代表弁護士ブログ

2020年6月 4日 木曜日

解雇無効確認訴訟(労務関係訴訟)

事案の概要
外資系企業において従業員から会社に対して解雇無効確認請求訴訟が提起された事件で、会社(当事務所の顧問先)を代理して訴訟追行を行い、従前の平均月額給与の3か月程度の和解金を支払うことで和解にいたりました。会社にとっては、あまり大きな負担となることなく、早期に解決できましたので、勝訴的和解と判断いただいています。

準拠法について
外資系企業においては、英文による雇用契約書が締結されており、準拠法をアメリカの特定の州の法律(例えばニューヨーク州法)とする旨を雇用契約書の中で明確に定めていることが多くあります。ニューヨーク州などアメリカの多くの州の法律では、日本のように解雇を制限する規定はありませんので、ニューヨーク州法の適用がある場合は、解雇の有効性自体が争われることもなくなります。そこで、会社側の立場からすれば、契約書に基づきアメリカの州の法律を適用してほしいということになります。しかしながら、法の適用に関する通則法では、当事者の合意により準拠法の選択ができるとしながらも(通則法7条)、労働者が当該労働契約に最も密接な関係がある地の法の中の特定の強行規定を適用すべき旨の意思を使用者に対して表示したときは、その強硬法規も適用になるとされています(通則法12条1項)。日本で労務の適用をする場合は、日本の法律がその労働契約に最も密接な関係がある地の法律とされますので(通則法12条2項)、結局日本での労務提供がなされている場合の労働契約の有効性についての解釈については、アメリカの特定の州の法律を準拠法とする旨の合意がある場合であっても、日本の労働法が適用になることになります。この裁判では、準拠法について争うことは辞め、日本の労働法に基づく解雇の有効性に絞って弁論を行うことにしました。

管轄について
英文による雇用契約書の中では、管轄については、ニューヨーク州の裁判所の専属的合意管轄とすることに合意するとされていました。従って、雇用契約書の条項が適用される限り原告(従業員側)の訴えは管轄違反により却下されてしまうことになり、原告は改めにニューヨークの裁判所に対して訴訟提起しなければならないことになります。従って、日本の裁判所の管轄が認められるかどうかは極めて重要な判断要素となります。しかしながら、管轄については、民事訴訟法に規定があり、労働契約の存否その他労働関係に関する事項について個々の労働者と事業者との間に生じた民事に関する紛争に関する労働者から使用者に対する訴えについては、労務の提供地が日本国内にある場合は、日本の裁判所に訴えを提起することができるとされています(民事訴訟法3条の4第2項)。この事件では、雇用契約書の中でニューヨーク州の裁判所の専属的裁判管轄について明確な合意がありましたが、日本の従業員が実際に労務に従事していた日本の管轄を争うことは難しいとの判断のもと、あえて管轄違反についての主張は行いませんでした。なお、管轄の取得については合意管轄の他、応訴管轄もありますので、会社が管轄違いによる却下の主張(防訴抗弁)を行わないで弁論をした場合、応訴管轄による管轄が生じてしまいます。管轄を争う可能性がある場合は、被告である会社としては原告の主張についての認否を行うより前に、予備的に管轄を争う旨の主張を行っておく必要があります。

外国の親会社が直接契約した場合
本件では、外資系企業の日本の会社が雇用契約の相手方でしたが、もし仮にアメリカの会社が雇用契約の当事者であり、日本に子会社がないような場合にもアメリカの会社を日本の裁判所に訴えることができるかどうかが問題となります。結論的には、日本の法制では、労働者保護が貫かれますので、民事訴訟法の適用により日本の管轄が認められることになると考えられます。アメリカの会社を日本の裁判所に訴える場合、アメリカにある日本大使館(日本領事館)を通じて行う領事送達による送達を行う必要があります。

