代表弁護士ブログ

2017年8月31日 木曜日

Independent contractor agreement(独立請負契約書)の作成

Independent contractorは、直訳すれば独立した請負人ということですから、建物の建築や、報告書の作成等一定の定まった成果を提出することを行う当事者のようにも思われますので、果たして現地の職務従事者が独立した請負人に該当するかどうか疑問を有するのではないかと思います。しかし、contractorというのは、意味的には契約当事者ということで請負的要素よりも、独立した契約者という意味合いが強いと思われます。

従って、日本の民法で考える請負人(例えば大工さんや研究所)などよりもより広い概念であると考えられます。ポイントは、当該職務従事者が、従業員として会社に雇われている(雇用されている)との認識であるか、自らは自営業者であり、会社から依頼された職務を遂行して、その対価を得るものだと考えているかによります。

例えば、会社の事務所に通って電話番を行う職務(月曜日から金曜日まで毎日8時間働く)であっても、従業員としてその勤務時間を拘束され、その対価を受けているということであれば雇用契約になりますが、自らは独立した自営業者であり、会社との契約で一定のサービス(電話のアポインター)を提供し、契約で定められた対価を得ているということであれば、自営業者と考えることもできます。

中小企業が初めて海外での業務を展開する場合に最初に必要となるのは、例えば次のような業務ではないかと思います。
・現地の市場調査
・現地の法令調査
・支店または子会社の立上げ業務(事務所の選定や賃貸借契約書の締結)
・日本法人との連絡、業務の遂行状況の報告
・見込み顧客の獲得
・マーケティング資料の作成
・サービスのローカライズ
・人の採用、管理

上記のような業務については、雇用契約による従業員に行わせるのが通常であるとの認識があるかもしれませんが、コンサルタントや請負人(independent contractor)に行わせることでも何ら問題ありません。もちろん、雇用契約か請負契約かは、契約書の名称だけでなく、業務の遂行状況等実質に基づいて判断されますので、先に説明したメルクマールに注意しながら、実際の業務の内容が雇用契約であるとみなされないよう注意する必要はあります(時間管理の有無、管理監督の有無)。

(業務内容に関する定め)
Independent contractor agreementの作成に際しては、上記のような点に注意しながら、提供するサービスの内容を定める必要があります。業務の内容については、通常色々な職務が含まれますので、箇条書きにすることでも問題ありません。サービスの内容を定める条項としては例えば次のようになります。

Contractor agrees to perform work for the Company on the terms and conditions set forth in this agreement, and agrees to devote all necessary time and attention to the performance of the duties specified in this agreement.  Contractor's duties shall be as follows:---- Contractor further agrees that in all such aspects of such work, Contractor shall comply with the policies, standards, regulations of the Company from time to time established, and shall perform the duties assigned faithfully to be best of his ability, and in the best interest of the Company.

(翻訳)
請負人は、本契約書の条項に基づき、会社に対して職務の遂行を行うこと、及び本契約書に定められた義務を遂行するために必要な時間と労力を尽くすことに同意します。請負人の義務は次の通りです。(義務の内容を箇条書きにする)請負人は、さらに、業務の遂行に際しては、会社がその都度定める方針、基準、規則を遵守し、能力のかぎりにおいて、会社の利益の為にその職務を行うことに同意します。

また、職務の内容については、より簡潔に記載することもできます。例えば次のようなものが考えられます。

During the Term, the Company may engage the Contractor to provide the following services as needed, or other such services as mutually agreed upon in writing by the Parties.

(翻訳)
本契約の期間中、会社は、必要に応じて、次のサービス、または当事者間で別途書面による合意したサービスを提供するよう請負人に対して委託することができる。

(契約期間)
契約期間については、一定の期間を定める方式と、業務の完了までと定める方式が考えられます。契約期間を定める方式としては次のようなものが考えられます。雇用契約の場合には、契約の解除については労働法規による制約がありますが、請負契約についてはそのような制約はありませんので、契約期間を1年と定めておきながら、会社の側では、契約期間の途中であっても、いつでも契約を終了させることができると定めることも可能です。
This agreement shall commence on the signing of this agreement and be effective for one year thereafter.  This agreement may be terminated by the Company immediately in the sole discretion of the Company.  Contractor may terminate this agreement upon fourteen days written notice to the Company. 

(翻訳)
本契約は、本契約書の締結と同時に効力を生じ、その後1年間有効とします。会社は、その判断に基づき、いつでも本契約を中途で解除することができます。請負人は、会社に対して14日前に事前に書面による通知をすることで、本契約を解除することができます。

一方、業務の終了までとする場合には次の様な条項も考えられます。
This agreement shall take effect as of the effective date, and remain in full force and effect until the Contractor has completed the Service, unless earlier terminated under this agreement.

