国際相続 ― カリフォルニアにおける遺産相続

カリフォルニアにおける遺産相続

カリフォルニア州の相続手続き
日本に住所を有する日本人がカリフォルニアに財産(銀行預金等)を残して死亡した場合のプロベイト手続は、被相続人に遺言がある場合と遺言がない場合で異なります。被相続人に遺言がある場合は、Probate(遺言検認手続き)という手続きにより、申立人が裁判所に対して遺言執行者の選任申立てを行い、これに対して裁判所が遺言執行者(executor)を選任する決定を行います。遺言執行者を選任する決定をGrant of Probateと言います。被相続人に遺言がない場合は、財産管理手続きにより、申立人が裁判所に対して財産管理人を選任するよう申し立て、これに対して裁判所が財産管理人(administrator)を選任する決定を行います。財産管理人を選任する決定をGrant of Letters of administrationと言います。裁判所の決定であるGrant of ProbateとLetters of administrationの両方を合わせて、代理人選任決定(Grant of Representation)と呼ぶことがあります。この決定が出されることで、executor(遺言執行者)やadministrator(財産管理人)は相続財産の管理・処分についての正式の権限を有することになります。

プロベイト手続き
プロベイト手続の中で、裁判所は、①遺言の存在や有効性の判断、②相続人や相続開始時の受益者の把握、③被相続人の財産価額の把握、④相続人や承継人への被相続人の財産の分配手続などを行います。遺言執行者や財産管理人は、裁判所の監督の下で、被相続人の財産の収集、負債や経費の支払い、残りの財産を相続人や受益者に分配する手続を、被相続人の個人の代表(personal representative)として実施します。プロベイトが完了して財産が相続人に渡るまでには、9カ月から1年半、場合によってはそれ以上かかることになります。プロベイト手続を行う際には、裁判所の指示に基づいて、日本で作成した公正証書遺言や戸籍謄本などにアポスティーユを付したり、英訳文を添付したりする必要があります。これらの手続きはかなり複雑ですので、詳細については当事務所にお問合せください。

IAEA (the Independent Administration of Estates Act )の適用
裁判所によるプロベイトの手続は時間がかかります。カリフォルニアでは、裁判所による事前の承認なく財産の処分ができるようにするために、IAEA (the Independent Administration of Estates Act )という法律があります。IAEAの適用を受けるためには、遺言執行者または財産管理人は、IAEAの適用を受けたい旨の申立てを明示的にする必要があります。これが認められると、遺言執行者や財産管理人は、プロベイト裁判所から許可や監督を得る必要なく、財産の売却、税金の支払い、債権者からの請求に対する承認または拒否などをすることができます。

準拠法
日本の法の適用に関する通則法36条では、「相続は被相続人の本国法による」とされています。従って、日本の国際私法によれば、被相続人が日本人の場合、財産がどこの国にあっても相続については、被相続人の国籍である日本の法律が適用になることになります。一方でアメリカは相続分割主義を採用しており、不動産については不動産所在地の法を適用し、動産については被相続人死亡時の住所地が適用になるとされています。したがって、被相続人がカリフォルニアに財産を残して死亡した場合、不動産については不動産が存在するカリフォルニア法、銀行預金などについては日本の民法が準拠法になります。しかし、実際に銀行口座の解約をしようとすると、銀行からは財産管理人の選任を求められることも多く、実務上は、銀行預金等の動産についてもカリフォルニアの州法に従ってプロベイトの手続をする必要があります。

「配偶者による財産の請願(Spousal Property petition)」
残された配偶者や国内で登録されたパートナーが承継する遺産については、「配偶者による財産の請願(Spousal Property petition)」を裁判所に提出することにより、財産を確認し配偶者に相続させる方法をとることも可能です。配偶者による財産の請願は、プロベイトの裁判所に対して申請書を提出する必要がありますが、通常は法廷での1回の審問で終わり、通常のプロベイト手続よりシンプルで迅速な処理が可能です。また、この方法により配偶者や登録されたパートナーに移転できる財産の額には制限がありません。