英文契約書の翻訳について
解雇の有効性を判断する場合において雇用契約書がある場合は、当該雇用契約書は重要な証拠となります。原告はその証拠を裁判所に提出しなければなりませんが、日本の裁判所では、英文の証拠をそのまま採用してくれませんので、日本語の翻訳を行い、翻訳証明書を添付する必要があります。翻訳証明は、日本の弁護士が真正な翻訳であることを確認する文書を翻訳文の最後に記載し、押印することで足ります。翻訳の義務は、原告の側にあります。但し、契約書が長く翻訳の負担が大きい場合は抄訳でも足りる扱いとされることが多いと思います。この点は裁判所に確認いただく必要があります。但し、弁護士としては、契約書の全体を把握しないと、依頼者にとって有利な規定や不利な規定があることを見落とすことになりますので、抄訳で足りる場合であってもできるだけ全文の翻訳をするのが好ましいと考えられます。

解雇の有効性
解雇の有効性については、労働契約法16条において、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定められています。従って、①客観的に合理的であるかどうか、②社会通念上相当であるかどうかが、判断事由となることになります。また、懲戒解雇の場合であっても労働契約法15条に規定がありほぼ同等の条件で判断されることになります。当事務所では、日本法人の代表者(アメリカ人)へのヒアリングを行い、その内容を英語と日本語にまとめて陳述書としました。また、原告がIT企業であるにもかかわらず、ソフトウェアの開発についての能力が著しく劣ることや、会社内での協調を乱す行為の数々を多くの従業員の証言により陳述書にまとめて裁判所に提出することができました。陳述書はすべて関係者からの聞き取りを行ったうえで、当事務所で文章化していますので、陳述書作成について相当の労力を要することになりました。

和解について
裁判所から和解の打診があり、双方が和解案を提出して裁判所が調整を図ることになりました。本件では、裁判官から双方の代理人に対して和解を強く勧められました(和解の勧試)。和解期日における裁判官との協議は原告と被告がそれぞれ別に行われますので、裁判官からは原告の代理人に対してどのような話がなされたかは分かりませんが、原告の職務上の能力の問題点について詳細に事実関係を説明したことが裁判官による原告の説得に役立ったのではないかと思われます。

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office | 記事URL

2020年6月 4日 木曜日

違法行為差し止め仮処分申立て(会社関係訴訟)

事案の概要
X会社の株式の20パーセントをA会社が所有している状況で、X会社からB会社に20億円の貸し付けを行い、B会社がA会社からX会社の株式20%を20億円で取得しようとしている場合に、裁判所に対して株式譲渡禁止の仮処分の申し立てを行い、裁判所から株式譲渡禁止の仮処分決定を得ました。

支配権をめぐる争い
支配権をめぐる争いが生じた場合、どちらのグループがより多くの株式を取得するかがポイントとなることがあります。より多くの株式を有するグループは株主総会において自らの候補者を取締役に選任することができ、取締役の多数を通じて会社を支配することができるからです。ある程度規模の大きな会社の場合、株式の評価額も大きくなりますので、株式の移転を行うためには対価となる現金の準備を行う必要があります。この現金の準備ができないと経営支配権をめぐる争いにおいて敗れてしまうことになります。そこで、会社の資金を一旦自分たちの支配下にある会社に貸付け、その資金で株式を買い取ることを検討することがあります。しかしながら、このような資金の貸し付けや株式の移動は、経営者が自らの利益を図るために会社の資金を利用して行うもので、違法な取引と考えられます。

取締役の違法行為の差止請求
6か月前から引き続き株式を有する株主は、取締役が株式会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をする恐れがある場合において、当該行為によって株式会社に著しい損害が生じる恐れがあるときは、当該取締役に対し、当該行為を辞めることを請求することができるとされています(会社法360条1項)。また、株式の譲渡制限のある公開会社でない株式会社については、6か月前から引き続きという要件は課せられませんので、当該請求を行う時点で株式会社の株主であれば請求を行うことができます。公開会社の場合、株主に制限を加えないと、誰でも少しだけの株式を取得して直ちに差止請求ができることになりますが、このような濫用的権利行使を制限するために6か月以上株式を有する株主に限り差止請求ができるとされています。反対に、株式の譲渡制限のある閉鎖会社の場合、株式取得に取締役会の同意を要しますので、濫用的差止請求を行う目的のみで株式を取得することは考えられませんので、6か月の期間の要件はかけられていません。

