事務所ブログ

2016年4月26日 火曜日

日本に住所を有する日本人が香港に財産を残して死亡した場合の手続

香港の弁護士Katty Tsang氏による、「日本に住所を有する日本人が香港に財産を残して死亡した場合」の香港での相続手続に関するプレゼンテーションについて、前回の続き(第5回)を掲載いたします。

日本に住所を有する日本人が香港に財産を残して死亡した場合の手続について【第5回】

日本人と香港(中国)人の比較

香港と日本は、プロベートについて異なる法概念と手続を有しています。

香港では、ある方がお亡くなりになった場合、プロベートの申立てをする権利を有する方は、高等法院に対して、プロベート(遺言がある場合)又は遺産管理状(遺言がない場合)の付与を申立てなければなりません。

これに対し、日本では、プロベートのような制度はありません(但し、日本における相続の場合であっても、「検認」という制度が適用される可能性があります。)。

また、香港のコモンロー制度は、被相続人の住所(正確にはドミサイル(domicile))に着目し、住所の存する国の法律が被相続人のプロベートに関する事項についての準拠法であり、かつ、管轄権を有すると考えています。これに対し、日本においては、相続の準拠法は被相続人の国籍によって判断されることになります(法の適用に関する通則法36条)。

下記の表はそれぞれの場合におけるプロベートの基本的事項を示すものです。
(ⅰ)日本国籍で日本に住所を有する場合
(ⅱ)日本国籍で香港に住所を有する場合
(ⅲ)中国(香港)国籍で日本に住所を有する場合
(ⅳ)中国(香港)国籍で香港に住所を有する場合
―上記4つの場合全てにおいて、被相続人は遺言を残さずに死亡し、日本と香港の両方に動産及び不動産を有していたものと仮定します。

被相続人の国籍 住所/財産:所在地 プロベートの準拠法及び申立て地
日本 住所:日本 日本法
財産:日本 日本法
動産:香港 香港法(NCPR第29条(a)又は(b))
不動産:香港 香港に住所を有する日本人と同様に香港法(NCPR第29条但書)
日本 住所:香港 日本国内→日本法(通則法36条)
香港内部→香港法(コモン・ロー)
動産:日本 日本法
不動産:日本 日本法
動産:香港 香港法
不動産:香港 香港法(NCPR第29条但書)
中国(香港) 住所:日本 香港法
動産:日本 日本法
不動産:日本 日本法
動産:香港 香港法
不動産:香港 香港法
中国(香港) 住所:香港 香港法
動産:香港 香港法
不動産:香港 香港法
動産:日本 日本法
不動産:日本 日本法
略語:
通則法=法の適用に関する通則法
NCPR=非争訟的プロベート規則(Non-Contentious Probate Rules (Cap. 10A) )

【終】

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office | 記事URL

2016年4月21日 木曜日

日本に住所を有する日本人が香港に財産を残して死亡した場合の手続

香港の弁護士Katty Tsang氏による、「日本に住所を有する日本人が香港に財産を残して死亡した場合」の香港での相続手続に関するプレゼンテーションについて、前回の続き(第4回)を掲載いたします。

日本に住所を有する日本人が香港に財産を残して死亡した場合の手続について【第4回】

[日本法意見書]

1. 法律意見書には下記の事項を記載する必要があります。

(a)当該事件に係る事実及び適用される日本法を記載する(関連条文を引用する。)。

(b)日本法の下では、誰が優先的に財産の管理又は授与書の申立てをする権利を有するのか記載する。

(c)日本の裁判所が検認した場合を除き、遺言の有効性について記載する。但し、被相続人が無遺言で死亡した場合は不要である。

(d)日本における財産を管理するために授与書が必要であるかどうか、仮に必要である場合、本件で授与書の申立てがない理由を記載する。
但し、日本においては、被相続人の財産を管理するために授与書を得る必要はない(民法896条)。

(e)未成年者(相続人が18歳以下である場合)の利益及び生涯権(信託など)について記載する。弁護士は、結論及び結論に至るまでの過程について詳細かつ明確に記載しなければならない。

※非争訟的プロベート実務ガイド(Guide to Non-contentious Probate Practice)82頁をご参照ください。

2. 法律意見書を作成する権限を有する者について(非争訟的プロベート規則第18条(Rule 18 of Non Contentious Probate Rules)

法律意見書を作成する者は、弁護士として5年以上の実務経験を有している必要があり、法律意見書にはそれに関する証拠を付する必要があります。

3. 未成年者の利益が問題となる場合、遺産管理人が2名必要となります。
この点については、日本では遺産管理人2名が必要とされることはありませんが、プロベート及び遺産管理条例第10章第25条(Section 25 of Probate and Administration Ordinance (Cap. 10))に基づき、香港では必要となります。

※非争訟的プロベート実務ガイド第254項(Guide to Non-contentious Probate Practice para. 254)をご参照ください。

【第5回に続く】

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office | 記事URL

2016年4月19日 火曜日

日本に住所を有する日本人が香港に財産を残して死亡した場合の手続

香港の弁護士Katty Tsang氏による、「日本に住所を有する日本人が香港に財産を残して死亡した場合」の香港での相続手続に関するプレゼンテーションについて、前回の続き(第3回)を掲載いたします。

