事務所ブログ

2017年3月24日 金曜日

香港会社法―その3:香港証券取引所への上場

香港の弁護士Christy Liさんによる、香港の会社法についてのブログ記事の第3回(最終回)を掲載いたします。

香港会社法―その3:香港証券取引所への上場

香港証券取引所は、最大の時価総額を有する世界有数の証券取引所の一つであり、活発な取引を行っています。企業が資本を調達するための理想的な市場です。香港は、2017年には130の企業が2,200億香港ドルの資金を調達し、株式公開(IPO)において世界トップに位置し続けることが予想されています。この記事では、証券取引所への上場の方法および基本的要件を簡単に紹介します。

(Ⅰ)上場方法
香港で株式公開を希望する企業は、メインボード(本則市場)またはグロース・エンタープライズ・マーケット(「GEM」:新興市場)のいずれかへ上場申請ができます。上場には4つの方法があり、その詳細は次のように設定されています。
(i)購入申込:証券発行会社またはその代理人による上場申込み
(ii)売却申込:発行済もしくは発行に同意のある証券の保有者または割当人による一般投資家に対する申込み、あるいは、当該保有者または割当人の代理人による申込み
(iii)私募:主に発行会社/仲介者が選択もしくは承認した人物からの、発行会社/仲介者の取得申込み、またはその人物に対する、発行会社/仲介者による証券売却
(iv)イントロダクション方式:マーケティングが不要な発行済証券の上場申請
これらに加え、GEMの発行会社は、合理化された手続きにしたがってその上場をメインボードに移転することができます。

(Ⅱ)基本的上場要件
(i)財務要件
メインボードの新規申請者は、少なくとも3会計年度の事業年数を有し、かつ下記表の3つの財務基準のいずれかを満たしていなければなりません。
①   利益基準
  【株主帰属利益】過去3会計年度で5千万香港ドル以上(直近年度に計上された利益が2千万香港ドル以上およびそれ以前の2年間に計上された利益が総額3千万香港ドル以上)
  【時価総額】上場時に2億香港ドル以上
②   時価総額/売上基準
  【時価総額】上場時に40億香港ドル以上
  【売上】直近の監査済会計年度について5億香港ドル以上
③   時価総額/売上/キャッシュフロー基準
  【時価総額】上場時に20億香港ドル以上
  【売上】直近の監査済会計年度について5億香港ドル以上
  【キャッシュフロー】直近3会計年度について営業活動による黒字のキャッシュフローの総額が1億香港ドル以上

GEM新規申請者は、以下の条件を満たす2会計年度以上の事業年数を有していなければなりません。
①   上場関係の文書発行の直前2年間で、通常の業務過程での営業活動から生じた黒字のキャッシュフローの総額が2,000万香港ドル以上
②   時価総額が上場時に1億香港ドル以上

(ii)海外法域の容認
メインボード上場規則第19章およびGEM上場規則第24章において、証券取引所への上場を希望する全海外企業に適用される一般的な枠組みが定められています。メインボード規則19.05(1)(b)ならびにGEM規則24.05(1)(b)及びその注記には、証券取引所へのプライマリー上場を希望する際に海外企業に予想される株主保護基準が定められています。メインボード・GEMへプライマリー上場を希望する、香港以外の国やその他上場が認められた法域で設立された企業が申請した場合、ケースバイケースで評価され、香港法に準ずるのと同等以上の株主保護基準が満たされることを証明しなければなりません。

(iii)会計基準
新規申請者の財務諸表は、香港財務報告基準、国際財務報告基準、または中国企業会計基準(中国籍の発行会社の場合)に準拠して作成されなければなりません。

メインボードの新規申請者については、証券取引所へのセカンダリー上場を希望する海外発行会社の財務諸表(米国会計原則またはその他の会計基準に基づいて作成されたもの)は、ケースバイケースで認容されることもあります。

(iv)上場適格性
発行会社とその事業は、証券取引所が上場に適していると判断するものでなければなりません。資産の全部もしくは実質的に全部が現金もしくは短期証券で構成されている発行会社またはそのグループ(投資会社を除く)は、証券業を唯一もしくは主たる事業としている場合を除き、上場に適するとは通常はみなされません。