株式会社に著しい損害が生じる恐れがあるとき
会社の業務執行は取締役に委任されていますので、取締役の行為をいちいち指し止めるのは適切ではなく、「著しい損害」が生じる場合にのみ、取締役の行為を差止めることができるとされています。取締役が任務を怠ったことにより会社に損害が生じた場合は、役員に対する損害賠償請求で損害の回復を行うことができます(423条1項)。しかし、著しい損害が生じる可能性がある場合にまで、損害が生じてのみ賠償請求できるとするのでは遅すぎるため、「損害が生じる恐れがあるとき」に、違法行為を事前に差止めることができるようにしたのが本条です。

差止請求訴訟
違法行為を行おうとする取締役の行為の差止請求は会社に対して書面を提出することで請求することができます。会社に対する違法行為差止め請求の書面は、通常弁護士などの専門家に依頼して行うことが多いと思われます。株主から違法行為差止請求の書面が送付されたにもかかわらず取締役が自ら違法行為を取りやめない場合は、当該株主は、裁判所の命令によって違法行為を差止めさせるため、裁判所に対して違法行為の差止請求訴訟を提起することができます。但し、通常訴訟においては勝訴判決が出るまで取締役を拘束する効力が生じないため、訴訟によって争われている間に違法行為が行われてしまい、既成事実が作られてしまうという可能性があります。そこで、株主としてはより迅速に差止めの効力が生じる法的手段を検討する必要が出てきます。

取締役の違法行為差止仮処分
取締役が違法行為をまさに行おうとしている場合、株主が取締役による違法行為を直ちに取りやめさせる方法として、取締役による違法行為の差止を求める仮処分の申し立てを行うことができます(民事保全法23条2項)。保全命令の申し立てについては、被保全権利と保全の必要性についての疎明が必要になります(民事保全法13条1項)。上記の通り、株主は一定の要件の下で取締役の違法行為の差止を請求することができます(会社法360条1項、2項)。株主が差止を求めることができるこの権利が被保全権利となります。従って、仮処分の申し立てを行う株主としては、会社法360条1項、2項の要件を満たしていることを疎明することが必要になります。また、保全の必要性については、申立人(債権者)に著しい損害が生じる急迫の危険があることを疎明することが必要になります。取締役が株主に著しい損害を加えることになる違法行為をいまにも行おうとしていることを疎明することになります。違法な行為についての決議を行おうとする株主総会の招集通知の写しや、当該取引の契約書案、企画書などが疎明資料となります。書面による疎明資料の入手が難しい場合は関係者からの陳述書を提出することで疎明を行うことになります。被保全権利と保全の必要性についての疎明ができた段階で裁判所は差止の仮処分決定を出すことになります。

会社の資金を用いて会社の株式を取得する行為
本件では、会社の資金を用いて会社の株式を取得しようとするものであり、実質上自己株式の取得に該当するものです。しかも、本件での取締役は自己の支配権を確保する目的の達成のため、会社の資金を自分がコントロールしている会社に貸し付けようとしています。本件では、これらの行為を裁判所が認定してくれ、A会社に対して株式譲渡禁止の仮処分の決定をいただくことができました。本件では、申立人は、A会社の株主ですがX会社の直接の株主ではないことから、X会社による資金の貸し付けを止めるのではなく、A会社による株式譲渡を違法であるとして、これを禁止する仮処分の申し立てを行うことになりました。