(翻訳)
本契約は効力発生日において効力を生じ、本契約に基づき中途解約がなされる場合を除き、請負人がサービスを完了するまで効力を有する。

(独立請負人であることの確認条項)
Contractor agreementはそのタイトルからすれば、請負契約であると明示されているわけですが、当事者において法的性質について意見の相違がある場合が考えられます。また、万一仮に契約の終了や追加報酬の支払いについて裁判になった場合にも、契約上の地位について明示しておくことは有効であると考えられます。そこで、ほとんどのIndependent contractor agreementにおいては、独立した請負人であり、従業員でないことが注意的に記載されています。
The Parties intend that the Contractor be engaged as independent contractors of the Company.  Nothing contained in this agreement will be construed to create the relationship of employer and employee.  The Contractor will not be entitled to worker's compensation, retirement, insurance or other benefits afforded to employees of the Company.

(翻訳)
当事者は、請負人が独立した自営業者として雇われることを意図している。本契約書のいずれの条項も、雇主と従業員との雇用関係を創出するものとはみなされてはならない。請負人は、労災保険、退職金、社会保険、その他会社の従業員に対して認められる権利を与えられるものではない。

(その他の条項)
上記のほか、independent contractors agreementで注意すべき点がいくつかあります。

知的財産権
請負人が、その業務の遂行過程において創作した知的財産権が会社に帰属することを明確にしておく必要があります。例えば、ソフトウェアのプログラムや、著作物に関する著作権などです。雇用契約の場合には、職務上著作と認められる限り、当然に会社の所有となりますが、請負契約の場合には、その帰属について明確ではありませんので(当事者が合意により自由に定めることができる)、契約書においてきちんと定めておく必要があります。

秘密保持
請負人は業務の遂行過程において、会社の秘密情報に接する機会が多くあります。また、会社の側からすれば、請負人は、身内である従業員ではなく、外部の人ですから、提供した秘密情報を他の競業者(コンペティター)に提供されたり、その秘密情報を使って請負人が自ら事業を行ったりすることも十分に想定されるところです。従って、秘密保持義務についてきちんと定めておくことは最低限必要となります。秘密保持義務については、independent contractor agreementの中で定めることでも構いませんし、それとは別に秘密保持契約書(NDA)を締結したり、定型的なフォーマットのNDAをindependent contractor agreementの添付資料(別紙)とすることも考えられます。また、可能であれば、non-competition clause(競業避止義務)についても定めておくのが好ましいと考えられます。雇用契約の場合、秘密保持義務と競業避止義務をセットで定め、従業員の雇用に際して契約書にサインさせることが多いと思いますが、independent contractorの場合は、請負人が会社のノウハウなどを用いて将来競業を行ったり、他の会社に情報を漏らす可能性も十分に考えられますので、競業避止についての配慮も必要と考えられます。

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office | 記事URL

2017年8月29日 火曜日

Independent Contractors Agreement(請負契約書)の活用

中小企業が海外展開を行う場合、まず最初に海外の拠点をどのように作るかが問題となります。支店(branch office)の設立や子会社(subsidiary)の設立が最初に思われますが、その前に現地の市場調査や、簡単な活動を開始し、事業の採算性が見込まれることが明らかになった段階で子会社の設立に進みたいと思われることが多いと思われます。

現地での活動を開始する場合には、最初に人を雇う必要があります。現地に子会社が存在する場合には、その子会社を雇主として契約を締結することになります。すなわち子会社と現地の従業員との間の雇用契約となります。また、現地に子会社が設立されていない場合には、日本の会社が雇主になり、現地の従業員を雇用するという形態をとることになるかもしれません。

しかしながら雇用契約(employment agreement)については、それぞれの国で労働者の保護が図られていますので、仮に雇用契約書の中で日本法を準拠法と定めたとしても、労働者の保護については、現地の労働法制が強制的に適用になることが多いと思われます(労働法の強行法規性)。雇用契約書の内容が現地の労働法制に違反する場合には、雇用契約書の内容ではなく、現地の労働法制が優先的に適用になり、現地の労働法制に違反する範囲において雇用契約の内容は無効と判断されることになります。仮に日本の法人が雇主になり、現地の従業員を雇用する場合であっても、実際に労務を提供している場所の労働法制が優先適用になりますので、当該雇用関係については、日本法ではなく、現地の労働法制が適用になることになります。

また、雇用契約の場合、社会保険料の支払や雇用保険への加入など、従業員を保護するための制度が適用になりますので、会社はこれらの保険への加入も強制されることになります。さらに、雇用契約の場合、仮に事業がうまくいかず、現地の事業を閉鎖しようとしても、従業員の解雇が認められるのかどうかが重要となってきます。

そこで、上記のような雇用契約における制約を回避するためには、現地の人を従業員として採用するのではなく、独立の請負人として採用することができるかどうかが問題となります。請負契約(independent contractor agreement)が一定の業務に対して対価を支払うことを約束する契約ですから、それぞれが独立した当事者間の契約であり、雇用とは異なりますので、労働法規の適用もないことになります。

