代表弁護士ブログ

2020年6月 4日 木曜日

予防法務(労務関係規則の作成)

予防法務の考え方
従前、労働法務については、労使対立構造を前提にして、経営者と従業員の立場をどのように調整していくかを中心として考えられていました。しかし現代では階級闘争の考えはなくなり、とくに長引く不況の中でどのようにして会社の存続を図っていくのかが重視されるようになっています。対立構造も労働者と経営者というよりも、正社員と非正規社員の待遇の違いをどのように調整していくのかが重要となっています。世の中全体を見ても、官庁からの指導はだんだんとなくなり、各企業が法律に基づき自己責任で判断を行い、紛争があった場合には、裁判所における司法によって事後的に解決する(法の支配)という方向に代わってきています。各企業は、予防私法の考え方に立ち、会社規則その他内部で作成された規範をもとに企業経営を行っていく体制に変化していかなければなりません。予防法務とは、あらかじめ契約書や規則を作成することによって当事者の権利義務関係を明確化し、紛争の発生を避けるという考え方です。貴社の経営も予防法務の立場に立ったものに変化して行く必要があります。

就業規則の作成・改定
就業規則は労務関係に関する会社の憲法(あるいはコレド)のようなものです。就業規則には、労働基準法により絶対に記載しなければならない絶対的記載事項と、会社の判断により記載しても記載しなくてもいい相対的記載事項があります。労働基準法の求める絶対的記載事項には、①始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、②賃金の決定、計算及び支払い方法、賃金の締め切り及び支払い時期、昇給に関する事項、③退職に関する事項(解雇の事由を含む)があります。すなわち、労働者が何時間働いて、どれだけの報酬をもらえるのかということは就業規則の根幹にあるものであり、会社の経営者としてはこれをしっかり守っていく必要があります。また、近時では、労働者の側が自分たちの権利を主張する一方で、就労時間内における労務の提供(単に一定の時間会社にいるだけでなく、その中でしっかりとした成果を残せるよう職務に専念する義務)を果たしているのかが懸念されるところもあります。解雇事由を含め、就業規則の絶対的記載事項にわたる部分は労使の約束の根幹になる部分ですので、この点をしっかり理解しておく必要があります。

賃金規定などの作成
賃金規定の内容をどのようにするかは会社によって千差万別と言えます。会社の規模や経営状態、業務内容等賃金規定の背景が著しく異なるためです。しかし、会社の経営がある程度安定し、新人社員の採用を含めて将来への発展を考える場合、賃金規定を整備し、従業員が安心して働ける体制を作ることも重要と考えられます。もちろん、会社の経営が不安定な状況では、賃金規定が経営の支障になり、会社の倒産を招いてしまうこともあります。従って賃金規定の策定は慎重に行う必要もあります。これらの要素も考慮しながら、会社が現在どのような経営上の位置にあり、将来の発展の土台をどのように整備していくかを考えた場合、賃金規定の整備は重要となってきます。社宅規定、慶弔規定、旅費交通費規定などは、従業員の福利厚生的意味合いだけでなく、資金の管理がなし崩し的ではなく、しっかりとしてルールにより管理されているという企業風土を作る意味でも重要となります。これらの規定についても経営の支障にならない範囲で企業実態に合ったものを作成していく必要があると思われます。

育児休業規定、介護休業規定
政府では、働き方改革も含め、育児休業・介護休業の取得を奨励しています。これまでに日本の会社員が家族との時間をほとんどとることなく会社に縛られていたことを考えると、これからの時代においてそれぞれの社員が家族との関係をしっかりと構築することは重要と思われます。一方育児や介護については本来国が制度として行うべきもので、それを企業の側に押し付けているのではないかという疑念もないわけではありません。しかしながら、国民の総体的幸せを考えた場合、労働者の精神的安定の面からも、家庭とのバランスを保った働き方が重要になることは間違いないと言えます。厚生労働省が作成する育児休業規定・介護休業規定のモデルはあまりにも難解過ぎて普通の企業ではそのまま使えないと思われます。各企業がそれぞれの企業の実態に即して制度を構築し、規則に落とし込んでいく必要があります。

