代表弁護士ブログ

2017年9月 7日 木曜日

Independent contractor agreementにおける知財の保護

海外での事業を行う場合にも知的財産権の保護は重要になります。日本で事業を行っている範囲においては、御社の知的財産権が違法に利用される場合には、比較的簡単に違法行為の内容が特定され、これに対する差止め請求を行うことも可能となります。しかし、海外で事業を行う場合には、当然現地の言葉が利用されるわけですので、御社の知的財産権が侵害されていることを見つけられないことも多くあります。通常の雇用契約においても知的財産権についての考慮が必要となりますが、Independent Contractor Agreementを締結する場合においても、知的財産権の扱いについての配慮が必要となります。

知的財産権としては、一般的には、特許権、商標権、意匠権、著作権などがありますが、登録可能なこれらの権利に加え、トレードシークレット、ノウハウなどの保護も重要となります。登録可能な権利(例えば商標権)などについては、著名商標等一定の場合を除いて登録をしていないと保護されないことになります。特許権などを除いて一般的には先に登録した人が優先しますので、もし現地で事業を始めるのであれば、商標の登録などは最初に考えなければなりません。

私どもがこれまでに扱った事例でも、独立請負人やエージェント、販売代理店などが自らの名前で商標の登録を行っており、その後何年か立った後に、契約関係が終了する段階になって初めて、商標の登録が問題となるケースも多くあります。販売代理店契約の解除であれば、販売代理店から商標を移転する代わりに多額の金銭を要求される可能性もあります。同様に将来M&Aで会社の売却をしようとする場合であっても、商標登録が他人の名前でなされていることから、権利の移転に支障が生じているのではないかと問題となります。

中には、先に登録をすることで、将来金銭の要求ができるかもしれないと考える事業者もいますが、多くの事例では、最初から独立請負人やエージェントが悪意をもって商標の登録を自分の名前でするのではなく、最初は日本の会社が自らの名前で登録できない何がしかの事業があり、その後もそのまま登録が残っているというような場合ではないかと思われます。

Independent Contractor Agreementを作成する際において最も重要なのは、制作した著作物の著作権の帰属についてです。日本の会社としては、御社の商品やサービスをローカライズするために独立請負人に販促資料を作成してもらったり、取扱説明書などの作成を依頼することもあります。例えば、会社の従業員の場合には、このような職務に関して作成した著作物(work made for hire)については、職務上著作に該当し、著作権は会社にあると判断されます。従業員は会社から給料をもらい、労務の提供を行っているのですから、その過程で作成された著作権についても当然に会社に帰属するとの考えです。

これに対し、独立請負人(独立事業者)の場合、契約上の法律関係はありますが、法律上は独立した第三者ですので、職務上著作に関する著作権法の規定がそのまま適用になるわけではありません。従って、Independent Contractor Agreementのなかで、独立請負人(独立事業者)が作成した著作物については、著作権法に言うWork Productに該当し、その著作権は独立請負人(独立事業者)ではなく、会社(依頼者)に帰属するものであることを明確にしておく必要があります。

また、Work Productsはあくまで従業員による職務上著作に関するものですので、独立請負人の契約関係においてそのまま適用になるとは必ずしも言えません。そこで、万一職務上著作の概念に該当せず、会社(依頼者)に権利が帰属しないと判断される場合には、独立請負人(独立事業者)は、著作権に関する一切の権利を無償で会社(依頼者)に譲渡することや、ライセンスフィーの支払なしにいつでも無償で利用できることなどを定めておくことも重要になります。

知的財産権の中で著作権が特に重要となるのは、最近の業務はほとんどパソコンを利用して作業がなされているわけですから、その結果として作成されるソフトウェア上のソースコードが誰に帰属するかとして問題となるからです。

また、著作権については、著作者人格権についてのケアも必要となります。著作者人格権は、著作者に本質的に所属するもので、第三者に対して譲渡できないとの考えもあるからです。独立請負人(独立事業者)は著作者人格権を放棄し、このような権利を行使しないことを定めておく必要があります。

日本の国内においても、共同開発契約や、プログラムの制作にかかわる請負契約などにおいては、特許権や著作権の帰属に関する定めを規定することが多くあります。独立請負人は、毎日会社の仕事をすることを想定していますので、会社の従業員と同じように作業を行うこととなりますが、契約上は会社の外部の第三者ですので、その業務提供の過程で生じた知的所有権の扱いを定めておくことは必須と言えます。

通常の場合、Independent Contractor Agreementの目的から全ての知的財産権は会社(依頼者、委託者)に帰属するものであり、独立請負人(独立事業者)に権利は残らないと規定するのではないかと思います。当事者の関係からすれば、これは当然であると考えます。それに対し、日本国内における共同開発契約の発想に基づき、独立事業者が作成した創作物については、独立事業者に工業所有権が帰属し、会社が作成した創作物については、独立事業者に工業所有権が帰属するというような定めをおくと、後々問題が発生し、日本の会社としては非常に困った事態にいたることも考えられます。独立請負人契約(独立事業者契約)を作成する際にはこのような点についての注意も必要です。