もちろん、実体が雇用契約であるにも関わらず請負契約の形を取ったからと言って、労働法制の適用を免れることができるわけではありません。従って、請負契約を行う場合には、実際の契約関係が雇用ではなく、請負であることを明確にする必要がありますし、実際の業務の遂行においても、雇用契約とみなされないよう注意をしておく必要があります。もし、請負契約ではなく、雇用契約であると判断されることになると、現地の行政機関の介入を招き、年金や社会保険料の未払を理由として行政機関による科料の制裁を科されたり、税務署から源泉徴収税について課税されたりするリスクも存在することになります。現地の人が業務の遂行中にけがをした場合には、労災保険への未加入を理由として科料の制裁を科される可能性もありますし、当該業務提供者との間において裁判に発展する可能性も考えられます。

そこで、どのような場合が雇用契約に該当し、どのような場合が請負契約に該当するかを慎重に判断する必要があります。また、このような判断基準に十分に注意することで、雇用契約とみなされるリスクをできる限り回避することも重要になってきます。

雇用契約か請負契約かの判断に際しては、業務の遂行に対する管理監督が行われているかどうかが最も重要なファクターとなります。雇用契約の場合、業務の遂行に際して使用者の管理監督権限が及ぶことになりますし、反対に請負契約の場合には、業務の遂行について使用者の管理監督権限は及ばず、業務遂行者の裁量に任されていることになります。実際の判断に際しては、当該業務遂行者の能力、権限、時間管理、業務遂行場所、法的権限等を中心に判断されることになります。

例えば、弁護士を雇う場合には、(社内弁護士などを除く)通常の場合弁護士は、職務上の能力が高く、業務の遂行について裁量権を有していますので、当該弁護士は労働者ではなく、(委任か請負かは別として)外部の契約関係者と判断されることになると思われます。また、請負契約においても労務提供時間について1日あたり8時間をめどとするということを定めることは可能ですが、勤務時間を厳格に定め、朝9時から夕方6時まで就労するということを具体的に指示している場合には労働契約と判断される可能性が高くなってくることになります。請負人は、一定の業務の遂行を約束するものですので、依頼された業務が完成できる限り、いつ、どれだけ業務を行うかについては、当該業務提供者の裁量に任せられることになります。

このように請負契約であると評価されるためには、当該業務提供者の専門的能力を評価して対価を支払うことを定めること、業務提供者に業務遂行に関する裁量権限を与えること、業務提供に関する時間管理をあまり厳格にしすぎないようにし、業務提供者に対して業務提供時間についての裁量を与えること、業務遂行場所もできるだけ自由とすることなどに注意することが必要になります。しかしながら、これらについては、評価的要素も多く含まれますので、請負契約とするために、絶対にこうしなければいけないという基準があるわけではありません。仮に、一つのめどとして1日の業務提供時間を8時間とすることを定めたとしても、そのことが直ちに雇用契約であると判断されることにつながるわけではありません。

なお、現地での販路の拡大をめざし、顧客の勧誘などを委託し、成果に応じて報酬を支払う形態としてagent agreement(エージェント契約)やdistributor agreement(販売代理店契約)を作成することも考えられます。エージェント契約や販売代理店契約の区別としては、契約締結についての法的な代理権限を有しているかどうか、単なる顧客の紹介にとどまるのか、サービスや商品を自らのリスクにより販売するか、中継ぎに止まるかなどによって区別されますが、いずれもIndependent agreementにおける請負人よりもより独立性が高い形態と考えられます。

雇用契約と判断された場合の会社の負担をまとめれば次のようになります。
・準拠法の定め如何に拘わらず、現地の労働法制(法律)が強制適用される
・管轄合意にかかわらず、労働者から裁判を起こされた場合の裁判管轄は、労働者の労務の提供場所となる
・労働者の解雇について制約がある(正当事由がないと解雇できなかったり、解雇に際して一定の金銭の給付が求められることがある)
・社会保険(social insurance)への強制加入が要求され、会社が一定の負担を求められる
・雇用保険への加入が強制される
・労災保険への加入が強制される
・残業代の支払が強制される
・給与の支払について源泉徴収が必要

反対に請負契約の場合には、次のように言えます。
・準拠法(どこの国の法律が適用になるか)を当事者の合意によって定めることができる
・裁判管轄について当事者の合意で定めることができる(例えば、裁判については日本の裁判所で行わなければならないと定めることができる)
・社会保険、雇用保険、労災保険などへの加入が必要ない
・残業代の支払が必要ない(労務管理が不要)
・源泉徴収義務が必ずあるわけではない

このように使用者からすれば、請負契約は圧倒的に有利と言えます。従って、中小企業が海外展開を行うに際して現地の人を採用するには、independent contractor agreementの採用の可否について検討することは重要と思われます。なお、コンサルタント契約書(consultant agreement)も雇用契約ではなく、独立した第三者との契約と言う意味では、independent contractor agreementの一つと考えられます。コンサルタント契約書と請負契約書の違いは必ずしも明確ではありませんが、請負契約書では特定の成果が求められることがより明確にされている場合(行われた成果に対して対価を払うという関係がより明瞭)と考えることができます。

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office | 記事URL

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