事務所ブログ

2019年2月 7日 木曜日

民法改正 売主の担保責任に関する改正

民法改正 売主の担保責任に関する改正

 平成29年5月26日、民法の一部を改正する法律が成立しました。明治時代に民法が制定されてから、実に120年ぶりの大改正になります。改正部分は多岐にわたりますが、今回の記事では、売買契約における売主の担保責任について検討したいと思います。
 なお、改正民法は、一部を除いて2020年4月1日から施行されます。
 
1 現行法
(1)瑕疵担保責任
 一般に、担保責任とは、瑕疵(「目的物が通常保有すべき 品質・性能を兼ね備えていないこと」)ある目的物を給付した者(売主)が取得した者に対して負担する責任です。
現行法では、売買に関して、権利の一部が他人の物である目的物を売買した場合の担保責任として560条、数量が不足または一部滅失している目的物を売買した場合の担保責任として565条、物の瑕疵があった場合についての担保責任として570条が規定されています。
現行法570条では「売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する」と規定されています。「隠れた」とは、通常人が通常の注意をしても発見できないことをいいます。準用された566条によれば、①買主が、瑕疵があることを知らず、かつ瑕疵のために契約をした目的を達することができないとき、買主は契約を解除することができ(1項)、②解除ができないときは損害賠償請求することができ (1項)、③契約の解除や損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から1年以内にしなければならない (3項)、と規定されています。

(2)瑕疵担保責任の法的性質
一方で、売買の目的物が他人物だったり、数量不足だったり、隠れた欠陥がある場合というのは、本来の契約をきちんと履行していないという意味で債務不履行がある場合ともいえます。債務不履行があった場合、民法では、債権者は、解除(現民法契約総則540条以下)、損害賠償請求(現民法債権総則415条)、履行の強制(現民法債権総則414条)をすることができると規定されています。そこで、売買において給付された目的物に瑕疵がある場合、債務不履行と瑕疵担保責任との関係をどう考えればよいかについてながらく議論がされてきました。
この点については、瑕疵担保責任の性質を法定責任とする考え方と契約責任とする考え方で争いがあり、これまでは、法定責任説が通説であるとされてきました。法定責任説は、まず売買を当事者が物の個性に着目して取引する特定物売買と、物の個性に着目しない不特定物売買に分けて考えます。特定物売買では、当事者が個性に着目し、当事者が選択したその物が売買の目的物となるのだから、給付さえすれば目的物に隠れた瑕疵があっても売主に債務不履行責任は生じないことになります(このような考え方を特定物ドグマといいます)が、有償契約(相互に対価的な経済的支出をする)の性質を持つ売買契約では、目的物に瑕疵があると、その分対価的均衡が保たれないので、買主に対して責任追及ができないとすれば、瑕疵がないと信頼して目的物を購入した買主が不利益を被ることになります。これを是正するために法律が特に認めた責任が瑕疵担保責任であるとする考え方が、法定責任説です。法定責任説では、570条は特定物について適用され、不特定物については一般の債務不履行責任を規定した415条が適用されることになります。
 
2 改正法の考え方
(1)担保責任の考え方について
しかし、法定責任説に対しては、特定物か不特定物かで分けるのはあまり意味がなく、救済方法について差がありすぎるといった批判や、両当事者が一定の品質や性能を有する目的物の給付をすることを合意している場合に債務不履行が生じないのは常識に反するといった批判がありました。近年では、瑕疵担保責任も債務不履行責任の特則の一つであると考える契約責任説が有力となっていました。
そこで、今回の民法改正では、売主の担保責任に関して、契約責任説を前提に改正されています。改正法では、瑕疵という用語ではなく「契約の内容に適合しないもの」(新民法562条参照)という用語を用いて、目的物が特定物か不特定物かに関わらず、売主は買主に対して、種類、品質、数量に関して契約の内容に適合する目的物を引き渡す(新民法562条)、または権利を移転する(新民法565条)義務を負い、当該契約内容に適合しない目的物を引き渡したり、権利を移転したりした場合には、売主は担保責任を負うという建付けになっています。