セクハラ規定・パワハラ規定
セクハラやパワハラが違法と認識されて数年がたち、現在では社会の中にしっかりと定着していると言えます。会社がセクハラ規定やパワハラ規定を導入しだしたのもつい数年前からです。どの企業もまだ十分な経験がない中での制度構築となります。今日の社会においては、セクハラやパワハラが会社内部の秩序として存在することは間違いない事実ですので、これを会社の規範としてルールの中にしっかり取り込んでいくことが重要と考えられます。

会社規則の策定の意味
会社の規則は、会社の運営がその規則に則って行われることを従業員に示すものであり、経営者もその規則に拘束されます。会社の規則の存在により、会社の経営が人による恣意的支配によるものではなく、各自が認める公平なルールによるものであることを認識し、安心して企業生活に取り組むことができることになります。会社規則の作成は、事前に規範を提示して紛争の発生を防止するとともに、会社の文化(モラル)の中心となるものであり、会社を形作る重要な一部であると考えられます。

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office | 記事URL

2020年6月 4日 木曜日

賃料減額請求訴訟(賃貸借に関する訴訟)

事案の概要
不動産市況の低迷により、建物の賃借人の側から賃料減額請求訴訟を提起されることが多くあります。当事務所では、賃料減額請求訴訟が起こされた場合の訴訟手続きを代理して行います。

賃料減額請求
借地借家法32条は、建物賃貸借における賃料の増減請求について定めています。建物の賃料が同種の建物の賃料と比較して不相当となったときに、将来にわたって賃料の増減を請求することができるものです。建物の賃貸人としては、現在の賃料は適正賃料に比較し不相当に安いので、賃料を増額してほしいと請求することができます。同様に建物の賃借人としては、現在の賃料が適正賃料に比較し不相当に高いので、賃料を増額してほしいと請求することができます。請求は内容証明郵便を用いて郵便により行われることが一般です。但し、賃貸借契約書などにおいて賃料の増減請求を行わない旨の特約がある場合や、定期賃貸借契約については、賃料増減額請求はできません。

話し合いによる解決
賃貸借契約は長期の契約であることが多く、双方の信頼関係を基礎として成り立つものです。そこで賃料の増減額請求を行う場合にも、できるだけ当事者間での話し合いを行うのが好ましいと考えられます。多くの事例では、契約更新時などにおいて賃料の増減について合意がなされています。

賃料減額訴訟の提起
賃貸人と賃借人との間で賃料増減額請求についての合意ができない場合は、訴訟を提起することになります。賃料減額を求める訴訟においては、賃借人が原告となって、賃貸人を訴えることになります。

鑑定評価
賃料減額請求訴訟が提起された場合、裁判所は当事者双方に対して適正な賃料を示す資料を提示するよう要求します。当事者は適切な鑑定機関に適正賃料の鑑定を依頼し、公正な価格の算定を行ってもらう必要があります。鑑定に要する費用は当事者の負担となります。通常、原告(賃借人)、被告(賃貸人)の双方から鑑定評価書が提出されます。裁判においては、相手方当事者の提出した鑑定書の内容に問題があると考える場合、相手方鑑定書の問題点を指摘する必要があります。賃料減額請求訴訟において双方の当事者から鑑定意見書が出された場合には、裁判官の指導により和解が成立することも多くありますが、当事者間による協議が整わない場合には、裁判所において第3番目の鑑定がなされることもあります。適正賃料をいくらとするかは裁判所の判断によることになりますが、裁判所が行った鑑定結果をもとに判断されることが多いと考えられます。

賃料減額訴訟が提起された時の対応
賃料減額請求訴訟が提起された場合、判決が出されるまでの期間、賃貸人はいくらの賃料を請求できるのかが問題となります。借地借家法32条3項では、「建物の借賃の減額について当事者間に協議が整わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払いを請求することができる。」とされています。「相当と認める額の建物の借賃」というのはわかりにくいですが、判決が出るまでは従前の賃料の請求を行うことができ、賃借人がその賃料を支払わない場合は、賃借人の債務不履行ということになります。賃借人としては、減額請求を行えば直ちに賃料が減額されるのではなく、裁判所により判決を得るまでは賃料は減額されません。

