事務所ブログ

2016年3月25日 金曜日

日本に住所を有する日本人が香港に財産を残して死亡した場合の手続

栗林総合法律事務所では、国内外の企業の国際取引、国際紛争に関する業務を日常的に扱っていますが、海外でお亡くなりになった方の国際相続に関する業務についても取り扱っています。
この度、香港の弁護士Katty Tsang氏から、「日本に住所を有する日本人が香港に財産を残して死亡した場合」に、相続人が香港でどのような手続をとる必要があるかプレゼンテーションを行っていただきました。
そのプレゼンテーションを和訳し、複数回に分けて当ブログでご紹介しますので、ご参考にしていただければ幸いです。

日本に住所を有する日本人が香港に財産を残して死亡した場合の手続について【第1回】

まず、簡単に香港における相続の概要をご紹介いたします。

  被相続人の遺言がある場合 被相続人の遺言がない場合
プロベートを申立てることができるのは誰か 遺書で指名された21歳以上の遺言執行者 NCPR第21条が定める順位に従い決定される21歳以上の遺産管理人
関係機関 高等法院遺産承弁署(Probate Registry of the High Court) 高等法院遺産承弁署(Probate Registry of the High Court)
遺言執行者/遺産管理人の権限 遺言に従った財産の処分につき全ての権限を有する
遺言執行者と相続人は同一人物でも可
法律に従った財産の処分につき全ての権限を有する
誰が遺言執行者/遺産管理人になるべきかに関する紛争 Caveat action Caveat action
相続税 2006年2月11日より前に死亡した場合課税される
2006年2月11日以降に死亡した場合課税されない

※NCPRは非争訟的プロベート規則(Non Contentious Probate Rules (Cap. 10A) )をいうものとします。

香港では、ある方がお亡くなりになった場合、その方の財産は裁判所の承認、すなわち、遺産管理状(Letters of Administration)/授与書(Grant、資産及び負債の一覧表が添付されたもの)がなければ処分することができません。
これに違反すれば、プロベート及び遺産管理条例第10章(Probate and Administration Ordinance (Cap. 10) )第13条及び第60J条に違反する犯罪となります。

また、香港におけるプロベートでは、下記の事項が重要となります(下記の事項すべてについて、書式・形式を整えて証拠とともに提出し、確認してもらわなければなりません。)。

1. 被相続人が誰であるか
2. 被相続人の住所
3. 遺言の有無
4. 遺言執行者/遺産管理人が誰であるか
5. 相続人が誰であるか
6. 被相続人の香港における財産が何であるか
7. 保証人による保証の要否、放棄の有無
8. 関係書類が適切に準備されているか(認証されているか)

【第2回に続く】

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office | 記事URL

2016年3月11日 金曜日

法務航海日誌〈9〉-船上の葬儀

弁護士 山原 英治

2016年3月11日
東京 雨 西風  3 m/s

船上の葬儀

この数週間の短い期間で友人、知人関係でご親族が亡くなられることが続いている。今夜は郷土の兄のような先輩のそのお母様のお通夜に行く。また、つい先ほども別の件で義理のお父上が亡くなられたという友人から相続、遺産分割のご相談のお話があったりで、あまりにも連続するのでご冥福を祈りつつも少々驚いている。

随分昔だが、大学で親しかった先輩が山で遭難し、予期しない突然の事態にご家族が非常に辛い思いをしたが、ご依頼を受けてその「失踪宣告」(民法30条)の手続を行ったことがある。「失踪宣告」というのは法的な意味においてその友人の死を裁判所に宣言してもらうことだから(民法31条)、いやそのうちひょっこり現れるのではないか(捜索しても見つからなかったから)、こんなことをしていいのかと、心情的に辛くそれは悲しい手続きだった。しかも、通常は不在者の生死が明らかにならなくなって七年の時間を要するので時間の流れが癒してくれるのかもしれないが、諸事情から特別失踪として一年経過時点での宣告を要した。