3 現行法と改正法の比較~担保責任の効果
 担保責任の効果に着目して、現行法と改正法を比較してみたいと思います。全体としては、現行法と比較して、買主の保護が図られています。
(1)損害賠償請求権
 損害賠償請求は、現行法から認められていた救済手段ですが、瑕疵担保責任を法定責任と考える立場からは、損害賠償の対象は、信頼利益の損害(その契約が有効であると信じたために発生した損害)に限られるとされてきました。
 改正法では、瑕疵担保責任は債務不履行責任と考えられることになりますので、415条以下の債務不履行と同様に、契約が完全に履行されていれば発生したであろう利益である履行利益に対する損害も損害賠償請求の対象とされます。
 さらに、債務不履行責任を問うための債務者の帰責事由は、伝統的に債務者の故意過失と理解されてきましたが、415条も改正され、「契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして」判断されることになりました(改正民法第415条但し書)。

(2)解除権
現行法でも、「契約をした目的が達せられないとき」に買主は契約を解除することができました。
改正法においては、債務不履行に基づく一般的な解除と同様に(新民法第564条)、契約をした目的を達せられないときという条件がなくても、契約を解除することができます(新民法541条)。ただし、「債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるとき」には、解除は認められません(新民法第541条)。

(3)完全履行請求・代金減額請求権
法定責任説の立場からは、目的物に瑕疵があっても、瑕疵のない「この目的物」を観念することが理論上できないため、追完請求(修補請求・代替物引渡請求・不足分引渡請求)は認められていませんでした。
新民法では、売主の担保責任の性質は債務不履行責任であるとされたため、引き渡された目的物が種類・品質・数量の点で契約の内容に適合しないものであるときは、買主は売主に対し、債務不履行責任の一環として、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完請求をすることができるようになりました(新民法562条1項本文)。
ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができるとされています(新民法562条1項但し書)

(4)代金減額請求権 
現行法にはなかった規定として、562条に関連して563条が新設され、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主はその不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができると規定されました。

(5)担保責任の追及期間
現行法では、瑕疵担保責任の追及は、事実を知ったときから1年以内に契約の解除又は損害賠償の請求をしなければならないとされていました。
新民法では、品質又は種類に関しての契約不適合があった場合、買主は、契約不適合を知った日から1年以内に、契約不適合である旨を相手方に通知をしなければ、解除や損害賠償請求をすることができないとされました(新民法第566条)。

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2019年2月 7日 木曜日

相続法の改正 遺産分割前に処分された財産

相続法の改正 遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲

平成30年7月6日、国会で、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律が成立し、相続法が多岐にわたって、改正されることになりました。
 今回のブログでは、相続開始後に共同相続人により相続財産が処分された場合の処理について、ご説明いたします。

【事案】Aが亡くなり、相続人は子Bと子Cであった。相続開始時に相続財産として銀行預金2000万円があったが、BはAが亡くなる前、Aから2000万円の生前贈与を受けていた。Aが亡くなり相続が開始した後、BはATMを急いで回り、合計で1000万円を引き出して自分のものにした。 
 この場合、BCはその後の遺産分割においてそれぞれのどれだけ相続することになるだろうか。Cには、不都合が生じないのだろうか。
(事例は、法務省民事局民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)より引用)

1 まず、事案を考える前に、遺産分割に関する前提となることをご説明します。
(1)被相続人が死亡すると相続が開始しますが、相続人が複数いる場合、被相続人が残した相続財産は民法の規定により相続人間で共有になります(民法898条)。いったん共有になった遺産を相続人に分配することを遺産分割といいます。
(2)
①被相続人が遺言を残している場合には、原則遺言にしたがって分配されます。この場合の相続分のことを「指定相続分」といいます(民法902条)。
②一方遺言を残していない場合には、民法が定める相続のルールである法定相続分に従って相続することになります(民法900条)。法定相続分は、相続人の組み合わせによって定められており、たとえば夫が亡くなって相続人が妻だけである場合には、妻がすべて相続し、相続人が妻Aと子Bと子Cの場合には、妻Aが2分の1、子Bが2分の1、子Cが2分の1相続すると定められています。具体的に相続財産として銀行預金1500万円と不動産が1つあった場合には、妻Aが銀行預金500万円と不動産の持分を2分の1、子Bが500万円と不動産の持分4分の1、子Cが500万円の不動産の持分4分の1を相続することになります
③しかし、被相続人が生前一部の相続人に生前贈与していた場合(これを特別受益と呼んでいます)や、一部の相続人が被相続人と同居してつきっきりで看病していた場合(こちらは特別の寄与と呼ばれます)など特別な貢献があった場合には、その部分を評価して相続分を確定しなければ、不公平が生じます。このように相続開始時に現存する財産の価額で計算すると相続人間で不公平が生じる場合、相続人間の公平を図るために特別受益や特別の寄与を考慮して相続分を確定することになります。このようにして決められた相続分のことを「具体的相続分」(民法903条)と呼んでいます。
 