(v)事業継続年数および経営陣
メインボードの新規申請者は、少なくとも前3会計年度について経営陣の継続性があること、ならびに少なくとも直近の監査済会計年度について所有および支配の継続性があることを満たし、その上で、3会計年度以上の事業継続年数を有していなければなりません。
申請者の取締役および経営陣がその事業・業界において少なくとも3年間の十分な経験を有していることならびに直近の監査済会計年度について経営陣の継続性があることを新規申請者が証明することができれば、時価総額/売上基準に基づき、実質的に同一の経営陣のもとでのより短期間の事業継続年数であっても、証券取引所に容認されることもあります。
GEMの新規申請者は、少なくとも前2会計年度について実質的に同一の経営陣のもとでの2会計年度以上の事業継続年数を有し、上場関係の文書発行の直近の会計年度について、所有および支配の継続性がなければなりません。新規設立されたプロジェクト企業や天然資源関連会社については、所有および経営陣要件を免除したり変更したりすることもできます。

(vi)最低時価総額
上場時の新規申請者の予想時価総額は、メインボードでは2億香港ドル以上、GEMでは1億香港ドル以上でなければなりません。

(vii)公開株の時価総額
一般投資家が保有する新規申請者の証券の予想時価総額は、上場時に、メインボードでは5,000万香港ドル以上、GEMでは3,000万香港ドル以上でなければなりません。

(viii)公開株
発行会社の発行済株式総数の25%以上は、常に市場で流通している必要があります。発行会社が上場申請する証券の種類とは別に、1種類以上の種類証券を保有する場合、上場時に統制市場において市場流通する発行証券総数は、発行会社の発行済株式総数の25%以上でなければなりません。ただし、上場申請する証券の種類は、発行会社の発行済株式総数の15%以上を維持する必要があります。

(ix)株主構成
上場を希望する株式の株主数は、メインボードでは300名以上、GEMでは100名以上でなければなりません。

(x)募集方法
新規申請者は、その証券に関して一般投資家の顕著な需要があると思われる場合、私募のみでの上場をすることはできません。GEMについては、新規申請者は募集方法を任意に決めることができ、また証券取引所に私募のみでの上場をすることも可能です。

(xi)新規発行価格
メインボードおよびGEMはどちらも、上場時の新規発行価格に条件を課していません。ただし、額面価格を下回る価格で新株を発行することはできません。



投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office | 記事URL

2017年3月14日 火曜日

香港会社法―その2:香港非公開会社の株式の取得

 香港の弁護士Christy Liさんによる、香港の会社法についてのブログ記事の第2回を掲載いたします。

香港会社法―その2:香港非公開会社の株式の取得

 買主が香港の非公開会社の発行済株式の全部もしくは一部を取得したい場合、もしくは、そこで法的地位や利益を受ける地位を取得したい場合には、当該株式に関する株式譲渡証書及び売買報告書を作成するという簡単な方法によって行うことができます。ただし、株式譲渡は定款等によって制限されることがある点に注意が必要です。

 しかし、相当な財産があり、相当な経営を行っている会社(実体のないペーパーカンパニーではないということ)の取得が行われる場合、当該売買は構造化され、当該売買における当事者の権利及び義務を確認するために関連法律文書も作成されます。その文書とは、国際的にも多く使われているようなもので、一般的に下記の文書を含みます。

(1)当事者が実際の取引及びデューデリジェンスの過程で得たいかなる情報も外部に漏らさないという秘密保持契約。また、他者との交渉が行われないように、秘密保持契約には一定期間の独占交渉権が認められるという規定が盛り込まれることもあります。

(2)事業または会社に関するデューデリジェンスの質問事項及び報告書。

(3)売却に関連して各当事者の義務および責任を特定する売買契約書。これは通常、事業または会社に関する詳細な表明保証を含みます。

(4)売主が売買契約書に記載の表明保証に照らした開示を行う開示確認書。

(5)売買に関連する株式譲渡用紙。これは株式譲渡証書および売買報告書を含みますがこれに限定されません。

 香港株式を譲渡する際には、株式の対価または市場価額のうち高い額の0.2%(すなわち、売却した株式につき0.1%、購入した株式につき0.1%)に相当する印紙税と、株式譲渡証書に貼付すべき5香港ドルの印紙税が発生します。非上場株式については、印紙局は、市場価額を確認するために会社の純資産価額を調査します。契約書は、締結日から2日以内(香港外での売買の場合は30日以内)に、印紙貼付のため印紙局に提出しなければなりません。また、既存の株式を譲渡するのではなく、買主に新株発行するといった印紙税の軽減方法もあります。どの軽減方法であっても適正に実施されなければなりません。