仮処分の効果
取締役の違法行為を差止めるためには仮処分は非常に効果的な手段になります。会社の取締役会が反対派グループに支配されている状況で、本件のような株式の移転を認める場合には、少数派の株主によって過半数の株式を取得されてしまう可能性もあります。一族の内紛において支配権をめぐる紛争が生じた場合、持株会社の支配権や持株会社の有している対象会社の株式をどちらのグループが獲得できるかによって勝敗が決してしまう場合が多くあります。そこで、現在取締役会の過半数を占めるグループ、あるいは現在代表取締役に就任しているグループは、持株会社の株式又は持株会社が有している対象会社の株式をどのようにして自己の支配下に移すかを考えることになります。このような中で、取締役の権限を越えた違法行為がなされる可能性があります。相手方グループとしては、処分禁止の仮処分など裁判上の手続きを活用することで、支配権の変動を生じさせるような株式の移動が生じないよう断固たる措置を講じる必要が出てきます。

栗林総合法律事務所のサービス内容
栗林総合法律事務所では、取締役による違法行為がなされようとする場合、違法行為の差止請求や仮処分を活用することで、取締役による違法行為を阻止するための申し立てを扱っています。また、本件のような支配権をめぐる紛争では、裁判外での多数派工作も必要であり、また自分たちのグループの正当性を基礎づける事実の主張も必要となります。栗林総合法律事務所では、裁判上の手続きだけでなく、株主総会の開催、委任状の勧誘、関係者への通知・説得、違法行為についての刑事告訴等様々な手段を通じて貴社の立場をサポートしていきます。

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office | 記事URL

2020年6月 3日 水曜日

株式総会決議不存在の訴え(会社関係訴訟)について

事案の概要
X会社は創業者である先代が亡くなり、長男A、次男B、三男Cの3つの家系(グループ)がそれぞれ株式の3分の1ずつを相続しています。X会社は先代が亡くなった後はずっと長男Aが代表取締役として会社を経営していましたが、これまで株主総会を開催したこともなく、役員の選任を含め、会社に関する事項は全て長男が独断で決定していました。これに対してBから株主総会決議不存在の訴えが提起されました。BはこれまでX会社で株主総会が開催されたことがないこと、Aは取締役の地位を有していないので、これまでもらった報酬をすべて会社に返還すべきことを求めています。

支配権をめぐる争い
この事案は同族会社における支配権紛争の典型的場面であると言えます。A、B、Cのいずれも自分の家系に経営権を残していきたいと考えますので、同族間の争いは非常にシビアになっていきます。

株主総会の不存在
会社は決算期から3か月以内に株主総会を開催し、定款の規定に従って取締役の選任を行わなければなりません。ところが、多くの中小企業においては、実際には株主総会を開催したことがなく、役員選任登記に必要なことから、株主総会議事録のみを作成し、これを法務局に提出していることがあります。株主総会不存在確認を求められた会社の側からは、①株主総会議事録があるから株主総会の存在を推定すべきである、②会社の慣行としてこのような取り扱いがなされていたのであるから、株主は全員承認していた、③各株主から代表取締役が委任を受けて承認決議を行っていたのであるから、全員出席総会として有効である、などと反論がなされることになります。しかしながら、裁判の場では、実際に株主総会が開催されていなかった以上、会社によるこれらの主張は認められないことがほとんどだと思われます。株主総会の招集通知がなされていないが、みんなが集まったときに議論したはずであるというような主張も認められません。上記のような場合、多くの事例では、裁判上、株主総会の不存在が認定されると思われます。

取締役の地位にないことの確認請求
取締役を選任する株主総会決議がない場合に、株主の側から、株主総会決議不存在の確認を求める訴えがなされることが多いと思われますが、より直接に、「取締役○○が取締役の地位にないことの確認を求める」という形で訴訟が提起されることもあります。裁判所の判決を得たのち、取締役の選任登記の抹消を行うためです。当該取締役を選任した株主総会決議が不存在の場合、その取締役は取締役の地位にないことになりますので、この場合も結局は、株主総会決議が存在したかどうかが争点となります。

取締役選任決議がない場合の問題
取締役選任決議が存在しないと判断された場合、その取締役に関する登記も無効ですので、抹消されることになります。また、その取締役に支払われた報酬は不当利得となって会社に返還しなければなりません。また、その取締役が出席してなされた取締役会決議も、取締役以外の者が参加した決議として無効となる可能性があります。また、取締役会の定足数に欠けることもあります。