特別失踪宣告(民法30条2項):

「戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となる危機に遭遇した者の生死、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後一年間明らかでないときも、前項と同様とする(筆者注:家庭裁判所の判断で、利害関係人の請求を受けて、失踪宣告をすることができること)」

陸上から隔絶された航海途上の船舶に沈没という危機が訪れたとき、乗船者の生死の特定は困難を極める。先般のイタリア、コスタ・コンコルディア座礁事件は陸上と近接していた地点であったにもかかわらず死亡者の把握には時間がかかり、海流の激しい海域で発生した韓国セウォル号沈没事故では多くの若者が沈没した本船とともに長期間船内に閉じ込められてしまった。そのような生死不明の場合でも陸上では残された財産の処理などのために法的な意味で人の生に短期でピリオドを打つ非常手段を使わなければならない、それが特別失踪宣告だ。

特別失踪宣告の制度だけではない。隔絶された洋上という特殊な事情は乗船者の死亡に関して特殊な制度を生み出している。

船員法第15条(水葬)「船長は、船舶の航行中船内にある者が死亡したときは、国土交通省令の定めるところにより、これを水葬に付することができる。」
同法第16条 (遺留品の処置)「船長は、船内にある者が死亡し、又は行方不明となったときは、法令に特別の定がある場合を除いて、船内にある遺留品について、国土交通省令の定めるところにより、保管その他の必要な処置をしなければならない。」

船上での船長権限は強大だ。今般の商法(運送・海商関係)改正法制審での議論では「船長と言ってももうサラリーマンですよ。船長に対する(荷主などによる直接の)損害賠償責任規定はサラリーマンには重すぎる。廃止しましょう!」という意見が強く、要綱では商法705条1項(船長の注意義務)は削除方針となっている。ところが、船長の荷物処分権(商法712条1項)は今般の改正要綱でも温存されており、「予想し難い海上危険が発生するのだから、荷主にとっては航海中の運送品につき臨機応変の措置を要するとされ...船長は、...他方では荷主の代理人または代表者たる地位を兼ねることになった。」(中村=箱井「海商法」134頁)であると解されていたところでの商法705条1項による法定責任が、今般の削除で、荷主の視点から見ると「全幅の信頼を寄せる船長さんはしっかりやってくれるはず」という信頼感のみに依拠、(運送人である船社に対する請求権はあるとしても)直接の賠償請求までは求めませんよ、と仕立てになった。法制審では「今時の日本の船長は皆しっかりしている!」という声が大きかったのだが、法制度は今だけに関わるわけではない。それに一方で「サラリーマンだから」としつつ、他方で「しっかりしている(サムライの矜持?)」というのはよく分からない。明らかなのは、船上の葬儀に関わる船長の水葬権限(条件を欠いた水葬は30万円以下の罰金刑に処せられる。船員法126条4号)や遺留品管理権など、船長にはやはりプライドを持って仕事をしていただきたい、船上では全幅の信頼を委ねる、という関係者の了解が法制度の前提となっているということだ。

ちなみに上記の友人のケースでは「戦地に臨んだ者」「沈没した船舶の中に在った者」には該当しないため山での失踪が「その他死亡の原因となった危機」に該当するかは家庭裁判所の判断に委ねられた。当然筆者は類似の「遭難」に関わる判例などを調査して上申し、その結果、特別失踪宣言を得ることにはなった。それはご遺族にとってご希望の結果ではあったのだけれど、友人としては、あれから10年以上は過ぎているのだけれど、まだそのうちひょっこり現れるのではないか、と心の隅では思っていて、似ている人が通り過ぎるとハッとすることがある。

今日は東日本大震災からちょうど5年、多くの人にとって生死に関わる想いの深まる日だ。
航海継続

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office | 記事URL

english
アクセス


〒102-0083
東京都千代田区麹町3丁目5-2
BUREX麹町501号

お問い合わせ 詳しくはこちら
  • RSS配信
  • RSSヘルプ