代表弁護士ブログ

2020年6月 3日 水曜日

経営支配権をめぐる紛争(会社関係訴訟)について

会社関係訴訟とは
会社関係訴訟とは、一般的には、会社法において規定された訴訟(および非訟)のことをいいます。会社関係訴訟の多くは、閉鎖会社における会社の経営支配権をめぐる紛争であり、特に同族会社で先代のオーナー社長が亡くなった後の親族間の争いの一部として現れます。

経営支配権をめぐる紛争
会社支配権をめぐる争いが生じた場合、株主総会はどちらのグループが多数を形成するかを決定する場面となりますので極めて重要な意味を有します。最終的には過半数の議決権を有する株主の側が支配権を取得することになりますが、中間派の株主も存在する場合、どちらが多数派と一概にいうことはできません。しかしながら、実質上は役員の選任決議により、過半数の役員の選任がなされたほうが支配権を確保できる公算が大きくなります。過半数の取締役を選任できたグループは、代表取締役の選任を通じてその後の会社運営を支配することができるからです。また、同様に取締役会の過半の取締役を選任するグループは第三者割当増資により新株発行を引き受けることでより多くの株式を取得することになる可能性があります。現在取締役会の過半数を握っていない株主は、第三者割当ての差止め請求や、株主総会決議取消の訴えなどを提起しないと、いつの間にか少数株主に転落してしまうことにもなりかねません。栗林総合法律事務所は、支配権をめぐる争いについて多くの経験を有していますので、相手方グループに対抗する戦略の立案、相手方グループとの交渉代理、従業員や取引先への説明会の開催、株主総会委任状獲得合戦(プロキシ―ファイト)、株主総会の運営、株主総会決議取消の訴え、役員に対する損害賠償の訴えなど、裁判上及び裁判外の手続きを通じて会社支配権の獲得・維持についてのアドバイスを提供いたします。

株主間での協議交渉
経営支配権をめぐる争いが生じた場合、第一には主要株主間での協議交渉によりその後の会社運営について確認していくことが重要です。当事務所は、多くの会社において主要株主の代理人として相手方グループの株主との間で協議交渉を行い、会社の運営をどのように行っていくかを話し合ってきました。株主間で協議が整った場合は、株主間契約書や会社運営に関する覚書の締結などを行います。また、多くのケースでは両方のグループの経営者が一緒に経営していくことは困難であるとして、いずれかのグループの株主の有する株式の譲渡を受けることになります。当事務所では、株式譲渡契約書や、経営に関する覚書を作成することで、円滑な支配権の移転を支援していきます。

株主総会の開催
中小企業の場合、会社法にもとづく株主総会の開催を行っていないことが多く、いざ経営支配権をめぐる紛争が生じた場合に、混乱を招いてしまうことが多くあります。株主が一人しかいない場合、その株主が同意していた限り、実際の総会が開催されていなくても総会は有効となります。しかし、株主が複数いる場合で、すべての株主からの同意が得られていない場合には、株主総会を開催せずに議事録だけ作っても、その株主総会は無効となります。その結果、無効となった株主総会により選任された取締役も役員の地位を失うことになります。このような結果は、同族会社内部での支配権をめぐる争いが生じた場合や、遺産相続による争いが生じた場合などに、株主総会の決議の効力をめぐって争われることになります。当事務所では、過去の総会決議の有効性を判断し、追認決議を行うなどの対応を行います。

取締役の選任決議
支配権をめぐる争いが生じている場合、会社の提案する取締役の選任議案が可決されるかどうかは重要です。当事務所では、議決権の分配状況の確認、取締役選任議案の作成、委任状の獲得(プロキシ―ファイト)、従業員や取引先への説明文書の作成、株主総会の運営指導などを通じて、会社側提案が可決されるよう支援を行います。選任手続きに疑念が生じる場合には株主総会検査役選任の申立て、総会開催差止請求、取締役の職務執行停止の申立て、職務代行者選任の申立等を行い、不当な総会決議がなされることを差止ることもあります。