上記の他、独立事業者はその業務の提供の過程において、第三者の知的所有権を侵害していないこと、第三者の知的所有権を侵害するような著作物を会社の敷地内に持ち込まないこと、第三者から知的所有権の侵害があるとのクレームがあった場合には、即時に会社に報告することなど、第三者との間の知的財産権についての紛争については、自らの費用で解決し、会社に対して損害を与えないことなどの一般的な条項については、独立請負人契約書においても定めておく必要があります。

知的財産権の保護については、一般的な内容を記載すると契約書の内容が極めて長くなってしまいます。そこで、当該事案に応じてどのような知的財産権が創作される可能性がありどのような知的財産権を保護しなければならないのかを定め、その知的財産権保護に特化した条項を入れるのが好ましいと考えられます。

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office | 記事URL

2017年9月 7日 木曜日

Independent contractor agreementの秘密保持・競業避止

海外での事業を行うに際して、最初の段階で現地の人との間で雇用契約を締結するのではなく、Independent contractor Agreementを締結するのが如何に好ましいかはこれまで説明してきた通りです。Independent contractor agreementは秘密保持や競業避止に関しても、雇用契約の場合よりも会社の立場をより保護しえると言えます。多くの契約書では、会社の秘密保持、知的財産権の保護、競業避止等について必ずしも十分なケアがなされているとは言えません。そこで、以下具体的に見ていきたいと思います。

秘密保持及び競合避止契約の重要性

従業員を雇用する雇用契約書を締結する場合であっても、従業員が会社の秘密情報に接する機会は多くありますし、それらが外部に流出したり、違法に使用されて会社に損害を与えられる可能性がないとは言えません。また、従業員が会社を退職した後に、自分で独立して事業を開始したり、競合関係にある他の会社に移って御社の情報を流用される可能性もないわけではありません。そこで、多くの会社では、雇用契約書の中に秘密保持や競合避止に関する規定を入れることがありますし、雇用契約書の中に記載がない場合には、別途秘密保持や競合避止に関する誓約書の提出を求める場合も多いと思われます。

一般に雇用契約は継続的契約関係ですから、会社の秘密情報に接する機会が一層大いにも拘わらず、相互の信頼関係があるからといって、秘密保持に対する十分な対応がなされていないこともあります。また、従業員の転職の自由を制限してはいけないという労働法制上の要請から、秘密保持や競業避止に関する誓約書の提出を求める場合であっても、必ずしも厳格な決まりとなっていないことも多くあります。

多くの国では、労働者の保護法制があり、また判例上労働者の転職の自由を過度に制限する契約上の決まりは無効と判断されることとなっています。例えば、会社を退職した後に、当該会社と競合関係にある会社への就職を禁止する場合であっても、そのような禁止条項が有効かどうかが争われることになります。

競合避止条項の有効性を判断するに際して、一般には、従業員の地位、業務の内容、契約期間、対価の有無、禁止期間、地域や職種の限定の有無などがメルクマールとなります。従業員の地位について言えば、より高位にある従業員(例えば部長や課長)(雇用関係ではないですが取締役も高位にあると言えます)については、競合禁止が認められる可能性が高くなります。反対により下位にある一般の従業員については、競合禁止が認められる可能性が低くなりますので、競合禁止条項が無効と判断される可能性が高くなります。一般の従業員については、できるだけ転職の機会を認めないと生活が出来なくなってしまうという判断があるとともに、下位の地位にある社員については、秘密情報に接する機会が少なく、接する情報の重要性もそれほど大きくないことから、価値判断として、秘密情報の保護よりも従業員の転職の自由の方が重要視されるものと考えられます。

業務の内容も重要なメルクマールとなります。例えば、技術者で会社の核心的な秘密情報に接する社員であれば、競業避止がより認められやすくなるのに対し、一般の営業マン等であれば、その接する情報の秘密性がそれほど高くないと判断され、転職の自由に対する制限が認められにくくなってしまいます。また、高額の報酬を受領している社員や、退職時に高額の退職金を受領している社員であれば、競合避止義務が課される代わりに、十分な対価を得ているのであるから、その対価の中には、競合避止義務の対価も含まれていると判断される可能性も高くなります。反対に安い給料の社員については、転職の制限がなされる場合には、生活に困ってしまいますので、競合禁止も認められにくくなります。

同様に競合禁止条項の判断に際しては、禁止期間や禁止される職種や地域の限定があるかどうかも重要となります。日本の判例などを参考にすれば、1年程度の禁止期間については有効と判断される可能性が高いですが、2年を超えるような禁止期間を設けた契約書については無効と判断されるケースが多いようです。1年半の禁止期間については、微妙と判断されますので、その有効性はケースバイケースと言えます。地域的な限定や禁止される職種の限定がある場合には、競合避止契約の有効性がより認められやすくなります。従業員の立場からすれば、禁止された地域以外に就職することはできますし、禁止された職種以外の職業につくことは自由だからです。