権利義務取締役
取締役の任期は会社の定款において定められています。多くの場合、取締役の任期は1年か2年とされています。定款において取締役の任期の定めがない場合は、監査等委員会設置会社等を除き、取締役の任期は2年とされます(会社法332条1項)。株式会社では、取締役の任期が満了するごとに株主総会で取締役の選任を行わなければなりません。同じ取締役を再任することもできますが、その場合でも株主総会決議は必要であり、株主総会決議がない場合は再任となりません。そこで、取締役の任期が満了したにも関わらず取締役選任の株主総会が開催されていない場合、取締役を欠いた状態(取締役のいない状態)となってしまいます。役員に欠員が生じた場合の措置として、会社法では、任期の満了又は辞任により退任した役員は、新たに選任された役員が就任するまで、なお役員としての権利義務を有するとされています(会社法346条1項)。このような地位にある取締役を権利義務取締役と言います。従って、一番最近の取締役選任が無効となることで、定款に定められた取締役の人数を欠くことになった場合、その前の取締役選任決議により選任された取締役(一番最近に選任された取締役と同じ人の場合もあります)が権利義務取締役となります。その前の選任決議も無効の場合、さらにその前の選任決議で選任された取締役が権利義務取締役となります。

一時役員の選任申し立て
役員選任の株主総会決議が取り消された場合において、権利義務取締役が新たに株主総会を開催して取締役を選任できる場合は、その手続きによって取締役の選任を行います。一方、取締役の人数を欠いた場合で、株主総会も開催できない場合は、裁判所に対して一時役員(仮取締役)の選任を申し立て、裁判所が一時役員を選任することになります(会社法346条2項)。同様に代表取締役を欠いた場合は、一時代表取締役の選任を申し立てることもできます(会社法351条2項)。一時役員は原則として裁判所が選任する弁護士など、立場的に中立の者がなりますので、会社からすれば知らない人が役員になるということになります。また、一時役員選任の申し立てを行う場合は、一時役員の報酬を担保するため、予納金の納付が命じられます。従って、会社の側からは一時役員の選任は避けて、できるだけ株主総会で取締役を選任しようとする方向になるのではないかと思われます。

職務代行者選任の申し立て
会社の取締役が違法な行為をしようとする場合は、民事保全法56条の規定に基づき、取締役の職務執行停止や職務代行者の選任申し立てを行うことができます(民事保全法56条)。株主総会決議取り消しの訴えによって、取締役選任決議の効力を争う場合は、現在登記簿に記載のある取締役に対して不満を持っている場合が多いと思われますので、職務代行者選任の申し立てにより、裁判所の選任する職務代行者(弁護士)に経営を委任し、状況の打開を図るということも考えられます。

株主総会による選任
株主総会決議不存在の確認により、取締役選任決議が無効とされても、最終的にはだれが取締役として会社を経営していくのかを定めなければなりません。従って、会社としては株主総会を開催し、取締役の選任を決議せざるを得ないことになると考えられます。現在の取締役が株主総会を招集しない場合は、株主の側から株主総会招集許可申し立てがなされることになります。

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office | 記事URL

2020年6月 3日 水曜日

株主総会決議取り消しの訴え(会社関係訴訟)について

株主総会の決議に瑕疵があるとき
同族企業において支配権をめぐる紛争が生じた場合、総会決議の効力をめぐって争いが生じることが多くあります。多くは取締役の選任決議の効力をめぐって争われますので、取締役を選任した決議が有効であったかどうかが議論されることになります。株主総会の決議に瑕疵がある場合、株主総会不存在の訴え、株主総会決議無効確認の訴え、株主総会決議取り消しの訴えを提起し、総会決議の効力がないことを確認することができます。