一部の相続人に生前贈与があった場合の具体的相続分の計算方法は、以下の通りです。
ア 相続開始時の相続財産価額に特別受益額を加えた額を、みなし相続財産とします。
イ 次に、みなし相続財産に法定相続分または指定相続分をかけて、各相続人の本来の相続分を確定します。
ウ 最後に、イで出した本来の相続分から特別受益額を引いたものが、各相続人の具体的相続分となります。

計算式で書くと、このようになります。

ア 相続財産開始時の相続財産価額 + 特別受益額 = みなし相続財産
イ みなし相続財産 × (法定 or 指定相続分)=各相続人の本来の相続分
ウ 各相続人の本来の相続分 - 特別受益額 = 各相続人の具体的相続分

このように、一部の相続人が生前贈与を受けるなどして結果的に他の相続人より多く相続財産を受けることが公平といえない場合には、特別受益を相続財産に持ち戻して、相続分を確定するのです。

(3)また、遺産分割の対象となる財産の確定のため、その基準時をいつにするかということが問題となります。相続開始時(被相続人が死亡したとき)なのか、それとも遺産分割時(協議が始まるとき)かで見解が分かれるところですが、実務では、遺産分割時を基準にしています。

 以上の前提のもとで、今回の事案について考えてみます。
(1)まず、Bによる1000万円の引き出しがなかった場合について検討します。
Bが受けた生前贈与は、特別受益に当たります。そこで、本ケースの具体的相続分を式に当てはめて計算すると、下記のようになります。

ア 2000万円(相続財産開始時の相続財産価額)+2000万円(特別受益額) 
=4000万円(みなし相続財産)
イ Bの本来の相続分=4000万円(みなし相続財産)× 1/2(法定相続分)=2000万円
  Cの本来の相続分=4000万円(みなし相続財産)× 1/2(法定相続分)=2000万円
ウ Bの具体的相続分=2000万円(Bの本来の相続分)-2000万円(特別受益)=0万円
  Cの具体的相続分=2000万円(Cの本来の相続分のまま)
このように計算すると、BとCの具体的相続分の割合は、B:C=0:2000万円になるので、遺産分割時の残余財産2000万円の分配は、次のようになります。
B=2000万円 × 0/(0+2000万円)  =0円

C=2000万円 × 2000万円/(0+2000万円) =2000万円

Bはすでに2000万円の生前贈与を受けていますので、実質的にはBもCも2000万円ずつ受け取ったことになるわけです。

(2)では次に、事案のようにBがATMで合計1000万円を引き出していた場合はどうなるでしょうか。この場合、遺産分割時の遺産は2000万円から1000万円に減っています。遺産分割の対象財産は遺産分割時を基準に定められるため、1000万円を具体的相続分に応じて分配することになります。BCそれぞれ下記のようになります。

B=1000万円 ×0/(0+2000万円) =0円

C=1000万円 ×2000万円/(0+2000万円) =1000万円
このように計算すると、Bは、生前贈与の2000万円にATMで引き出した1000万円をくわえた3000万円、Cは1000万円を取得することになり、不公平が生じます。
 現行の制度のもとでこの不都合を解決する方法に明確なものはありませんが、Cは自らの取り分である1000万円について、不法行為や不当利得を理由に民事訴訟を提起することが可能です。費用や時間がかかり、また実際に請求が認められるかも難しいのが現状です。

3 そこで、このような不都合を解消するために、新民法では906条の2が創設され、遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合でも、処分された財産につき遺産に組み戻すことについて処分した相続人以外の同意があれば、処分者の同意を得ることなく、処分された財産を遺産分割の対象に含めることが可能となりました。(新民法906条の2第1項、第2項)
 組戻しが行われると、相続の対象となる財産は、現存する1000万円+引き出された1000万円+特別受益2000万円の合計4000万円となり、BCの法定相続分に応じた取得額としては2000万円ずつになりますが、Bは1000万円多く取得していることになります。そこで、BはCに対して、1000万円の代償金を支払うことになります。
 家庭裁判所で遺産分割審判を行う場合には、家庭裁判所は、BからCに対して代償金1000万円を支払うよう命じる審判を出すことが考えられます。BとCは、最終的には2000万円ずつ取得することになり、公平な遺産分割を実現することができるのです。