第三者割当増資や組織再編
第三者割当増資は本来資金調達を目的とするものですが、主要目的ルールにより、主要な目的が資金調達である限り、副次的な目的の有無にかかわらず、第三者割当増資は有効とされています。そこで、資金調達の必要性がある場合は、第三者割当増資がなされることになりますが、株式の引き受けを行った株主については、株数が著しく増加することになりますので、第三者割当増資を行った結果として会社の経営支配権の変動を来すこともあります。株式の譲渡制限がない会社(上場会社など)については、第三者割当増資は、取締役会決議のみで行うことができます。一方、株式の譲渡制限のある会社の場合、第三者割当増資を行う場合、株主総会の特別決議を必要とします。これらと同様に、支配権の確保を目的に組織再編行為が行われることもあります。当事務所は、経営者側の立場に立ち、第三者割当増資の手続きについてのアドバイスを行います。また、支配権をめぐる紛争が生じている場合に、少数株主の側に立ち、第三者割当増資決議の差止請求、総会決議無効確認の訴えを行うこともあります。

取締役への辞任要求
取締役が不祥事を起こしたような場合であっても、いきなり取締役の解任を求めるのではなく、当該取締役による自発的な辞任を求めるのが最も穏当と思われます。会社と取締役の関係は委任関係になりますので、取締役はいつでも取締役を辞任することができます。取締役が自発的な辞任に応じない場合、取締役の退職金の不支給の可能性を説明したり、不祥事により生じた損害について取締役に対する損害賠償請求を行う可能性があることを説明するなどして、自発的な辞任を催促することになります。当事務所では、会社を代理して取締役との協議交渉を行い、退任に向けた合意書を作成することで円滑な取締役の退任を実現します。

取締役の解任決議
会社と取締役との関係は委任関係になりますので、会社はいつでもその取締役を解任することができます。但し、取締役は株主総会において選任されますので、解任についても株主総会決議を要します。取締役解任の株主総会決議については、定款に特別の定めがない限り、定足数を満たす株主総会における出席株主の有する議決権数の過半数を持って行います。解任は解任についての正当な理由のある場合だけでなく、過半数の議決権の要件を満たす限り、正当な理由がない場合であっても行うことができます。取締役の解任は任期の途中でいつでも行うことができますが、任期の途中で理由なしに取締役の解任を行った場合、当該取締役は、会社に対して、残りの任期の報酬相当額について損害賠償請求を行うことができます。取締役に不祥事があるなど、正当な理由に基づき取締役の解任を行った場合は、会社の当該取締役に対する損害賠償義務は生じません。

経営陣による金銭の不当支出と損害賠償請求訴訟
これらの訴訟にあわせて、従前は誰も特に問題としていなかった経営判断や金銭支出、取締役への金銭貸付等について株主代表訴訟が提起されることも珍しくありません。役員による金銭の不当支出は、会社に対する背信行為として善管注意義務や忠実義務に違反することになります。株主は、金銭の不当支出にかかわった役員に対して損害賠償請求訴訟を提起することができます。また、これらの訴訟の前段階として、株主から、会計帳簿や取締役会議事録の閲覧・謄写の請求がなされたりします。

栗林総合法律事務所で扱う会社関係訴訟
このように、経営支配権をめぐる紛争では、1つの紛争から多数の会社関係訴訟が同時並行的に生じるため、これに迅速かつ適切に対応するには、会社法および関連判例についての幅広く深い理解が求められます。それと同時に、かかる法律論を土台とした上で、紛争の根本的な解決策を練り、尽力していくことが必要となり、高度な専門的知識と経験が要求されます。当事務所では、次の各種手続きを扱います。会社の支配権に関する紛争については栗林総合法律事務所へお問合せください。

・株主総会決議取消訴訟
・株主権確認請求訴訟
・取締役報酬支払請求訴訟
・株主代表訴訟等の訴訟手続
・新株発行差止の仮処分申し立て
・株式譲渡禁止仮処分申し立て
・総会検査役選任請求
・会計帳簿閲覧請求
・株式売買価格決定申立

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2020年6月 3日 水曜日

詐害行為取り消し訴訟(債権回収)について

債務者による財産処分・隠匿行為
債務者が債務の支払いが困難になった場合に、債務者の財産を処分したり、隠匿したりして、債権者の権利行使が妨げられることがあります。例えば、レストランを経営する会社が債務超過に陥り、債務の返済が困難となったときに、そのレストラン事業を別の会社に譲渡する場合が典型です。財産を移転させる方法としては、営業譲渡の場合、店舗の賃貸人の個別同意が必要になったりしますので、取引相手の個別同意を必要としない会社分割の方法が用いられることがあります。また、債務者であるレストランオーナーが自己の所有する別会社に資産を移転した場合、後日債権者から問題とされる可能性がありますので、奥様と離婚し、奥様への財産分与の形をとって資産を移転することもあります。財産分与は身分行為ではなく財産行為ですので、離婚に伴う資産の移転であっても、詐害行為となる可能性があります。