株主総会取り消しの訴え(会社法831条1項)
株主総会決議取り消しの訴えとは、一旦行われた株主総会の決議を後から取り消し、その効力をなくしてしまう(決議がなかったものとしてしまう)ための訴えです。決議の取り消しは裁判所の決定によってのみ行うことができますので、裁判所への訴訟提起が必要になります。株主総会決議取り消しの訴えを提起できるのは、次の場合になります。
① 株主総会の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき。株主総会の招集手続きや決議の手続きに瑕疵がある場合です。例えば次のような場合が該当します。
・決議の定足数が不足していた場合
・一部の株主に対して招集通知が送付されていなかった場合
・招集通知が定められた期間内に発送されなかった場合
・招集通知や株主総会参考書類の記載内容に不備がある場合
・取締役会の決議なしに代表取締役が株主総会の招集を行った場合
・招集通知に記載のない事項について決議した場合
・取締役による説明義務違反がある場合
・議決権の行使が妨害され、議決権行使ができなかった場合
② 株主総会の決議の内容が定款に違反するとき
③ 株主総会の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がなされたとき

株主総会決議取り消しの訴えの原告適格
株主総会決議取り消しの訴えを提起できるのは、株主、取締役、監査役、(指名委員会等設置会社の)執行役、清算人に限られます。

株主総会決議取り消しの訴えの出訴期間
株主総会決議取り消しの訴えは、取り消しの対象となる株主総会の決議がなされた日から3か月以内に訴えを提起しなければならないとされています。株主総会決議が取り消された場合、株主総会の決議を前提として行われた様々な取引が無効とされてしまうため、早期に決議の効力を確定させる必要があることから、提訴期間が3か月という短い期間に限定されています。

裁判所による裁量棄却
株主総会決議取り消しの訴えが提起された場合において、株主総会などの招集手続き又は決議の方法が法令又は定款に違反するときであっても、裁判所は、その違反する事実が重大でなく、かつ決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、その請求を棄却することができるとされています(会社法831条2項)。いわゆる裁判所による裁量棄却の規定です。決議取り消しは関係者に対して重大な影響を与えますので、些細な違反で決議を取り消してしまうのは相当でないことから、裁判所の裁量で請求を棄却することができることとしています。

株主総会決議取り消しの効果
株主総会決議の取り消しの決定がなされた場合、決議の効力は無効となります。取締役選任決議の効力が取り消された場合、その取締役に対する報酬の支払いは無効となり、その取締役が行った行為の効力も無効となります。

株主総会決議無効確認の訴え(会社法830条2項)
株主総会の決議については、決議の内容が法令に違反することを理由として、決議が無効であることの確認を、訴えをもってすることができるとされています。決議の無効確認の訴えは、決議についての瑕疵が取り消しの場合よりも大きい場合が当たることになります。決議取り消しの場合と異なり、原告適格や出訴期間の制限はありませんので、誰でも、いつでも訴えを提起できることになります。

株主総会決議不存在の訴え(会社法830条1項)
株主総会の決議については、決議が存在しないことの確認を訴えをもって請求することができるとされています。実際には株主総会が開催されていないにもかかわらず、株主総会の議事録が作成され、役員の選任登記がなされているような場合が当たります。また、株主総会の招集手続きが一応取られていても、大部分の株主に対する招集通知が発送されていないなど瑕疵が著しいため、決議が存したと評価できないような場合も決議不存在の理由となります。

栗林総合法律事務所のサービス内容
少数株主が株主総会決議取り消しの訴え、総会決議無効確認の訴え、株主総会決議不存在の訴えを行うのは、会社支配権をめぐる争いがある場合や、多数派株主と少数派株主との間に争いが生じている場合と考えられます。また、中小企業においてこれまで法律に従った総会の開催を行ったことがないような会社で内紛が生じた場合に、過去の総会決議が適正だったのかが争われることになります。当事務所がこれまでに扱った案件でも、株主の知らない間に取締役選任がなされていたり、合併や会社分割などによって持ち株比率が著しく低下させられていたという事例が多くあります。栗林総合法律事務所は、株主総会決議取り消しの訴え、総会決議無効確認の訴え、株主総会決議不存在の訴えにおいて会社や株主を代理して訴訟追行を行います。株主総会決議取り消しの訴え、総会決議無効確認の訴え、株主総会決議不存在の訴えについては栗林総合法律事務所にお問合せください。

