和解契約書 Q&A

国際取引・国際訴訟

和解契約書(Settlement Agreement)作成上の注意点

Q. 和解契約書 (Settlement Agreement) 作成上の注意点を教えてください。


A. 
1 和解契約
当事者間に、何らかの紛争が存在し、一定の金銭の支払い等を条件としてその紛争の終結がなされる場合に、その解決内容を記載した和解契約書が作成されることになる。特に、既に紛争関係にある当事者間での和解契約であるから、当該紛争をめぐって、後日再び紛争が蒸し返されることを防止するためにも、和解条件、紛争が解決されたこと等を和解契約書として書面として残しておくことは重要な意味を持つ。また、和解契約が締結される状況が、対立関係にある当事者の状況を前提とするものであるから、和解契約の文言の解釈の違いから再び紛争が引き起こされることもあり得るのであり、和解契約条項の作成においては、特に慎重に契約条項を吟味する必要がある。
和解契約書の表題としては、Settlement Agreement、Settlement Agreement and Release、Release and Covenant Not to Sueなど様々なものが見られる。

2 和解契約の主要条項
(1) 和解契約の対象となる紛争の範囲の特定(クレーム(claim)、紛争(disputes)、訴訟(court action)等)
まず、紛争解決のための和解契約においては、その解決の対象たる紛争を特定する必要がある。紛争の特定は、紛争の内容及び当事者を記載することによってなされることになる。通常この部分は、前文(Recitals)において記載されることが多いと思われるが、どの程度詳細に記載すべきかについては、個別の事案ごとに検討することになろう。例えば次のような記載が考えられる。

WHEREAS, there has arisen a dispute between A and B regarding certain products; and,
WHEREAS, A and B desire to resolve their dispute;
NOW THEREFORE, in consideration of the premises and mutual promises contained herein, the parties agree as follows:

特定の製品に関してAとBの間に論争が生じている。
AとBは彼らの紛争を解決したいと望んでいる。
本契約に記載する前文と相互の約束を約因として、当事者は次のとおり合意する。

(2) 和解についての対価、支払い条件、他の和解の条件
紛争解決の条件として、一定の金額の支払いや、その他の条件が合意された場合には、その合意を和解契約の内容として定めることになる。和解金の支払いについては、相手方の資力に応じて分割払いなど柔軟に支払方法を選択することが可能であるが、和解金の支払いを受ける側としては、より確実に和解金の回収を受けることができるようにすることが望ましく、場合によっては、長期間に渡る分割払いは支払い方法として適切ではない場合もあろう。

In full settlement of the Controversies, A shall pay to B a total of Six Thousand US Dollars (US $6,000).

Aは、和解金として総額六千米ドル(6,000米ドル)をBに支払うものとする。

(3) 和解により責任を認めるものではないことの確認
和解契約書の作成において特に注意すべきことは、和解金を支払う側が、和解金の支払いの原因となった事柄について自己の責任を認めてはならないということである。例えば、著作権侵害に関する紛争においては、著作権を侵害したことなど自己に責任があることを認めることには慎重であるべきであろう。もし、和解契約を締結したこと、または和解金の支払いを行ったことそのものが、自己に責任があることを認めるものであるという証拠となるとすると、和解契約の当事者間において、または関係者との関係において、本和解契約において責任を認めたことを根拠としてさらなる訴訟などが提起される恐れもある。相手方が、謝罪文言を加えることを求めてくる場合もあるが、そのような条項を加えることについても慎重に検討すべきである。

Settlement
1 KVC and ELNOX acknowledge that ELNOX denies that it has infringed the Copy rights in any way. KVC and ELNOX further acknowledge that this Agreement is concluded in order to compromise their dispute concerning their respective claims. Accordingly, KVC and ELNOX agree that the execution of this Agreement shall in no way constitute an admission of infringement by ELNOX of the Copyrights or its liability.
2 KVC and ELNOX further acknowledge that any payment made and received under this Agreement shall not be construed as an admission of liability on the part of any party hereby released.

和解
1 KVCとELNOXは、ELNOXが本著作権を何らかの意味で侵害したことを同社が否定していることを確認する。KVCとELNOXは、さらにそれぞれの主張に関する両社の紛争を和解で解決するために本契約が締結されることを確認する。
したがってKVCとELNOXは、本契約の締結が、いかなる意味でもELNOXによる本著作権の侵害またはその責任をみとめたことにはならないことに合意する。
2 KVCとELNOXはさらに、本契約に基づいてなされ受領された支払いが、これによって免責される当事者側で責任を認めたことになるとは解釈されないことに合意する。(「英文ビジネス契約書大辞典」山本孝夫1069頁)

(4) 和解によりあらゆるクレームから免除されることの確認(Release)
和解契約の目的は、上述のように紛争を解決することにあるから、和解の対象となる紛争に関して、和解契約締結によりあらゆる責任が免除されることを規定する必要がある。ここで配慮すべきことは、和解契約の契約当事者のみではなく、対象となる紛争に関連して責任追及の対象となりうる者を特定して広く責任免除の対象として規定しておくことである。例えば、会社、代表者、従業員、代理人、親会社、子会社、取引先などである。

Settlement
KVC release ELNOX, subsidiaries and affiliates of ELNOX, and all purchasers, licensees and users of the Software, from all claims, demands, and rights of action which KVC may have on account of any infringement or alleged infringement of the Copyrights by manufacture, use, sale or other disposition of the Software.

和解
KVCは、ソフトウェアの製造、使用、販売または他の取り扱いによる本著作権の侵害または侵害申し立てによってKVCが有し得るすべての請求権、要求及び提訴権から、ELNOX、ELNOXの子会社及び関連会社ならびにソフトウェアの全ての購入者、ライセンシー及びユーザーを開放する。(同「英文ビジネス契約書大辞典」1071頁)

(5) その他の一般条項
和解契約においても、秘密保持義務、管轄裁判所などの紛争解決方法、準拠法選択に関する記載などのいわゆる一般条項が規定されることが多く見られる。

3 和解契約の形式によらない和解
  
  何らかの紛争が存在し、当事者が和解によって紛争の解決を行ったとしても、必ずしても和解契約締結の形式が採られるわけではない。企業によっては、紛争に巻き込まれたことを秘密にしたいと考える場合もあるかもしれない。そのような場合には、実態は和解でありつつも、契約の形式としては、和解の条件としての何らかの利益供与を認めることのみを約束するものであることがある。例えば知的財産権の侵害をめぐる紛争で、知的財産権の侵害であると主張された側が、当該知的財産権についてのライセンス契約を相手方と締結することによって紛争の終結を図るような場合である。
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