弁護士費用
賃料減額請求訴訟を起こす場合の弁護士費用をどのように計算するかについて決まった算式があるわけではありません。多い事例として、賃料の7年分を賃借人の経済利益として計算する場合があります。例えば100万円の賃料を70万に減額するよう請求する場合に、30万円×12か月×7年=2520万円を訴訟における経済的利益とし、それに日本弁護士連合会の旧弁護士報酬基準を適用する考え方です。しかしこの方式では、減額される賃料に比較して弁護士報酬が高くなりすぎますので、仮に賃料減額に成功した場合であっても、減額分のほとんどが弁護士費用に充てられることになって賃借人のメリットはほとんどなくなってしまいます。賃料減額請求訴訟を提起する場合には弁護士報酬をどのように算出するかについて弁護士とよく話し合っておく必要があります。

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2020年6月 4日 木曜日

建物明渡訴訟(賃貸借に関する訴訟)

事案の概要
事務所や家屋を賃貸している場合に、賃料の支払を受けられない場合があります。未払賃料額が膨れ上がって賃料の回収不能となる前に法的手続をとることが重要です。賃料不払を続ける賃借人との契約を早期に解除し、速やかに建物を明け渡させた上で、新しい賃貸借契約を締結し賃料収入を確保していかなければなりません。当事務所では、賃借人に対する未払賃料請求、賃貸借契約の解除、未払賃料請求訴訟などを通じて賃料の回収を図っていきます。

内容証明郵便による催告書の送付
当事務所では、賃料を滞納している賃借人に対して内容証明郵便による催告を行います。催告書の送付は、賃借人に対するプレッシャーを与え自発的支払いを促す効果がありますし、賃借人とのコミュニケーションの端緒とすることもできます。また、内容証明郵便を発送することで、賃借人がその住所に住んでいるかどうか(郵便物を受け取る意思があるかどうか)を判断する材料ともなります。また、内容証明郵便による催告は、裁判上の証拠となり、未払い賃料の存在を裁判官に簡単に理解してもらうことができる効果や、時効中断の効果もあります。また、賃貸借契約については、賃料未払いを理由に解除しておく必要があります。内容証明郵便は、未払い賃料の支払を催告するとともに、賃貸借契約の解除通知としての役割も有することになります。

賃借人の住所調査
当事務所では、戸籍謄本や住民票により賃借人や保証人の戸籍や住民票の調査を行います。訴訟を提起する場合に、賃借人の住所を特定する必要があるためです。訴状の送達を確実にする必要があることから、場合によっては、戸籍や住民票に記載された住所に行き、表札や郵便受けの名前を確認することもあります。外国人が相手の場合、従前は外国人登録簿で住所を確認していましたが、法律の改正により外国人の住所についても住民票で確認することができるようになりました。訴訟の相手方についての戸籍や住民票の取得は、弁護士が使用する職務上請求用紙という特別の用紙に基づいて行うもので、有資格者以外の方が自分で行うことはできません。

公示送達
賃借人が賃借建物に荷物を残したまま行方不明となっていることも多くあります。また、賃借人が刑事事件で逮捕され、勾留中であったり、実刑判決を受けて刑務所に服役していることもあります。実刑判決を受けて服役している被告については、弁護士照会制度により現在被告が服役している刑務所を法務省に照会することで送達場所を確認する必要があります。送達は刑務所長に対して行うことになります。賃料の滞納を継続している賃借人と全く連絡がとれない場合は、公示送達による送達を行う必要があります。公示送達の申し立てを行うためには、住民票などで調査をしたが住所の確認ができなかったことの上申書が必要になります。

占有移転禁止の仮処分
賃借人に対して訴訟を提起した場合に、賃借人が別の人に転貸借して、その建物に別の人が居住していることがあります。明け渡し訴訟は、現にそこに居住している人に対して行わなければなりませんので、別の不法占拠者が占拠した場合は、改めてその人に対して訴訟をし直さなければなりません。上記のような転貸借や別の人を居住させるのは明らかに訴訟を妨害する目的と考えられます。このような訴訟の妨害を防ぐために、訴訟提起の前に占有移転禁止の仮処分を申し立てることが重要です。裁判所が占有移転禁止の仮処分決定を出してくれると、その後は現在の賃借人のみを相手に訴訟を追行することが可能となります。