 民間企業の場合、最新の監査済み決算書(該当する場合には連結決算書も含む)又は最新の管理決算書(監査済み決算書が準備されていないか、最新でない場合)の認証謄本、保有する土地および資産の詳細、全ての売買契約書の写しは、書類が印紙貼付のために供されたときは通常、提出しなければなりません。印紙局から追加情報を求められる場合もあります。

 期間内に書類に印紙を貼付できなかった場合の罰金は、納税義務のある額の2~10倍の額となりますが、税務局の徴収員は、相当な場合には罰金の全部又は一部を免除する権限を有します。会社もその他の者も、貼付すべきである印紙が正式に貼付されていない証書にもとづいて決定したり、一般的には裁判を行ったりすることはできません。印紙が貼付されていない証書は会社の帳簿に登録されません。

 印紙を貼付(および定款で定められたその他の手続を遵守)した後、当該譲渡は会社の法定帳簿に登録され、新たな株券が発行されます。


投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office | 記事URL

2017年3月13日 月曜日

香港会社法―その1:香港での会社設立

 栗林総合法律事務所では、国内外の企業の国際取引、国際紛争に関する業務を日常的に扱っています。
 この度、香港の弁護士Christy Liさんに香港の会社法についてブログ記事を書いていただき、弊所の英文ホームページに掲載いたしました。
 こちらの事務所ブログではそれを和訳してご紹介しますので、ご参考にしていただければ幸いです。

香港会社法―その1:香港での会社設立

 香港は国際的な投資家が国際取引を行う貿易会社や投資会社を設立する場所として人気がある地域の1つです。会社設立、取締役、株主を含め、香港の株式会社のガバナンスについては主に新会社法(622章)(以下、単に「会社法」といいます。)に規定されている。これから香港での会社設立についての概要をご紹介します。

なぜ香港なのか?
 香港のビジネスマーケットの入門として、香港で会社を設立するメリットを挙げてみたいと思います。
1. 英米法制度 
 香港の政治体制、あるいは基本法により、基本的人権及びイギリス統治時代からの資本主義体制を守っています。香港は中華人民共和国(以下、「中国」といいます。)の一地域ではありますが、司法の最終決定権は香港裁判所に認められているということを含め、「一国二制度」政策の下で香港は高度な自治権を享受しています。また、香港はコモンロー制度及びイギリスの会社法に基礎を置く会社法を維持しています。
2. 金融の中心
 抜群の金融の中心として、香港は金融及び法曹業界の一流実務家を魅了しています。そして、2017年、香港の経済自由度指数(米国のヘリテージ財団とウォールストリートジャーナルによって作られ、点数で世界の国々の自由経済度を表すもの)は世界171か国中で23年連続1位に選ばれています。この経済自由度指数は、香港の効率的な法制度及び税制、競争的な商業制度及び全体的な経済的自由を特に強調しています。最も重要なことは、香港から外への資産移転も香港内への資産移転も何ら規制がないことです。
3. 設立の簡易さ
 香港での会社設立は法整備がしっかりしており簡易迅速に行うことができます。必要書類をすべてそろえることを含め、7日から10日で香港で会社を設立することができます。最低資本金はたった1香港ドルです。1人の株主、1人の取締役さえいればよく、100%外資でも問題ありません。
4. 好都合な税制
 香港は簡易で効率的な税制を敷いており、場所を基準に所得に課税されます。つまり、香港の域内での所得にのみ課税されるということです。現在、香港内における収益にかかる法人税の税率は16.5%です。香港では株式の配当、利息、キャピタルゲインには課税されません。また、付加価値税、相続税、源泉徴収税もありません。
5. 租税条約
 香港は日本を含め、諸外国と様々な租税条約(以下、「DTA」といいます。)を結んでいます。2010年11月9日、日本と香港の両政府は初めて租税条約の締結に至りました。そこで、日本と香港で課税される所得の範囲が明確にされ、日本、香港間の税務関係の問題を解決する調停手続を含め、税務当局間の交渉に関する規定が定められました。この租税条約では、全般的に投資収入(株式の配当、利息、印税等)への課税率が引き下げられ、異なる課税区域での二重課税を回避されています。

