を発揮できるかを検討することになりますので、例えば債務超過企業を買収する場合であっても、その企業の持つ繰越損失を有効に活用し、将来の税金の支払いを軽減するということも考えられます。また、会社の時価と買収価格との差額を暖簾として計上する場合には、暖簾の償却によって将来の営業利益が圧縮される可能性があることも検討しなければなりません。上場会社においては、単なる節税効果だけでなく、営業利益に対する影響も考えなければなりませんので、タックスプランニングはスキーム選定における重要な選択要素となってきます。

事業譲渡と会社分割
企業を買収する際の多くの方法は事業譲渡または株式の取得になります。事業譲渡の場合、ターゲット企業の特定の資産、負債、取引先などを選択して、必要な部分のみ購入することができますので、買い手にとっては、潜在的負債を引き受けることで、予想外の損失を被ることを回避することができます。会社分割は会社法に定められた方法により、会社の一部門のみを承継する方法ですので、事業譲渡に近い制度ですが、当該部門に関する事業を包括的に引き継ぐ点では包括承継の性質も有しています。事業譲渡の場合、個々の譲渡対象資産ごとに対抗要件を備える必要があります。例えば、不動産を取得する場合には、売買を原因とする移転登記を行うことが必要になりますし、自動車や知的財産権については、登録を要する必要があります。(指名)債権の取得については、債務者に対して内容証明郵便により債権譲渡通知を行うなど、第三者対抗要件を備える必要があります。譲渡会社にとっては、重要な資産の譲渡になる場合には、取締役会の決議または株主総会の決議が必要になります。どのような場合に株主総会の決議が必要かは実際の事業規模などに即して個別に判断せざるをえませんが、会社の売上や資産規模、営業利益の額を考慮して判断されることになります。

株式取得
これに対し、株式取得の場合は、会社をそのままの状態で包括的に引き継ぐことになりますので、買い手にとっては、ターゲット企業の潜在リスク(訴訟リスクや未確認の連帯保証責任)などを承継する恐れがあります。従って、株式取得を行う場合には、訴訟を含め、どのような潜在リスクがあるかを慎重に見極める必要が出てきます。当然デューデリジェンスによって発見される瑕疵については、対価を決定する際に考慮されることになりますが、場合によってはデューデリジェンスでも発見されない瑕疵が生じる可能性がありますので、事業内容を含めてどのようなリスクがあり得るかについては慎重な判断が求められる可能性があります。一方で、株式取得は、譲渡対象企業の取締役会の承認など簡単な手続きで行うことができますので、譲渡契約書の作成、調印、取締役会の承認決議、代金の支払い、株主名簿の変更等、手続き自体は極めて簡単なものとなります。

LOI
LOIは、Letter of Intentの略で、売り手と買い手が、買収スキームなど基本的事項について合意した段階で締結されるものです。Memorandum of Understandingの頭文字をとってMOUと言われることもありますが、基本的に同じものを言うと考えられます。LOIには、売主、買主、売買の対象となるもの(株式なのか、事業なのか、株式とすればどの株式を何株か)、クロージング予定日、買収対価等の基本条件が記載され、両当事者がその内容を確認の上、調印を行います。LOI自体には最終合意に至る前の段階で、それまでの当事者の合意事項をまとめる趣旨で締結されるものですので、一般的には法的拘束力を有していないと考えられています。従って、LOIの締結後、交渉が暗礁に乗り上げ、最終合意に至らなくても、当事者は損害賠償の支払いなどの法的責任を負うものではありません。但し、契約締結中とはいえ、当事者が真剣に協議を行っているものですので、何らの理由なく契約交渉を取りやめたり、契約交渉の途中でより有利な買収候補が現れたということで、相手方の合意なく他の買手候補に乗り換えたりした場合には、契約締結上の過失として損害賠償の支払い義務が発生する可能性もあります。

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2012年6月20日 水曜日

M&Aを行う際の留意点1―買収候補または売却先の探索、インフォーメーションパッケージの作成、秘密保持契約書、相対取引とビッド方式

企業買収は、業容の拡大、後継者問題の解決、事業の再生など企業運営のあらゆる場面で見られるようになっています。現在のように市場の急激な拡大が見込めない中で、同業他社の買収または同業他社への売却は事業の存続にとっても重要な戦略に位置づけられます。私どもの事務所でもM&Aにかかわる案件が非常に多くなっていますので、内内案件(国内企業が国内企業を買収する案件)を中心として、その手続きについて簡単にみていきたいと思います。

買収候補または売却先の探索
M&Aの世界では買収候補をターゲットと呼びます。ターゲットの探索は、法律事務所や会計事務所に依頼することもありますが、当該業界についての圧倒的情報量を有する証券会社やその他専門業者に依頼する方法が多く取られます。ブティック型の専門業者は、主に四季報などで候補となる企業を探索し、訪問や手紙などで買収についての関心の有無を確認するのに対し、大手証券会社では、当該業界内で有名な企業を羅列したいわゆるロングリストを作成し、その中から適当な候補者をいくつか絞り込み、絞り込んだ先に買収についての関心の有無を確認するという方法を取っています。