建物明け渡し請求訴訟の提起
未払賃料の支払請求訴訟とともに、建物明け渡し請求訴訟を行います。契約解除時までが未払い賃料になり、契約解除以降は不法占拠による損害賠償請求として賃料相当額の支払いを求めることになります。未払い賃料の支払請求訴訟と建物明け渡し請求訴訟は併合して行われますので、裁判所は一つの判決で両方の請求を認めてくれます。賃借人が自発的に建物を明け渡してくれたほうが強制執行の手間と費用を省くことができますので、賃貸人にとって有利です。そこで裁判所は、当事者に対して和解を勧告することが多くあります。和解の内容としては、一定期日までに建物を明け渡すことと、未払い賃料を分割で支払うことが定められます。

自力執行の禁止
建物明け渡しについての判決がなされ、または和解が成立した場合であっても、被告が合意した期日までに明け渡さないことがあります。このような場合、建物の明け渡しは、裁判所の命令に基づいて行う必要があります(明け渡しを命じる判決分だけでは不十分です)。例えば賃貸人がマスターキーを預かっている場合でも、マスターキーを使って賃借人の住居に勝手に入ることはできません。また、和解や判決が出たのちであっても、明け渡し手続きを賃貸人が勝手に行うことはできず、賃借人が自発的に明け渡しを行わない場合には、強制執行手続きを取り、裁判所の指名した執行官に明け渡し手続きを行ってもらう必要があります。自力執行を行った場合、賃借人から住居侵入で刑事告訴されることもありますので、注意が必要です。

建物明け渡しの強制執行
裁判所から建物を明け渡すよう命じる判決の言い渡しがなされたにもかかわらず、賃借人が建物を明け渡さない場合には、建物明け渡しの強制執行を行う必要があります。和解が成立したにもかかわらず、和解で定められた期日までに明け渡しがなされない場合も同じです。当事務所では、賃貸人からのご依頼により、裁判所に対して明け渡し執行の申し立てを行い、執行官との面談及び交渉、運送業者や解錠業者の手配を行います。また当事務所の弁護士が執行手続きに立会います。賃借人の家財道具などの荷物は一旦倉庫などで保管しますが、賃借人が引き取らない場合は競売手続きにより売却されます。建物明け渡しの申し立てを行う場合、申立人である賃貸人の側で執行官の報酬を保管金として裁判所に納付する必要があります。また、運送業者、倉庫業者、解錠業者の報酬なども一旦賃貸人の側で支払う必要がありますので、建物明け渡しの強制執行を行う場合には、賃貸人の側で最低でも100万円から200万円の金額の負担が必要になります。

強制執行費用確定処分の申立て
建物明け渡しを行う場合は、賃貸人の側で多額の費用の支出を行わなければなりません。そこで賃貸人は、強制執行が終了した後、裁判所書記官に対して強制執行費用確定処分の申立てを行うことで、賃貸人が立替払した強制執行費用について債務名義を得ることができます。未払賃料や強制執行費用について、任意の支払がない場合は、賃料支払の確定判決と強制執行費用に関する書記官の処分を債務名義として、賃借人の財産(銀行預金など)を差し押さえたり、賃借人の給料を差し押さえることができます。

家財道具の競売手続き
建物明け渡しの際に運び出された家財道具は、賃貸人が準備した運送会社によって、賃貸人が準備した倉庫まで移送され、一旦その倉庫で保管されます。その後執行官は競売期日を定め、競売期日に倉庫に出向いてきた業者の中で最も高い価格を付けた業者に引き渡すことになります。債務者である賃借人も競売手続きに参加することができますので、賃借人が自ら購入することも可能です。

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2020年6月 4日 木曜日

未払残業代支払請求訴訟(労働関係訴訟)

事案の概要
会社を退職した従業員から会社に対して未払残業代の支払請求訴訟が提起されました。当事務所では、被告である会社(当事務所の顧問先)を代理して訴訟を追行し、和解で事件を終結することができました。

証拠保全の申し立て
医療過誤の場合のカルテと同様に、未払残業代支払請求訴訟においては、タイムカードの記録や業務日報の記録が重要な証拠になることがあります。退職前から訴訟提起を考えている場合を除き、原告である従業員がこれらの記録の写しを有していない場合がほとんどですので、従業員を代理して訴訟提起を行おうとする原告代理人としては、裁判所に対して証拠保全を申し立て、これらの記録を確保したいと考えることが多くあります。会社側としては、裁判所が行う証拠保全について従わないわけにはいきませんので、裁判所の指示に基づき証拠を提出します。しかし、会社側としても大量の写しを作成したり、秘密事項がないかどうかを確認したりする必要もありますので、できれば一旦裁判官には帰ってもらい、これらの確認が終わった段階で任意に証拠を提出することで申立代理人や裁判官の理解を得ることが好ましいと考えられます。