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office | 記事URL

2020年6月 3日 水曜日

株主総会招集許可申し立て(会社関係訴訟)について

株主総会の招集権者
株主総会は、取締役が招集するのが原則です(会社法296条3項)。会社法296条3項の「取締役」は代表取締役に限るのか、その他の取締役も招集を行うことができるかについては議論がありますが、一般的には代表取締役が開催するものと解釈されており、代表権限のない取締役によって招集された株主総会は無効とされます。

株主による総会招集請求
上記の通り株主総会は会社の代表取締役が招集するのが原則ですが、会社法では、少数株主も、取締役に対して、株主総会の招集を請求することができるとしています(会社法297条1項、2項)。

株主による株主総会の招集請求の要件
少数株主が株主総会の招集を請求するための要件については、公開会社(株式の譲渡制限のない会社)と非公開会社(株式の譲渡制限のある会社)で異なっています。公開会社(株式の譲渡制限のない会社)の場合、総株主の議決権の100分の3以上の議決権を6か月前から引き続き有する株主は、株主総会の招集を請求できるとされています。これに対して非公開会社(株式の譲渡制限のある会社)の場合、総株主の議決権の100分の3以上の議決権を有する株主は、総会招集を請求できることとされています(6か月前から引き続きという要件がない)。公開会社(株式の譲渡制限のない会社)の場合、6か月の保有期間を要件とすることで、少数株主の権利行使を濫用する目的のみで株式を取得する可能性があるものを排除することが必要ですが、非公開会社(株式の譲渡制限のある会社)の場合、株主は取締役会の承認がないと株式を取得することができませんので、少数株主権の濫用的行使を目的に株式を取得するものはもともといないと考えられ、6か月の保有期間の要件は付されていません。

株主による株主総会の招集請求の方法
株主総会の招集請求を行う株主は、取締役に対して、株主総会の目的である事項及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求しなければなりません(会社法297条1項)。株主総会の目的である事項とは、「取締役解任の件」、「取締役選任の件」、「定款を変更する件」などが該当します。どのような議題について審議するために総会を開催するのかを示さなければなりません。また、「招集の理由」については、「○○取締役が違法行為を行った。」などと当該議題についての審議を必要とする理由を記載することになります。招集請求の相手方は会社法では「取締役」とされていますが、これは代表取締役に限られるのか、平取締役も含むのかについては意見が分かれています。株主総会の招集請求は、株主総会を招集するよう会社に対して求めるもので、少数株主が直ちに自ら招集できるわけではありません。

株主総会招集許可申し立て
株主による株主総会の招集請求を行ったにもかかわらず、①招集請求の後遅滞なく株主総会の招集手続きが行われない場合、②招集請求を行った日から8週間以内の日を株主総会の日とする株主総会の招集通知が発せられない場合、株主総会の招集を請求した株主は、裁判所の許可を得て、自ら株主総会を開催することができるとされています(297条4項)。このように株主による裁判所に対する招集許可の申し立ては、最初に会社に対して株主総会の招集を求め、会社がそれに応じて総会を開催しない場合に初めて行うことができることになります。

審尋期日
株主が株主総会招集許可の申立書を裁判所に提出した場合、申立後1週間から2週間程度先の日が審尋期日として指定されます。審尋とは裁判所が関係者から意見を聞くことを意味しています。株主から株主総会の招集請求がなされるということは、当該株主と会社との間において意見の相違が生じているということですので、裁判所としては適正な判断を下すために両方の関係者から意見を聞くことが重要となります。会社側(取締役)については審尋を行うことは必ずしも法律上の必要要件ではありませんが、通常の場合会社の代表者が呼び出され、裁判所で意見を述べることになります。審尋は会社非常事件として行われることになりますので、管轄(会社法868条)、疎明(869条)の規定が適用されます。東京地方裁判所の場合、株主総会招集許可申し立て事件については、地裁民事8部が扱うことになります。