強制執行妨害目的財産損壊等の罪
刑法96条の2では、強制執行を受けるべき財産を隠匿したり(刑法96条の2第1項)、金銭執行を受けるべき財産について、無償その他の不利益な条件で、譲渡をし、又は権利の設定をする行為については強制執行妨害目的財産損壊等の罪に当たり、3年以下の懲役又は250万円以下の罰金に処するとされています。債務者が支払い能力のない段階で、強制執行を免れるために財産を処分したり隠匿したりする場合には、刑事罰の対象となると考えられます。しかしながら、仮に債務者に対して刑事罰がなされたとしても、債権者としては債権の回収が図れるわけではありません。債権者は、詐害行為取り消し訴訟を提起し、債務者による財産処分や財産の移転行為を取り消す(最初からなかったことにする)必要があります。

詐害行為取り消し請求
平成29年の民法改正により詐害行為取り消し請求もいくつかのパターンに類型化されました。もっとも典型的なものは、「債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取り消しを裁判所に請求することができる」とするものです(民法424条1項)。但し、詐害行為取り消しが認められるためには、その行為によって利益を受けた者がその行為の時において債権者を害することを知っていたことが必要とされています。典型的な例は、債権者が資産を安い値段で処分したり、第三者に贈与したりする場合です。営業譲渡や会社分割の方法により別会社に資産を移転することもこれに該当します。

譲受会社に対する債務の支払い請求
当事務所の顧問先が取引相手のレストランに1000万円の売掛債権を有していました。取引先のレストランの運営会社は、債務超過の状況に陥ったことから、会社分割の手続きをとり、会社の運営に関する権利の全てを別会社に移転し、お店については従前と同じ名前で運営していました。お店の外見上は全く異ならないにもかかわらず、経営だけが別会社に移行したものです。依頼者から当法律事務所に相談があった中で、事業の譲受会社は、「譲渡会社の商号を使用した譲受会社の責任」(商法22条1項)、「詐害事業譲渡に係る譲受会社に対する債務の履行請求」(商法23条の2第1項)により当事務所の顧問先に対して債務の支払い義務を負うと判断されました。しかしながら、譲受会社による資産の譲受を前提に資産の譲受会社に対して債務の支払い請求を行うのではなく、債務超過の状況下で、債務の支払いを免れるために会社分割の方法によって資産を移転した行為自体が問題であるとして、かかる会社分割自体を取り消す必要があるとの判断により、従前の会社(及び連帯保証人であるその代表者)に対して詐害行為取り消し請求訴訟を提起することになりました。

裁判上の和解
債務者は債務超過の状況下で資産の移転を行ったことを自ら知っていますので、自己の行為が違法なものであることを認識していたことになります。もし詐害行為取り消し請求訴訟が提起されたことが知られると、他の債権者からも訴訟提起がなされるのではないかと危惧していました。債務者としては、当方の依頼者に全額支払うことになったとしても、できるだけ早期に訴訟を終結したいとの要望があったようです。そこで、債務者からは、裁判期日において、私共の依頼者が有する債権の全額を支払う旨の和解の提案がありました。その結果訴訟上の和解が成立し、私どもの顧問先である依頼者は債権の100%の回収に成功することができました。

相当の対価を得てした財産の処分行為の特則
債務者がその有する財産を処分する行為をした場合において、受益者から相当の対価を取得しているときは、債権者は、次の要件のすべてを満たす場合に限り詐害行為取消請求を行うことができるとされています(民法424条の2)。
① その行為が、不動産の金銭への換価その他の当該処分による財産の種類の変更により、債務者において隠匿、無償の供与その他の債権者を害することとなる処分をするおそれを現に生じさせるものであること
② 債務者が、その行為の当時、対価として取得した金銭その他の財産について、隠匿等の処分をする意思を有していたこと
③ 受益者が、その行為の当時、債務者が隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたこと
民法424条の2は、従前の判例法理を法律上も明確化したものです。債務者が債務超過や支払い不能の状況下で不動産の処分をした場合、本来であれば債権者の債権の引当となる不動産が流動化され隠匿消費しやすい現金になってしまいますので、譲受人の悪意など一定の要件のもとに詐害行為取り消しの対象となることを認めたものです。従って、「相当の対価を取得しているとき」というのは、譲渡対象資産の時価と同じ額の場合も該当することになります。「譲受人の悪意」とは、譲渡対価が債務者によって隠匿されたり費消されたりすることを譲受人が知っていたということであり、譲受対価が債権者への債務の弁済にあてられたり、事業の運営に使われたような場合には、譲受人の悪意には該当しないことになります。