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2019年1月24日 木曜日

消費者の利益を一方的に害する条項について

消費者と事業者との間の契約においては、消費者契約法上、消費者の利益を一方的に害する条項は無効となること。

1 事業者が顧客に対して負う損害賠償責任を免除する条項の無効(消費者契約法8条)
 (1) 債務不履行責任の全部免除(同1項1号)
本号に該当する条項の例としては、
「いかなる理由があっても一切損害賠償責任を負わない」
「事業者に責に帰すべき事由があっても一切責任を負わない」
「事業者に故意又は重過失があっても一切責任を負わない」
といった、事業者の債務不履行による損害賠償責任を全て免除する旨の条項が、本号に該当し無効となる。

 (2) 故意・重過失による債務不履行責任の一部免除(同2号)
無効となる条項の例としては、
「事業者の損害賠償責任は○○円を限度とする」
といった条項がある。このような条項は、事業者の損害賠償責任を一定の限度に制限し、一部のみの責任を負わせるものであるため、債務不履行が事業者等の故意又は重過失によるものである場合には、その限りにおいて無効となる。

 (3) 債務の履行に関してされた不法行為責任の免除(同3号)
   無効となる条項の例としては(1)と同様である。
ここでの不法行為責任とは、民法第709条(不法行為による損害賠償)、第715条(使用者等の責任)、第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)及び第718条(動物の占有者等の責任)のほか、代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害に関する法人の損害賠償責任の規定(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第78条等)、商法第690条(船舶所有者の船長等に関する賠償責任)、製造物責任法第3条(製造物責任)等が考えられる。

 (4) 債務の履行に関してされた故意・重過失による不法行為責任の一部免除(同4号)
   「故意又は重大な過失」という損害を発生させた加害行為の行為者の主観的態様の程度を要件としている。したがって、第3号に掲げたもののうち、人の加害行為によらない不法行為の類型については本号の適用はない。よって、第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)及び第718条(動物の占有者等の責任)、製造物責任法第3条の場合には本号の適用はないと考えられる。

 (5) 瑕疵担保責任の全部免除(同5号)
   本号は、消費者契約において、事業者が民法第570条及び第634条に規定する瑕疵担保責任を負う場合で、瑕疵による損害賠償責任の全部を免除する条項をその限りにおいて無効とするものである

2 顧客が事業者に対して負う損害賠償責任を加重する条項の無効(消費者契約法9条)
 (1) 契約解除時の過大な違約金の定め(同1号)
本号の規定は、契約の解除に伴う損害賠償額の予定等の定めがある場合において契約が解除されたときに、当該事業者に生ずべき平均的損害の額を超える額の支払を消費者に請求することができず、その超過部分を無効とするものである。

 (2) 年14.6%を超える遅延損害金の定め(同2号)
   本号は、事業者は消費者契約においては、消費者が契約に基づく金銭の支払が遅延     した場合の損害賠償額の予定等を定めたときは、年14.6%を超える損害賠償を消費者に請求することができないこととしている。

3 消費者の解除権を放棄させる条項の無効(第8条の2)
(1)  債務不履行に基づく解除権を放棄させる条項(同1号)
本号は、事業者の債務不履行によって生じた消費者の解除権を放棄させる条項をその限りにおいて無効とするものである。

(2)  瑕疵担保責任に基づく解除権を放棄させる条項(同2号)
本号は、事業者から引き渡された消費者契約の目的物や仕事の目的物に瑕疵があったことによって生じた消費者の解除権を放棄させる条項をその限りにおいて無効とするものである。消費者は、民法第570条等の規定に従い、契約の解除をすることができることになる。

4 その他消費者の利益を一方的に害する条項が無効となる例(消費者契約法10条)
(1)  事業者からの解除・解約の要件を緩和する条項
例えば、民法第541 条により、相当の期間を定めた履行の催告をした上で解除をすることとされている場面について、特に正当な理由もなく、消費者の債務不履行の場合に事業者が相当の期間を定めた催告なしに解除することができるとする条項については、無効とすべきものと考えられる。

(2)  第8条の2に定めのない消費者の解除権を放棄させる条項
例えば、委任契約については、各当事者がいつでもその解除をすることができることとされている(民法第651条第1項)。このように、債務不履行や瑕疵担保責任に基づくもの以外の消費者の解除権を放棄させる条項は、第8条の2の適用によっては無効とならない。もっとも、そのような条項が、第10条の要件を満たす場合には、同条が適用されることにより無効となる。