審尋における審理内容
会社法297条による株主総会招集許可の申し立ての要件は形式的要件であり、その存否はかなり明確ですので、まず形式要件(招集請求を行う株主が100分の3以上の議決権を有しているかどうかなど)を確認することになります。招集請求を行うものは、株主名簿や、その他の資料から自分が100分の3以上の株式を有していることを疎明しなければなりません。申立人が疎明資料を有しない場合も裁判所から会社に対して株主名簿の写しなどを提出するよう指示がなされますので、会社側から資料の提供を受けることもできます。

権利濫用の主張
株主総会招集許可申し立てに対しては、会社の側からは権利濫用の主張がなされることが多いと思われます。しかしながら形式要件を満たした株主による申し立てが権利濫用に該当する場合は極めて限られると考えられますので、会社側からの権利濫用の主張は認められないことが多いと思われます。しかしながら、会社側から権利濫用の主張がなされた場合は、それに対する反論を行う必要があり、さらに会社側から再反論がなされることもありますので、審尋期日が数回開催されることが多くあります。会社と少数株主の意見が対立するケースでは、株主総会許可申し立てから決定が出されるまでに3か月から半年程度の期間を要するのが通常です。

株主総会招集許可決定
審尋の結果、裁判所が株主総会招集許可申し立ての要件を満たすと判断した場合、裁判所は株主総会招集許可決定を出します。決定は「告知」の方法で申立人に伝えられますが、通常は裁判所から決定書が郵送で送られてきます。決定書には単に「株主総会を招集することを許可する。」とだけ記載され、理由の記載はありません。株主総会招集許可決定に対しては不服申し立てはできません(会社法874条第4項)。株主総会招集許可申し立てが却下された場合、申立人は即時抗告をすることができます(非訟事件手続法66条2項)。

株主による株主総会の招集
招集許可決定を受けた株主は、全ての株主に対して招集通知を発送することで自ら株主総会を招集することができます。招集された株主総会では、招集請求を行った株主が仮議長として議長の選任を行います。定款で取締役が議長となる旨が定められている場合が多くありますが、これは取締役が招集した株主総会について定めるもので、少数株主が招集した株主総会については適用されないと解釈されています。但し、株主が仮議長として議長選任の決議を行った結果、代表取締役や従前の取締役が議長に選任されることは問題ありません。結局、議長については、出席株主の過半数の議決権者の賛同を得たものが選ばれることになります。裁判所の許可は、少数株主が招集することができる株主総会の目的事項について行われますので、裁判所が許可した目的事項以外の事項について決議することはできません。裁判所が許可した事項以外の事項について決議された場合、株主総会決議取り消しの訴えの対象となります(会社法831条1項)。

当事務所のサービス内容
栗林総合法律事務所では、株主総会許可申立てを行う少数株主を代理して裁判所に招集許可申立書を提出することが多くあります。栗林総合法律事務所は、株主総会招集許可決定を得るだけでなく、その後に開催される株主総会についても株主の皆様をしっかりとサポートさせていただきます。当事務所の行う業務には、株主総会招集通知の作成、招集通知の発送、株主総会の受付事務、総会の議事進行シナリオの作成、総会当日の立会い、録音テープによる総会の経過の保存、議事録の作成、役員変更登記の申請手続きなどが含まれています。また、当事務所では、少数株主側の代理だけでなく、株主総会招集許可申し立てがなされた会社側を代理し、審尋に出席して答弁を行ったり、株主総会招集許可申立てへの対抗措置として会社の役員主導の株主総会を開催するなど、裁判上及び裁判外での様々なアドバイスを行っています。

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office | 記事URL

カレンダー

2021年1月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            
english
アクセス


〒102-0083
東京都千代田区麹町3丁目5-2
ビュレックス麹町501号

お問い合わせ 詳しくはこちら
  • RSS配信
  • RSSヘルプ