事務所ブログ

2015年12月21日 月曜日

法務航海日誌〈2〉-パリ行

弁護士 山原 英治

2015年12月12日 
パリ 天候:曇り 無風 

パリ行

「新年式」への招待がパリ弁護士会からあり、東京弁護士会の代表団の一人としてパリへ行きました(LIBRA 2016年2月号〈特集〉業務の国際化と弁護士会の活動 - パリ)。さすがに客船で行くわけにもいきませんので飛行機で行きましたが、折しも、招待状をもらった直後の11月13日にあのテロの大惨事があったため行きはキャンセルが多かったのかガラガラ、エコノミー席3列をベッド代わりに寝ている人もちらほら見かけました。パリ行を断念すべきという意見もありましたが、ちょうど時期を同じくしたCOP21の厳戒態勢もあり実際のパリは観光客も多く平穏に見えました。ただ彼方此方で自動小銃のトリガーに指を掛けたまま警戒怠らないフランス軍兵士の緊張感は特異です。

パリ弁護士会会長はその演説の中で「テロによって譲るべきは人権ではない!」と、テロ対策で人権、とりわけプライバシーの権利が規制を受けることに強い警戒感を示しました。実際、ロンドンでは彼方此方で街頭カメラを見かけるのに対しパリでは目につきません。パリジャンはこのような「監視カメラ」は嫌いなようです。パリ弁護士会会長の雄弁を聞きながら、筆者はルイ16世、マリー・アントワネットの国王夫妻のことを考えていました。今年の前半、佐藤賢一氏著「小説フランス革命」を夢中になって読んでいたからです。御存じの通り1789年に勃発した革命は法の名のもとに多数の犠牲者を断頭台(ギロチン)に送りました。国王夫妻もその犠牲者です。「テロ」とはロベスピエールが主導しフランス革命政府が行った「恐怖政治」(テルール)が起源。しかも革命政権は内部抗争となり、ロベスピエール自身も断頭台に送られ、その後ナポレオン帝政→王政復古→共和制→帝政→共和制...と目まぐるしく変転したのでした。

彼の地の冬らしく日差しはほとんどなく日照時間も短いですが、風がほとんど無かったのでそれほど寒さは厳しくありません。諸催事の合間にパリ北方、中心部から車で20分ほどのサン・ドニ大聖堂を訪問しました。同大聖堂は歴代フランス王が埋葬されていて、ルイ16世、マリー・アントワネットもここで眠っています。美しいステンドグラスのそばに佇む二人の祈りの彫像を見ることができました。



ルイ16世は「趣味が錠前」などと揶揄され凡庸な王と評価されている向きがありますが、佐藤氏は上記の著書の中で彼が非凡な才能を示している点を挙げていて、史実を詳しく読むと政治思想に理解を示し、また機械工学を中心に科学に対する理解があったようです。海事関係でも一つ特質すべき事項があって、米国独立戦争介入の関係で対英国海上戦への艦隊停泊の必要性により、自ら設計図を引いて、シェルブールに無数の「巨大な円錐台」を投下し、人工的な堤防を生み出して巨大な軍港を創り出した、という偉業があります。現代でもバルカーのうちケープサイズ(鉄鉱石運搬船)の大きいもの、例えば「VALE MAX」などは満載喫水23mで先般漸く新日鉄君津港に入港できたという報道がありましたが(http://www.nssmc.com/news/20130123_100.html)、恐らく米国ですら現在このくらいの大きな船は入港できないでしょう(せいぜい12mくらいか)。かように港を創り出すことはその後の本船入港、荷役の可否を決定づけ、産業の発展に大きな影響を与えるものであります。法務関係の視点でも、本船をアレスト(船舶差押え)する場合、いずれに寄港するかはその船型を踏まえた港の特性を把握する必要があります。今回の「航海」ではルイ16世が示した巨大港創出のためのテクノロジーへの深い理解に関心を持った次第です。

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office | 記事URL

2015年12月 9日 水曜日

法務航海日誌〈1〉

弁護士 山原 英治

2015年12月9日 
天候:晴れ 風向:NW  風速:3m/s 

冬に入りかけ執務室から望む日比谷公園の木々も鮮やかに色づいていますが、天候、風向、風速ともに「出港」には穏やかな日です。

弁護士・海事補佐人として新たに当事務所に参加した山原です。ここまで運送人・船主としての船社、カーゴ・オーナー・船主としての商社、あるいは造船会社を代理して仕事をしてきたところですが、当事務所に参加したこの機会に、海事法務の視点を切り口に、企業法務に関わる様々な論点について、日々感じたことをこのブログ=法務航海日誌として記載していきたいと思っています。この試みは既に2012年年初から半年ほどNBL誌に連載した「法律意見書の読み方」によって一部実現され、連載中好評だったこともあり同名で商事法務社から著書として2013年夏に一冊の本として出版されています。

「法律意見書の読み方」は、その後日本海運集会所の「海運」誌でご紹介いただいた他、BUSINESS LAW JOURNAL誌2014年2月号の「法務のためのブックガイド2014」の中で長島・大野・常松法律事務所(当時在籍)の柴田堅太郎弁護士によって「ベテラン法務パーソン・弁護士の経験に学ぶ」の項目で推薦書の一つとしていただきました。柴田先生とは面識がありませんが、有難うございました。この本では、私が法律事務所で勤務していた際に外部カウンセルとして感じたことを踏まえつつ、更に我が国において現在1500人を超えて増えつつある若きインハウス・カウンセルの皆さんへ私の企業内弁護士としての経験や知見を伝えるという複合的な作業をしていました。そのあたりで各方面からご関心をいただけたように感じています。もとより海事法務を主要な切り口にする趣向上、この本の中では海事法務に関わる事案はビビッドに表現されています。第2話のタイタニック号遭難事件(第1話とともに当事務所に写しをアップしています)では船舶建造・構造・設計図等の話や船主責任制限法制についても語っていたところ、ちょうどイタリアでの客船「コスタ・コンコルディア」座礁事件が発生し死傷者が生じました。私の経験を踏まえたという点では、「第7話:アラビアのロレンス、アカバ港を急襲す」では倒産をテーマとし、また「第11話:海底二万里」では抵当権 vs.船舶先取特権をテーマとして論述しましたが、ちょうどのその頃、三光汽船の二度目の会社更生法適用事案に債権者側として対応する必要があり、日本の会社更生法だけでなく外国倒産手続の承認手続である米国チャプター15の話や、米国ボルチモア港での「サンコウミネラル」のアレスト(船舶差押え)についても、米国法下でのアレストの制度を説明しながら語った次第でした。

柴田先生が論評したとおり「船が好きかどうかで(この本の読者の)評価が分かれそう」というのは、ご指摘の通り(笑)。幸い柴田先生はお好きだったようですが、これから適宜お贈りする「法務航海日誌」も読者層が偏るかもしれませんね。

皆さん、海員として本船乗船したでしょうか?

では出港とさせていただきます。

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office | 記事URL

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