日本に住所を有する日本人が香港に財産を残して死亡した場合の手続について【第3回】

[具体的な手続2]

1. 被相続人の財産の遺産管理人が日本に居住する日本人である場合、香港の弁護士(solicitor)に対して、申立てをすること及び遺産管理人の代理人となることを依頼することが考えられます。この場合は、遺産承弁署から保証人を求められません。

外国人の遺産管理人が申立てをする場合、遺産承弁署から、遺産管理人以外に2名の保証人を求められます。保証人は、それぞれが香港における被相続人の財産の合計又はそれ以上の資産を有していなければなりません。
保証人は、裁判所が決定する保証人の責任に関する制限の範囲内において、遺産管理人がその義務に違反することにより、被相続人の財産の遺産管理の利害関係者が被る損害を賠償することを保証しなければなりません(プロベート及び遺産管理条例第10章(Probate and Administration Ordinance (Cap. 10))第46条ご参照)。

2名の保証人を確保することは大変困難であることが現状です。

ポイント

(a) 申請人が下記の2つの事項を示した場合、遺産承弁署に対する申立てにより、保証人による保証は免除されます:
(i) その財産について、現在のものであると潜在的であるとを問わず、知れたる債権者若しくは債務者がいないこと、又は、全ての債権者が保証の免除について同意しており、同意書を提出すること
(ii) 保護されるべき相続人がいないこと、又は当該相続人が保証の免除について同意していること(可能であれば、同意書を提出しなければなりません。)

(b) 香港の弁護士(solicitor)が受任する場合は、保証人は不要です。

2. 遺産承弁署は、申立てを審理する手続全体において、適宜問合せをする場合があり、これに回答する必要があります。これらの問合せを経て、遺産承弁署が心象を得られた段階で、プロベートの授与書が発付されます。

遺産管理人は、プロベートの授与書に基づき、授与書に記載された被相続人の財産のみを処分します。授与書に記載のない被相続人の財産が発見された場合、遺産管理人は、遺産承弁署に対し、当該財産を授与書に追加するように申し立てることができます。

【第4回に続く】

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office | 記事URL

2016年4月13日 水曜日

日本に住所を有する日本人が香港に財産を残して死亡した場合の手続

香港の弁護士Katty Tsang氏による、「日本に住所を有する日本人が香港に財産を残して死亡した場合」の香港での相続手続に関するプレゼンテーションについて、前回の続き(第2回)を掲載いたします。

日本に住所を有する日本人が香港に財産を残して死亡した場合の手続について【第2回】

[具体的な手続1]

1. 日本はプロベート及び遺産管理条例第10章別表2(Probate and Administration Ordinance (Cap. 10) Schedule 2)により指定されていないため、簡易な手続は適用されません。

2. プロベートの申立てに関する法的根拠:非争訟的プロベート規則第29条(Rule 29 of NCPR)

まず、プロベートの申立ての前に、一方的な申立てにより命令を取得することになります。

日本人の被相続人が遺言を残さず死亡した場合、規則第29(b)条に基づいて、一方的な申立てを行うことになります。
申立てフォーム(ご参照用):
Form F3.1 《香港司法機構のサイトより》


但し、プロベートの申立てをする前に命令を取得することは、次の場合には免除されます。

(a) 被相続人が遺言を残して死亡した場合、英語又は中国語で記載された被相続人の遺言に従って選任された遺言執行者に対し、授与書を発付することができる。
(b) 被相続人の香港における財産が不動産のみである場合、香港に住所を有する被相続人が死亡した場合と同様、香港法に基づき(日本法ではない)権限を有する者に対し財産に限定された授与書を発付することができる。

これらの場合には、香港における通常のプロベートの申立てと同様、直ちにプロベートの申立てを行うことができます。

3. 被相続人の香港における財産が150,000香港ドル未満の場合は、略式の手続の対象ではなく、非争訟的プロベート規則第29条(Rule 29 of NCPR)の対象になります。

4. 申立ては全ての添付書類を揃えて行わなければなりません。添付書類として通常想定されるのは下記の書類ですが、場合によっては更に書類が必要となる可能性があります。
・死亡証明書
・婚姻証明書
・出生証明書
・被相続人の本人確認書類
・申立人の本人確認書類
・被相続人の最後の住所地及び職業に関する書類
・香港における資産に関する書類(例:銀行預金残高証明書、土地調査記録)
・遺言調査記録
・(もしあれば)銀行の貸金庫内の物品に関する目録

まず、日本の当局又は機関が作成した書類は、アポスティーユを取得する必要があります。
次に、個人/民間団体が作成した書類は、日本の公証役場で認証を受けた上で、外務省で証明書を取得し、又は/かつ、駐日中国大使館で認証を受ける必要があります。日本語で記載されているものは、翻訳者が宣誓の上翻訳しなければなりません。

5. 日本の弁護士による、法律についての宣誓供述書/宣誓書が必要となります。

【第3回に続く】

投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office | 記事URL

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