管轄
会社を退職した従業員が会社を訴える場合、従業員が退職後に住所を移転していることが多くあります。会社を辞めたので、実家に帰っていることなどが理由と思われます。そこで、従業員としては、すでに退職した会社の所在地の裁判所に訴訟を提起するのは、遠隔地に行かなければならず、経済的負担も大きくなりますので、できるだけ自宅の近くの裁判所に訴訟を提起したいと考えます。この場合、原告側の弁護士は、未払残業代や不法行為による損害賠償請求を併合して訴え、当該債務は持参債務であるから、原告の住所地の裁判所が義務履行地の裁判所であると主張し、原告の住所地の裁判所に訴えを提起してくることは多くあります。被告としては、移送申し立てを行い、被告の所在地の裁判所に移すよう申し立てを行います。移送申し立ての理由としては、権利移送と裁量移送がありますので、両方の理由を記載する必要があります。本件では、住所を移転したのは原告側の都合によるものであるとして裁量的移送が認められました。

残業時間の確認
未払残業代の請求においては、本当に時間外の残業があったのかどうか、仮に残業があったとしてどのくらいの時間その残業があったのかを確認する必要があります。原告の側からは、未払残業代計算ソフトを用いた計算が出されてきますが、そのソフトで計算した場合、全てが未払い残業のようにカウントされてしまいますので、被告である会社の立場としては、エクセルなどで独自に計算するのが好ましいと考えます。

労働法の確認
労働基準法では、みなし残業制、フレックスタイム、出来高払制、管理監督者、専門職、一定の残業時間を給与に含む給与制度など、未払残業代の生じない場合や、未払い残業代の金額を少なくする制度が多くあります。被告である会社側の弁護士としては、これらの制度を全部検証し、該当するものはないかどうかを確認する必要があります。例えば、原告が主任や課長のような管理職の場合に、残業代の支払義務がなくなるのではないかという点を確認することになります。その場合であっても、管理職とはどのような職務であるのか、管理職にふさわしい待遇(給与)をもらっているかなど、それぞれの制度を適用する際の要件がありますので、各要件についての確認も必要になります。

時効
未払い残業代の時効は2年間とされていますので、毎月の未払い残業部分についてその月から2年が経過すると請求ができなくなります。従って、2年の期間内に訴訟提起をしなければいけないのが原則です。例えば2018年1月から勤めだした会社を2019年12月末に退職した場合に、2018年1月から2019年12月末までの未払残業代があるとして、2020年3月末に訴訟提起した場合、2020年3月末から過去に遡って2年分までが請求できることになります。従って、2018年1月、2月、3月の3か月分については既に時効になっていますので、請求できなくなります。但し、弁護士から内容証明郵便により催告がなされた場合(未払残業代の請求が書面でなされた場合)、時効の中断になり、時効は完成しなくなります。従って、先ほどの例で2019年12月末に内容証明郵便による催告を行っている場合は、2019年12月末から過去に遡って2年分の未払残業代を請求することができることになりますので、2018年1月から3月分についても支払いを請求できることになります。裁判の中では、時効の計算をどのようにするかがよく争われることになります。なお、労働基準法の改正により、2020年4月以降に発生する未払い残業代については、時効期間が3年に延長されています。

和解について
会社の規模や業務内容、業績、当該従業員の勤務態度なども和解の際には検討対象となります。未払い残業代を計算するのには直接は関係ないですが、和解を主導する裁判官がどのような和解がふさわしいかを考える場合に、会社の内容や当該従業員の勤務態度なども影響があると思われます。従って、会社の側としてはできるだけ、これらの事情に関する主張立証もしっかり行っておく必要があります。

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2020年6月 4日 木曜日

未払残業代支払請求訴訟(労働関係訴訟)

事案の概要
会社を退職した従業員から会社に対して未払残業代の支払請求訴訟が提起されました。当事務所では、被告である会社(当事務所の顧問先)を代理して訴訟を追行し、和解で事件を終結することができました。