財産が少額の場合の特例
カリフォルニアでは、プロベイトの対象財産が少額の場合には、プロベイトを省略する方法が認められています。少額の場合に通常のプロベイトを経なくてよい方法として、「宣誓供述書(Affidavit)」による場合と「簡略化されたプロベイト(Simplified Probate Procedures)」の二つがあります。

「宣誓供述書(Affidavit)」による手続
相続財産が166,250ドル以下の場合(相続財産の中には55,425ドル以下の不動産を含みます。)には、プロベイトの代わりに「宣誓供述書(Affidavit)」による手続をすることができます。相続人は、自らが財産を承継する資格があることを述べた宣誓供述書を作成します。被相続人の資産を有する個人や銀行などの金融機関は、宣誓供述書と死亡診断書の写しの提出を受けたら、保有する資産をリリースします。被相続人の死亡から40日間はこの制度を利用することができません。

「簡略化されたプロベイト(Simplified Probate Procedures)」
遺産の価額が166,250ドル以下の場合には、宣誓供述書を利用する手続の他に、「簡略化されたプロベイト(Simplified Probate Procedures)」をとることも可能です。この手続きはsummary probateとも呼ばれます。相続人や受益者が被相続人の住所地または被相続人の財産が存在する州の裁判所に簡易手続きを求める書面(請願書)を、遺言書の写しと、遺言執行者の書面による同意書ともに提出します。166,250ドルの財産からは、カリフォルニア州外の不動産、joint tenancy の財産、生存配偶者に承継される財産、生命保険、死亡給付金、および指名された受益者に承継されるプロベイトの対象とならない財産、複数の当事者の銀行口座と死亡保険金の銀行口座、トレーラーハウス、登録された船舶、登録済み自動車、16,625ドルまでの給与、リビングトラストを含む信託された財産などが、控除されます。なお、この手続きにも40日間の待機期間があります。

不動産の取り置き
被相続人の不動産および私有財産の価値が20,000ドル以下の場合、配偶者または未成年の子供は裁判所に不動産を「取り置き」するように依頼できます。これは、プロベイト手続よりもはるかに簡単です。

Joint Tenancy及びリビングトラスト
亡くなった人がjoint tenancy、配偶者との共有、リビングトラストの形態で財産を保有している場合には、これらの遺産についてはプロベイトを経る必要はありません。合同所有者であること、信託の受益権者であることなどを証明することにより、現地の弁護士に依頼して、直ちに不動産の登録名義の変更を行うことができます。

カリフォルニア州の税金
カリフォルニア州の税金については、死亡日までの個人所得に対する所得税と相続税申告書を提出することになります。カリフォルニア州の居住者ではない場合、株式、債権、紙幣、無形の私物からの収入にカリフォルニア州の税金を払う必要はありません。プロベイトの途中で不動産を売買して収入を得た場合には、この収入は、死亡日前までの個人所得には含まれませんが、別途不動産所得税申告書の提出と不動産税の支払いをする必要があります。不動産に対して個別の納税者番号が取得され、被相続人の社会保障番号の代わりに使用されます。

連邦遺産税
被相続人がアメリカ国内に資産を所有していた場合、死亡日から9か月以内に納税義務が発生し、IRSにUS Federal Estate Tax Return(連邦遺産税申告書)を提出することが必要となります。ただし、多くの場合、日本とアメリカの間で締結されている租税条約の適用によって、連邦遺産税の納税は免除されます。連邦遺産税の免除を受けるためには、米国市民ではなく米国に常居所を有していない人の米国内の遺産に対応する相続税(及び世代間財産移転税)の申告書であるフォーム706-NA、すなわち上記遺産に関連し、米国連邦税法6114条、7701条(b)に規定された租税条約に基づく免税の特典を享受する旨の開示報告書を、IRSの規定の書式にしたがって提出することになります。連邦遺産税の申告手続きについては当事務所にお問い合わせください。
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