このように、従業員に対する秘密保持契約条項や競合避止条項については、その有効性が争われることが多くありますので、会社の立場からすれば、契約書で定めたからと言って必ずしも安泰とは言えません。

これに対し、Independent Contractorの場合、独立した事業者ですので、競合避止や秘密保持についても、独立した契約当事者としてその功罪を独自に判断して契約を締結したと考えられますので、従業員の場合よりも秘密保持契約や競合避止契約が有効と判断される可能性は高いと思われます。

Independent Contractor Agreementにおける秘密保持義務としては、例えば次の様な条項が考えられます。

Each party (on its behalf and on behalf of its subcontractors, employees, or representatives, or agents of any kind) agrees to hold and treat all confidential information of other party, including, but not limited to, trade secrets, sales figures, employee and customer information, and any other information that the receiving party reasonably should know is confidential ("Confidential Information") as confidential and protect the Confidential information with the same degree of care as each party uses to protect its own Confidential Information of like nature.

(翻訳)
いずれの当事者も(それ自身のためだけでなく、あらゆる種類のその下請け、従業員、役員、エージェントのためにも)、トレードシークレット、販売量、従業員及び顧客の情報、その他受領当事者が合理的にみて秘密であると考えるその他の全ての情報を含め、相手方当事者の全ての秘密情報について秘密として保持し、その者自身の同種の秘密情報について用いられるのと同一レベルの注意を用いて秘密情報を保護するものとする。

上記は一般的な秘密保持条項ですが、独立請負人(独立事業者)の側から会社に差し入れる形式の契約書もあります。その場合の契約条項としては例えば次のようなものがあります。

You agree that during the term of this contract and for a period three years following the termination of this contract, you shall not directly or indirectly divulge or make use of any Confidential Information outside of your performance of your duty under this contract without the prior written consent of the Company.  You shall not directly or indirectly misappropriate, divulge, or make use of Trade Secret for an indefinite period of time, so long as the information remains a Trade Secret as defined by the applicable laws. 

(翻訳)
貴殿は、本契約の継続期間中及びその終了後3年間、会社からの事前の書面による許可がある場合を除き、直接的か間接的かを問わず、本契約に基づく貴殿の義務の履行以外には、秘密情報を漏えいし、又は使用してはいけない。適用になる法令によりトレードシークレットと認められる情報については、無制限の期間、直接的か間接的かを問わず、トレードシークレットを悪用し、漏洩し、使用してはならない。

最近の契約書では、秘密情報の返還に関する規定も多く含まれます。もちろん人の記憶の中にある情報の返還というのは難しいですが、記録媒体に記録されている場合には、契約が終了した段階でそのような媒体については、回収しておく必要があると考えられます。特に最近の秘密情報はほとんどすべてがデータ化され、PCのメモリやUSBで保管されていますので、かかる返還について定めておくことは重要と考えられます。

You agree to return to the Company all Confidential Information within five calendar days following the termination of the contract for any reason.

(翻訳)
貴殿は、理由の如何に拘わらず、本契約が解除された後、5日以内に、全ての秘密情報を会社に返還しなければならない。

競合避止条項
独立事業者(独立請負人)は御社の秘密情報にアクセスする機会を多く有していますので、そのような御社の秘密情報を用いて他で自分自身が事業を行ったり、外の会社への業務提供を行うに際して御社の秘密情報が利用されたりすることは何としても禁止したいと考えるのではないかと思います。従業員の場合よりも、契約期間が短いこと、会社への忠誠心が少ないこと、外の会社の業務を請け負う機会が多いことなどからすれば、従業員の場合よりも、競業避止についてはより詳細な取り決めを行っておく必要があると思われます。

私どもの経験でも、独立事業者(独立請負人)が、会社の顧客情報や技術的情報を用いて他と事業を行い、依頼者の情報が漏えいしてしまったとして問題となったケースも多くあります。特に顧客情報は比較的利用されやすいことから、契約上の制限を設けるだけでなく、顧客情報の記録されたパソコンやサーバーへのアクセスを禁止したり、制限したりすることも検討する必要があると思われます。

競合避止条項については、次のように記載することが考えられます。下記の文例は、極めて簡略なものですので、実際にはより詳細な取り決めが必要となります。

Contractor covenant and agree that, during the term of this contract and two years after the termination hereof, Contractor will not conduct business competitive with that of the Company or work for the company competitive with the Company.

(翻訳)
独立事業者は、本契約の期間中及びその後2年間、会社の事業と競合する事業を行わず、会社と競合関係にある会社で働かないことを約束し、同意する。

競合避止契約条項に、競合避止の期間や地域的制限を入れた方が好ましい(後日裁判所で無効と判断されるリスクが少なくなる)と言う点は上記に述べた通りです。競合避止については、当該事案の性質や、独立事業者(独立請負人)の立場なども考慮に入れながら、その事案にふさわしい内容を作っていく必要があります。

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office | 記事URL

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