(3)  事業者の証明責任を軽減し、又は消費者の証明責任を過重する条項
証明責任を法定の場合よりも消費者に不利に定める条項(例えば、債務不履行に基づく損害賠償責任(民法第415 条)に関し、事業者の「責めに帰すべき事由」を消費者に証明させる条項)は、無効となりうる。

(4)  消費者の権利の行使期間を制限する条項
瑕疵担保責任の権利の行使期間については、当該契約内容の特性等により任意規定と異なる定めをすることは許容されるべきであるが、正当な理由なく行使期間を法定の場合よりも不当に短く設定する条項は、民法第566 条第3項(権利の行使期間は事実を知ったときから1年以内)に比べ、消費者の義務を加重するものとして、無効となりうる。

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2019年1月24日 木曜日

ウェブサイトの利用規約の契約への組入れと有効性について

サイト利用規約の記載が当該取引についての契約の一部になる場合。

1 サイト利用規約の組入れ可否について
インターネット通販、インターネット・オークション、インターネット上での取引仲介・情報提供サービスなど様々なインターネット取引を行うウェブサイトには、利用規約、利用条件、利用契約等の取引条件を記載した文書(以下総称して「サイト利用規約」という)が掲載されていることが一般的であるが、サイト利用規約は利用者との間の取引についての契約にその一部として組み入れられるか。

2 ウェブサイトの利用規約の契約への組入れと有効性
物品の販売やサービスの提供などの取引を目的とするウェブサイトについては、利用者がサイト利用規約に同意の上で取引を申し込んだのであれば、サイト利用規約の内容は利用者とサイト運営者との間の当該取引についての契約の内容に組み入れられる(サイト利用規約の記載が当該取引についての契約の一部になる)。
(1) 取引その他の契約関係の存在
サイト利用規約が契約内容に組み入れられるためには、まず利用者とサイト運営者の間にそもそも何らかの契約関係が認められることが必要である。契約関係の基礎となる取引としては売買取引(インターネット通販など)が最も典型的であるが、インターネットを通じた有償の情報サービスやインターネット・オークションなど各種のサービス提供取引も契約関係を発生させると考えられる。
なお、利用者とサイト運営者の間に契約関係が存在しない場合にはサイト利用規約の記載は契約としての効力を持ち得ないが、その場合であっても、サイト運営者の不法行為責任の有無及び範囲を判断する上で、サイト利用規約の記載内容が斟酌される場合もあろう。

(2)サイト利用規約が適切に開示され、且つ利用者がサイト利用規約に同意の上で取引の申込みを行っていると認定できること
サイト利用規約が契約内容に組み入れられるためには、次に、①利用者がサイト利用規約の内容を事前に容易に確認できるように適切にサイト利用規約をウェブサイトに掲載して開示されていること、及び②利用者が開示されているサイト利用規約に従い契約を締結することに同意していると認定できることが必要である(「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」経済産業省i.21頁)。

3 サイト利用規約の変更とその効力
サイト利用規約は、単発の取引であるか継続的な取引であるかに関わらず、利用者とサイト運営者との間の取引契約の内容に組み入れられることで契約の一部となるものと考えられる。そして、いったん成立した契約は当事者の合意によらない限り変更できないのが原則である。よって、事業者が既存のサイト利用者に変更後のサイト利用規約を適用するためには、サイト利用者に対してサイト利用規約の変更箇所を分かりやすく告知した上で、利用条件の変更に対するサイト利用者側の同意(又は変更後のサイト利用規約に基づき取引を行うことへの同意)を得ることが必要である。

4 消費者契約法等による内容規制
サイト利用規約が契約条件に組み入れられる場合であっても、その中の強行法規に違反する条項や公序良俗に反する条項は無効とされる。
例えば、事業者の責任を制限する条項(消費者契約法第8条)、消費者に対する過大な損害賠償額の予定(消費者契約法第9条第1号)、その他消費者の利益を一方的に害する条項(消費者契約法第10条)は無効となる。