法人設立
 香港の私企業については香港会社法上に規定があります。
1. 株式譲渡についての制限
2. 株主数を50以下とする制限(当該会社の従業員及び当該会社の従前の従業員は含まない)
3. 公募による募集株式の発行や社債の発行の禁止

 さらに、私企業は保証有限責任会社であってはなりません。
 香港における非公開有限責任会社の設立は、24時間ポータルサイトの電子登記で行うか、会社登記所に下記の必要書類と手続き費用を持参して行うことができます。
1. 会社設立申請書
2. 会社定款のコピー
3. 会社登記所への通知書

 商業登記法の下では、会社設立登記申請を行うときは、申請者はコミッショナーに登記費用を支払い、会社登記所への通知書と会社設立登記に必要な他の書類を提出しなければなりません。会社設立をする際には、当該会社は企業登録申請も行います。そして、会社が設立されるときに、企業登録証明書が会社設立証明書と同時に発行されます。この企業登録証明書を当該会社は備置く必要があります。企業登録証明書の有効期限は1年間または3年間です。

株式資本
 会社法では、香港会社の株式は額面価値がないと規定しています。会社法には、発行される株式の数について何らの要件も規定していません。株式資本を持つ香港会社の定款には、会社が発行する株式の最大数を記載することができます。

会社名
 香港に設立された有限責任会社の場合、会社登記に記録されている会社名と同一であってはなりません。会社登記のサイバーサーチセンターまたは会社検索モバイルサービスを通じて、無料で会社名の検索を行うことができます。

会社の構成
 会社法のもとでは、香港企業は少なくとも1人の構成員(すなわち株主)を有していなければならず、その1人の構成員は株主の名義人であっても可能です。当該メンバーは香港に居住する必要はなく、個人または法人の如何を問いません。一人株主である場合は会社の取締役になることができます。

 香港の非公開有限責任会社には、少なくとも1人の自然人の取締役と1人の秘書役が必要です。会社に取締役が1人しかいない場合、当該取締役は同社の秘書役を兼務することはできません。香港の居住者でない人物を取締役に任命することも可能です。秘書役が自然人の場合、通常は香港に居住するべきです。秘書役が法人である場合、登記上の事務所または事業所は香港にある必要があります。

 プロフェッショナル会計士条例(Cap.50)に従い、会社は会計士または香港に登録され資格を有する会計事務所を監査人として任命しなければなりません。

 会社は、香港に登記された事務所を有さなければならず、そこに法的書類、通知書面または連絡書面を保管しておく必要があります。当該通知書面または連絡書面は、当該事務所から発送され、又は当該事務所で受理した場合、適切に保存されます。会社の様々な法定書類等は、登記された事務所に保管する必要があります。

 会社の登録された事務所の所在地は登録された設立フォームに記載する必要があります。設立後に事務所住所が変更された場合は、登記所に通知しなければなりません。所定の書式(Form NR1)の変更通知を、変更日から15日以内に登記所に送付しなければなりません。

手数料
 有限責任会社の設立手数料は以下のとおりです。
1. 会社登録料:1,720香港ドル(設立が不成功に終わった場合、1,425香港ドルの払い戻し申請が可能です。)
2. 営業登録料:1年間の証明書は2,000香港ドル、3年間の証明書は5,200香港ドル
3. 保証基金の賃金保証税:1年間の証明書は250香港ドル、3年間の証明書は750香港ドル

処理期間
 会社設立や営業登録のオンライン申請は、通常1時間以内に処理されます。申請書をハードコピー形式で提出する場合は、通常、4営業日以内に設立証明書および営業登録証が発行されます。



投稿者 Kuribayashi Sogo Law Office | 記事URL

english
アクセス



〒100-0011
東京都千代田区内幸町1-1-7
NBF日比谷ビル502号

お問い合わせ 詳しくはこちら
  • RSS配信
  • RSSヘルプ