特定の債権者に対する担保の供与等の特則
債務者が既存の債務についての担保の供与又は債務の消滅に関する行為については、次の要件に該当する場合は、債権者は詐害行為取り消し請求をすることができるとされています(民法424条の3)。
① その行為が、債務者の支払い不能の時に行われたこと
② その行為が、債務者と受益者が通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること
この条文も従前の判例法理を明文化したものですが、債務者が支払い不能に陥っている場合には、債務の弁済や担保提供も詐害行為取り消しの対象となります。債務の弁済を受けたものや担保の提供を受けたものとしては、債務者が支払い不能になっている状況で一生懸命に債権回収したのに、その行為を取り消されるのは納得がいかないということもあります。そこで、債務者と受益者との間に通謀があり、他の債権者を害する意図を持っていた場合に限り取り消しができるとされています。

過大な代物弁済等の特則
債務者がした債務の消滅に関する行為であって、受益者の受けた給付の価額がその行為によって消滅した債務の額より過大であるものについて、一定の要件のもとに、その消滅した債務の額に相当する部分以外の部分について、詐害行為取り消し請求をすることができるとされています(民法424条の4)。例えば1億円の債権を有する債権者に対して3億円の事業または不動産を代物弁済として交付した場合、債権の額を超える2億円部分について詐害行為取り消し請求を行うことができるということになります。当事務所が扱った案件でも、ある会社のコンサルタントが会社の資金2000万円を預かっていたところ、会社の倒産間際にその資金全額をコンサルタントの報酬と相殺したと主張する事例がありました。当事務所では破産管財人として当該弁済を否認し、コンサルタントに対する否認訴訟を提起することで、預かり金の大部分を破産財団に返還させることに成功しました。

転得者に対する詐害行為取り消し請求
債権者は、受益者に対して詐害行為取消請求をすることができる場合において、受益者に移転した財産を転得した者があるときは、次の要件に応じて転得者に対しても詐害行為取り消し請求をすることができるとされています(民法424条の5)。
① その転得者が受益者から転得した場合で、転得の当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき
② その転得者が他の転得者から転得した場合で、その転得者及びその前に転得した全ての転得者が、それぞれの転得当時、債務者がした行為が債権者を害することを知っていたとき
このように詐害行為取り消し請求は、債務者から資産の譲受をした受益者だけでなく、受益者からさらに資産の譲受をした転得者に対しても請求できる点で非常に強力な債権回収手段になります。

詐害行為取り消し権の期間制限
詐害行為取り消し請求に係る訴えは、債務者が債権者を害することを知って行為をしたことを債権者が知ってから2年を経過したときは訴訟提起ができないとされています。同様に行為の時から10年が経過した場合も訴訟提起はできなくなります(426条)。債権者としては、このような時間的制限があることも知っておくことが必要です。

債権回収行為においての詐害行為取り消し請求の活用
債権回収を行う場合に、債務者が十分な資産を有していないにもかかわらず、財産を処分してしまっていることが多くあります。債務者が自分の生活費や事業の運営のために、やむを得ず財産を処分したり、弁済期にある債権者に対して債務の弁済を行った場合(本旨弁済)についてまで、行為の取り消しを行うことはできません。一方で、債務者が会社の存続を図るためとして、債権者の了解なしに会社分割を行って資産を移転したり、奥様と離婚をすることで過大な財産分与をして会社の資産を流出させてしまうことは違法な行為と判断されることも多くあると思われます。債権者としては、詐害行為取り消し訴訟を活用して債権の回収を図る必要があります。詐害行為取り消し請求は債務者に対して行うだけでなく、債務者から資産の譲受を行った受益者や転得者に対しても行使することができます。債務者が十分な資産を有していない場合でも債権の回収を図る手段として極めて強力な効力を有することになります。 

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2020年6月 3日 水曜日

仮差押え(債権回収)について

仮差押えとは
仮差押えとは、裁判所の命令により、債務者がその財産を仮に差し押さえることで、債務者が勝手に処分することができないようにする手続きです。債権者は、裁判所に仮差押申立書を提出し、仮差押えの決定をもらう必要があります。裁判所による仮差押えの決定書は、債務者や第三債務者に送達され、債務者や第三債務者は、仮差押えされた財産を勝手に処分することができなくなります。