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2019年1月24日 木曜日

契約作成上の注意点について

契約作成上の注意点

1 契約書の作成において注意すべき点(内容の明確化、公平の観点)について
契約書作成の目的は、契約当事者間の権利義務関係を明確にすることによって、後日の紛争を防止することにあります。そのため、契約書作成において重要なことは、契約の成立、存続、終了の各段階における権利義務関係・条件等について、契約当事者間で共通認識が得られているかどうかということになります。契約書中で用いられる用語を統一し、定義を明確にしておくこと、契約当事者を明確にすることなどもこのために必要となるものです。
また、契約は基本的には当事者に公平な内容となるようにするべきであると考えます。一方の当事者に一方的に有利な契約である場合には、法令上無効となる可能性もありますし、不当な扱いを受けた当事者との間で後々紛争となる可能性もあり、そのことで結果的に評判を貶めることにもなりかねません。公平な内容の契約を締結することが、結果的には全体としては、長い目で見た場合に当事者双方にとって利益となるものであると考えています。

2 強行規定に反する条項について
(1)いわゆる強行規定とは、公の秩序に関する規定として、当事者の意思の如何を問わず無条件に適用され、その規定に反する当事者間の特約を無効とするという効力を有する規定です。
  強行規定としては、例えば、民法90条(公序良俗)の他にも、利息制限法、労働基準法、下請法、独占禁止法や消費者契約法における規定などがあり、各分野における特別法において定められています。
  強行規定に反する契約条項がある場合においては、強行規定に反する条項が無効となるというだけに留まらず、もし強行規定に違反する行為を行ったような場合には、その行為に対して行政上の制裁や刑事罰が科される可能性があるために注意が必要です。
(2)公序良俗に反する条項(民法90条)
契約が、公の秩序または善良の風俗に反する事項を目的とする場合は、契約の全部または一部が無効になります。たとえば、犯罪行為を目的とする契約は無効になります。
また、事業者間契約であっても、利用規約を用いて自社にとってあまりに有利な条項を一方的に定めてしまうと、公平の理念に反し、裁判所によって無効と判断される場合があります。

3 契約終了後も契約の効力を存続させる条項を設けることの利点について
当事者間の契約関係が終了すると、その契約上規定されていた権利義務関係は、法律上認められた権利を除いては、契約の終了とともに終了することになります。そこで、法律上の規定の有無を確認する手間を省きつつ、契約終了後も自己に有利な権利義務関係を存続させるために、必要な規定ごとに契約終了後もその効力が存続する旨の特約を契約上定めておくことが有益となります。

4 譲渡制限条項について
特定の相手方と契約を締結する場合、相手方の資力や能力、誠実さなど、誰が契約の相手方であるかということは重要な要素となります。また、相手方の所在地によっては、契約を履行するために負担しなくてはならないコストが変わってくることもあります。それにもかかわらず、相手方が自由に契約上の権利義務を譲渡できるとしてしまうと、契約関係が譲渡された相手方によっては、契約が誠実に履行されないなどの問題が生じる危険性があります。また、契約を譲り受けた者が競合企業であったような場合、意図せず秘密情報が競業企業に漏れてしまうことも考えられます。
  一方、契約期間が長期に及ぶ場合などには、契約を譲渡できる余地を残し、契約当事者の承諾等の一定の条件のもとで、契約当事者の変更を認めておくことが有益である場合も考えられます。

5 不可抗力免責条項について
地震、津波、戦争など、契約当事者が社会通念上要求される注意を尽くしても防止することが不可能な事由によって債務の履行が遅延したような場合に、契約当事者を債務不履行責任から免責する条項が不可抗力条項です。このような事故には、必ずしも当事者の帰責事由によるものか否か明らかではないものもあることから、当事者が責任を免れる不可抗力による場合を明確にするために、不可抗力の範囲を契約書に明示することが必要となります。

6 収入印紙の貼付が必要な契約書かどうかの判断について
(1)課税文書
印紙税が課税されるのは、印紙税法で定められた課税文書に限られています。この課税文書とは、次の三つのすべてに当てはまる文書をいいます。
① 印紙税法別表第一(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により証明されるべき事項(課税事項)が記載されていること。
② 当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること。
③ 印紙税法第5条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされている非課税文書でないこと。
  課税文書に該当するかどうかはその文書に記載されている内容に基づいて判断することとなりますが、その文書の内容判断に当たっては、その名称、呼称や記載されている文言により形式的に行うのではなく、その文書に記載されている文言、符号等の実質的な意味を汲み取って行う必要があります。(国税庁ホームページ)
(2)非課税文書、不課税文書
  なお、非課税文書とは、印紙税法別表第一(課税物件表)の何れかに該当するが、除外規定により課税対象とならない文書のことであり、不課税文書とは、課税物件表の何れにも該当せず、課税対象とならない文書のことです。


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