国際相続 ― シンガポールのプロベイト手続

シンガポールのプロベイト手続

準拠法
シンガポールに財産を有する日本人が亡くなった場合、どの国の法律が適用になるかを考える必要があります。シンガポールはアメリカやイギリスと同じく英米法の国ですので、不動産については、不動産所在地国の法律が適用になり、それ以外の財産については、被相続人の国籍又は最後の住所地の法律が適用になります。従って、シンガポールに所在する不動産の相続手続きについては、シンガポール法が適用されることになります。被相続人が日本国籍を有し、日本に居住している場合は、不動産以外の財産については、日本法により相続されることになります。但し、シンガポールの金融機関からプロベイトや財産管理人選任の手続きを取るよう求められることがあります。

シンガポールにおけるプロベイト手続きの概要
シンガポールにおいても香港と同じく遺産清算主義をとっていますので、相続財産が法定相続人や受遺者に直接包括的に承継されるのではなく、裁判所(Family Justice Courts)の監督下にある清算手続き(プロベイト手続き)を経て、残った財産のみが相続人や受遺者に分配されることになります。シンガポールにおいてプロベイトや財産管理人に関する法律は、Probate and Administration Actと呼ばれています。

遺言書がある場合
遺言書の中で遺言執行者が定められている場合、遺言執行者は裁判所に対してプロベイト授与書(Grant of Probate)の申し立てを行い、裁判所からGrant of Probateが発行されると、遺言執行者(executor)は、遺言書の内容に従って財産の処分を行います。日本人が遺言書を作成した場合で、遺言書の中に遺言執行者の指定がある場合はその遺言執行者がプロベイト授与書の申し立てを行います。遺言書がある場合でも、遺言書の中で遺言執行者についての定めがない場合や遺言執行者が受任を拒否した場合は、相続人がプロベイト授与書の申し立てを行います。但し、実際の手続きについては、日本人が直接行うことは困難ですので、シンガポールに居住する弁護士を代理人に選任し、その弁護士に申し立てを行ってもらうことになります。その後、裁判所の決定により、シンガポールの弁護士資格を有する申立代理人弁護士がシンガポール所在財産の遺言執行者になるか、シンガポールの弁護士資格を有する申立代理人弁護士と日本の遺言執行者が共同でシンガポール所在財産の遺言執行者に選任されることになります。

遺言書がない場合
被相続人の遺言書がない場合、日本人の法定相続人(多くの場合は配偶者やお子様)は、シンガポールの裁判所に対して、Grant of Letters of Administrationの申し立てを行うことになります。裁判所が財産管理人の選任決定(Grant of Letters of Administration)を出すと、その財産管理人(administrator)がシンガポールの財産についての管理処分権限を有することになります。財産管理人(administrator)は、銀行預金を解約し、不動産(マンション・コンドミニアム)を処分し、税金その他の債務を支払ったうえで、残りの財産を相続人に分配します。

申立ての添付書類
申立は全ての添付書類を揃えて行わなければなりません。添付書類として通常想定されるのは下記の書類ですが、場合によっては更に書類が必要となる可能性があります。日本の当局または機関が作成した書類はアポスティーユを取得する必要があります。個人・民間団体が作成した書類については、日本の公証役場で認証を受け、外務省で証明書を取得し、駐日シンガポール大使館で認証を受ける必要があります。日本語で記載されているものは、翻訳者が宣誓の上、翻訳しなければなりません。
・死亡証明書(Death Certificate of the deceased)
・婚姻証明書(marriage certificate for spouse)
・出生証明書(birth certificate for parents/children)
・遺言書(Original Will of the deceased)
・被相続人の資産に関する書類(Bank account statement, shares statement, title documents)
・被相続人の債務についての書類
・宣誓供述書(Affidavit)
・相続人の範囲に関する弁護士の法律意見書

銀行預金の有無が判明しない場合
遺言執行者選任決定(grant of probate)や相続財産管理人選任決定(grant of letters of administration)の申し立ての段階で、銀行預金の存否が判明しない場合においても、シンガポールの裁判所から選任された遺言執行者や相続財産管理人は、銀行や金融機関への問い合わせの通知を出すなどして、預金が存在するかどうかの調査をしてくれます。

故人がCommonwealthにドミシルを有していた場合
故人がイギリス、アメリカ、オーストラリアなどのCommonwealthの国や香港にドミシルを有していた場合(居住の意思を有して住所を持っていた場合)でシンガポールに財産を残して死亡した場合、ドミシルのある国の裁判所において遺言執行者選任決定書(grant of probate)や相続財産管理人選任決定書(grant of letter of administration)が出されていることがあります。この場合、申立人は、シンガポールの裁判所に対して、外国における授与書(foreign grant)を承認する(reseal)申し立てを行うことができます。

故人がCommonwealth以外の国にドミシルを有している場合
故人が日本などCommonwealthの国以外の国にドミシルを有していた場合、遺言執行者選任決定(grant of probate)や相続財産管理人選任決定(grant of letters of administration)についての申し立てを新しくシンガポールの裁判所に対して行う必要があります。

相続税
シンガポールには遺産税はありませんので、シンガポールでの遺産税の申告は必要ありません。日本の相続人が無制限納税義務者に当たる場合は、シンガポールで相続した財産についても日本で相続税の申告を行う必要があります。

遺言書のある場合
被相続人の遺言がある場合、裁判所は遺言執行者を選任します。遺言執行者は、税金やその他の債務を支払った後、残った財産を遺言の内容に従い相続人に分配します。この場合、誰がどれだけの財産がもらえるのかは遺言書の記載内容によって決まります。

遺言がない場合
遺言がない場合、letter of grant of administrationにより、相続財産管理人が選任されます。相続財産管理人は、被相続人の財産を管理し、残った財産の中から法律の規定に従って、財産が分配されます。シンガポールに所在する不動産についてはシンガポール法が準拠法になりますので、相続人の範囲や相続分はシンガポール法にもとづいて定められることになります。シンガポール法の下における相続分と相続人の範囲については、次のようになり、日本民法と相違が出てきます。①配偶者がいて子供がいない場合、配偶者が全部の財産を相続します(日本法では、配偶者がいて子供がいない場合は、配偶者と直系尊属又は配偶者と兄弟姉妹が相続人となります)。②配偶者と子供がいる場合は、配偶者が半分を取得し、残りの財産を子供たちで均等に取得します。③子供のみの場合、全財産を子供の間で均等に取得します。④配偶者と直系尊属が相続人の場合、配偶者が半分を取得し、残りの半分を直系尊属の間で均等に取得します(日本法では、配偶者と直系尊属が相続人の場合、配偶者が3分の2を取得し、直系尊属が3分の1を取得します)。これに対し、シンガポールの金融機関に預けている銀行預金などは日本法が準拠法になりますので、日本の民法に基づいて相続人の範囲と相続分が定められることになります。
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