仮差押えの要件
仮差押えは、金銭の支払いを目的とする債権について、強制執行をすることができなくなる恐れがあるとき、又は強制執行をするのに著しい困難を生じる恐れがあるときに発することができるとされています(民事保全法20条1項)。従って、債権者の有する債権は金銭債権であることが必要です。また、仮差押えの決定を得るためには、申立人である債権者は自己の債権があることを裁判所に疎明しなければなりません。債権者は確定判決や公正証書を有している必要はありませんが、通常の場合契約書などで債権の存在をある程度証明できることが必要となります。仮差押命令は、特定の物に対して発しなければならないとされていますので、銀行預金、賃金債権、不動産、自動車など、仮差押えの対象となる物(債務者の有するもの)を特定して行うことが必要です(民事保全法21条)。

仮差押えによる財産処分の禁止
仮差押えを行う場合、債務者は、仮に差し押さえられた財産の処分が禁じられてしまいます。債権者からすれば、将来確定判決を得て強制執行する際に債権の引当となる財産が確保されることになります。

仮差押えによる債務者への心理的圧力
不動産に対する仮差押えがなされる場合、不動産の登記簿謄本に仮差押えがなされた旨の記載がなされることになります。銀行預金が仮に差し押さえられた場合、第三債務者である金融機関に対して裁判所から仮差押え決定書が通知されますので、金融機関がその預金者に仮差押えがなされたことを知ることができ、債務者の信用は著しく害されてしまうことになります。債務者としては、仮差押えのなされた状態をいつまでも放置しておくことがでませんので、債務者の側から債権者との和解を提案してくることが多くあります。

仮差押えの手続き(密行性の原則)
仮差押えは裁判所に仮差押え申立書を提出して行うことになりますが、仮差押えの申し立てがあることを債務者が知ってしまうと、債務者は仮差押決定が出る前にその財産を処分してしまう可能性があります。従って、仮差押えには密行性の原則が働き、債務者に知らせないうちに決定を出してもらう必要があります。そこで通常の訴訟手続きなどと異なり、仮差押えの決定手続きの中では債務者への呼び出しや債務者の審尋は行われません。

仮差押えを用いた債権回収
当事務所の顧問先が取引相手に1000万円を貸し付けて金銭貸付証書を作成していたにもかかわらず、債務の支払いがなされなかった件で、顧問先からの依頼により債務者の自宅に対して仮差押えの申し立てを行い、仮差押え決定を得ることができました。自宅への仮差押えがなされたことで、債務者は自宅を取られてしまうのではないかと心理的に強力なプレッシャーを受けることになり、債務者の側から1000万円の全額の支払いを行うので、仮差押えを取り下げてほしいとの提案があり、債権全額の回収を図ることができました。

仮差押え申し立てに係る担保提供
仮差押え決定の手続きでは、保全すべき権利及び保全の必要性について疎明しなければならないとされています(民事保全法13条2項)。通常の裁判の場合、証拠の優越と言えるレベルの証明が必要であるのに対し、保全処分では疎明(一応確からしいと言える程度に証拠を挙げること)で足りるとされています。従って、申立人の債権が本当に存在するかどうか必ずしも確証を持てない中で決定を出すことになりますので、場合によっては債権が存在していないなどの理由によって債務者に対して大きな損害が生じてしまう可能性があります。そこで、裁判所は仮差押えの決定を出す際には、申立人に対して担保を立てさせることを条件とするのが通常です(民事保全法14条)。担保金の額は請求額の10%から15%とされています。申立人が供託証書の写しを裁判所に提出し、担保金の供託を行ったことを裁判所に示した段階で、仮差押え決定がなされます。当事務所でも顧問先の依頼者からの依頼により、債務者が有する上場会社の株式を仮差押えするのに数千万円の担保を供託したことがあります。

供託金の還付
仮差押の際に供託した担保金は、確定判決、和解調書、相手方の同意書を得るまで還付されません。確定判決を得るまでに数年間を要する場合には、その間供託した金銭は拘束されたままとなります。仮差押えを行う場合には、担保金が長期にわたり拘束されてしまうことに常に注意しておくことが重要です。また、裁判上の和解を行う場合には、仮差押えの取り下げとともに、(債務者の側で)供託金の還付について同意する旨を和解調書の中に記載しておくことが重要になります。

差押命令、転付命令
仮差押えを行った債権者が本案の訴訟において勝訴した場合、勝訴判決を債務名義として仮差押えした財産に対して本差押さえを行うことができます。銀行預金であれば、その後転付命令や取立命令を得て、債権者は金融機関からの預金の払い戻しを受けて自己の債権に充当することができます。また、本案の勝訴判決を供託所に提示することで、担保金の還付を受けることもできます。

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