証拠保全の申し立て
医療過誤の場合のカルテと同様に、未払残業代支払請求訴訟においては、タイムカードの記録や業務日報の記録が重要な証拠になることがあります。退職前から訴訟提起を考えている場合を除き、原告である従業員がこれらの記録の写しを有していない場合がほとんどですので、従業員を代理して訴訟提起を行おうとする原告代理人としては、裁判所に対して証拠保全を申し立て、これらの記録を確保したいと考えることが多くあります。会社側としては、裁判所が行う証拠保全について従わないわけにはいきませんので、裁判所の指示に基づき証拠を提出します。しかし、会社側としても大量の写しを作成したり、秘密事項がないかどうかを確認したりする必要もありますので、できれば一旦裁判官には帰ってもらい、これらの確認が終わった段階で任意に証拠を提出することで申立代理人や裁判官の理解を得ることが好ましいと考えられます。

管轄
会社を退職した従業員が会社を訴える場合、従業員が退職後に住所を移転していることが多くあります。会社を辞めたので、実家に帰っていることなどが理由と思われます。そこで、従業員としては、すでに退職した会社の所在地の裁判所に訴訟を提起するのは、遠隔地に行かなければならず、経済的負担も大きくなりますので、できるだけ自宅の近くの裁判所に訴訟を提起したいと考えます。この場合、原告側の弁護士は、未払残業代や不法行為による損害賠償請求を併合して訴え、当該債務は持参債務であるから、原告の住所地の裁判所が義務履行地の裁判所であると主張し、原告の住所地の裁判所に訴えを提起してくることは多くあります。被告としては、移送申し立てを行い、被告の所在地の裁判所に移すよう申し立てを行います。移送申し立ての理由としては、権利移送と裁量移送がありますので、両方の理由を記載する必要があります。本件では、住所を移転したのは原告側の都合によるものであるとして裁量的移送が認められました。

残業時間の確認
未払残業代の請求においては、本当に時間外の残業があったのかどうか、仮に残業があったとしてどのくらいの時間その残業があったのかを確認する必要があります。原告の側からは、未払残業代計算ソフトを用いた計算が出されてきますが、そのソフトで計算した場合、全てが未払い残業のようにカウントされてしまいますので、被告である会社の立場としては、エクセルなどで独自に計算するのが好ましいと考えます。

労働法の確認
労働基準法では、みなし残業制、フレックスタイム、出来高払制、管理監督者、専門職、一定の残業時間を給与に含む給与制度など、未払残業代の生じない場合や、未払い残業代の金額を少なくする制度が多くあります。被告である会社側の弁護士としては、これらの制度を全部検証し、該当するものはないかどうかを確認する必要があります。例えば、原告が主任や課長のような管理職の場合に、残業代の支払義務がなくなるのではないかという点を確認することになります。その場合であっても、管理職とはどのような職務であるのか、管理職にふさわしい待遇(給与)をもらっているかなど、それぞれの制度を適用する際の要件がありますので、各要件についての確認も必要になります。

時効
未払残業代の時効は2年間とされていますので、毎月の未払い残業部分についてその月から2年が経過すると請求ができなくなります。従って、2年の期間内に訴訟提起をしなければいけないのが原則です。例えば2018年1月から勤めだした会社を2019年12月末に退職した場合に、2018年1月から2019年12月末までの未払残業代があるとして、2020年3月末に訴訟提起した場合、2020年3月末から過去に遡って2年分までが請求できることになります。従って、2018年1月、2月、3月の3か月分については既に時効になっていますので、請求できなくなります。但し、弁護士から内容証明郵便により催告がなされた場合(未払残業代の請求が書面でなされた場合)、時効の中断になり、時効は完成しなくなります。従って、先ほどの例で2019年12月末に内容証明郵便による催告を行っている場合は、2019年12月末から過去に遡って2年分の未払残業代を請求することができることになりますので、2018年1月から3月分についても支払いを請求できることになります。裁判の中では、時効の計算をどのようにするかがよく争われることになります。なお、労働基準法の改正により、2020年4月以降に発生する未払い残業代については、時効期間が3年に延長されています。

和解について
会社の規模や業務内容、業績、当該従業員の勤務態度なども和解の際には検討対象となります。未払い残業代を計算するのには直接は関係ないですが、和解を主導する裁判官がどのような和解がふさわしいかを考える場合に、会社の内容や当該従業員の勤務態度なども影響があると思われます。従って、会社の側としてはできるだけ、これらの事情に関する主張立証もしっかり行っておく必要があります。

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