インフォーメーションパッケージの作成
ターゲットとなる企業では、企業を売却するに際していわゆるインフォーメーションパッケージを作成します。インフォーメーションパッケージには、設立年月日、所在地、役員の構成、主要取引先などの会社の基本情報とともに、所有不動産の一覧、所有する知的財産権の一覧などを表にしてまとめます。インフォーメーションパッケージは買収先が買収を判断する際に重要な書類になりますので、情報がきちんと整理されているかどうか、エクセルやパワーポイント、写真などを有効に活用した見栄えの良いものであるかどうかも重要になります。証券会社などをM&Aのフィナンシャルアドバイザー(FA)に選任している場合には、FAが効果的なインフォーメーションパッケージを作成してくれます。

秘密保持契約書
買収候補企業に対して情報を提供する場合には、会社の秘密情報も提供されることになりますので、当該情報が買収以外の目的に使用されたり、ディールがブレークした後、その情報が他社の営業や商品開発などに使用されることになってはいけませんので、秘密保持契約書(Non-Disclosure Agreementの頭文字をとってNDA、Confidential Agreementの頭文字をとってCAとも呼ばれます)を締結することが重要になります。秘密保持契約書では、秘密保持、目的外使用の禁止のほか、情報の管理の方法、ディールがブレークした場合の情報の返還、廃棄の方法についても、開示の方法や範囲に関連し、緻密に確認しておく必要があります。また、秘密保持契約書を締結しただけで満足せず、必ず情報の返還や廃棄については、文書をシュレッダーしたことやコピーを取っていないことなどを確認する確認書の提出を受けることも重要になります。

相対取引とビッド方式
M&Aは売却企業にとっては極めて重大な影響のある事象ですので、その交渉を行っていること自体、取引先や従業員に対して最大限に秘密にしていく必要があります。従って多くのケースでは、相対取引となり、特定の買収候補に個別に当たり検討を要請することになりますが、倒産企業の売却などの場合には、秘密の保持よりも、取引価格の公正さの要請が強いことから、複数の買収候補企業から意向表明書を提出してもらい、条件のよい2ないし3社と並行して交渉を行うということもあります。この場合、買収候補者は、インフォーメーションパッケージを確認の上、大体いくらの金額で購入する意向があるのか、購入する場合の条件としてどのようなものがあるのかなどを簡潔にまとめ、意向表明書に記載する必要があります。また、ビッド方式の場合には、FAは、入札手順書を作成し、意向表明書を提出した買収候補者に連絡します。買収候補者は、FAの定めた買収スケジュールにのっとり、デューデリジェンスを行った後、入札期日までに購入価格を記載した書面を袋に入れ糊付けしてFAに送付し、FAは改札日において、封書を開封し、最も高価の申し出のあった候補者と最終合意に向けた交渉を行うという手順を取ることになります。

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2012年6月15日 金曜日

競業避止義務に関する判例紹介

平成24年6月13日、東京高等裁判所において、退職後2年以内に競業他社に就職するのを禁止する契約条項を無効とする判決が出されました。この判決は、従前の取引慣行に対する変更を求められるという意味で、会社実務において極めて影響の大きい判決でありますので、その意味について検討したいと思います。

企業にとっては、企業の秘密情報を保護することは極めて重要ですので、とりわけ企業秘密にかかわる業務を行う社員については雇用契約を締結する際に、競業避止義務、秘密保持義務を定める秘密保持契約書を締結するのが通常です。また、特許など開発にかかわる従業員については、工業所有権の譲渡に関する規定が盛り込まれることも多くあります。

競業避止義務は、競業会社への就職を禁止するものですので、従業員の就職の機会を奪うことになる可能性があり、従業員にとっては生活ができなくなるような大きな制約となります。一方で会社からすれば、従業員が就業中に得た顧客に関する情報や、技術、ノウハウに関する情報を競業会社にもっていかれることで、事業継続に支障をきたすような重大な影響を受けることがあります。

そこで従前の判例では、1.禁止期間が合理的であるかどうか、2.禁止の範囲が不当に広汎に及ばないかどうか、3.当該従業員に対する競業避止義務を課することがその職務の内容に照らして合理的かどうか、4.競業避止義務を課す代わりにそれに見合った給料の支払いがなされているか、などを基準に判断していました。1.の禁止期間については、1年半ないし2年の期間は、限界的な場合と考えられますが、一応合理的な期間内と考えられていました。今回の判例は2年の期間を無効と判断したことになりますので、競業避止の範囲、期間について再考することが必要となってきます。

確かに、例えば弁護士や医師が、勤務先を退職した後2年間弁護士業、医師業をしてはならないということであれば、職業選択の事由に対する過重な制限であると考えられます。同様に例えば保険会社や銀行などの金融機関に勤務していた人についても、当該分野において専門的に活動しており、知識、ノウハウ、人脈なども当該業界を中心とするものですので、当該業界での勤務を禁止することはその期間仕事をしてはいけないということに匹敵するような重大な制限であるとも考えられます。

従前は、当該従業員・役員の役職や秘密情報に接近する度合いなどをもとに、ある程度機械的に競業避止義務の有効性を判断していたと思いますが、今後は、従業員・役員の職業選択の自由と企業の秘密情報の管理の必要性をより詳細かつ事案に沿って個別的に判断していく必要があるということになります。いずれにしても、今回の判例は、競業避止義務についての再考を求めるものであり、その有効性については個別の事案ごとに詳細な検討が必要となり、かつより会社側に厳しく判断されるということになります。

会社側としては、従前の就業規則、その他競業避止義務を規定した秘密保持契約書についての再検討が必要になりますし、企業秘密の保全について、単に契約書に頼るだけでなく、情報へのアクセス制限を見直したり、不正競争防止法による制限について社員教育を施すなど対応策を検討していく必要があります。

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office | 記事URL

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